世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1272信(2015.06.08)

  • 教皇、サラエボを訪問、民族間の平和訴え
  • 「神」を女性としても、と英国国教会の女性司祭
  • スウェーデン発「女性聖職者向けファッション」
  • シュツットガルトで「キルヘンターク」開催
  • 米テキサス・バプテスト連盟前代表が闘病の末に自殺
  • シャーロット王女の洗礼式は7月5日
  • 《メディア展望》


◎教皇、サラエボを訪問、民族間の平和訴え

 【CJC=東京】教皇フランシスコは6月6日、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを1日の日程で司牧訪問した。訪問のテーマは「あなたがたに平和があるように」(ヨハネによる福音書20・19)。イスラム教徒とセルビア系、クロアチア系の3勢力による激しい内戦の終結から今年で20年、教皇は、民族の融和と宗教間の対話を促し、平和と共存を訴えた。
 6日朝7時、教皇はヘリコプターでバチカン(ローマ教皇庁)を出発、サラエボ空港に9時到着した。大統領官邸での歓迎式の後、大統領評議会を訪問、ムラデン・イヴァニッチ現議長はじめ評議会メンバーとの会談、続いて、アシム・フェルハトヴィッチ・ハセ競技場で市民参加のミサを司式した。
 教皇は、世界各地で紛争が続く状況は「第3次世界大戦のようだ」と憂慮、「戦争の空気が広がり、それをあおる者もいる」と不正な武器の取引などを批判した。1990年代の民族紛争で多数が犠牲となり苦しみを味わった国民に対し、多様性を尊重し和解の努力を続けるよう呼び掛けた。
 教皇はミサ終了後、バチカン大使館で、ボスニア・ヘルツェゴビナの司教団との集いを行った。
 午後、教皇は、先の紛争による破壊から修復された司教座聖堂で、司祭・修道者・神学生ら教会関係者と会見した。
 司祭、修道者、修道女の代表3人が、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の信仰の体験を語ると、教皇は感動した様子で、用意した原稿を用いずに参加者に語りかけた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、これらの体験は国民の記憶であり、その歴史を忘れてはならないと述べ、それは復讐するためではなく、平和を作るため、彼らが愛したようにわたしたちもまた愛するためであると語った。
 教皇は、人々が体験を語る中で「赦し」という言葉を繰り返していることを指摘。「主に自らを捧げる人々が赦しを知らないならば、その人の奉献生活に何の意味があるだろうか」と問いながら、「口喧嘩した友人を赦すのはたやすいが、自分を拷問・蹂躙し、殺そうとした人々を赦すことは難しい。しかし彼らはそれを赦すことができ、皆にも赦しを説いている」と、赦しの難しさと大切さに触れられた。
 強制収容所での過酷な体験は、キリストの十字架の体験であると述べる一方、敵の兵士から梨をもらった話、イスラム教徒の女性から食べ物を分けてもらった話に、教皇は「わたしたちは皆兄弟、皆が神の子。すべての人が善の種を持っている」と述べた。
 これらの体験は残酷なものであるが、今日も世界中の紛争でこの残酷さが繰り返されていると述べた教皇は、「皆さんは常にこの残酷さの反対であってほしい。優しさ、兄弟愛、赦しを示し、そしてキリストの十字架を担いでほしい。母なる教会は皆が小さき者、小さな殉教者、イエスの十字架の証し人となることを望んでいる」と、参会者を勇気付けた。
 教皇はその後、修道会フランシスコ会の国際学生センターで、正教会、ユダヤ教、イスラム教の代表者と会見した。
 教皇は、続いてサラエボ教区の『ヨハネ・パウロ2世・青少年司牧センター』で若者たちとの集いに参加した。
 『ヨハネ・パウロ2世・青少年司牧センター』は、2006年に開館、宗教・民族を問わず、すべての若者に開放されている。この日行われた教皇との出会いの場は、1000人以上の若者たちでいっぱいとなった。
 教皇はここでも原稿を用いず、参加者との対話を行った。平和のメッセージを求める若者たちに対し、教皇は「皆さんは紛争後の最初の世代です。皆さんは春の花々です。この春の花々は、未来に進み、破壊には戻りたくないと望んでいます。わたしは皆さんにその熱意を感じます」と述べた。
 「皆さんは互いに敵対したくないと思っています。わたしたちは『彼らと、わたし』ではありません。わたしたちは『わたしたち』です。イスラム教徒も、ユダヤ教徒も、正教徒も、カトリックも、皆『わたしたち』なのです。平和を作るとはこういうことです」
 「皆が平和について語ります。ある権力者たちは平和について話していても、その下には武器が見えています。わたしが皆さんに期待するのは『正直さ』です。思うこと、感じること、行動することについての正直さです。そうではないことを偽善というのです」
 「橋があっても使われず、向こう側に渡ることを禁止されているとしたら、それは町の生活を壊してしまいます。ですから、わたしは紛争後世代の皆さんに、偽善ではなく、正直さを期待します。一致すること、行き来できる橋をかけること、これが兄弟愛です」
 「戦後の春の花々である皆さん、平和を作ってください。皆で一緒に平和のために働いてください。この国が平和な国となりますように」と教皇は語った。
 サラエボ訪問を終えた教皇は、空港で政府・教会関係者の見送りを受け、午後8時出発、バチカンに9時過ぎ戻った。
 教皇のサラエボ訪問は、これまでヨハネ・パウロ2世の2回の訪問がある。ヨハネ・パウロ2世はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争直後の1997年、サラエボで、平和と和解を強く訴えた。2003年には、福者イヴァン・メルツ(1896〜1928)列福式のため同地を訪れている。


