世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1228信(2014.08.04)

  • 米国務省が世界の信教の自由報告書
  • 教皇がカゼルタ2回訪問で真意明かす
  • 「東西教会、貧困撲滅で協力」とバルトロメオス1世
  • ガザで国連運営の学校にも砲火
  • バチカン銀行が資金洗浄防止へ体質改善
  • 教皇が来年1月にスリランカとフィリピン訪問
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎米国務省が世界の信教の自由報告書

 【CJC=東京】ジョン・ケリー米国務長官は7月28日、『2013年版・世界信教の自由に関する報告書』を連邦議会に提出した。
 国務省が発表した報告書は、数百万人が信教を理由に故郷を追われたとして「2013年は近年で最大規模の排除を目の当たりにした」と指摘している。信教の自由で「特に懸念がある国」として、新たに指定されたトルクメニスタンのほかビルマ(ミャンマー)、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、スーダン、サウジアラビア、ウズベキスタンの計9カ国(国名表記ABC順)を挙げている。
 北朝鮮に関しては「政府の厳重な監督下にある公認団体以外の宗教活動を厳しく制限している」として、信教の自由を尊重しない国の筆頭に挙げた。
 北朝鮮では難民、脱国者、宣教師、NGOなどの報告によると、改宗に従事している宗教者、外国人や宣教師と接触した人は逮捕され、死刑を含め厳しく処罰される。
 ケリー国務長官は記者会見で「徹底的で残酷な抑圧」は世界でも突出していると非難した。
 中国では、チベット地区で信教の自由などと人権擁護を求め、ダライラマや自死で抗議する人への支持を表明した学生、僧侶、一般信徒を警察が逮捕している。
 非公認の「家の教会」とその支持者に対する抑圧は今も続き、4月には河南省で信徒7人が説教を記録し複製したとして禁固3年から7年半に処せられている。
 中国政府は国外で亡命申請しているウイグル族の強制送還を求めているが、送還されると、投獄され虐待される、と言う。
 シリアやイラクで攻勢を強めるイスラム教スンニ派の過激組織『イラク・シリア・イスラム国』(ISIS)が、シーア派の虐殺やキリスト者の強制改宗、女性や子どもを人間の盾にしたことなどを挙げ、「蛮行と信じがたい残忍さが見られた」と批判している。


