世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1630信(2022.04.18)

  • 教皇、復活祭メッセージ「キリストの平和が勝るように」
  • エルサレム旧市街聖地で衝突、イスラエル警察とパレスチナ人
  • ウクライナ侵攻で正教会の混乱、孤立するキリル総主教
  • ウクライナのマリウポリでカリタス関係者死亡
  • 仏アーティストが「笑顔と人間らしさを」とウクライナに壁画
  • 建築家ガウディの展覧会、パリのオルセー美術館で開幕

 

◎教皇、復活祭メッセージ「キリストの平和が勝るように」

 【CJC】2022年度の復活祭を迎え、教皇フランシスコは4月17日、ローマと世界に向け、メッセージと祝福「ウルビ・エト・オルビ」をおくられた。バチカン・ニュースによって紹介する。
 16日夜、復活徹夜祭をバチカンの大聖堂で行われた教皇フランシスコは、明けた17日午前、復活の主日のミサを聖ペトロ(サンピエトロ)広場で捧げられた。
 そして、同日正午、教皇は大聖堂の花で飾られた中央バルコニーから、復活祭のメッセージとローマと世界に向けた教皇祝福「ウルビ・エト・オルビ」をおくられた。
 一昨年、昨年と、教皇による主の復活の日曜日のミサ、またメッセージと祝福は、パンデミックのために聖ペトロ大聖堂の中で行われたが、今年の復活祭は、聖ペトロ広場に地元ローマや世界各地からの多くの巡礼者らを再び迎えることができた。
 教皇はメッセージで、あまりに多くの流血と暴力を目にする戦争の中で迎えたこの復活祭に、わたしたちは愛の勝利を信じ、和解を希望するために、十字架上で死に復活したキリストの平和をこれまで以上に必要としている、と話された。
 冷酷な戦争の暴力と破壊に深く傷つけられたウクライナに平和を祈る教皇は、この苦しみと死の夜に一刻も早く新たな希望の朝が訪れ、平和が選択されるよう祈願された。
 教皇はウクライナの多数の犠牲者、数百万の避難民、離れ離れになった家族、失われた生活や破壊された町を心に留め、ウクライナの子どもたちの叫びに、世界の多くの子どもたちの苦しみを重ねられた。
 戦争の苦難の中で、移民や避難民を受け入れる多くの家族や共同体に慰めのしるしを見出す教皇は、こうした慈愛の行為がエゴイズムと個人主義に覆われた社会にとっての祝福となることを望まれた。
 教皇は、ヨーロッパにおけるこの紛争は、わたしたちに世界の他の地域の緊張と苦しみにもより目を向けさせるようになったと述べ、これらの状況からも目をそらさないようにと促された。
 そして、教皇は中東地域の平和を祈りつつ、特にエルサレムに兄弟愛と相互尊重を、レバノン、シリア、イラクに和解を、リビアに安定を、イエメンに紛争の停止を願った。
 アジアにおいては、教皇は暴力の続くミャンマーと社会的緊張と人道危機が続くアフガニスタンの状況を憂慮、アフリカでは、テロリズムに苦しむサヘル地域、対話と和解を必要とするエチオピア、暴力に苦しむコンゴ民主共和国に平和を祈り、洪水に襲われた南アフリカ東部に連帯を示された。
 また、ラテンアメリカにおける、パンデミックに伴う社会の不安定化を教皇は気遣われると共に、カナダでのカトリック教会と先住民の和解の歩みを復活の主の保護に託された。
 キリストの平和が皆の中で勝るように、と願われた教皇は、平和は可能、追求すべきものであると同時に、何よりも皆が責任をもって優先すべきもの、と呼びかけられた。


◎エルサレム旧市街聖地で衝突、イスラエル警察とパレスチナ人

 【CJC】エルサレム発ロイター通信によると、イスラエル・エルサレム旧市街の聖地で4月15日、イスラム教ラマダン(断食月)の金曜日朝の礼拝後に暴動が発生し、「アルアクサ・モスク」付近で警察と覆面をして投石するパレスチナ人が衝突した。
 エルサレムでは今年、イスラム教の聖なる月であるラマダンと、ユダヤ教の過越祭、キリスト教のイースター(復活祭)が重なり、緊張が高まっている。
 警察当局は、朝の礼拝終了時に残っていた暴力的な群衆を解散させるため、ユダヤ教徒には「神殿の丘」、イスラム教徒には「崇高な聖域」として崇められている聖地に入ったと説明。パレスチナ人の集団が近くにあるユダヤ教の祈りの場である「嘆きの壁」に向かって石を投げ始めたという。警察はイスラム教第3の聖地であるアルアクサ・モスクには立ち入っていない。
 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスはイスラエル警察を非難し、イスラエルは「結果に対する責任を負う」と表明した。