◎「神」を女性としても、と英国国教会の女性司祭

 【CJC=東京】英国国教会が初めて女性主教を選任したのに続き、「神」を女性としても見るようとの呼び掛けが始まっている。
 6月1日付け英紙ガーディアンによると、女性主教実現に向けてキャンペーンを進めたグループ『女性と教会』(WATCH)が、男性語が用いられており、「神」についても男性のイメージで描かれている礼拝式や祈祷文を改定し、女性にも平等な地位を認めるよう呼び掛けている。
 「正統神学は、全人類が神の形に造られていると言う。神には性別がない。神は性を包含しており、神は男性でもあり女性でもあり、さらに男性や女性を超越した存在だ。わたしたちが神について男性形だけで表現すれば、それは神が誰かという理解が不十分になってしまう」と主張するのは、WATCHのメンバーの1人ジョディ・ストウェル司祭。
 オックスフォード大学トリニティ・カレッジのチャプレンでWATCHのメンバーでもあるエンマ・パーシー司祭は、男性語と女性語双方を使用することで、神が「空にいる老爺」といった理解から離れることになるかも知れない、と言う。
 ヒラリー・コットン・WATCH議長は、男女共通言語への転換について、国教会内部で進展したところもある、と言う。「現実は、あちこちの教会で、神について元来からの男性語を超えたものが使われている」とテレグラフ紙に語った。「牧師たちは、時には神をひっそりと『彼女』と呼んでいる」そうだ。


◎スウェーデン発「女性聖職者向けファッション」

 【CJC=東京】スウェーデンの首都ストックホルム郊外にアトリエを構えるデザイナーのマリア・スヨディンさん(46)が、シックなデザインの服に最後の仕上げを施している。AFP通信が報じるところでは、実はこの服は意外な顧客のために作られている女性聖職者たちだ。
 スヨディンさんの、女性聖職者向けオーダーメード服は、七分袖やトランペット袖、あるいは凝ったカフスなどをあしらった、控えめさを大事にしながら程よくフィットする黒のトップスやワンピース。
 スヨディンさんは自身のコレクション「カジュアル・プリースト」で、女性聖職者のための普段着を提案している。主なアイテムはトップスやワンピース。祭服は含まれていない。大半のアイテムが黒だが、着る人の位階によっては別の色で作ることもある。
 スヨディンさんは2002年、女性の聖職者向けに特化した服がないことを知り、ひらめいたという。
 スヨディンさんの最初の顧客が同僚たちに新しいトップスを見せたところ、売れ行きが伸び始めた。まずスウェーデンとノルウェーで知られるようになり、その後、ドイツや英国にも広がった。「最初に作ったトップス『エヴァ』は、今でもベストセラーアイテムです」とスヨディンさん。男性聖職者からも声が掛かるようになり、小規模ながらメンズラインも展開している。


