世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1245信(2014.12.01)

  • 教皇がトルコを司牧訪問
  • イスラム指導者らに過激派非難を教皇要請
  • 被爆から「学んでいない」と教皇が憂慮
  • 教皇が欧州議会で演説、移民受け入れ促す
  • 『イスラム国』との対話になお期待、と教皇
  • 「事実を隠してはいけない」と教皇
  • 潘国連事務総長にハーバード大学「人道主義者賞」
  • 《メディア展望》


◎教皇がトルコを司牧訪問

 【CJC=東京】教皇フランシスコは11月28日から3日間の日程でトルコを司牧訪問した。第6回目の海外訪問。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、正教会コスタンティノポリスのエキュメニカル総主教バルトロメオス1世、トルコ・カトリック司教協議会の招きに応える訪問。
 バチカン放送などによると、教皇は28日午前、ローマを特別機で出発、同日午後、トルコの首都アンカラのエセンボーア空港に到着。まずアンカラ市内のアタテュルク廟に向かい、次いで大統領公邸での歓迎式に臨み、エルドアン大統領を表敬訪問、各界要人との出会い、アフメト・ダウトオール首相および宗教庁代表らと会談した。
 新築された大統領公邸は「白い宮殿」と呼ばれ、1000室ある。建設費13億7千万トルコ・リラ(約700億円)で、敷地は20万平方メートル。首相から大統領に転じたエルドアン氏の「独裁色の反映」とも指摘されている。
 29日、教皇は首都アンカラから、イスタンブールへ移動。イスタンブールのアタテュルク国際空港で、教皇はバルトロメオス1世の出迎えを受けた。教皇と総主教はこれまで数回会見している。
 イスタンブールで教皇はイスラム礼拝堂スルタンアフメト・モスク(通称ブルーモスク)をグランド・ムフティ(イスラム教指導者)と共に訪問した。イスラム教のモスクを訪問した教皇としては、ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世に次いで3人目。
 モスクの入り口で教皇はしきたりに従って靴を脱ぎ、イスラム教の聖地メッカの方角を向き、頭を垂れて約2分間、黙祷した。バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所は「神への崇敬の黙想」と説明している。。
 前教皇ベネディクト16世も2006年にトルコを訪問した際、同モスクで黙祷した。
 続いて、教皇はブルーモスクの向かいにあるアヤソフィア博物館を訪れた。アヤソフィア博物館はキリスト教の大聖堂だったが、オスマン帝国時代にモスクに転換。トルコ共和国成立後にムスタファ・ケマル・アタテュルク初代大統領の命により、博物館とされた。
 ビザンチン様式を代表する荘厳な建築や、キリスト教時代・イスラム教時代、それぞれのモザイク装飾などを教皇は見学した。
 教皇はアヤソフィアの訪問者として記帳、ギリシャ語で「神の聖なる叡智よ」、そしてラテン語で詩編84・2の「主よ、あなたのいますところは、どれほど愛されていることでしょう」という言葉を記した。
 午後、ラテン典礼カトリック司教座であるサント・スピリト(聖霊)大聖堂でトルコの教会関係者と共にミサを行った。
 教皇司式のこのミサには、トルコのカトリック司祭や修道者、各小教区の信者代表らが参加し、ラテン典礼とカルデア典礼を交えて行われた。使用言語も、ラテン語のほか、アルメニア語、トルコ語、アラマイ語、またヨーロッパの各言語などに渡るものとなった。
 正教会のバルトロメオス1世をはじめ、アルメニア使徒教会、シリア正教会、プロテスタント教会の代表も参列した。
 ミサで教皇は、聖霊が教会にもたらす多くのカリスマとそれを一致させる力をテーマに、説教を行った。
 「聖霊は教会の魂です」と述べた教皇は、聖霊は教会に命を吹き込み、神の民を豊かにするための様々なカリスマを与えるだけでなく、特にキリスト者たちに一致をもたらし、それが唯一のキリストの体を構成するように働きかけると強調。教会のミッションは聖霊にかかっており、聖霊こそがすべてを実現することを忘れてはならないと述べた。
 続いて、ファナリ地区にある正教会の総主教座・聖ゲオルギオス大聖堂でエキュメニカルな祈りの集いを行い、総主教館でバルトロメオス1世と会談した。
 30日午前、教皇はイスタンブールのバチカン代表事務所でトルコのユダヤ教首席ラビ(導師)イサク・ハレヴァ師と会見。この後、バルトロメオス1世と総主教座聖ゲオルギオス大聖堂で典礼に参加。エキュメニカルな祝福と共同声明への署名を行った。
 声明で東西教会のトップは、「キリスト者のいない中東を受け入れるわけにはいかない」と宣言。イスラム過激派組織「イスラム国」によるキリスト教徒の迫害に懸念を表明、国際社会に「適切な対応」を求めた。
 バルトロメオス1世と昼食した教皇は、イスタンブール市内の病院に立ち寄り、入院中のアルメニア使徒教会のメスロブ・ムタフィアン・コスタンティノポリ総主教を見舞った。
 夕方、教皇はイスタンブールのアタテュルク国際空港でバルトロメオ1世の見送りを受け出発、ローマへ戻った。


