世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1252信(2015.01.19)

  • 仏風刺紙に関する議論が世界に拡大
  • ニジェールで風刺画抗議デモ隊が暴徒化
  • 教皇、スリランカとフィリピン訪問終える
  • 教皇が表現の自由についてコメント
  • 原爆は「人類史上、最も恐ろしい惨事」と教皇
  • 『イスラム国』がニネベの城壁破壊と警告
  • キング牧師実子が平和賞メダルと聖書めぐり遺産争い 
  • 《メディア展望》


◎仏風刺紙に関する議論が世界に拡大

 【CJC=東京】フランスの風刺週刊紙『シャルリー・エブド』が表紙にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことに対するイスラム教徒の抗議行動が、アフリカや中東、アジアに広がっていることを米紙『ウォールストリート・ジャーナル』などが伝えている。
 フランスのフランソワ・オランド大統領は1月17日、ニジェールでの暴動や、アフリカ各地のデモでフランス国旗が焼かれたことについて、「許し難い」と述べた。
 『シャルリー・エブド』が14日に発行した特別号は、テロに屈しないことを示すシンボルだとして、表紙には再びムハマンドの風刺画を掲載した。
 これに対し、イスラム教の指導者らは、過激派につけ込まれるとの懸念を示している。サウジアラビアの最高宗教権威である上級聖職者の評議会は16日、表現の自由とは関係ないと非難した。
 ニジェールやマリ、セネガルでは、11日にパリで行われた『シャルリー・エブド』支援のための大行進に自国の指導者が参加したことに抗議の声があがり、ニジェールの野党指導者は、大行進そのものを非難した。
 パキスタンでも抗議活動が始まり、トルコなど中東に拡大した。イスタンブールでは16日、国際テロ組織アルカイダの支持者らが集会を開き、『シャルリー・エブド』を襲撃した後に死亡した容疑者2人を追悼した。カラチでは16日にデモを取材していたAFP通信のカメラマン1人が何者かに撃たれ負傷した。
 パリの日曜紙『ルジュルナル・デュマンシュ』18日付けは、今回の風刺画の掲載についてどう思うか、16日からの2日間、約1000人の市民に尋ねた世論調査の結果を発表した。
 「イスラム教徒の反発にかかわらず、風刺画は掲載すべきだ」と答えた人が57%だったのに対し、「風刺画の掲載は控えるべきだ」と答えた人も42%に上り、賛否が分かれていることが明らかになった。


◎ニジェールで風刺画抗議デモ隊が暴徒化

 【CJC=東京】西アフリカ・ニジェールの首都ニアメーで1月17日、仏風刺週刊紙によるイスラム教預言者ムハンマドの風刺画掲載に抗議するデモ隊が暴徒化し、少なくとも7カ所で教会に放火した。
 AFP=時事通信によると、市内では若者ら約1000人が棒やおのなどを持って暴れた上、警察に投石。警察側は催涙弾で応戦した。


