世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1173信(2013.07.15)

  • 英国国教会総会が女性の主教叙階決定
  • 教皇が移民漂着の島ランペドゥーサでミサ
  • カトリック国アイルランドが中絶容認へ
  • エジプトでコプト正教徒襲撃続く
  • 『神殿の丘』に第3神殿を、とイスラエル閣僚
  • マンデラ氏は依然重篤も容体は安定
  • ワシントンで故キング牧師しのぶ展示会
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英国国教会総会が女性の主教叙階決定

 【CJC=東京】英国国教会はイングランド北部ヨークで開いた総会で7月8日、女性を聖職に叙階することを認める規則草案を採択した。正式施行への手続きが終わるのは2015年11月と見られる。
 昨年11月には、総会の信徒部会で6票差で否決されていたものが、今回ようやく総会を通過したことになる。ジャスティン・ウエルビー大主教も、前途に光明を見出した格好。
 総会は、司祭による児童性的虐待について7日、正式に謝罪した。
 複数の司祭が過去に児童に性的虐待を行っていたことと、虐待を防げなかったことに対する謝罪を全会一致で採択した。サズル・ノッティンガム教区のポール・バトラー主教は総会の開幕に当たり、「わたしたちは自らの過ちを認めるほかない。わたしたちは間違っていた。過ちの罪の重さは、加害者の罪深さと同等だ」と述べた。
 英国国教会では今年、イングランド南部チチェスター教区で児童に対する性的虐待が行われていたスキャンダルに関する最終報告書が発表されている。また、これまでに英国国教会の元司祭3人が児童性的虐待の罪で訴追されている。


◎教皇が移民漂着の島ランペドゥーサでミサ

 【CJC=東京】教皇フランシスコは7月8日、イタリア・シチリア州のランペドゥーサ島を訪問した。地中海上のランペドゥーサ島は、北アフリカに近い位置関係から、アフリカからの移民・難民を乗せた船が漂着することが多い。現地の自治体や教会、住民はこれらの人々の救援や受け入れをめぐる様々な現実に日々直面している。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇フランシスコが登位後、初めてのバチカン市国外での司牧行事としてランペドゥーサ島を訪問したのは、現地サン・ジェルランド教会のステファノ主任司祭からの招きに応えたもの。教皇はこの訪問を通し、これまで海上で犠牲になった移民たちのために祈ると共に、移民の支援と受け入れにあたる人々を励まし、この問題に対する人道的意識を福音の立場から訴えることを要望した。
 同日朝、ランペドゥーサ島の空港に到着した教皇は、島東部カラ・ピサーナよりイタリア海上保安庁の巡視艇でランペドゥーサ港ファヴァローロ突堤へ向かった。
 到着した突堤で、教皇は移民たちに迎えられた。多くはまだ年若い移民の一人ひとりに、教皇は通訳を交えて言葉をかけた。続いて、教皇は同島のグラウンドでミサを捧げた。ミサには約1万2千人の市民が参加した。
 ミサの説教で教皇は、このたびの訪問の目的を説明。「希望への道であるはずだった船が死への道になった」こうしたタイトルと共に海上で亡くなった移民の記事を読んだ時、今までも何度もあったこうした出来事が心の棘となって苦しみと共に想起、この地に来て祈り、連帯を示し、こうしたことが二度と起きないようにわたしたちの意識を呼び覚まそうと望んだ、と述べた。
 人口5000人の同島には、毎年1万人以上がアフリカから欧州を目指してたどり着く。リビアで激しい内戦があった2011年には5万人が押し寄せた。同日朝も、1隻のボートに乗った166人が保護された。
 イタリア内務省は今年、6月末までに約8千人の移民が船で漂着した、と発表している。そのうち約3700人が同島に着いた。
 同島に着く前に難破で水死したり、船内で暑さや水不足などのひどい環境のために亡くなる例も多い。
 教皇は同島で移民の支援にあたる人々の連帯の精神に心からの感謝を表明した。
 教皇は、同日午後バチカンに戻った。


