世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1119信(2012.07.02)

  • 『聖誕教会』が世界遺産に登録
  • プーチン大統領がイスラエルなど訪問
  • エジプト新大統領がキリスト教保護打ち出す
  • エジプトのモルシ新大統領選出をWCCが歓迎
  • 米コロラド州で大規模山火事、オバマ大統領が現場視察
  • 米の国民皆保険制度を連邦最高裁が合憲と判断
  • 北朝鮮がバチカンの食糧援助受け入れ
  • ベトナムでキリスト教抑圧続く
  • ロシア正教会が中国公認教会と接近
  • スーダンの教会取り壊しをWCCが非難
  • ナイジェリアでは礼拝も命がけ
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎『聖誕教会』が世界遺産に登録

 【CJC=東京】ロシア北西部サンクトペテルブルクで開かれてた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は6月29日、パレスチナが申請したヨルダン川西岸ベツレヘムの『聖誕教会』を、早急な保護が求められる危機遺産として『世界遺産』に登録することを承認した。投票は賛成13、反対6で、イスラエルと米国はともに反対票を投じた。
 パレスチナは昨年10月、ユネスコに正式加盟しており、パレスチナの世界遺産は初めて。
 パレスチナは『聖誕教会』を、イスラエルによる占領の影響で教会の維持・補修が困難になっているとして、「国家」の立場で危機遺産登録を申請したもの。登録は、イスラエル占領地の一部をユネスコが「パレスチナ領」と認めたことになる。
 パレスチナ自治政府の報道官は「イスラエル占領地に囲まれた西岸の自治区にある同教会の登録承認で、パレスチナの国家主権が認められた」との声明を出した。一方、イスラエル代表団は「決定は政治的で、われわれの立場を損なう」と非難している。
 『聖誕教会』は4世紀、イエス・キリストが生まれたとされるベツレヘムの洞穴の上に建てられた。


◎プーチン大統領がイスラエルなど訪問

 【CJC=東京】ロシアのウラジミル・プーチン大統領は6月25日、イスラエルを訪問した。同日朝、政府閣僚、アドバイザー、ジャーナリストなど300人と共に航空機4機でネタニヤに到着した。大統領のイスラエル訪問は05年以来。大統領は、第二次大戦時のソ連赤軍記念碑前で演説、『ホロコースト』(ユダヤ人大虐殺)を、「人類史上、最も暗く恥ずべき出来事」と呼び、記念碑建立に感謝を表明した。
 大統領は同日夜、エルサレムでシモン・ペレス大統領と会談、核兵器開発が疑われるイランへの武力行使について「アフガニスタンやイラクで米国に起きたことを見よ」と述べ、性急な攻撃を自制するよう求めた。
 大統領とネタニヤフ首相は、共同記者会見で会談の詳細については明らかにしなかった。ネタニヤフ首相が「イランの核兵器はイスラエルだけでなく、地域や世界全体に深刻な危険をもたらす」とロシアに制裁の強化を訴えたものの、大統領は「会談は有益で、今後も関係を強化したい」と述べるに留まった。
 プーチン大統領は26日、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸ベツレヘムを訪問した。大統領は、『ロシア文化・言語センター』開設式典に臨み、その後にイエス・キリスト生誕の地とされる場所に建てられた『聖誕教会』を訪問した。大統領は、マフムード・アッバス自治政府大統領との会談、中東和平交渉の再開に向けた方策などについて協議した。
アッバス大統領はロシアからの援助に感謝を表明し、プーチン大統領はパレスチナ統一を回復することがイスラエルとの問題の早期解決を促すと語った。
 ヨルダン王国ではプーチン大統領はアブダッラ2世国王と会談、正教会建設の土地が提供されたことに感謝の気持ちを示した。プーチン大統領はそれが両国間の特別な関係を示すものであると強調、ヨルダンとの関係に大きな関心を払い、経済分野においても協力に期待していると述べた。


◎エジプト新大統領がキリスト教保護打ち出す

 【CJC=東京】エジプトのムハンマド・モルシ新大統領が6月25日、コプト教会代表と、また26日にはカトリック教会指導者と会談、キリスト者が今後苦難を耐えることはない、と確約した。
 『ムスリム同胞団』が擁立した候補者が大統領になった場合、キリスト教抑圧を打ち出すのでは、との懸念が少数派キリスト者の間に広がっていた。カトリック教会の報道担当ラフィク・グレイヘ氏は「エジプト社会のイスラム化を懸念している」と語っていた。


◎エジプトのモルシ新大統領選出をWCCが歓迎

 【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は、ムハンマド・モルシ新エジプト大統領に歓迎の書簡を送った。同氏選出に至った「民主主義、自由、社会正義、市民平等を求める市民運動を平和裏に導いた若い世代の勇気」をWCCは強く称賛する、と言う。
 総幹事は「大統領がこれらの自由保護を法律で保証することを疑わない」と述べている。