◎イスラム指導者らに過激派非難を教皇要請

 【CJC=東京】教皇フランシスコは11月30日、トルコ訪問からローマに戻る機内での記者会見で世界のイスラム教指導者らに向けて、イスラムの名の下に行われているテロリズムを「明確に」否定するよう呼び掛けた。AFP通信が報じた。
 教皇の発言は、『イスラム国』などのジハード(聖戦)を掲げたイスラム過激派組織への対応についての質問に返答したもの。
 AFP通信によると、教皇は28日に行われたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に伝えたとされる見解を繰り返す形で、政治、宗教、学問の分野における世界のイスラム教指導者たちが、(イスラム教を損なう暴力行為を)はっきりと否定したならば、いかに素晴らしいことかと、大統領に話した、と述べた。
 さらに教皇は、こうしたイスラム教指導者たち自身の口から発せられる過激派への批判の声は「多くのイスラム教徒を助けることになるだろう。わたしたちは皆、世界規模での(イスラム過激派に対する)非難を必要としている、と付け加えた。


◎被爆から「学んでいない」と教皇が憂慮

 【CJC=東京】教皇フランシスコは11月30日、トルコ訪問からローマに戻る機内での記者会見で、世界各地で戦争が起きている現状について憂慮、広島や長崎の被爆の歴史などから「人類は何も学んでいない」と嘆いた。同行した共同通信の植田粧子記者が報じた。
 教皇は、人類が開発した核エネルギーは多くの利益をもたらすが、「人間性を破壊するためにも使われた」と非難。核兵器が再び使われれば「(原爆投下で焼け野原となった)長崎や広島が経験したように、私たちは全て最初からやり直さなければならない状況に陥る」と懸念を示した。


◎教皇が欧州議会で演説、移民受け入れ促す

 【CJC=東京】教皇フランシスコは11月25日、仏東部ストラスブールを訪問、欧州連合(EU)の欧州議会で演説し、欧州が「内向き」にならず、高齢者や貧困者、移民に対する連帯の精神を実践するよう呼びかけた。教皇の欧州議会訪問は1988年10月の故ヨハネ・パウロ2世以来のこと。
 教皇は演説で「世界は『欧州中心』でなくなった。欧州は疲弊し、世界の主人公ではなくなっている」と述べた。さらに欧州経済危機を受けて高齢者や若者、貧困者の孤独が深まっていると指摘した。また移民船の遭難が続いている地中海について、そこが巨大な墓地になるのは容認できない、と語り、移民の受け入れを促した。


◎『イスラム国』との対話になお期待、と教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコはストラスブール訪問からの帰途、特別機内で記者団と会見、中東地域に平和をもたらすため、過激派組織『イスラム国』との対話に「決して扉を閉ざさない」と語った。
テロは世界が真剣に取り組まねばならない脅威と語った。
 教皇はさらに、「テロ」という言葉は過激派の行動を指して使うだけでなく、一方的に軍事力を行使する数カ国の政府の行動にもあてはまると指摘した。


◎「事実を隠してはいけない」と教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコはストラスブール訪問からの帰途、特別機内でスペインの記者から同国南西部グラナダの青年が司祭に性虐待を受けたことで教皇に手紙を書いた件について質問を受けた。
 米カトリック通信CNSによると、教皇はその手紙を受け取ったことを認めた。「私はそれを読み、その青年に電話して、こう言いました。『明日、司教の所に行きなさい』。そして司教に手紙を書いて、すぐに手を打ち、調査を始めるように依頼しました」と教皇は述べた。
 この手紙により、警察が大規模な捜索を行い、司祭3人と信徒1人を逮捕した。さらに、グラナダ教区の司祭数人が聖職執行停止の処分を受けた。
 教皇は、手紙を読んで「非常な痛みを覚えました。とてつもない痛みです。けれども、事実は事実ですから、私たちはそれを隠してはいけません」と語った。


◎潘国連事務総長にハーバード大学「人道主義者賞」

 【CJC=東京】潘基文国連事務総長が、母校米ハーバード大学の「2014年今年の人道主義者賞」を受賞する。韓国紙『東亜日報』(日本語電子版)が報じた。この賞は、1974年から2011年までハーバード大学記念教会で牧師を務めた故ピーター・ゴメス師を記念して制定された。
 ハーバード大学のホームページによると、ハーバード財団のアレン・カウンター所長は、「潘総長は人身売買や気候変動、エボラ出血熱などで卓越した指導力を発揮して国連を率い、人道主義的貢献をした」とし、「ハーバード大学の学生が人道主義の象徴として求める役割モデルだ」と授賞理由を明らかにした。
 授賞式は12月2日、ハーバード大学記念教会で。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(11月30日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=「全ての人に食料を」=国際栄養会議で演説
★エルサレムの会堂襲撃を非難=教皇=暴力の連鎖終結促す
★教皇=愛と優しさと信仰で聖性を
★ロゴス点字図書館高橋館長に本間一夫文化賞=「選挙公報」の点訳など尽力
★カトリックを去り福音派や無宗教に=中南米

 =キリスト新聞(11月29日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(11月30日)=https://jpnews.org
★沖縄県知事選 基地辺野古移設対候補が当選=祈りをもって応援していく
★西アフリカでエボラ対策支援=塩素でウイルス殺菌、感染予防
★キリスト教功労者に松居直氏、徳善義和氏
★福音功労賞に村上宣道氏、内貴八郎右衛門氏、飯島延浩氏、田内基氏
★土肥隆一氏 旭日重光章叙勲で祝う会=教会と福祉の発展に寄与


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