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世界キリスト教情報 第1230信(2014.08.18)

  • 教皇が韓国司牧訪問=特報

 教皇がソウル到着、朴大統領が教皇を出迎え
 空港で朴大統領に教皇「朝鮮半島の平和願う」
 教皇が演説で平和への努力呼び掛け
 朴大統領「教皇の来韓を南北統一の契機に」
 教皇、大田で「聖母の被昇天」のミサ
 アジアの若者たちと教皇交流、朝鮮半島統一を共に祈る
 パウロ・ユン・ジチュンと123人を列福
 教皇が障害者や修道者、信者らと出会い
 「対話のためアイデンティティーの自覚を」とアジアの司教に教皇
 教皇「若者たちよ、起き上がれ」とアジア・ユース・デー閉会ミサ
 教皇、韓国司牧訪問終えバチカンへ

  • 教皇がイラクのキリスト者の状況を憂慮
  • 教皇、フィローニ枢機卿をイラクに派遣
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

教皇が韓国司牧訪問=特報


◎教皇がソウル到着、朴大統領が教皇を出迎え

 【CJC=東京】韓国の聯合ニュースによると、教皇フランシスコが8月14日午前10時半(現地時間)、京畿道城南のソウル空港(軍用空港)に到着した。教皇の来韓は1984年と89年のヨハネ・パウロ2世以来で3回目。
 空港では朴槿恵大統領が教皇を出迎えた。続いて行われた歓迎行事には朴大統領や尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官ら政府高官、廉洙政(ヨム・スジョン)枢機卿(ソウル大司教区長)らカトリック(天主教)関係者が出席した。

◎空港で朴大統領に教皇「朝鮮半島の平和願う」

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月14日午前、京畿道城南のソウル空港(軍用空港)に到着し、「韓国に来れてうれしい。アルゼンチンのブエノスアイレスでも韓国人と良い関係を築いていた」と、空港で出迎えた朴槿恵大統領に語った。韓国の聯合ニュースが報じた。
 朴大統領は「来韓を機に分断と対立の朝鮮半島に平和と和解の時代が切り開かれることを願う」などとあいさつ。教皇も「心の中で思ってきた」と応えた。


◎教皇が演説で平和への努力呼び掛け

 【CJC=東京】韓国を訪れた教皇フランシスコが8月14日、青瓦台(大統領府)で朴槿恵大統領や公職者らを前に演説し、平和への努力を呼びかけた。聯合ニュースなどが報じた。
 教皇は「平和は単純に戦争がないということではなく、正義の結果だ。正義は許しと寛容、協力を通じて不義を克服することを求める」と説き、「われわれ皆が平和を築くために献身し、平和のために祈り、平和を実現させるという決意を固めることを願う」と述べた。
 また、世界化が支配する現実において、経済的な概念でなく人を中心に考える必要があると強調した。韓国にも政治的な分裂や経済的な不平等、責任ある自然環境管理などの重要な社会問題があると指摘した上で、教皇は「社会を構成する一人一人の声を聞き、開かれた心で意思疎通と対話、協力を増進させることが大変重要」と促した。
 教皇は「韓国の民主主義が引き続き強化され、今、切実に必要とされる『連帯の世界化』でも先頭に立つことを願う」と述べた。最後に、今回の歓迎に感謝の言葉を伝えながら、韓国人の幸福を祈った。


◎朴大統領「教皇の来韓を南北統一の契機に」

 【CJC=東京】韓国の聯合ニュースは、朴槿恵大統領が8月14日、同日初めて韓国を訪問した教皇フランシスコとの会談後に行った演説について報道した。「全世界に12億いるカトリック信者の最高指導者である教皇の訪問は韓国のカトリック(天主教)と国民にとって大きな祝福だ」とした上で、「私と韓国の国民は今回の教皇の訪韓が長く続く分断の傷を治癒し、朝鮮半島に希望の統一時代を開く大切な契機になると信じる」と述べたと言う。
 朴大統領はまた「教皇がアジア地域のなかで初めて韓国を訪問したのは、韓国天主教会に対する教皇の格別の愛情と共に、分断の痛みを受けている朝鮮半島に平和と和解の精神を植え付けようとの気持ちが込められていると考える」と謝意を示した。 
 さらに南北分断と朝鮮戦争について言及し、「民族に長い歳月の間、大きい傷を与えた」と指摘。同族間の争いにより、多くの人命が犠牲になったことや、休戦ラインの向こう側にいる家族に会えず、懐かしさと苦痛の中で一生を送る離散家族が韓国だけで7万人いることなどを説明した。
 さらに、韓国天主教が北朝鮮地域で教会財産を没収され、多くの聖職者や修道者が拉致されたり命を失ったりしたとした上で、「もうこのような痛みの歴史を越え、真の南北和解と統一時代を開く時だ」との考えを示した。