◎教皇がカゼルタ2回訪問で真意明かす

 【CJC=東京】教皇フランシスコは7月28日、イタリア南部カゼルタのペンテコステ派教会を訪れた。26日午後に行われた最初のカゼルタ訪問は、現地のカトリック信者たちとの交流を目的とする司牧的なものであったが、その2日後の訪問は、私的なものとして行われた。
 教皇フランシスコがカゼルタへ、3日間に2回も訪問すると発表された時に、イタリアのメディアが疑問に思っても不思議はなかった。特に2回目は、教皇がブエノスアイレス大司教時代からの「友人」としていたペンテコステ派のジョバンニ・トラエッティーノ牧師と会うためだ、とされても「なぜだ」との印象をぬぐいきれなかった。同牧師は教皇、当時の大司教と共にエキュメニカル運動に努めていたことが明らかにされても、雰囲気は変わらなかった。
 トラエッティーノ牧師は、カゼルタで『和解のペンテコステ教会』を設立している。個人的な会見と思われていたが、28日朝10時過ぎにヘリコプターでカゼルタに到着した教皇を出迎えたのは牧師一家だけでなく、イタリー始め米国や南米からやって来たペンテコステ派の信徒など約350人だった。
 教皇は『和解のペンテコステ教会』を訪問、講話を行った。教会には約200人の信者が集り、教皇の言葉に熱心に耳を傾けた。
 教皇は講話の中で、「聖霊がもたらすのは分裂ではない。聖霊がもたらすもの、それは多様性だ」と述べ、「聖霊は教会の中に豊かで素晴らしい多様性を生み出すだけでなく、一致をも生み出す」「聖霊の働きは多様なカリスマを創り、そのカリスマを調和させること」と説いた。
 伊紙『ラスタンパ』によると、教皇が福音派の人間と会うとは、と驚きを隠さない人もいたが、教皇自身は「兄弟と会いに来たのだ」と当然の表情だった。
 講話で教皇は「『私は教会、君たちはセクト』と言いたい誘惑もある。しかしイエスは一致の為に祈った。聖霊は多様性を教会にもたらしたが、その聖霊が一致ももたらした。教会はその多様性の中の一つだ。聖霊によって導かれた多様性だ」と言う。
 そして、エキュメニズム(教会一致)とは、聖霊によってこの多様性がより調和し一致するよう努力しながら、神の現存のもとに歩んでいくこと、と教皇は語った。
 「わたしたちは兄弟たちと共にこの一致の歩みの中にある。教皇がプロテスタントの教会に行ったと驚く人もいるかもしない。しかし教皇は兄弟たちに会いに来たのだ。実はブエノスアイレスにいた時、彼らが最初にわたしに会いに来てくれた。こうして始まった友情が、今日ここにあるのだ」と言う。
 教皇は講話で、1920年代、30年代にイタリアのファシストがペンテコステ派に対して行った迫害問題に触れた。加害者の中にはカトリック者もいた。それについて教皇は「わたしはカトリック者の羊飼い。悪魔の誘惑を理解せず、それに惑わされたカトリックの兄弟姉妹を赦してほしい」と語った。
 教皇は、当時ペンテコステ派の礼拝が禁止され、牧師や信徒多数が逮捕されたことにも触れた。
 『ラスタンパ』紙によると、迫害は1935年4月9日に始まった。ペンテコステ派は「人種の物心双方での尊厳に有害で社会的秩序に反する信仰を明確に断固として表明した」ことを理由にその礼拝を禁止する、とファシストが通達を発表、それによってペンテコステ派は逮捕、投獄された。
 トラエッティーノ牧師は、バチカン放送に、赦しと和解が教皇の言葉の核心にあり、教皇が過去にペンテコステ派を迫害したカトリック者の言葉と行動に赦しを求め、大喝采を受けたと語った。
 教皇を「わたしの愛する兄弟」と呼ぶトラエッティーノ牧師、自分たち「福音派の共同体」は、つい最近まで「想像も出来なかった」訪問を心から歓迎していると語った。多くの福音派が教皇のために「日々祈っている」と言い、教皇選出は聖霊の働きだ、と語った。
 集いの後、教皇はトラエッティーノ牧師や信者たちと昼食を共にし、同日夕、バチカンに戻った。
 バチカン放送によると、カゼルトでの教皇講話について、福音派の世界組織『世界福音同盟』(WEA)のジェフ・タニクリフ総裁兼総主事は「教皇フランシスコの行動が、世界に、特にカトリックと福音派の間に緊張関係が存在する諸国に対する、強力なメッセージとなる」と語った。「わたしたちは皆、自分たちの失敗を認めて、互いにゆるしを請う必要がある。教皇フランシスコはそのよい手本を示したと思う」と言う。


◎「東西教会、貧困撲滅で協力」とバルトロメオス1世

 【CJC=東京】東方正教会の霊的最高指導者コンスタンチノープルのエキュメニカル総主教バルトロメオス1世(74)が、毎日新聞の書面インタビューに応じた。同紙がローマ発として報じた所では、総主教は、キリスト教の正統性を巡って中世にたもとを分かったカトリック教会との統一を長期的に目指しつつ、貧困撲滅や格差是正、環境保護のため、カトリック教会の教皇フランシスコ(77)と協力していく意向を表明した。
 バルトロメオス1世は、三位一体論の解釈や、教皇優位性に関する意見の隔たりを縮めるため、カトリック教会との対話を強化する考えを強調した。ただ統一には「時間と労力がかかる」と認めた。
 一方で、カトリックとの統一前でも「世界の死活的な要請に応えるために教皇フランシスコと一緒にできることは多い」と指摘。取り組むべき課題として(1)人々の苦しみと飢餓(2)貧富の格差拡大(3)気候変動(地球温暖化)を挙げた。特に気候変動を「地球の天然資源に対する私たちの根本的な態度に見直しを迫るもの」と位置づけた。