◎米コロラド州で大規模山火事、オバマ大統領が現場視察

 【CJC=東京】米西部コロラド州で大規模な山火事が相次いで発生している。州内第2の都市コロラドスプリングズ近郊では6月23日発生した山火事で28日現在、約74平方キロが焼失、住民3万6000人が避難している。災害対策当局は29日、焼失した民家で新たな遺体が見付かり、犠牲者は計2人になったと報告した。
 コロラドスプリングスのバック市長は正確な数は不明としながらも、34本の道路に面した家屋346棟が被害に遭ったと記者団に語った。鎮火率は10%程度。警察は引き続き連絡が取れない住民の安否確認にあたっている。
 同州に災害宣言を出し連邦政府の緊急支援を命じたバラク・オバマ大統領は29日、同州の被災地を視察した。大統領は多大な被害が生じたことを確認、鎮火の成果は見え始めていると励まし、「自然災害が起きた時、米国民は結束して対処する」と強調した。
 火災原因については放火の可能性も指摘されており、連邦捜査局(FBI)や『アルコール・たばこ・銃器取締局』、地元の捜査当局が調査している。
 同州北部フォートコリンズ近郊でも9日に山火事が起き、約350平方キロ以上を焼失、1人が死亡した。これらの火災が完全に鎮火するのは7月中旬になる見通し。


◎米の国民皆保険制度を連邦最高裁が合憲と判断

 【CJC=東京】米連邦最高裁は6月28日、バラク・オバマ大統領の主導で成立した医療保険制度改革法の根幹である国民に保険加入を義務付ける条項を合憲とする判決を下した。11月の米大統領選挙に及ぼす影響が注目される。
 オバマ大統領は判決を受け、テレビ演説で「この法律によって安心して暮らせるすべての国民にとっての勝利だ」と評価した。
 判決では最高裁判事9人のうち5人が同法を支持、保守系4人が反対に回った。野党共和党は判決を批判、改めて同法の撤廃を目指す方針を確認している。
 最高裁判断に対する米国人の賛否比率がいずれも46%と評価が二分していることが最新世論調査結果でわかった。
 調査は『USAトゥデー』紙と世論調査機関『ギャラップ』社が共同実施し、結果は6月29日に発表された。
 調査結果によると、政党別では、民主党支持の回答者の79%が最高裁判断に同調。共和党では83%が反対した。無党派層では、45%が支持、42%が不支持だった。


◎北朝鮮がバチカンの食糧援助受け入れ

 【CJC=東京】カトリック系UCAN通信によると、食糧不足に直面している北朝鮮が、バチカン市国とは国交がないものの、国際援助協力団体『聖エディジオ共同体』(本部ローマ)の食糧25トン救援をこの5月に受け入れていた。
 『聖エディジオ共同体』のマウロ・ガロファロ代表は5月24日から30日まで、米穀、豆類、砂糖、油類を平壌南方100キロの地区にある高齢者施設と孤児施設への配布を確認するために北朝鮮を訪問した。
 食糧援助計画は、北朝鮮のハン・テソン駐イタリア大使の要請に応じたものという。
 ガロファロ代表は「外交官はしばしば共同体を訪れ、援助を要請した」と北朝鮮から帰国後、UCAN通信に語った。
 ガロファロ氏は、北朝鮮滞在駐は他の訪問者と同様、援助物資の到着と効率的な配布が行われているか確認を認められたものの、常に監視されていた、と語り、さらに第2回の配布は年内に計画している、と述べた。
 韓国でも『カリタス韓国』が食糧援助を計画したが、韓国政府は、4月初めのミサイル発射実験を受けて食糧援助を全面的に禁止している。


◎ベトナムでキリスト教抑圧続く

 【CJC=東京】米宣教通信『コンパス』によると、ベトナム北西部ディエンビエン省ムオンチャ地区当局が、少数民族モン族が主体のキリスト教会が新設した教会堂2カ所を取り壊した。
 この4月に完工した非公認『ベトナム福音宣教』のホヘ教会は6月17日取り壊された。公認『ベトナム福音教会』のパンホ教会も13日破壊された。
 コンパス通信は、一連の事件を、政府の教会認可体制機能が不全に陥っていることの実例と見ている。ベトナム・プロテスタントの大多数は非公認の状態に置かれ、認可される見通しは全くつかない。
 キリスト教支援団体『オープン・ドアーズ』によると、ベトナムは、抑圧の最も厳しい50カ国を指定する『ワールド・ウォッチ・リスト』2012年版で19位とされている。


