世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1264信(2015.04.13)

  • アルメニア殺害は「ジェノサイド」と教皇
  • トルコが教皇発言に反発、駐バチカン大使召還
  • 『イスラム国』か、シリア北部で教会を爆破
  • 教皇が「いつくしみの特別聖年」勅書公布
  • 米州首脳会議開幕式典へ教皇祝辞
  • 同性愛者の仏大使任命にバチカンは無言続ける
  • 《メディア展望》


◎アルメニア殺害は「ジェノサイド」と教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコは4月12日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で、オスマン・トルコ帝国末期の1915年ごろに150万ものアルメニア人が殺害された事件から約100年になるのに合わせミサを行い、事件を「ジェノサイド(集団虐殺)」だったと表現した。
 AFP通信などによると、教皇は過去1世紀の間に人類は大きな悲劇を三つ経験したと指摘し、元教皇ヨハネ・パウロ2世らが署名した文書を引用する形で、キリスト者が多数派だったアルメニア人の殺害を、ホロコースト(ナチス・ドイツのユダヤ人大虐殺)、ソ連最高指導者スターリンの大粛清と並ぶ「前世紀の前代未聞の3大惨劇」と位置づけ、「20世紀最初の虐殺と広く認識されている」と述べた。虐殺と認めないトルコを批判する形になった。
 欧州諸国をはじめ多数の国が「ジェノサイド」を公式に認定しているが、トルコ側は殺害を認めるものの、「部族間衝突の犠牲者」などとして「虐殺」を否定している。
 教皇は昨年11月、国民の大多数がイスラム教徒のトルコを訪問し、異宗教間の融和を訴え、過激派組織『イスラム国』によるテロや暴力の根絶に向けてイスラム圏との関係強化を図ったばかり。
 教皇は自身の言葉で事件を「ジェノサイド」と表現してはいないが、サンピエトロ大聖堂という場で、アルメニアに関連して「ジェノサイド」という文言を使ったのは初めて。
 アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としている。
 教皇は過激派組織『イスラム国』などによるキリスト者迫害を強く非難しており、アルメニアの多数のキリスト者に対して配慮を示したと見られる。「弱者に寄り添うとの考えから、事件から100年の節目に過去の過ちを認めるよう促す意向があるのでは」と推測する向きもある。
 トルコのメブリュト・チャブシオール外相はツイッターで「教皇の発言は歴史の現実から懸け離れており、受け入れられない」と非難。外務省は首都アンカラ駐在のバチカン大使館に説明を要求し、不快感をあらわにした。


◎トルコが教皇発言に反発、駐バチカン大使召還

 【CJC=東京】教皇フランシスコが4月12日、オスマン・トルコ帝国末期のアルメニア人大量殺害を「20世紀最初のジェノサイド(民族大量虐殺)」と発言したことを受け、トルコ政府は、自国の駐バチカン大使を召還した。
 トルコ外務省は12日、声明で「教皇は第一次大戦で死亡したトルコ人、イスラム教徒の悲劇は無視して、キリスト者、とりわけアルメニア人の苦しみだけを強調した」と抗議した。
 今回、トルコが猛反発したのは、迫害100年に際してバチカン(ローマ教皇庁)で開いたミサという公の場での発言だったためと見られる。
 バチカンにとってトルコはイスラム諸国との対話窓口であり、IS対策での重要国。「ジェノサイド」発言は教皇の推進するイスラム教との宗教間対話やバチカンとイスラム圏との関係にも影響を及ぼし兼ねない。
 AFP通信は、バチカン専門家のマルコ・トサッティ氏が「あの事件がジェノサイドだったとはっきり繰り返したのは非常に勇気のある行為だ」と語り、「ヨハネ・パウロ2世を引き合いに出すことで教会の立場を強調し、本件に関する教会の認識を明示した」と見ている。


◎『イスラム国』か、シリア北部で教会を爆破

 【CJC=東京】シリア北部のアッシリア地方で、イスラム教過激派集団『イスラム国』が4月5日、タル・ナスリ村の『処女マリア教会』の内部に爆薬を仕掛け、爆発させた。教会は1934年に建設された。
 米ニュースサイト『ブレイトバート』のトーマス・D・ウイリアムズ記者は、1934年に建設された同教会は村にある主要3教会の一つだった、と伝えている。現地の『アッシリア国際通信』(AINA)は、教会が爆破で全壊した、と報じた。
 ウイリアムズ記者は、「キリスト者はシリアでは少数派の中でも小さい集団で、イスラム教スンニ派が多数を占めるシリア総人口の1割に当たる。今年のイースターでは祈りとミサしか行わなかったが、それは紛争下という悲惨な状況にあるため」としている。
 今回の襲撃は『イスラム国』の教会破壊として最初ではない。これまでにもタル・フルモズの教会やタル・タメルの3教会を焼き討ちしている。


