世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1491信(2019.08.19)

  • 香港の抗議活動にカトリックが担う役割をBWが解析
  • 殴られた記者は工作員の可能性、中国当局が報道を沈静化?
  • 米国の対中追加関税、聖書は適用外にと公表
  • 比国家警察長官、米国と新たなテロ対策訓練施設建設で合意覚書
  • バビロニアのエルサレム征服証拠発見、聖書の記述裏付けか
  • 《メディア展望》

 

◎香港の抗議活動にカトリックが担う役割をBWが解析

 【CJC】香港の抗議活動が続いている。『ビター・ウインター』(BW)は、「新たな天安門事件になるとも考えられている。人権保護の活動家は、米国及びドナルド・トランプ大統領の姿勢が、抗議活動の運命を決定し、さらに中国共産党内の習近平主席に対する敵対勢力を作り出す、または、勢いを与える可能性があると推測している」と解析している。

 2018年5月に「中国における信教の自由の迫害と人権に関する」メディアをイタリアのトリノで開始した『ビター・ウインター』は、「その直後より、人に知られることが少ないメディアではなく、中国共産党から大きな頭痛の種とみなされるメディアへと成長」した、と自認している。その『ビター・ウインター』が、香港の抗議活動を取り上げる中で、バチカンからも頭痛の種とみなされるような解析にまで踏み込んでいる。今回の解析は『ビター・ウインター』のマッシモ・イントロヴィーニャ編集長自身が行っていることも注目される。

 解析のあらましを紹介する。

 香港の一部の人々は、トランプ大統領と習近平主席に加え、第三世界の指導者の選択が香港の未来に大きな影響をもたらすと考えている。その指導者とは教皇フランシスコだ。香港のローマ・カトリック教会の信者は、香港の人口の5%に過ぎないが、政治、文化及びメディアにおいて不釣り合いな力を有している。林鄭月娥(ラムチェン・ユッコ)香港特別行政区行政長官自身もカトリック教徒であり、カトリックの学校で教育を受けた。また、重要な政治の事案に関してカトリックの司教に定期的に相談していることは周知の事実である。林鄭長官が中国共産党寄りの立場を取っていることが、抗議活動に拍車をかけている。

 香港は伝統的にバチカン(ローマ教皇庁)と中国との橋渡し役を務めてきた。バチカンと中国の関係の専門家によると、2013年にフランシスコが教皇に就任する前は、反共産党の陳日君(チャン・ヤックワン)枢機卿(元香港教区司教)の影響力により、神父と司教の間に、中国政府が管理する『中国天主教愛国会』への参加を勧める共産党とのいかなる協定にも、強い反対が起こり、功を奏していた。その影響力はバチカンにも及んでいた。この専門家によると、陳枢機卿はサレジオ会の同僚である韓大輝(ホン・タイファイ)大司教(香港生まれ)と最強のタッグを組んだという。韓大司教はバチカンで最も影響力の高い中国の司教であり、2010年以降、福音宣教省の長官を務めていた。この機関は中国を直接担当するバチカンの部局だ。陳枢機卿と韓大司教はベネディクト16世と親交があり、事実上、カトリックの神父と司教に天主教愛国会への参加を勧める、または強制する全ての協定を妨害してきた。2人は後に大司教となるエットーレ・バレストレロ神父の支持を得ていた。バレストレロ神父はバチカン国務省の上位の政務官であり、中国共産党に断固として反対する立場を取っている。

 2013年、ベネディクト16世が退位し、フランシスコが教皇に選ばれた。教皇フランシスコは外交の優先事項の一つとして、反中国共産党のカトリック教徒に「犠牲」を求めた。それは中国政府との合意を示唆していた。

 陳枢機卿が2009年に退任すると、後任として(後に枢機卿となる)湯漢司教が就任した。湯漢司教は陳枢機卿ほど中国共産党を敵対視しておらず、いかなる問題に対しても(前任者の陳枢機卿とは異なり)バチカンを批判することもなかった。

 バチカンが香港で非常に用心深い行動を取っていることは、14年の補佐司教2人の任命から見て取れる。1人は反中国共産党として知られる聖フランシスコ会の夏志誠(ハー・チシン)、もう1人は中国との合意に前向きな李斌生(リー・バンサン)だった。李補佐司教は『オプス・デイ』に所属し、神学的には保守派と見なされている。

