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世界キリスト教情報 第1440信(2018.08.27)

  • 「神の民への手紙」=教皇が全教会宛て書簡
  • ニューヨークの高校でも80年代に神父が性的虐待
  • 「アジアのための神学校を東京に」=菊地大司教は「?」
  • 教皇がアイルランド訪問、「世界家庭大会」に参加
  • 教皇に元バチカン駐米大使が辞任要求
  • ≪短信≫
  • ≪メディア展望≫

 

◎「神の民への手紙」=教皇が全教会宛て書簡

 【CJC】『バチカン・ニュース』は、教皇フランシスコが、カトリック教会の聖職者や修道者による未成年者への虐待をめぐり、被害者の消えることのない苦しみを思い、これらの犯罪を前に教会の対応が不十分であったことを恥じ悔むと共に、全教会に回心と祈りを呼びかける書簡を8月20日発表したと報じた。

 この書簡を通し、教皇は被害者の苦しみを自分たちのものとし、この犯罪を前に、自分たちの悔い改めと、勇気をもってこれと戦う決意を表明できるよう、聖霊に回心の恵みと心の内面への塗油を祈っている。

 「神の民への手紙」と題された教皇の書簡は、「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみます」(コリントの信徒への手紙一12・26=新共同訳)という、使徒パウロの言葉で始まる。「神の民」とは教会の全信者を意味している。

 未成年者虐待の犯罪は「被害者は当然のこと、その家族、また社会全体をも深く傷つけることになった」、「被害者とその家族の苦しみは、わたしたちの苦しみである」と述べた教皇は、そのためにも未成年者と無防備な立場にある成人の保護を保証する取り組みを急務として呼びかけている。

 教皇は最近発表された、過去70年間にわたる聖職者による未成年者への性的虐待に関する調査書(米ペンシルベニア州)に言及。大多数のケースは過去のものであるが、「被害者たちが負った傷は決して消えることはない」と述べ、この残忍な犯罪を強く非難し、この死の文化を撲滅するために努力しなくてはならないと述べている。

 同時に教皇は、被害者たちの苦悩が長い間、無視され、隠されてきたこと、また問題を解決すべき関係者らが共犯性により事態をより悪化させたこと、教会共同体が自分たちの立場を見極めることができず、適切な対応が遅れたことに、恥と悔い改めの念を表明した。

 教皇は、過去の反省を踏まえ、今日、連帯のより一層の重要性を説くと共に、被害者に手を差し伸べ、あらゆる人の心身を危険に陥れかねないすべてのものを訴える必要を説いている。

 そして、未成年者と無防備な立場にある成人を保護するため、あらゆる対策と処罰を行うよう励ましている。

 教皇は、教会が子どもたちや若者、障害者たちの沈黙の苦しみに耳を傾け、必要なすべての法的手段をとりながら、真実の道を歩んでいけるよう、皆に回心のための断食と祈りを呼びかけた。

 教皇がこの問題に関する「書簡」を、全世界12億人の信者に向けて発表するのは初めて。「書簡」は通常、司教や、個々の国の信者に宛てられていた。

 複数の国で聖職者による性的虐待問題が起きている事態を受けての書簡は、全カトリック信者に宛てた異例のもの。共に危機に向き合い、教会の分裂を回避するよう呼びかけた。

 各メディアは、書簡発表の背後に、未成年者に対する性的虐待の問題が、米国、チリ、オーストラリア、アイルランドなどで表面化し、動揺が広がっていることを紹介している。

 ロイター通信は、犠牲者の人権擁護関係者らが失望を表明した、と報じた。世界の聖職者の性的虐待問題を追跡している団体の幹部は、「言葉を減らし、行動を増やすべき。(教皇は)性的虐待を可能にしてきたことが知られている司教や上位宗教者に対する有効な修養プロセスを打ち出す必要がある」と述べたという。


◎ニューヨークの高校でも80年代に神父が性的虐待

 【CJC】米大衆紙『ニューヨーク・ポスト』は8月18日、ブロンクス区のジョン・T・ミーハン神父(81)が1980年代、カトリック系男子校『カーディナル・ヘイズ』高校で生徒に複数回にわたり性的虐待を加えたが、示談が成立していたことがわかった、と報じた。ペンシルベニア州で神父300人以上が少年少女に性的虐待し、組織的に隠蔽していた、と司法当局が14日発表したばかりだった。