◎教皇が「いつくしみの特別聖年」勅書公布

 【CJC=東京】教皇フランシスコは4月11日、「いつくしみの特別聖年」を正式に布告する勅書を公布した。
 イースターから1週間後の4月12日、カトリック教会の典礼暦は「神のいつくしみの主日」を記念する。その前日11日午後、教皇はバチカンのサンピエトロ大聖堂で「神のいつくしみの主日」の第1晩課を行ない、その始めに大聖堂入口の「聖年の扉」の前で、特別聖年布告の勅書を全教会の代表に託したもの。
 教皇は、着座から2年を迎えた今年3月13日、共同回心式の中で、「いつくしみの特別聖年」を開催する旨を発表していた。
 「いつくしみの聖年」は12月8日、無原罪の聖母の大祝日にサンピエトロ大聖堂の「聖年の扉(ポルタ・サンタ)」の開門と共に始まり、2016年11月20日、王であるキリストの大祝日に閉幕する。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、勅書公布の儀式は、この日の夕方、サンピエトロ大聖堂入口の柱廊で行われた。
 枢機卿らをはじめバチカンの高位聖職者が参列する中、教皇は「聖年の扉」の前で「いつくしみの特別聖年」布告勅書を世界の教会を象徴的に代表する教会関係者たちに手渡した。
 勅書は「聖年の扉」を開くことになるローマの4大バシリカ(古代ローマ様式の大聖堂)、ラテラノ大聖堂、サンピエトロ大聖堂、サンタマリア・マッジョーレ大聖堂、サンパオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂の首席司祭枢機卿らに、また教皇庁司教省、福音宣教省、東方教会省の長官たち、さらに各大陸を代表する司教らに託された。
 続いて、プロトノタリオ(教皇庁書記長)の1人、レオナルド・サピエンツァ師が、勅書の抜粋を読み上げ、聖年の開催方法、意義を明らかにしながら、聖年を回心と刷新の実り多い機会にするよう全教会に呼びかけた。
 儀式の後、教皇は信者らの待つ大聖堂に入場。システィーナ礼拝堂合唱団の歌う聖歌の調べと共に、「神のいつくしみの主日」の第一晩課(前晩の祈り)を捧げた。


◎米州首脳会議開幕式典へ教皇祝辞

 【CJC=東京】第7回米州首脳会議が4月10日、パナマの首都パナマ市で開幕した。開幕式典の冒頭、教皇フランシスコの祝辞がバチカン(ローマ教皇庁)国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿が代読した。
 会議には、バラク・オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長も出席した。両国のトップが会議で同席するのは初めて。2人は会場で握手を交わした。
 バチカンは1961年から半世紀を超える断絶を経た米国とキューバの国交正常化を仲介したことが明らかになっている。


◎同性愛者の仏大使任命にバチカンは無言続ける

 【CJC=東京】仏政府がこの1月に指名した次期駐バチカン大使について、バチカン(ローマ教皇庁)は4月に入っても、無言を続け、メディアの注目の的となっている。
 大使を派遣する際には事前に駐在国から「アグレマン」と呼ばれる同意を得ることが必要。バチカンの場合、同意に必要な期間は通常3〜4週間。
 仏政府は、次期駐バチカン大使にローラン・ステファニーニ外務省儀典長(54)を1月5日の閣議で任命したが、3カ月以上経過してもバチカンから同意の通知が届いていないという。
 フランスとイタリアのメディアは、ローマ教皇庁(バチカン)が、ステファニーニ氏について、同性愛者であることを理由に信任を拒んでいると報じている。
 同氏はカトリック信者。2001〜05年には駐バチカン大使館に大使に次ぐ職位で勤務していた経歴もある。
 しかし、イタリア紙『スタンパ』によると、同性愛者や再婚者らは、カトリックの教義に反するとして駐バチカン大使に就任できないのが通例という。ただイタリア紙『コリエーレ・デラセーラ』は、パリ大司教アンドレ・ヴァン=トロワ枢機卿が、外交的にも意味がある、と受け入れを教皇に進言していると報じた。
 バチカン報道事務所のフェデリコ・ロンバルディ担当と駐バチカン仏大使館はともに、メディアの取材に「ノーコメント」としている。
 同性婚や離婚はカトリック教会では否定されて来たが、教皇フランシスコは「慈悲深い対応が必要」と寛容な姿勢を示している。ただ、教会内部では現実社会に合わせた柔軟な対応を求める改革派と、教義に厳格な保守派との根強い対立があり、教皇も、2013年の公文書では「結婚とは男女がしっかり結ばれること。それが家族の基盤だ」と教会の従来の考えを堅持する考えを示したが、一方で「神を求める善意の同性愛者を裁くことはできない」とも述べている。
 フランスではフランソワ・オランド大統領が就任後の2013年4月に同性婚を認める法律が成立させ、カトリック保守派の反発を招いた経緯がある。
 イタリア紙『レプブリカ』によると、バチカン内には「大使の指名はオランド氏の挑発」と見る向きもあるという。
 仏のカトリック系紙『ラ・クロワ』も、関係者の話として、バチカンが今回の人事を「挑発行為」とみなしていると報じた。
 オランド大統領は、ステファニーニ氏を「最良の外交官の1人」として任命撤回には応じない構えを見せているという。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月12日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ 復活祭メッセージ=復活理解の鍵は謙遜
★教皇=聖木曜日に刑務所を訪問=男女12人の足を洗う
★国際カリタスも主催=国連防災世界会議の併催企画=仙台
★性暴力問題考える=女子高校生ら参加し「会議」=東京
★原発避難者 窮地に=住宅の無償提供期限も迫る=「事故」後、福島そして全国へ

 =キリスト新聞(4月11日)=https://www.kirishin.com
★「教会と地域福祉」フォーラム21シンポ=教会も「当事者研究」を=向谷地生良氏
★「秘密保護法」撤廃求め要請=「反対する牧師の会」国会議員へ
★国民投票で〝NO〟と言える人を=キ政連講演会に木村庸五氏
★サイクロン被害のバヌアツ救援難航=NCCが緊急支援募金呼び掛け
★英国国教会に初の「本式」女性教区主教

 =クリスチャン新聞(4月12日)=https://jpnews.org
★クリスチャン県人会を設立=故郷のため連帯と祈り=過疎、高齢化、地方宣教の課題共有
★巨大サイクロン被害=バヌアツに救援難航
★JIFH=パンの缶詰など緊急支援準備開始
★日本脱カルト協会=勧誘予防DVD発売=勧誘場面 ドラマ仕立てで
★サドルバック教会が創立35周年記念式典


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