◎ロシア正教会が中国公認教会と接近

 【CJC=東京】ロシア正教会モスクワ総主教座の対外教会部門責任者ヒラリオン府主教が6月19日から中国を訪問した際、公認天主教(カトリック)教会の『中国天主教愛国会』の指導者ヨセフ・馬英林副主席と会談したことが明らかになった。カトリック系CWN通信が報じた。
 馬主教は公認の『中国天主教主教団』団長でもある。ただバチカン(ローマ教皇庁)は同主教団を認知しておらず、中国のカトリック者に、愛国会と協力しないよう指示している。
 馬主教は、主教会を構成している他の主教の中の数人と同様、聖座(バチカン)が承認していない聖職叙階に関わったことで自動的破門とされている。
 カトリック系通信『アジア・ニュース』のベルナルド・セルベッレラ神父は、ロシア正教会が中国政府から認可を得られるか懸念している、と史的する。その願望が、モスクワ総主教座に、「公認」カトリック教会との連携を強化したいとの動機になっている、と言う。
 府主教は20日、北京のカトリック神学校を訪問した際、「中国の宗教の中に正当な地位を保つために」、ロシア正教会の「娘」教会として、中国の自治正教会への期待を語った。ただインターファクス通信は、府主教が中国訪問直前に、「自治正教会の地位正常化への対話はなかなか困難」だと認めたと報じている。
 現在、中国では仏教、カトリック、イスラム教、プロテスタント、道教の5宗教だけが認可されており、正教会は外されている。


◎スーダンの教会取り壊しをWCCが非難

 【ジュネーブ=CJC】スーダンの首都ハルツームで聖公会の教会堂が、当局の指示により破壊されたことに、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は『全アフリカ教会会議』のアンドレ・カラマガ総幹事と共に、衝撃を受けたと懸念を表明した。
 スーダン国内の少数派、特にキリスト者に対する一連の「計算された攻撃」の一環だと言う。基本的人権侵害の阻止を呼び掛け、世界各国の信徒に対し、この難局に直面している信徒たちのために祈るよう呼び掛けている。


◎ナイジェリアでは礼拝も命がけ

 【CJC=東京】ナイジェリア・カドゥナ州で6月18日、キリスト教会3カ所が爆破された事件は、報復行為を呼び死者が92人以上に上る事態に発展した。いつもは信徒で満員になる教会の多くは、24日の日曜日にも人影はまばら。
 ただ州都アブジャの教会では礼拝出席者が少なかったが、教会前に設けられた検問所には長い列が出来ていた。イスラム教徒との抗争が激化する中でも、危険を冒して礼拝を守ろうとする信徒も少なくない。
 アブジャ教会協議会のフランクリン・オコイェ議長は「ナイトクラブや路上で死ぬよりは神の家で死にたいと言うのだ」とロイター通信に語った。
 イスラム過激派『ボコ・ハラム』(西洋の教育は罪)は、カドゥナ州でキリスト教会で起きた爆破事件について犯行声明を出したものの、他派が『ボコ・ハラム』に責任をなすりつけた事件もある、と公安当局は見ている。


◆短信◆(CJC)

▽エリザベス英女王、元IRA司令官と「歴史的」握手=即位60周年記念行事の一環として北アイルランドを訪問中の英国のエリザベス女王は6月27日、北アイルランド自治政府のマーティン・マクギネス副首相と会談、歴史的な握手を交わした。
 マクギネス副首相はかつて、カトリック過激派『アイルランド共和軍』(IRA)の司令官だった。
▽バチカンにコミュニケーションズ・アドバイザー=バチカン(ローマ教皇庁)国務省が、コミュニケーションズ・アドバイザーとして米ジャーナリストのグレッグ・バーク氏(52)を任命した。報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父(イエズス会)は今後も公式スポークスマンの任務を果たすが、バーク氏がコミュニケーションに関して指導することになると見られる。
 バーク氏は『ナショナル・カトリック・レジスター』紙のバチカン通信員、『タイム』誌、『フォックス・ニュース』の通信員を歴任。『オプスデイ』会員。
▽ルフェーブル派と和解へバチカン新人事=教皇べネディクト16世が『エクレジア・デイ委員会』副委員長にジョゼフ・オーガスティン・ディ・ノイア大司教を任命したことが明らかになった。バチカン(ローマ教皇庁)は今回の任命を、伝統派カトリック者を聖座(バチカン)との関係復活を願う教皇司牧のサイン、としている。
 ディ・ノイア大司教は、教理省ではべネディクト16世と近く、また2009年以来、典礼秘跡省局長を務めていた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月1日)=https://www.cwjpn.com
★2012年度定例司教総会=教会敷地内捜査・逮捕行為で=国家公安委警察庁へ「要請書」提出を承認
★右近の墓を予備調査=大塚司教らマニラで=今後の鑑定、現地イエズス会に依頼
★国際聖体大会=日本からも公式巡礼団参加="一致"へ思い深める=アイルランド
★慰霊の日 カトリック平和巡礼=戦争、軍備に大声で「NO」を=沖縄6月23日
★秘跡、求道者減る=結婚は10年前の3割台=教会現勢

 =キリスト新聞(6月30日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(7月1日)=https://jpnews.org
★ミッションスクールがCSの子らに科学教室=創造の完璧さ 理科実験で
★JEA=原発事故で異例の理事長所感=無批判な原子力利用を反省
★日本福音同盟第27回総会=教会ネット軸に被災地支援継続=福島、疲弊する現地教会を忘れない
★第6回日本伝道会議=開催地は神戸
★マハカリミッション=廃校を復興支援センターに=宿泊所に改装=ワークキャンプ奉仕者募集


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