 しかし、16年から17年にかけて状況は変化し、18年のバチカンと中国間の合意に関する特定の決定が既にバチカンで行われていた可能性がある。韓大司教は16年にバチカンから外され、グアムに派遣された。グアムでは、前司教が性的虐待のスキャンダルに関与したとして辞任しており、その対処のためとされた(内部筋によると、この人事に関しても中国共産党がバチカンに謝意を示したようだ)。その後、韓大輝大司教は教皇使節としてギリシャに派遣される。

 2016年、香港の李補佐司教がマカオ司教に昇進した。この人事にも中国共産党は感謝したという。

 その結果、激しい抗議活動の中、香港カトリック教会を導く役割を湯枢機卿が担うことになった。湯枢機卿はカトリック教徒の林鄭月娥長官に、物議を醸し出している逃亡犯条例の改正案への署名に反対することを推奨し、その他の宗教の指導者たちも抗議活動者をある程度支持していた。

 湯枢機卿は、香港のカトリック教徒に対して、バチカンと中国間の合意に対する陳枢機卿の強い非難を支持しないことを伝えた。その一方で夏志誠補佐司教による抗議活動への積極的な参加を阻止しないどころか、道徳心の高い指導者の1人と見なした。

 バチカンは香港の抗議活動に関して沈黙を貫いている。しかし、遅かれ早かれ言葉ではなく、重大な決定を介して立場を表明するべきである。湯枢機卿は80歳であり、職務への復帰はあくまでも一時的であることを明言していた。間もなく教皇は新しい香港の司教を選ばなければならない。現地のカトリック教徒は抗議活動を大々的に支持し、夏補佐司教が任命されることを希望している。マカオの李司教が任命される場合、抗議活動の参加者は抗議活動と民主主義に反対する行動の現れだと見なすだろう。

 いずれ分かることだが、夏補佐司教の任命は、中国共産党と国際社会に対し、バチカンが香港の民主主義を支持していること、そして、人権問題をバチカンが軽視していたために、2018年の合意が実現したわけではないことを示す効果がある。李司教の任命は反対のメッセージを送ることになるが、李司教は一筋縄ではいかない性格の持ち主であり、同氏が無条件で中国共産党を支持していると見なすことは間違いだ。同様に、夏補佐司教が陳枢機卿によるバチカンに対する真っ向からの批判を支持したことはない。教皇フランシスコが再び第三の候補者を「考案」して世間を驚かす可能性がないわけではないが、今のところ手掛かりや噂は聞こえてこない。


◎殴られた記者は工作員の可能性、中国当局が報道を沈静化?

 【CJC】中国当局が、香港国際空港で抗議者らに襲われた政府系メディア『環球時報』の付国豪記者に関する報道を沈静化し始めた、と『大紀元時報日本』電子版が報じている。『大紀元時報』は、法輪功迫害問題など中国共産党に対する批判的報道姿勢で知られる。

 香港国際空港では8月13日、抗議デモに参加した一部の市民が、中国政府系メディア「環球時報」の付国豪記者を、抗議者に扮した警官と疑い殴打した。中国メディアは14日、相次いで付氏を英雄だと大々的に報道したが、15日になると付氏に関する報道は急激に減った。米政府系『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)は、14日未明に始まった付記者に関するプロパガンダ報道が10時間以上続いた後、「当局は突然、報道を沈静化し始めた」と伝えた。

 付記者の身分証に記されている北京市海淀区万寿路の住所は、中国の情報機関、国家安全部(省)の職員寮だという。

 中国当局や共産党機関紙『人民日報』は当初、付記者が香港人デモ隊に殴られたのを利用して、国内で民族主義をあおり、香港市民への圧力を強化しようとしたものの、付記者が国家安全部のスパイである可能性があると指摘されたため、共産党「中央宣伝部」の担当者が、付記者について「話を避けている」と『大紀元時報日本』は伝えた。