◎教皇、大田で「聖母の被昇天」のミサ

 【CJC=東京】韓国訪問中の教皇フランシスコは8月15日午前、大田(テジョン)のワールドカップ競技場で韓国の信者たちとの最初の出会いとなるミサを司式した。競技場には5万人の信者が詰めかけた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、カトリック教会の典礼暦で「聖母の被昇天」の大祝日のこの日、教皇は説教で、韓国のキリスト者たちが社会の様々な場において精神的刷新のための寛大な力となっていくことができるよう、聖母の保護を祈った。
 ミサの後半、正午のアンジェラスの祈りの際、今年4月に韓国で起きたフェリー『セウォル号』転覆事故の被害者を心に留めた教皇は犠牲者の冥福と共に、遺族と支援者に神の慰めと支えを祈った。
 ミサには『セウォル号』事故の遺族や生存者らが出席していたが、教皇は特別車パパモービルで会場を巡回した際、これらの人々に挨拶した。


◎アジアの若者たちと教皇交流、朝鮮半島統一を共に祈る

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月15日、大田(テジョン)の大神学校で若者たちと昼食を共にした。昼食会に参加したのは、アジア各国18人の青少年たち。教皇と食卓を囲み、若者たちの目から見たそれぞれの国の教会の印象などを語ったという。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、昼食後、教皇は忠清南道唐津郡のソルメ聖地に向かった。
 ソルメは、韓国の最初の司祭で殉教者、聖アンドレア・キム・デゴン(金大建1821〜46)の出生地として、巡礼地になっている。
 教皇は聖アンドレア金司祭の生家で、花を捧げ、祈った。
 次いで行われた教皇と若者たちの集いでは、『第6回アジア・ユース・デー』参加者数千人が教皇の言葉に真剣に耳を傾けた。アジアの青年信者を代表して、カンボジア、香港、韓国の若い男女が教皇に信仰生活を語り、いくつかの質問を投げかけた。
 カンボジアの女性が、ポル・ポト政権下の殉教者の存在に触れると、教皇はこれらの殉教者について調査するよう関係者に伝えると約束した。
 韓国の女性は、南北に分断した朝鮮半島の苦しみについて述べた。
 教皇は、朝鮮半島は一つ、一つだが分裂した家族のように分かれている、と話し、何よりもまず北の兄弟たちのために祈り、主に統一を助けてくださいと祈ることだと励ました。


◎パウロ・ユン・ジチュンと123人を列福

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月16日、司牧訪問中の韓国ソウルの光化門で、殉教者パウロ・ユン・ジチュン(尹持忠)と123人の列福ミサを行った。約80万人の信者らが会場前の大通りや周辺を埋め尽くした。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、この日、福者の列に加えられたユン・ジチュンと123人は、18、19世紀の殉教者で、韓国の初期キリスト教共同体の信仰を証しする人々。
 ミサの説教で教皇は、これらの殉教者は、キリストをすべての上に置き、信仰において妥協しないことと、信仰生活においては助けを必要とする人々への愛の業が大切であることをわたしたちに思い出させると話した。
 韓国におけるキリスト教が、宣教師たちによってではなく、人々の知的好奇心と宗教的真理の追求によって始まり、聖書との出会いが初期のキリスト教徒たちをイエスに向けて開き、それが洗礼へ、さらには完全な秘跡的・教会的信仰生活への願い、宣教活動へと発展していった、その独自の歴史を教皇は回想。特に韓国の教会史の中で信徒が果たした役割の重要さを想起した。