◎シュツットガルトで「キルヘンターク」開催

 【CJC=東京】隔年に開かれる独プロテスタントの祭典「キルヘンターク」(教会の日=福音主義教会信徒大会)が、今年は南西部バーデン=ビュルテンベルク州のシュツットガルトで6月3日から7日まで行われた。
 信仰、音楽、礼拝、文化に関するさまざまな催しが行われる「キルヘンターク」は、原子力や気候変動、金融危機などについての討論の場ともなっている。


◎米テキサス・バプテスト連盟前代表が闘病の末に自殺

 【CJC=東京】米テキサス州シュガーランド・バプテスト教会のフィル・ラインバーガー前牧師(69)が5月31日自殺した。ラインバーガー氏の義息、ブライアン・シーイ氏は、ラインバーガー氏が「うつ病との闘いに負け、自殺した」と述べた。米バプテスト・プレスが報じた。
 ラインバーガー氏は、1995年からシュガーランド郊外で牧会に従事していたが、今年3月中旬に病気療養のため辞任した。『テキサス・バプテスト教会連盟』(BGCT)の代表も務めていた。
 『南部バプテスト連盟』のフランク・S・ペイジ常議員会会長は、かつてラインバーガー氏が副牧師を務めていた教会の会員であったこともあり、その死を悼む声明をバプテスト・プレスに寄せた。
 ラインバーガー氏は4年前、友人のジョン・ペティ牧師がうつ病で自殺した際、弔辞の中で、うつ病の困難さについて述べていた。
 ラインバーガー牧師の追悼礼拝は4日、シュガー・ランドバプテスト教会で行われた。


◎シャーロット王女の洗礼式は7月5日

 【CJC=東京】英王室は6月6日、ウィリアム王子とキャサリン妃の間に5月2日生まれたシャーロット王女の洗礼式が7月5日にノーフォーク州サンドリンガムの聖メアリー・マグダレーン教会で行われることを明らかにした。
 洗礼式は、2年前にジョージ王子の洗礼式を執り行った英国国教会の最高位聖職者、ウェルビー・カンタベリー大主教が執行する。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(6月7日)=https://www.cwjpn.com
★日本カトリック管区長協議会・日本女子修道会総長管区長会
合同総会=「証し」する者として=奉献生活の年 生き方を再確認
★アイルランド=同性婚合法化で大司教=「現実の把握」が必要
★純利益伸びる=バチカン銀行=「"ぶどう畑"の働き手支える」
★教皇=霊的指導者と聴罪司祭の役割
★聖骸布の公認複製=トリノ教区、コンプリ神父に

 =キリスト新聞(6月6日)=https://www.kirishin.com
★日・中・韓・米=国際シンポ「和解と平和のための祈り」にR・ヘイズ氏ら=悲惨な経験、平和と和解へ
★ナショナリズム超え、和解と平和を=米・韓・台・日の学者が青学で国際シンポ
★災害時の宗教施設の役割に期待=「復興に向けた宗教者円卓会議」
★福岡で「聖書クイズ王決定戦」 今年は名古屋、札幌でも開催
★安保法制閣議決定に抗議相次ぐ

 =クリスチャン新聞(6月7日)=https://jpnews.org
★奥多摩福音の家50年=「天国の前味」提供し続けた=大震災で地域とつながる
★元日本軍「慰安」婦に謝罪=日韓教会「謝罪と和解と交流のツアー」
★「ムスリム世界のための30日の祈り」=とりなしから愛が生まれる=9文化圏ごとに解説、「神の宣教としての平和」勧める
★サマリタンズ・パース靴箱プロジェクト説明会=「愛」が子どもたちの生きる力に
★個人伝道ツール「ゴスペルシェア」完成=年代・背景に合う方法で


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