世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1403信(2017.12.11)

  • 神は誘惑しない、と仏カトリック教会が「主の祈り」改定
  • トランプ米大統領の「エルサレム首都」認定に世界は戸惑いと反発
  • エルサレム問題で国連安保理が緊急会合
  • トルコ大統領、イスラエルを「テロリスト」と非難
  • 「核兵器とともに生きることは大きな間違い」とノーベル平和賞受賞者
  • 教皇「核保有」を初めて批判、と共同通信
  • ホワイトハウス前で在米韓国人が「平和合唱」集会
  • ≪メディア展望≫

 

◎神は誘惑しない、と仏カトリック教会が「主の祈り」改定

 【CJC】フランスのカトリック教会が12月3日、「主の祈り」の改定を発表した。フランス語では、「主の祈り」を「ノートル・ペール」と呼ぶ。

 「主の祈り」で、日本のプロテスタント教会の多くが「我らをこころみにあわせず」と祈るところを、フランスでは「我らを誘惑に従わせないでください」と訳したものを1966年から使用してきた。しかし、これまでにも、信者が罪を犯すよう神が誘惑していると誤解されることがあった。

 そこでカトリック教会は改定を検討し、「待降節」(アドベント)初日の12月3日から、「われらを誘惑に入らせないでください」という訳で祈っている。プロテスタント教会にも、これを承認したところもあるという。

 カトリック教会の典礼責任者ギー・デ・ケリメル司教(グルノーブル教区)は、AFP通信に「訳自体は間違ってはいなかったが、解釈はあいまいだった」として、人々が新しい文言に慣れるまでは「しばらくは幾分かの不平が出るだろう」と語った。英紙『ザ・テレグラフ』が紹介している。

 新訳についてフランスでは少数派プロテスタントの福音主義協議会(CNEF)は、神が人を誘惑するという考えを避けることには同意するが、新しい「主の祈り」は、「神の主権を水で薄めている」と指摘する。

 日本では、プロテスタント教会は「我らをこころみにあわせず」という文語訳を使用しているところが多い。カトリック教会と聖公会は2000年に共通の口語訳を制定し、「わたしたちを誘惑におちいらせず」という訳を用いている。正教会は、主の祈りを「天主経(てんしゅけい)」と呼び、「我等を誘に導かず」としている。


◎トランプ米大統領の「エルサレム首都」認定に世界は戸惑いと反発

 【CJC】ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことに、世界は戸惑い、反発している。トランプ氏の「火遊び」に過ぎないとしても、大統領としての真意が明かにならない限り、戸惑いと反発は続く。

 中東のイスラム諸国などで12月8日、「一方的な決定」「撤回せよ」と対米批判が噴出、抗議デモが相次ぎ発生した。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教全てにとっての聖地エルサレムでもイスラム教徒の反発が強まっている。

 イスラエルを「パレスチナの占領者」とみなし国家承認していないイランでは、首都テヘランで数千人規模のデモが行われた。タスニム通信によると、市民は「米国を倒せ」などと記されたプラカードを手に行進。米国旗を燃やす市民もいた。

 エジプトの首都カイロや北部アレクサンドリアでは治安部隊が警戒する中、金曜礼拝後にイスラム教徒がモスク(礼拝所)前などで抗議の声を上げた。

 カイロにあるイスラム教スンニ派最高権威機関『アズハル』のタイエブ総長も「歴史をねじ曲げ、住民の権利を取り上げ、聖地を攻撃する決定。トランプ氏は撤回すべきだ」との声明を発表した。

 イラクの首都バグダッドでは、市民が「エルサレムはアラブの都市だ」と声を上げデモを行った。トルコ、チュニジアなどでも抗議が拡大。ヨルダンの首都アンマンでは8日、デモ隊が米大使館前で「米国は出て行け」などと訴えた。

 インドネシア、マレーシア、インドなどでも、イスラム教徒の抗議デモが発生している。


◎エルサレム問題で国連安保理が緊急会合

 【CJC】国連安全保障理事会は12月8日、トランプ米政権がエルサレムをイスラエルの首都と承認した問題で緊急会合を開催した。各理事国は米国の決定に相次いで批判や懸念を表明した。シリア問題などでは他国に対し強気の姿勢を示してきた米国が、逆に批判の矢面に立たされた。「国際社会での孤立が際立つ形」と時事通信は報じている。