 『環球時報』編集長の胡錫進氏は16日、米メディア『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)の取材に、付国豪記者について国家安全部の工作員ではないと強調した。しかし、胡編集長は、13日、香港国際空港にいた付記者が「記者証」を持っていなかったと認めた、とも『大紀元時報日本』は伝えている。


◎米国の対中追加関税、聖書は適用外にと公表

 【CJC】ドナルド・トランプ米政権は8月14日、対中追加関税の適用外となる製品のリストを公表した。その中に、中国で印刷された聖書は適用外となる。
ロイター通信が報じた。

 米通商代表部(USTR)の発表によると、9月1日と12月15日から発動される10%の対中追加関税の適用外となる約25の製品カテゴリーの中に聖書は含まれている。

 他の製品では、チャイルドシート、港湾や建設現場などで使われるクレーン、一部の魚類などが追加関税の適用外。ただロザリオなど他の宗教関連製品は9月からの10%の追加関税の対象となる。

 米国勢調査局のデータからロイターが算出したところによると、米国が輸入する宗教関連製品の約60%は中国製で、昨年の輸入額は約1100万ドル(約11億6800万円)だった。

 中国で印刷された聖書への関税は「聖書税」と呼ばれ、教会や宗教団体の布教活動に影響を及ぼすとの批判が出ていた。


◎比国家警察長官、米国と新たなテロ対策訓練施設建設で合意覚書

 【CJC】フィリピンのアルバヤルデ国家警察長官とロー駐比米首席公使は8月15日、テロ対策訓練施設を新たに建設する合意覚書を結んだ。現地邦字紙『まにら新聞』(電子版)が19日付けで報じた。フィリピン側の要請に米国が応じたもので、米国が資金1千万ドルを拠出してマニラ近郊カビテ州シラン町にある警察学校内に設立、共同で運営に当たる。

 アルバヤルデ長官は「テロへの対応能力を高める施設で、国内外の問題に対処できる」と述べ、米国の協力に謝意を示した。

 合意覚書に先立ち5月には、比、インドネシア、米国の警察官や検察官、法律専門家らが集まり、テロ事件の捜査などに関するワークショップを行っている。


◎バビロニアのエルサレム征服証拠発見、聖書の記述裏付けか

 【CJC】エルサレムにある「シオンの山」で発掘作業を行っていた研究チームがこのほど、古代バビロニアによる同市征服の証拠を発見した、と米メディア『CNN』が伝えた。エルサレム破壊に関する聖書の記述を裏付ける成果とみられる、と報じている。

 米ノースカロライナ大学の研究チームは今回、灰の堆積(たいせき)物や矢尻、壊れたつぼや照明器具などを発掘した。しかし最も重要な発見となったのは、房飾りかイヤリングとみられる宝石類。

 研究チームの共同責任者を務めるシモン・ギブソン氏は、こうした「上流階級」の痕跡が見つかったのは初めてと言う。紀元前587~586年に征服される前のエルサレムの豊かさを記した聖書の記述を確認する発見となろう。

 ギブソン氏は声明で「遺物が詰まった灰の堆積層に矢尻、特別な装飾品という組み合わせから、何らかの破壊行為があったことがうかがえる。金の宝石を捨てたり、矢尻を家庭ごみに出したりする人はいない」としている。

 発掘された矢尻は「スキタイの矢尻」と呼ばれる。紀元前7~6世紀の戦跡では「ごくありふれた」遺物で、バビロニア人の戦士が使っていたことで知られるという。

 エルサレム征服は新バビロニア王国の国王ネブカドネザル2世が主導し、多くの命が失われたと考えられている。旧約聖書「列王記下」で記されたソロモンの神殿の破壊にもつながっている。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月18日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★広島=平和の糸をつむぐ=「沖縄の痛み」に連帯
★比叡山宗教サミット=祈ることから平和を
★海の日に船員奉仕を学ぶ=AOS横浜の研修会開催
★日本カトリック医療団体協議会=「永井 隆」テーマに全国大会=長崎
★日本の信者数 横ばい=前年比61人増の44万893人=2018年「カトリック教会現勢」

 

 =KiriShin(8月21日・休刊)=https://www.kirishin.com

 

 =クリスチャン新聞(8月18日・休刊)=https://クリスチャン新聞.com

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