◎教皇、スリランカとフィリピン訪問終える

 【CJC=東京】キリスト教界内外のメディアが精力的に教皇フランシスコのスリランカとフィリピン訪問を報じた。
 教皇は1月12日、ローマのフィウミチーノ国際空港からアリタリア航空特別機で出発、13日午前、第一の訪問国スリランカのコロンボ国際空港に到着、アジア歴訪を開始した。同日夕(日本時間夜)には9日に就任したばかりのマイトリパラ・シリセナ大統領と会談した。26年間にわたる内戦や国民を二分した大統領選を経たスリランカ社会の融和を呼びかけた。
 フランシスコ教皇のアジア訪問は昨年8月の韓国に続き2回目。空港で開かれた歓迎式典では内戦からの復興に触れ、「インフラ整備だけではなく、全ての人の尊厳や人権を尊重することが重要だ」とあいさつ。「回復には真実の追究が必要。古傷をえぐるのではなく、正義や団結を高めるためだ」とも語った。
 教皇は14日、激戦地だった北部マドゥーを訪問し、国民和解を呼びかけた。
 今回のスリランカとフィリピン訪問は、イタリアを除くと教皇フランシスコの海外司牧訪問としては7回目、アジア訪問は昨年8月の韓国に続き2回目となる。
 またスリランカを訪れた教皇は、1970年のパウロ6世、81年と95年のヨハネ・パウロ2世の2人。
 空港で行われた歓迎式の挨拶で、教皇はその自然の美しさから「インド洋の真珠」と呼ばれ、人々の温かさ、様々な文化・宗教の豊かな伝統で知られるスリランカを訪れた喜びを表した。
 教皇は、スリランカ訪問の第一の目的を、同国のカトリック信者を励ますという司牧的な性質のものとし、滞在中の中心行事として、民族・宗教の違いを乗り越えてキリスト教的愛徳を実践した福者ヨセフ・ヴァズの列聖式を行う旨を説明した。
 教皇はこの訪問のもう一つの目的は、長い内戦終結後に平和を模索するスリランカとその国民に対するカトリック教会の愛と関心を表すためと話した。
 教皇はまた、様々な伝統宗教の信者たちは、この難しい和解と再生のプロセスにおいて、本質的な役割を担っていると述べ、すべての人の声が活かされ、互いの違いを受け入れ尊重できる一つの家族のような社会の実現を希望した。
     ◇
 教皇はスリランカ訪問を経て、15日にフィリピン・マニラ空港に到着した。フィリピンはアジア最大のカトリック国、教皇の訪問は20年ぶり。この日も台風接近で強い雨と風に見舞われたが、被災者は「復興の心の支えになる」と熱烈に迎えた。
 ベニグノ・アキノ3世大統領は16日、マラカニアン宮殿で開かれた教皇の一般接見で演説した際、比政府とカトリック司教協議会の関係について言及、マルコス独裁政権を打倒したアキノ政変(エドサ革命、1986年)で枢機卿らが重要な役割を果たしたことを強調した。一方で「アロヨ前政権の悪政を前に、聖職者らは突然沈黙した」とし、さらに現政権発足後は「沈黙から一転、一部の聖職者は批判対象を探し求め、私の頭髪にまで口出しし始めた」と述べ、教皇の面前で一部司教らを批判した。
 17日午前、教皇は2013昨年の台風30号(ハイエン)で最も大きな被害を受けた中部レイテ島のタクロバンを日帰りで訪れ、今年の台風1号(メッカラ)による豪雨の中、大勢の生存者らとともに犠牲者数千人を追悼する野外ミサを空港近くで行った。タクロバンは前夜から雨となったが、空港近くでは約15万人がレインコートを着て出迎えた。風速約36メートルにも達した中で野外ミサを行った教皇は「神は決して皆さんを見捨てません。いつもそばにいます」と語り、被災者に寄り添った。教皇の現地到着から約30分後に始まったミサも時間が短縮された。教皇はその後、がれきが残る島内を車で南下し、高潮被害がひどかったパロ市の教会を訪れた。教皇の訪問は予定よりも4時間早く切り上げられ、教皇はマニラへ戻った。
 教皇は18日、マニラで大規模な野外ミサを主宰した。雨の降りしきる中、歴代教皇が開いたミサとしては過去最多の600万人が集まった。95年に当時の教皇ヨハネ・パウロ2世が同じ場所で行ったミサに集まった500万人という記録を超えた。
 教皇も群衆の数に驚いたようで、付添のマニラ大司教によると、「純真な人々の信仰の深さは私にも測り知れない」と語ったという。
 教皇は19日朝にローマへ向けてマニラ空軍基地からフィリピン航空特別機で出発した。