 緊急会合は安保理15理事国のうち、英、仏、伊、スウェーデン、エジプト、ボリビア、セネガル、ウルグアイ各国の要請で開かれた。中東和平担当のニコライ・ムラデノフ中東和平プロセス担当特別調整官は会合冒頭、「暴力が激化するリスクを特に懸念している」と述べ、緊張を高める言動を控えるよう当事者に呼び掛けた。

 スウェーデンのオロフ・スコーグ国連大使は「国際法や安保理決議と矛盾する」と指摘し、「和平の見通しを危うくする」と批判した。安保理で普段、米国と足並みをそろえることの多い英国のマシュー・ライクロフト国連大使も「地域の和平の見通しの助けにならない」と非難した。


◎トルコ大統領、イスラエルを「テロリスト」と非難

 【CJC】トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は12月10日、トランプ米政権がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに抗議し、イスラエルを「テロリスト」、「子ども殺しの国」と非難した。

 エルドアン氏は、トルコ中部シワスで演説、「エルサレムはわたしたちにとってかけがえのない存在。子ども殺しの国、占領国家に渡すわけにはいかない」と主張。「法と民主主義の枠内で闘いを続ける」と述べた。

 米メディア『CNN』などによると、トルコ最大都市イスタンブールで12月13日に開催するイスラム協力機構(OIC)の首脳会議に言及し、そこで策定する計画案によって、トランプ政権の意図を実現するのは「容易でない」ことを示すと表明した。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日、訪問先のパリで、エルドアン氏への批判を展開。「自国内でクルド人の村を爆撃し、ジャーナリストを拘束し、イランの制裁逃れに手を貸し、ガザなどで無実の人々を殺すテロリストに加担する。そういう人物から道義を説かれるとは」と強く反発した。

 ネタニヤフ氏は、エルサレムをイスラエルだけの首都だと改めて主張し、「パレスチナ側がこの現実を早く把握すれば、それだけ早く和平に近付くことができる」と主張した。


◎「核兵器とともに生きることは大きな間違い」とノーベル平和賞受賞者

 【CJC】2017年のノーベル平和賞授賞式が12月10日、ノルウェーの首都オスロで開かれた。核兵器の廃絶運動を展開してきた非政府組織(NGO)『核兵器廃絶国際キャンペーン』(ICAN)が受賞し、メダルと賞状が贈られた。ICANは100カ国を超える約470団体からなる連合体で、07年に設立。本部はスイスのジュネーブに置いている。

 ICANは、世界各地の反核団体や長崎や広島の被爆者と連携し、核兵器の非人道性を訴えてきた。7月に国連が採択した核兵器禁止条約の成立に向け、主導的な役割を果たしたことなどが評価された。唯一の戦争被爆国である日本は条約に署名していない。

 ノルウェー・ノーベル委員会のベリット・ライス=アンデシェン委員長は「核兵器の問題は政府や専門家らだけの問題ではない。ICANは一般の人たちを新たに関与させていくことに成功した」とし、「核なき世界の実現への運動に新たな方向性と活力を与えた」とたたえた。

 ICANのベアトリス・フィン事務局長は演説で、「核兵器使用のリスクは冷戦時代よりも高まっており、武器とともに生きることは大きな間違いになる」と指摘。「核兵器の終焉(しゅうえん)か、人類の終わりかが問われている。民主主義や自由のために、理にかなった選択をしなければならない」と核兵器の非合法化と廃絶を求めた。

 授賞式では、広島での被爆体験を証言してきたカナダ在住のサーロー節子さん(カナダ合同教会員)も演説し、広島に原爆が投下された当時の惨状を語った。「核兵器は人類と共存できず、私たちが愛しているすべてのものを危険にさらす。これ以上、この狂気を容認してはいけない」と訴えた。

 賞金は900万スウェーデン・クローナ(約1億2000万円)。フィン事務局長は、賞金で基金を設立し、条約の早期発効を強化する活動に使う方針を表明している。

 日本からは、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員の田中熙巳さんや、広島市の松井一実市長、長崎市の田上富久市長が授賞式に招かれた。


◎教皇「核保有」を初めて批判、と共同通信

 【CJC】教皇フランシスコが11月、被爆者らと面会した際「核兵器の保有だけでも断固として非難されるべきだ」と述べ、核保有を初めて明確に批判したことが分かった、と共同通信。教皇庁が12月6日までに確認したという。

