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生命倫理ガバナンス研究会「NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)」

 5月29日、以下のような内容の生命倫理ガバナンス研究会(位田隆一先生主催)5月例会に参加しました。

発表者:森崎隆幸 先生(国立循環器病研究センター、分子生物学・臨床遺伝科)
演題:NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)──自施設での経験と日本の現状と課題

 NIPTは、一般的には「新型出生前診断」として知られている出生前スクリーニングのことです。この臨床研究が2年前に開始されてから、その1年後に全国的な実施状況や検査の結果(中絶に至る件数を含む)などは公表され、私も関心を持って見ていましたが、今回、国立循環器病研究センターにおける個別の事例を聞くことができたのは、とても勉強になりました。
 少子化の時代だからこそかもしれませんが、出生前診断のニーズが高いことも今回わかりました。現在の診断は、ダウン症、13トリソミー、18トリソミーといった染色体疾患の有無を検査することに限られていますが(とはいえ、精度はかなり高いです)、今後、新たな遺伝学検査が増えていくことを考えると、倫理的な議論が欠かせないことをあらためて感じさせられました。
 国立循環器病研究センターでは、希望者に対し、90分もの時間をかけて説明をしており、かなり丁寧に全体のプロセスを進めている点には安心をおぼえました。染色体疾患が先天性疾患全体に占める割合は4分の1に過ぎないですが、遺伝子検査がすべてを予知してくれるかのような誤解はまだ広く見られると思います。こうした基本的な理解を共有した上で、診断を進めていくためには、十分な時間が必要です。遺伝学的検査が大衆化していくなかで、こうした問題にどのように対応していくかも課題としてあります。
 出生前診断を本格的に導入し、医療資源の削減を目指す英国のような国々も世界にはありますが、日本もそのような方向に向かうのでしょうか。安易な選択的中絶へと流れていかないためにも、社会的な合意形成や倫理的議論が必要だと思います。

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