世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1301信(2015.12.28)

  • 争乱のなか、聖地は閑散としたクリスマス
  • イラク軍が『イスラム国』からラマディ奪回
  • 『イスラム国』は身代金で稼ぐ、とロシア・メディア
  • ≪メディア展望≫
  • 《2015年発行終了のご挨拶》

◎争乱のなか、聖地は閑散としたクリスマス

 【CJC=東京】イエス・キリストが生まれたと聖書が記すベツレヘム、今ではパレスチナ自治区にある。十字架に架かって死なれたというエルサレムはイスラエルにある。例年、クリスマスには、ベツレヘムもエルサレムも世界中からの大勢の観光客や巡礼でにぎわうが、2015年10月以降はイスラエルとパレスチナの緊張が続き激化、パレスチナ人による襲撃事件やイスラエル軍とパレスチナ人との衝突で双方の死者は130人を超えた。

 ベツレヘムはイスラエル側と隣接しており、連日の衝突が繰り返されている。治安面の懸念から客足が遠のき土産物屋は閑散としている。また高級ホテルはイスラエル軍が使用する催涙弾のガスにさらされ、宿泊客が例年の3割程度に落ち込んだという。それでもクリスマスの25日には、恒例のミサが行われ平和への祈りがささげられた。

 教皇フランシスコは、24日午後9時半から、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で主の降誕の深夜ミサを行なった。カトリック教会では8日から重要な宗教行事期間「いつくしみの特別聖年」(2016年11月20日まで)が始まっている。
 イタリア治安当局は聖年期間に合わせてバチカン周辺の警備を強化した。サンピエトロ広場周辺には金属探知機が設置され、24日から27日まで一帯への自動車乗り入れが禁じられた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、深夜ミサでは、冒頭に主の降誕を告げる「カレンダ」が朗唱された。教皇は祭壇前のまぐさ桶の覆いを取り除き、幼子イエス像に献香。続いてケニア・ウガンダ・中央アフリカ・スリランカ・フィリピンなど、教皇が今年訪れた国々の子どもたちが花輪を幼子に捧げた。
 説教で教皇は、宿がなく、馬小屋のまぐさ桶に寝かされた幼子イエス、世の貧しさの中に生まれた神の御子の降誕の神秘を観想するよう招かれ、神の栄光の光は、この何も無い所からあふれると説いた。そして、消費や享楽、豊かさに目を奪われがちな現代社会に対し、節制した態度、簡素で本質的な生き方を呼びかけた。
 さらに教皇は降誕の主日25日正午には、大聖堂の中央バルコニーから、広場を埋めた数万人の信者らを前に、ローマと世界に向けて祝福とメッセージ「ウルビ・エト・オルビ」をおくった。この日のローマは青空が広がり、例年より温かいクリスマスとなった。
 教皇はメッセージで、「イエスだけが、イエスのみがわたしたちを救うことができるのです。神のいつくしみだけが人類を様々な形の、時には恐ろしいほどの悪やエゴイズムから解放することができるのです。神の恵みが心を改めさせ、人間の力では解決できない状況に出口を見出させてくれる」と語りかけた。
 さらに教皇は、「神がお生まれになったところに、希望が生まれます。神がお生まれになったところに、平和が生まれます。そして平和が生まれたところには、憎しみと戦争のための場所はもうありません。それにも関わらず、神の御子が人となってこの世に来られた場所で、緊張と暴力が続き、平和は祈り構築するべきものとなっています。イスラエルとパレスチナが直接対話を再開することで、双方の人民が調和のうちに共存し、中東地域に重大な影響をもたらした長い闘争を克服するための合意にたどりつくことができますように」との希望を表明した。
 中国の北京は、PM2・5の影響で市内は朝から一面真っ白で、思わぬ形の「ホワイトクリスマス」となった。またクリスマスに西洋人に危害が加えられる可能性があるとして、米英の大使館が中国に滞在する自国民らに警戒を呼びかけた。警官が武装して警戒にあたった。
 パリ同時多発テロから1カ月余りが過ぎた24日、フランス全土の厳重な警戒の中、キリスト者が教会のミサに参列した。テロ現場となったパリのバタクラン劇場前や周辺の教会でも、市民がろうそくに灯をともして、犠牲者を追悼した。
 過激派組織『イスラム国』などのテロを阻止するため、パリ中心部のノートルダム大聖堂などには重武装した治安要員が配置され、玄関で手荷物を点検し、信徒らは長い行列をつくって入場した。


◎イラク軍が『イスラム国』からラマディ奪回

 【CJC=東京】イラク軍が過激派組織『イスラム国』に占拠されていた中西部アンバル州の州都ラマディを制圧、奪回した。ラマディは首都バグダッドの西方約100キロにある要衝で、5月に『イスラム国』が支配下に置いた。
 イラク軍報道官は12月27日、ラマディで『イスラム国』との戦闘に勝利したと宣言した。軍が同日、『イスラム国』の拠点だった中心部の政府庁舎を制圧し、『イスラム国』戦闘員は全て撤退したと表明、「我々がラマディで『イスラム国』を打ち負かしたことを意味する」と述べた。ただ『イスラム国』は市街地に多数の爆発装置を仕掛けており、残存勢力が抵抗を続ける可能性もある。
 イラク軍は12月8日にラマディ南西部を奪還、米軍主導の有志連合が空爆で奪還作戦を支援した。『イスラム国』は自爆攻撃や狙撃で激しく抵抗し、住民を「人間の盾」に使って襲撃を阻もうとしていた。


◎『イスラム国』は身代金で稼ぐ、とロシア・メディア

 【CJC=東京】ロシア・メディア『スプートニク』(日本語電子版)が、報じるところでは、ロシアで活動が禁止されているテロ組織『イスラム国』が、仲介者を通じて渡された身代金と引き換えに、キリスト教を信仰するアッシリア人25人を解放した。
 シリアのアル・ハスカ県のアッシリア人コミュニティの代表者が、「我々は仲介者を通して、捕虜となっていたアッシリア人25人の解放について合意することに成功した。我々は引き換えにテロリストらに身代金を渡した。まだ約80人のアッシリア人が捕虜となっている」と語ったという。
 『イスラム国』は2015年2月、アル・ハスカ県で、キリスト者たちが住む36の村を掌握した。リア・ノーボスチ通信によると、『イスラム国』は、古代から存在している教会を破壊し、一般市民数十人を殺害し、300人以上のアッシリア人を捕虜にした。アッシリア人のコミュニティ(共同体)は身代金を支払い、高齢のアッシリア人など約190人の解放に成功している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(年末休刊)=https://www.cwjpn.com
 =キリスト新聞(年末休刊)=https://www.kirishin.com
 =クリスチャン新聞(年末休刊)=https://クリスチャン新聞.com

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