 教皇はこれまでも「核抑止力」に否定的な姿勢を示してきたが、核保有にまで踏み込んで発言してこなかった。


◎ホワイトハウス前で在米韓国人が「平和合唱」集会

 【CJC】北朝鮮の大陸間弾道ミサイル発射後、朝鮮半島の緊張が高まった中で、在米韓国人が12月9日、首都ワシントンで「戦争反対」と「朝鮮半島の平和」を合唱した。

 韓国紙『ハンギョレ新聞』(日本語電子版)によると、『グッド・フレンズ米州支部』、『野花教会』、『米州希望連帯』、『米州同胞全国協会』(NAKA)、『平和のための参戦軍人』など、在ワシントンの宗教団体や市民団体所属会員ら約30人が同日午後、一帯にぼたん雪が降る中、ホワイトハウス前のラファイエット公園で集会を開き、「北朝鮮と米国の指導者らはためらうことなく公開的に朝鮮半島での戦争の可能性を話している」とし、「戦争の渦が急速に朝鮮半島に近づいている」と懸念を表明した。

 「北朝鮮は核・ミサイルプログラム開発を直ちに中止し、条件なき対話に参加しなければならない」とし、「米国も朝鮮半島で戦争を誘発しうるいかなる行動もしてはならず、朝鮮半島の平和を尊重し、対話を通じて状況を解決するよう努力すべきだ」と要求した。彼らはさらに、朝鮮半島で戦争や軍事的衝突を防ぐため「韓国政府が個別の政党の路線を超えて協力的政策の立案を優先的に実施しなければならない」と参加者は強調した。

 イ・ジェス『米州希望連帯』事務総長は「韓国はろうそく1本で民主主義を成し遂げた。ろうそく1本で平和を成し遂げなければならない」とし、「戦争反対と平和実現は私たちの明確な目標」だと明らかにした。彼はさらに、「平和な平昌オリンピックが朝鮮半島の平和の開始点になるようにしよう」とし訴えた。

 『平和のための参戦軍人』のマイケル・マルソー会長は、ハンギョレ新聞に「1969年から71年までベトナム戦争に参戦した」とし、「わたしたちは再び戦争が起きることを望まない。戦争は行かなければならない道ではない。対話と交渉、討論が私たちの進むべき道」だと話した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月10日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★教皇、ミャンマーとバングラデシュ訪問=ロヒンギャ迫害を非難
★青年たちとミサ=「祖父」として助言=信仰と希望と愛を生き抜くように
★教皇=バングラデシュに到着=ロヒンギャ受け入れを称賛
★社会司教委員会がシンポジウム=『ラウダート・シ』と原発問題 学ぶ=大阪
★長崎教区=「青年の日」初開催=髙見三明大司教と交流

 

 =KiriShin(12月11日・休刊)=https://www/kirishin.com

 

 =クリスチャン新聞(12月10日)=https://クリスチャン新聞.com
★アンテオケ宣教会40年=宣教困難地の課題、連携、支え方を討論=神の熱心に触れ、共に歩む
★今年108年目=歳末の風物詩アピール=都内で救世軍クリスマス=社会鍋コンサート
★早稲田大学YMCA創立130周年=信愛学舎創設100周年記念講演会=キリスト教学生寮は愛・慈悲の思想、平和を共有する場
★「戦争体験者による第1回証言集会」で武藤清氏、渡辺信夫氏=戦争時にあった悪徳 今の社会にも
★TCU学長・小林高徳氏合同葬=「『残された労苦』受け取りたい」=同窓生の遠藤潔氏が説教

 
◆世界キリスト教情報◆ご案内

 『世界キリスト教情報』(週刊)と『CJC通信』(不定期刊行)のご購読は、次の各サイトで既刊号をご覧願います。

・メールマガジン(各行を最大で全角36文字に整形してあります。パソコン(PC)の画面でご覧いただくことを想定しています)
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/

・同報メール(各行の整形は行っていません。ケータイ、スマートフォンなど、それぞれの画面の範囲でお読みいただくことや保存、転載されることを想定しています)
https://cjcskj.exblog.jp/

・ニュースレター(かつてファクスでお送りしていた時と同様のイメージをPDFにしてEvernoteに掲出しています。壁面展示、とじ込みなどを想定しています)
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/

☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/

........................
●『CJC通信』(記事ごとにメディア向けに発信しています。しかし公開していますので、どなたでもお読みいただけます)

☆『CJC通信』ブログ
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/

☆『CJC通信』速報(各ニュースのタイトルをTwitterで配信しています)
https://twitter.com/cjcpress/

☆『CJC通信』RSS速報(利用されているリーダーから登録願います)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/index.rdf

月別の記事一覧