◎教皇が障害者や修道者、信者らと出会い

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月16日午後、首都ソウル南方の忠清北道陰城郡のコットンネを訪問した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、「花の村」を意味するコットンネは、1976年に創始されたカトリック共同体で、ホームレスの人々や障害者らへの支援をはじめ、幅広い社会福祉活動を行なっている。共同体は大学や病院も併設する複合施設となっている。
 教皇は、最初に障害者リハビリセンター「希望の家」を訪問、大人から子どもまでの患者たちや、医療関係者とお会いになった。
 続いて教皇は韓国の修道会関係者との集いが行われた「愛の学校」のホールに移動。その途中、白い小さな十字架がいくつも建てられ、花が添えられた一角を通った。堕胎された子どもたちを象徴するこの庭園で、教皇は立ち止まり祈りを捧げた。
 修道会関係者およそ5千人との集会で教皇は、修道者らの証しが喜びに満ちたものであってこそ、人々をキリストに引き寄せることができると強調。その喜びは祈りと御言葉、秘跡、共同生活によって培われるものであり、それらが欠ける時、修道生活の最初に知ったその喜びの賜物をかき消す弱さや困難が生じてしまうと、助言した。
 また、教皇は「奉献生活者にとって清貧は『壁』であり、『母』である」とも述べ、「清貧は、壁として奉献生活を守り、母として成長を助け正しい道を歩ませる」と説かれた。そして、奉献生活者が清貧の誓いにも関わらず、裕福な者のように生活することは、信徒を傷つけ、教会に害を与えると警告した。
 コットンネ訪問の最後に、教皇は霊性センターで、使徒職に積極的に携わる信徒らに励ましを与えた。


◎「対話のためアイデンティティーの自覚を」とアジアの司教に教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月17日、ソウルから約100キロ離れた忠清南道瑞山市の海美(ヘミ)聖地を訪れた。同地は18世紀から19世紀にはカトリック信者ら数千人の殉教の地になった。
 海美でアジア各国の司教らと会談した教皇は、この地で信仰のために命を捧げた聖なる殉教者たち、名も知られぬ多くの人々、子どもたちや、大人、お年寄りたちを想起した。
 アジアの教会の宣教の本質的な要素は「対話」であると述べた教皇は、真の対話に取り組むには自らのキリスト者としてのアイデンティティーの深い自覚と、開かれた態度、相手に対する受け入れ、そして洞察力が必要と指摘、今日のキリスト者のアイデンティティーを脅かすものとして、真理の追求を妨げる相対主義、真に重要なことから目を反らせるはかない表層的な文化、積極的に外に向かわず安易な答えや決まりごとに逃げ込む態度を挙げた。
 教皇は「アジア大陸でバチカン(ローマ教皇庁)と完全な関係を持っていない国々は対話をためらわないでほしい。政治対話だけでなく、兄弟としての対話もある」とも述べた。特に中国や北朝鮮のバチカンへの警戒感を意識してか、「キリスト者は征服者としてやって来るのではない」と強調した。
 教皇は昨年3月の就任以来、中国との関係改善を模索してきたが、具体的に対話を提案したのは初めて。


◎教皇「若者たちよ、起き上がれ」とアジア・ユース・デー閉会ミサ

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月17日午後、忠清南道瑞山市の海美(ヘミ)で、第6回アジア・ユース・デーの閉会ミサを行った。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、「起きよ、光を放て!」(イザヤ60・1)をテーマに、開催されたアジアのカトリック青少年の集いは、この日が最終日。閉会式のため約4万人の若者が集った。
 ミサの説教で、「殉教者の栄光が皆さんの上に輝くように!」と参加者らに語りかけた教皇は、アジアの若い信者たちに、キリスト信仰を証しした人々の貴重で偉大な遺産を引き継ぐ者としての自覚を促した。
 教皇は若者たちに「皆さんは教会の未来であるだけでなく、教会の現在です」と話し、教会共同体と一致・協力し、より聖なる、宣教的で、謙遜な教会の構築に積極的に参与するよう希望した。
 キリストを受け取り、キリストを人々にもたらし、キリストに忠実に奉仕し、アジアのいたるところで、いかなる時にもキリストを賛美することができるよう、聖母の助けを祈られた教皇は、「アジアの若者たちよ、起き上がりなさい!」と力強い励ましを与えた。
 次回のアジア・ユース・デーは、2017年、インドネシアで開催される。