◎教皇が表現の自由についてコメント

 【CJC=東京】アジア歴訪中の教皇フランシスコが、スリランカからフィリピンへ移動する機内で1月15日、「私だってパンチするだろう」というコメントをし、記者団を驚かせた。
 パリの風刺週刊紙『シャルリー・エブド』襲撃事件を機に、世界中で巻き起こった、「表現の自由はどこまで許されるか」という議論に触れてのこと。教皇はパンチを繰り出すそぶりも見せたという。
 教皇は、パリにおけるイスラム過激派の襲撃事件について、「表現の自由」を擁護しているが、そのような自由にも制限はあると、公の場で指摘したことになる。
 これに応じた形でデービッド・キャメロン英首相は18日に放送された米CBSテレビのインタビューで、フランスの週刊紙の風刺画掲載に関し、「自由社会には信教をめぐって(他者の)感情を害する権利は存在する」と述べた。時事通信が報じた。


◎原爆は「人類史上、最も恐ろしい惨事」と教皇

 【CJC=東京】「1945年8月6日、われわれは人類史上、最も恐ろしい惨事の一つを目撃した」教皇フランシスコは1月12日、バチカン(ローマ教皇庁)で、駐在大使ら外交団と会見し、第二次世界大戦後70年にあたって、広島への原爆投下について「ヒロシマ」と名前は挙げなかったが、「人類史上、最も恐ろしい惨事」と言及し、国際社会に対して平和な世界を構築するよう訴えた。
 教皇は演説の中で「前例のない新しい方法によって、人間の破壊力がどれほどのものかを世界は初めて目の当たりにした」と述べた。
 その上で教皇は、第二次大戦という「とてつもない惨劇の廃墟」から「国連の創設につながる対話と出会いの意志が生まれた」と戦後秩序の構築努力をたたえた。
 ウクライナや中東、アフリカなど各地で紛争が続く中、「各国政府や国際社会は、あらゆる形の戦闘や憎悪、暴力を終わらせ、和解と平和、人間の尊厳を追求するように」とも求めた。
 また、教皇は、最近のパリでの週刊紙襲撃事件を踏まえ、「暴力行為を正当化しようとする原理主義、過激派の宗教解釈」をイスラム教指導者が一丸となって非難するよう訴えた。


◎『イスラム国』がニネベの城壁破壊と警告

 【CJC=東京】イラクの過激集団『イスラム国』がイラク第2の都市モスルを制圧してから半年以上過ぎた今、イラク軍に攻撃されれば、市内にある古代アッシリアの都市ニネベの城壁を破壊する、と警告を発した。
 ニネベは聖書『ヨナ書』3章3節に「ヨナは主の命令どおり、直ちにニネベに行った。ニネベは非常に大きな都で、一回りするのに三日かかった」と記されている。
 モスル市民はほとんどがアラブ人だが、周辺地域はクルド人地域になる。また主要な少数民族にはネストリウス派キリスト教のアッシリア人が、その他トルクメン人も住んでいる。


◎キング牧師実子が平和賞メダルと聖書めぐり遺産争い 

 【CJC=東京】米黒人解放運動の指導者マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の実子3人が遺産争いに明け暮れている、とニューヨークから共同通信などが報じている。同牧師が受賞したノーベル平和賞のメダルと普段持ち歩いていた聖書の相続権問題が法廷に持ち込まれた。
 メダルと聖書を売って金を得たい息子2人と、これに反対する娘の争いで、それぞれが相続権を主張している。牧師の出身地ジョージア州の裁判所で1月13日審理があった。裁判官は2月に予定される本格審理の前に和解の道を探りたいとの意向を示した。
 聖書はオバマ大統領が2013年、2期目の就任演説で使った。AP通信は、競売などにかけた場合、メダルは最大1000万ドル(約11億7千万円)、聖書は100万ドルの値が付く可能性があるとしている。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(1月18日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、バチカン官僚を批判=「霊的な病気」になりやすい
★教皇フランシスコ=新枢機卿20人を任命=地理的多様性進める
★ピタウ大司教逝去=日本で バチカンで 教育に多大な貢献
★司教のための社会問題研修会=福島=原発周辺で開催=事故被災者、支援者に学ぶ
★パリ襲撃、教皇も祈り=遺族と仏国民に弔意表明

 =キリスト新聞(年始休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(年始休刊)=https://jpnews.org


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