◎ガザで国連運営の学校にも砲火

 【CJC=東京】パレスチナ自治区ガザ北部ジャバリヤで7月30日、難民キャンプ内の住民退避施設ともなっている国連運営のアブ・フセイン学校をイスラエル軍が同日朝、砲撃し少なくとも20人が死亡した。
 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は31日、北部ベイトラヒヤにある女子学校近くでも砲弾の着弾があったと報告した。死者は出ていないが、8人が負傷した。
 30日に砲撃を受けた学校には住民ら約3000人が身を寄せていたという。国連は死者数は判明していないと述べたが、UNRWA報道官は、寝入っていた子どもが死亡したとしている。
 国際人権擁護団体『アムネスティ・インターナショナル』は、UNRWAが避難施設の場所などについてイスラエル軍に17回にわたって伝えており、ジャバリヤでの学校攻撃は戦争犯罪に等しいと主張している。
 米CNN放送によると、イスラエル軍の報道担当者は敵戦闘員が同学校からイスラエル軍に発砲したと反論。兵士が銃撃の発生場所に応戦したとし、国連関連施設を使ったハマス側の罪としている。
 ガザ内で国連運営の学校が攻撃を受けたのは今月8日の軍事衝突の発生後、6件目。
 米国のジョシュ・アーネスト大統領府報道官は31日、国連が運営するガザ北部の学校が砲撃を受けたことなどについて、「戦闘から避難した罪のない市民がいる国連施設を砲撃することは認められず、擁護できない」とイスラエルを非難した。
 米政府は、これまで同盟国・イスラエルを名指しで非難することは控えてきた。


◎バチカン銀行が資金洗浄防止へ体質改善

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が、資金洗浄(マネーロンダリング)疑惑のあった『宗教事業協会』(バチカン銀行)や、権限が集中していた財産管理局のスリム化を柱とする組織改革を進めている。「貧者の教会」を訴える教皇フランシスコの意図に沿ったもので、金融・財務部門の改革は、バチカン自体の機構と体質を改善に進むのは必至。
 バチカン銀行は、口座の洗い直しと一部口座の閉鎖により、昨年の収益が290万ユーロ(約4億円)にとどまった。前年の8660万ユーロ(約120億円)からは大幅減。
 第二次世界大戦中の1942年、当時の教皇ピオ12世によって設立されたバチカン銀行は、本来世界各地のカトリック教会の活動のため、修道会や聖職者の資産を守ることが目的だった。その一方でマフィアによる資金洗浄や脱税などの疑惑がつきまとってきた。
 組織改革はバチカン銀行を「教会を対象とする貯蓄、融資」という原点に回帰させるもの。これまで行ってきた投資活動は別組織の『バチカン資産管理』に移行する。財産管理局も不動産運用・管理部門を切り離す。
 バチカンのマネー・スキャンダルでは、財産管理局の元高官がバチカン銀行を使って資金洗浄していた疑いで2013年6月、イタリア当局に逮捕されている。


◎教皇が来年1月にスリランカとフィリピン訪問

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、2015年1月、スリランカとフィリピンを司牧訪問する。バチカン(ローマ教皇庁)広報事務所によるとしてバチカン放送が報じた。
 訪問は両国の政府とカトリック教会の招待に応えるもの。教皇はスリランカを1月12日から15日まで、続いてフィリピンを15日から19日まで訪れる予定。


《短信》

〇教皇の祝福式時はソウル中心部に防護壁設置
 韓国警察当局は、8月15日に教皇フランシスコの祝福ミサ会場内の警護を強化するため、約1・2キロの防護壁を設置すると発表した。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月3日・休刊)=https://www.cwjpn.com

 =キリスト新聞(8月2日)=https://www.kirishin.com
★いのフェス関西2014=シスター×牧師×研究者=教会女子のガールズトーク
★聖書100万冊をキューバの人々に=現状を視察して(渡部信)
★ヘイトスピーチに10団体が抗議=学生逮捕に「深い悲しみと憤り」
★モスルからキリスト者集団脱出=教皇「暴力には平和で打ち勝つべき」
★クロアチア議会が同性パートナーシップ法可決

 =クリスチャン新聞(8月3日)=https://jpnews.org
★鉱毒との闘い今も=足尾鉱毒事件から福島原発事故を考える=田中正造生誕地・佐野市で
★聖書に親しむ運動に=第1回聖書クイズ王決定戦
★第6回日本伝道会議=第2回神戸パートナー会議=宣教協力のインフラ形成へ
★情報公開求め濫用に歯止めを=特定秘密保護法に教会はどう向き合うか
★「全員帰国まで解決はない」=横田早紀江さん=北朝鮮による拉致被害者の再調査開始


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