◎カトリック国アイルランドが中絶容認へ

 【CJC=東京】カトリック者が国民の大半を占め、憲法で妊娠中絶が禁じられているアイルランドで、下院が7月12日、母親の生命の危険がある場合に限り、妊娠中絶を認める法案を127対31の賛成多数で可決した。上院でも可決される見通しで、マイケル・D・ヒギンズ大統領の署名により成立する。
 法案の中絶容認には、母親が自殺する恐れがある場合も含まれる。ただ中絶が認められるためには精神科医2人と産科医1人が、自殺のリスクが「現実のものであり、重大である」ことを確認しなければならないと定められた。
 また近親相姦や強姦によって妊娠した場合にも中絶を認めるべきだとの修正案が女性議員から出されていたが、実現しなかった。
 今回の一部合法化はエンダ・ケニー首相ら政府主導で進められたが、法案には強い反対もあり、国論を二分した。与党・統一アイルランド党内でも造反が相次ぎ、審議の過程でルシンダ・クレイトン欧州問題担当閣外相を含む議員5人が法案に反対し、党から除名されている。下院では10日から11日にかけ徹夜審議が行われたという。
 アイルランドでは昨年10月、インド出身の妊娠中のサビタ・ハラパナバールさん(31)が妊娠17週目で背中の痛みを訴え21日にゴールウェイ大学付属病院で診察を受け、流産しかかっていると診断された。しかし強い痛みを訴えているにもかかわらず、病院側から人工妊娠中絶手術を拒まれ、3日後に敗血症のため死亡した。
 ハラパナバールさんは数時間で流産すると告げられたにもかかわらず、何時間も激痛が続いたことから、中絶手術を訴えた。しかし医師らは、胎児の心臓が動いている限り中絶はできないと説明した。アイルランドはカトリック国であり、医師団もカトリックだと強調したと地元紙は報じている。
 ハラパナバールさんは、自分はカトリックではなくヒンドゥー教徒だと訴えたが聞き入れられなかった。
 これをきっかけに同国では中絶をめぐる議論が高まり、政府は中絶に対する規制の見直しを迫られていた。


◎エジプトでコプト正教徒襲撃続く

 【CJC=東京】エジプトのムハンマド・モルシー前大統領が軍の事実上のクーデターで排除されて以来、同国の少数派コプト正教会への抑圧事件が続発している。その多くがイスラム教過激派によるものと見られる。
 古代遺跡で有名なルクソール近郊のナガア・ハッサンムラでイスラム教徒村民の死体が7月5日発見された。キリスト者の仕業だという噂が一気に広がり、イスラム教過激派の数百人が暴徒化、キリスト者の住居の窓やドアを壊し、店舗から商品を略奪した。暴行を阻止しようとしたイスラム教徒は押しのけられたという。キリスト者10人以上が村内の『洗礼者聖ヨハネ教会』に避難した。
 逃げ遅れた実業家のエミル・ナシーム氏(41)たちは自宅に立てこもったが暴徒数十人に襲われ、一緒にいた甥と一緒に屋根伝いに逃げようとしたところを引きずり下ろされ、こん棒などで殴打、殺害された。甥も頭や肩に重傷を負った。警察も暴徒の勢いに押されてか、救出活動が出来なかった。
 シナイ半島北部地中海岸沿いのエルアリシュではコプト正教会のミナ・ハロアン司祭(39)が7月6日、イスラム教武装勢力に殺害された。
 路上を歩行中、自動車から出てきた暴徒に銃撃された。病院に搬入されたものの数時間後に死亡が確認された。
 同半島北部のイスラエル国境付近のシェイク・ズウェイドでも同日、商店主マグディ・ハバシ氏(60)が誘拐され、11日に遺体が発見された。両事件ともイスラム教過激派によるものと見られている。


◎『神殿の丘』に第3神殿を、とイスラエル閣僚

 【CJC=東京】エルサレムの『神殿の丘』に第3神殿を建設しよう、とイスラエル政府のウリ・アリエル住宅建設相が7月4日声を上げた。
 『神殿の丘』には紀元前10世紀頃、ソロモン王により第1神殿が建てられたが、紀元前587年、バビロニアにより破壊された。紀元前515年に建設された第2神殿は、紀元70年にローマ帝国により再び破壊された。城壁の一部が残され「嘆きの壁」と呼ばれている。
 現在、『神殿の丘』はイスラエル領だが、『アル=アクサー・モスク』や『岩のドーム』などイスラム教の聖地でもあり、管理はイスラム教指導者が行っている。ユダヤ人とキリスト者は神殿の丘で宗教的な儀式を行う事を禁止されている。2000年9月、右派リクードのシャロン党首が神殿の丘を訪問したが、これに反発したパレスチナ市民による暴動が起こり、直前に成立していたキャンプ・デービット合意が事実上、破綻した。
 ユダヤ人にとって神殿再建は最大関心事の一つだが、イスラム教との関係緊張が必至なだけに、これまで政府高官も発言を控えてきた。
 アリエル住宅建設相が極右政党『ユダヤの家』に所属しており、パレスチナ自治区への入植に熱心で自らも入植者であるだけに、そのアリエル氏が神殿再建を呼び掛けたことで、中東情勢を一挙に悪化することにもつながりかねない。
 昨年には『ユダヤの家』のゼブルン・オレブ議員も神殿再建を呼び掛けたが、その際にも岩の洞窟とアルアグサ・モスクの撤去が世界戦争を引き起こすことは確実、と語っている。
 『神殿の丘』関係団体がイスラエルのユダヤ人を対象に共同で行った調査では、神殿再建賛成が30%、反対45%、わからない25%だった。