 被害者側の代理人マイケル・レック弁護士によると、性的虐待を受けた男子生徒は当時、14歳から16歳だった。

 生徒にはニューヨーク大司教区から現金で示談金が支払われた。事件は時効を迎えている。

同神父は、1964年の司祭任命以来、2017年までマンハッタン区内の複数の教会に勤務していた。『カーディナル・ヘイズ』高校には1980年から85年まで赴任していた。

 レック弁護士は、ペンシルベニア州の被害者を含め、被害を告白した少年少女をたたえ、「声を上げることにより、新たな性的虐待の被害者が出ずに済む。他の被害者にも勇気を与える」と語った。


◎「アジアのための神学校を東京に」=菊地大司教は「?」

 【CJC】「アジアのための新しい神学校が日本の首都で設立される」、とバチカン(ローマ教皇庁)福音宣教省長官のフェルナンド・フィローニ枢機卿からの通告を受け、タルチシオ菊地功・東京大司教は、「困惑」を感じている、とカトリック系通信『UCAN』が8月22日、東京発で報じた。

 菊地大司教は、神学校の正確な場所も、いつ開校するのかも知っていない、として「福音宣教省の決定に困惑させられている」という趣旨の声明を8月15日に出した。

 大司教は、「神学校が東京大司教区のどこかで設立されるということを一方的に発表した書簡をフィローニ長官から受け取った」と言う。書簡に添付された「神学校構想」は、目的を「新求道共同体に属す信徒に、アジアの福音伝道のための聖職となる準備をさせるため」としている。

 書簡は「アジア大陸の福音宣教に深く関わって来た司教、司祭、修道者の男女、信徒と協議して、アジアでの福音宣教のため教皇フランシスコの強い支持と共に、わたしはアジアのためのレデンプトリス・マーテル神学校を東京の首座と共に設立し、福音宣教省直属とする」としている

 菊地大司教は、自身を含め日本の高位聖職者がこの問題に関する協議のために呼ばれなかった、と驚きを示した。

 同じ「レデンプトリス・マーテル」名を持つ神学校は高松教区で1990年設立されたが、その財政負担について、地元信徒と衝突し、訴訟にまで発展、2009年に閉鎖された。

 大司教は声明の中で、その「悲劇の日」を想起している。

 「わたしは、バチカンが承認した動きを否定したり、禁止はしない。規制したり排除もしない」と言う。

 しかし、「この神学校の歴史に対する反省や研究もなしに、日本で新求道共同体のためにだけの神学校再発足を理解することは困難だ」と付け加えた。


◎教皇がアイルランド訪問、「世界家庭大会」に参加

 【CJC】教皇フランシスコは、アイルランドの首都ダブリンで開催中の「第9回世界家庭大会」に参加するため、8月25日、アイルランドを訪問した。

 教皇の同国訪問は、1979年に故ヨハネ・パウロ2世が訪れて以来、およそ40年ぶり。

 教皇は、アイルランド各界要人との会見で「家庭」の大切さをグローバルな視点で訴えたほか、夫婦たちとの対話、貧しい家族たちとの交流、世界の家族が集った「家庭の祝祭」など、様々な出会いを持たれた。

 ダブリンの大聖堂で同日午後、教皇は聖職者による性的虐待の被害者たちのために祈りをささげた。

 教皇は同日夜に「聖職者、教会による組織的な虐待」を受けた被害者8人と1時間半にわたり面会した。教皇は教会の性的虐待問題への対応が「不十分」であり、「痛みと恥辱」を生み出していると遺憾の意を表明した。

 8人の中には児童数百人を20年近くにわたり虐待していたトニー・ウォルシュ受刑者から被害を受けた人や、13歳の時に病院で聖職者から虐待を受けたマリー・コリンズさん(71)もいた。

 コリンズさんはかつて教皇傘下の児童保護委員会の委員だったが、同委員会が具体的な対応を取らないことを理由に昨年辞任している。

 翌26日午前、教皇はアイルランド西部の聖母巡礼地クノックを訪れ、聖職者らによる虐待の被害者や、世界中の家族たちを聖母の保護に託して祈られた。

 午後、「世界家庭大会」を締めくくる教皇ミサが、ダブリン市内の公園、フェニックス・パークで行われた。

 バチカン・ニュースによると、雲が広がり、強い風が吹く天候にもかからわず、広大なミサ会場は、朝から詰めかけた何万という信者でいっぱいとなった。

 教皇はミサの中で、アイルランドのカトリック教会の聖職者や修道者らによる未成年者への性的虐待に対し、赦しを願うと共に、教会関係者側から被害者らに対し、同情や、正義と真理を追求しようとする態度が欠けていたこと、彼らがこの苦痛に満ちた状況を前に沈黙していたことを謝罪した。