◎教皇、韓国司牧訪問終えバチカンへ

 【CJC=東京】教皇フランシスコは韓国司牧訪問最終日の8月18日、ソウルの明洞聖堂で「朝鮮半島の平和と和解のためのミサ」を行った。
 共同通信によると、教皇はミサの冒頭で2〜3分間、最前列に座った旧日本軍の従軍慰安婦だった韓国人女性7人全員の手を握り、うち1人の話に耳を傾けた。元慰安婦を支援するバッジが手渡され、教会関係者が教皇の胸元に着けた。
 朴槿恵大統領もミサに出席した。聯合ニュースによると、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官や柳吉在(リュ・ギルジェ)統一部長官、金姫廷(キム・ヒジョン)女性家族部長官らが同行した。
 教皇はミサ後、ソウル空港(軍用空港)からバチカンへ帰国の途についた。鄭ホン原(チョン・ホンウォン)首相が見送った。
 韓国国務総理室によると、教皇は鄭首相に対し、「大統領や政府関係者、国民が誠意を尽くして歓待してくれたことに感謝する」と伝えた。


◎教皇がイラクのキリスト者の状況を憂慮

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)広報事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は8月8日、教皇ブランシスコの名の下に声明を発表した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
 声明の中で、教皇はイラク北部の悲劇的な状況を注視し、無防備な一般市民、特に激しさを増す暴力から逃れ、住み慣れた土地を後にする現地のキリスト教共同体について案じていることを明らかにした。
 今回の声明の中で、教皇は厳しい試練に直面しているすべての人々に改めて精神的一致を表すと同時に、イラクの司教たちと共に、同国の苦しむキリスト者のために全教会を挙げて平和の賜物を聖霊に祈るようにと招いている。


◎教皇、フィローニ枢機卿をイラクに派遣

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月10日、日曜正午の祈りを信者と共に唱えた。この集いで教皇は、イラクの現状に大きな苦しみを表明、イラク国民への自身の精神的一致のしるしとして、福音宣教省長官フェルディナンド・フィローニ枢機卿を現地に派遣することを明らかにした。フィローニ枢機卿が8月12日、イラクへ出発した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はさらに、停戦と戦闘が繰り返されるパレスチナ・ガザの状況に言及。子どもたちをはじめ無実の市民の犠牲を憂慮した。


≪短信≫

〇遠藤周作の『沈黙』をハリウッドが映画化
 『最後の誘惑』のマーティン・スコセッシ監督がパラマウントと契約。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月17日)=https://www.cwjpn.com
★「過ち」繰り返さぬために=「諦めている暇」はない=広島
★教皇フランシスコ=国際社会に訴える=イラクのキリスト者救援
★比叡山宗教サミット=教派超え世界平和祈る
★平和実現の道を=主により頼んで=長崎
★教皇訪日を再要請=大司教2人 バチカンへ

 =キリスト新聞(8月16日)=https://www.kirishin.com
★日本ルーテル神学校=臨床牧会教育を他教派に開放=霊性についての研究・講座も
★WCC議長が官房長官と面会=声明携えメッセージ伝える
★為政者たちに断固として否を=日基教団と在日大韓基督教会が平和メッセージ
★「聖書クイズ王決定戦」開催=優勝は神学校OB・OGチーム
★教皇がペンテコステ派に謝罪=イタリア・カゼルタへ2度訪問

 =クリスチャン新聞(8月17日)=https://jpnews.org
★正義は何かよく見極めよ=JICA現地専門委員が見たイスラエル・パレスチナ問題
★英連邦戦没捕虜追悼礼拝が20回=「平和の継承」次世代へ
★時代と文脈に即し再編・協力を=第7回神学校図書館フォーラム=中村敏氏講演
★地域に溶け込み、備える=明治学院大学・地域防災セミナー
★アンと聖書の世界を味わう=紅茶とケーキのアフタヌーン


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