◎マンデラ氏は依然重篤も容体は安定

 【CJC=東京】南アフリカ大統領府は7月10日、6月8日から肺の感染症のため約1カ月入院が続くノーベル平和賞受賞者のネルソン・マンデラ元大統領(94)について「治療が効果を表している」とする声明を出した。容体は依然として重篤だが、安定しているという。
 マンデラ氏の2人の孫娘は9日、インターネットのツイッターで、同氏が笑顔や目の動きで意思疎通を図っていると明かした。同氏には生命維持のため、人工呼吸器が使われているとされる。
 同氏は、近年入退院を繰り返しており、今回の入院は昨年12月以降4度目。
 入院の長期化に伴い家族間のトラブルも表面化しており、その影響も背景にあるようだ。
 またマンデラ氏が死去した場合の埋葬地をめぐって、孫や娘などの間で意見が食い違い、法廷闘争に発展。娘らが先月末に提出した法廷資料には同氏が継続的な植物状態にあり、医師団が生命維持装置を停止することを家族に勧めた、と記載されている。これに対し、大統領府は4日、植物状態を否定する声明を出した。
 「誕生日までは生命維持装置を外さない」「埋葬地の問題があったから維持装置を外さなかった」などといった見方も出ている。


◎ワシントンで故キング牧師しのぶ展示会

 【CJC=東京】1963年8月28日に25万人もが参加して行われた「ワシントン大行進」50周年を記念し、行進をひきいた米公民権運動指導者、故マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師をしのぶ展示会「一つの人生」が、来年1月1日までワシントンで開催されている。
 展示会では、写真、絵、出版物、遺品などによって、キング牧師がリードし、輝かしい勝利を飾ったアラバマ州モントゴメリーでのバスボイコット運動から、公民権運動のリーダーとみなされるようになるまでの半生を紹介している。「私には夢がある」で知られる歴史的なスピーチに焦点を当てたコーナーもある。


《短信》

◎バチカン市国の新刑法に関する教皇自発教令
 教皇フランシスコは7月11日、バチカン市国の新刑法に関する使徒的書簡を自発教令の形で発布した。新刑法の9月1日からの施行を、「バチカン市国」だけでなく「教皇庁」管轄下にまで広げ、教皇庁各組織とその関連組織で働く職員・聖職者、バチカンの外交官にも適用される。(CJC)

◎バチカンが聖ピオ10世会との対話終結
 バチカン(ローマ教皇庁)教理省長官ゲルハルト・ルートヴィヒ・ミュラー大司教が、聖ピオ10世会との対話終結宣言を用意している、と独誌『フォーカス』に語った。第二バチカン公会議路線に反発したマルセル・ルフェーブル大司教が創設した同会との対話は「もう充分」という。(CJC)

◎キャサリン妃入院先に偽電話の豪ラジオ司会者が労働審判申し立て
 英キャサリン妃が入院していたロンドンの病院にいたずら電話をかけ、取り次いだ看護師が自殺する事件を引き起こしたオーストラリアのラジオ番組司会者2人のうちメル・グレイグさんが、安全な職場を提供するのを怠ったとして局の親会社を相手取り労働審判を申し立てた。(CJC)

◎黒人少年射殺事件無罪評決に全米各地で抗議デモ
 米フロリダ州サンフォードで黒人の高校生トレイボン・マーティンさんを射殺したとして殺人罪に問われたジョージ・ジマーマン被告(29)が7月13日、無罪評決を言い渡されたことに対し、全米各地で抗議デモが発生している。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月14日)=https://www.cwjpn.com
★2教皇列聖へ=教皇フランシスコが同時に承認=ヨハネ・パウロ2世とヨハネ23世
★教皇フランシスコ=最初の回勅=前教皇の3部作を完結=「信仰は人生を導く光」
★カリタスジャパン=モンゴルを視察=支援する技術訓練センターなど
★人種差別撤廃NGOネットワーク=憎悪発言(ヘイトスピーチ)どう止める=参議院議員会館で集会
★『隣(とな)る人(ひと)』に映画賞=シグニスジャパン=授賞式

 =キリスト新聞(7月13日)=https://www.kirishin.com
★「ラインホールド・ニーバー」国際シンポ=聖学院大学総合研究所主催=ロビン・W・ラヴィン氏「歴史の神学」に着目=任成彬氏「エキュメニカルな社会倫理」考察
★日本ホーリネス教団・日本同盟基督教団「教会と国家」委=参院選前に危惧表明
★「福音主義とは何か」=日本福音主義神学会東部部会が研究会
★悩める若者にどう向き合う?=日宗連・宗教文化セミナー
★ルーテル教会のロックバンド=「牧師ROCKS」ライブ=「坊主バンド」とコラボ

 =クリスチャン新聞(7月15日)=https://jpnews.org
★日本軍「慰安婦」強制明らか=インドネシアで実態調査した元宣教師=木村公一氏=橋下市長の発言を批判
★自販機設置で防災備蓄パンの缶詰と水96人分 無償で
★NCC平和・核問題委=憲法・原発で立場表明
★日本民族総福音化運動10年=台湾人牧師講師に「愛と赦しと癒しの聖会」
★9条改定に反対=宗教者共同声明


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