 また、教皇は、子どもたちから不当に引き離され、子どもたちとの再会を求めて苦しんだ多くの若いシングルマザーたちに言及。これらの母親たちに心からの赦しを願った。

 教皇は、このようなことが二度と起きないように、そして正義が行われるように、神がこの恥と悔い改めの心を育ててくださるようにと祈った。

 ミサの終わりに、次回2021年の「世界家庭大会」は、ローマで開催されることが発表された。

 教皇は、ミサ終了後、ダブリン市内の修道院で、アイルランド司教団との出会いを行い、ダブリン空港での送別式を経て、ローマに戻った。


◎教皇に元バチカン駐米大使が辞任要求

 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)の駐米大使を務めたことのあるカルロ・マリア・ビガノ大司教(77)が教皇フランシスコに辞任を求めていることが8月26日明らかになった。

 米ワシントンのカトリック教会セオドア・マカリック枢機卿が未成年者に性的虐待をしていた事件に関し、ビガノ大司教が駐米大使だった2013年、教皇と面会した際、マカリック枢機卿について未成年者への虐待の疑いが持ち上がっていることを報告したにもかかわらず、教皇が適切に対処しなかったためという。

 バチカンはこの7月下旬、教皇がマカリック枢機卿の辞職を受け入れたと発表したが、大司教は、教皇がそれまで措置を講じなかったことを批判している。

 ビガノ大司教は米カトリック紙『ナショナル・カトリック・レジスター』などに掲載された書簡の中で、疑惑について2013年に教皇に報告したが、教皇は「少なくとも2013年6月23日からは、マカリック枢機卿が性犯罪を繰り返す者だと知っていた」とし、「堕落した人物」だと分かっていたのに最後までかばったと批判している。

 教皇は26日、訪問先のアイルランドからバチカンに戻る機内で書簡について記者団に問われると「それについては一言も言うつもりはない」と答えた。

 教皇の歴史的なアイルランド訪問に合わせた書簡の発表だけに、教皇による様々な教会改革に反対する伝統派による攻撃作戦なのでは、との見方も出ている。

 聖職者による長年にわたる児童性的虐待と、教皇庁以下の教会組織が適切に対応しなかった問題は、アイルランドのほか、米国やオーストラリアなど世界各地で報じられている。


≪短信≫

〇世界福音同盟、業務担当副総主事にレイモンド・スワトコウスキー氏
 世界福音同盟(WEA)は8月21日、レイモンド・スワトコウスキー牧師(米イリノイ州アンティオーク在住)を業務担当副総主事に任命したと発表した。就任は9月1日付。同州ウィートンにある事務所に常駐し、WEAの管理運営や財務、広報、会員管理、資金調達などを統括する。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月26日)=http://www.cwjpn.com/cwjpn/
★日本カトリック平和旬間=命を尊び、真の平和を
★西日本豪雨被災地・広島教区・倉敷共同体=ボランティア待つ=事前登録制や定員制の所も
★前田万葉枢機卿、故郷へ=長崎・新上五島町で歓待
★「天皇の代替わり」にどう向き合うか=超教派で祈祷集会=仙台キリスト教連合
★教皇フランシスコ=不祥事には証しで対抗=青年たちに呼び掛ける

 

 =KiriShin(8月21日・休刊)=http://www.kirishin.com

 

 =クリスチャン新聞(8月26日)=http://クリスチャン新聞.com
★「大嘗祭」共通課題から出発=仙台の継続的取り組み平和集会で成果
★「安心して絶望できる人生」が五輪メダル生んだ=第26回べてるまつりにカーリング吉田知那美選手
★平和講演会で川越弘氏「沖縄からこの国に訴える」=加害の歴史に立って痛みを共有すべき
★艦長、海兵隊員120人初参加=犠牲者の孫も祖父の墓碑前でしばしの時=第24回英連邦戦没捕虜追悼礼拝
★三重県派遣の子ども代表団の靖国神社参拝に抗議、参拝取りやめを求める声明=日本同盟基督教団「教会と国家」委員会

 
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