◎ウクライナ侵攻で正教会の混乱、孤立するキリル総主教

 【CJC】ロシア正教会のキリル総主教(75)が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えたことで、世界中の正教会は分裂の危機に陥り、専門家から見ても前代未聞の反乱が正教会内部で生じている。バチカン市発ロイター通信が伝えた。
 ロシアのプーチン大統領の盟友であるキリル総主教は、今回の戦争について、同性愛の受容を中心に退廃的であると見なす西側諸国への対抗手段、と考えている。
 キリル総主教とプーチン大統領を結びつけるのは、「ルースキー・ミール」(ロシア的世界)というビジョン。「ルースキー・ミール」とは、旧ソ連領の一部だった地域を対象とする領土拡張と精神的な連帯を結びつける構想だという専門家の説明をロイター通信は紹介している。
 キリル総主教の言動は、ロシア国内にとどまらず、モスクワ総主教座に連なる諸外国の正教会においても反発を引き起こしている。
 オランダ・アムステルダムの聖ニコラス正教会は、この戦争を機に、教区司祭が礼拝の際にキリル総主教を祝福する言葉を入れることをやめた。
 「キリル総主教は、まぎれもなく正教会の信用をおとしめた」と語るのは、リバプール・ホープ大学のタラス・ホームッチ上級講師(神学)。ホームッチ氏は、ウクライナのビザンツ式典礼カトリック教会の一員だ。同氏はロイターによる電話インタビューで、「ロシアでも声を上げたいと思っている人はもっと多いが、恐怖を感じている」と語った。
 ウクライナには約3000万人の正教徒がいるが、「ウクライナ正教会」(モスクワ総主教庁系、UOC─MP)と、別の二つの正教会に分裂している。後者の一つが、完全独立系「ウクライナ正教会」。
 UOC─MPのキエフ府主教区大主教であるオヌフリー・ベレゾフスキー師は、プーチン大統領に対し「同胞が相争う戦争の即時停止」を要請し、もう1人のUOC─MP府主教区大主教であるエボロジー師(東部スムイ市出身)は、配下の司祭たちに、キリル総主教のための祈りをやめるよう指示した。
 今回の戦争を批判する正教会の指導者としては、この他にも、アレクサンドリア及び全アフリカ正教会の総主教であるテオドール2世、ルーマニア正教会のダニエル総主教、フィンランド正教会のレオ大主教といった面々がいる。
 キリル総主教の態度は、ロシア正教会と他のキリスト教会の間にも亀裂を生みだした。
 世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ総幹事代行は、キリル総主教に「停戦に向けた当局の仲介と調停」を求める書簡を送った。
 これに対しキリル総主教は、「あからさまにロシアを敵視する勢力が国境に近づき」、西側諸国はロシアを弱体化させるための「大規模な地政学的戦略」に関与している、と応じた。WCCは両書簡を公開した。
 キリル総主教のプーチン氏支持の姿勢は、バチカンとの関係も悪化させた。
 2016年、教皇フランシスコは、キリスト教が東方教会と西方教会に別れた1054年の「大分裂」以来、ロシア正教会の指導者と面会した最初のローマ教皇となった。双方とも今年2度目の面会を実現したいと希望していたが、専門家の中にはこうなっては事実上不可能と見る向きも出ている。


◎ウクライナのマリウポリでカリタス関係者死亡

 【CJC】ウクライナ南東部マリウポリで、カリタス・ウクライナ事務所が攻撃され、メンバー2人とその家族5人が死亡したことの確認を受け、国際カリタス関係者は衝撃を受けると共に、深い悲しみを表明、この虐殺を直ちに停止するためのあらゆる努力を国際共同体に訴えた。『バチカン・ニュース』が4月12日報じた。
 国際カリタスのアロイシウス・ジョン事務局長は、この攻撃があったのは、おそらく3月15日であるとして、「この悲劇的なニュースにカリタス・ファミリーは戦慄し、衝撃を受けている。この悲劇をまさに体験している遺族とカリタス・ウクライナ関係者に、わたしたちは悲しみと連帯において一致する」と述べた。
 現段階では、マリウポリとの連絡が絶たれているために、現地のカリタス事務所にアクセスできず、カリタス・ウクライナはそこで起きたことを把握するための情報収集を続けている状態だという。
 国際カリタス総裁ルイス・アントニオ・タグレ枢機卿は、バチカンのメディアに対し、「人命が奪われたことに大きな悲しみとショックを受けている」と、国際カリタスを代表し遺族らに深い弔意を表すと共に、負傷した人々を気遣った。
 同枢機卿は「暴力に終止符を打ち、対話へと戻り、すべての人を兄弟姉妹と認めるために、あらゆる努力がなされるよう、わたしたちはこの悲しみを国際共同体へのアピールとしたい」と語った。
 カリタスはカトリック教会の支援組織。国際カリタスをはじめ、各国、教区、小教区レベルなどのカリタスがある。


◎仏アーティストが「笑顔と人間らしさを」とウクライナに壁画

 【CJC】残酷な戦争のさなかにあるウクライナの壁に、平和と無垢(むく)を表す絵を描こうと、パリを拠点とするグラフィティアーティスト「C215」ことクリスチャン・ギュミー氏(48)が、首都キーウのバス停に青と黄色のスプレーで少女の絵を描いている。周りの破壊された建物とコントラストをなす。AFP=時事通信が伝えている。
 スプレー缶を持ったギュミー氏は、「支援の印だ」と話した。「厳しい状況の中で、人々が少しでも笑顔になって、人間らしさを取り戻せたら満足だ」と語る。
 ギュミー氏は、フランスのストリート・アート界をけん引するアーティストの1人で、英国の覆面アーティスト、バンクシーとコラボレーションをしたこともある。
 ロシアのウクライナ侵攻が始まるとすぐ、ギュミー氏はパリの集合住宅の壁一面にウクライナ国旗の色である青と黄色で少女の絵を描いた。
 ウクライナ人から話を聞き、自分に何ができるか数日考え、ウクライナ行きを決めた。危険と知りつつも、行かないという選択肢はないと感じたのだった。
 「戦争についてのストリート・アートをやりたいなら、戦争が起きている場所で制作し、被害と現状を伝えるものでなければならない」とギュミー氏。
 ギュミー氏はまもなくフランスに帰国する。だが、必ずキーウに戻ってくるつもりだ。
 自分の作品に対するウクライナ人の反応は素晴らしかったという。その反応に「自分自身も幸せを感じた」と語った。


◎建築家ガウディの展覧会、パリのオルセー美術館で開幕

 【CJC】AFP通信によると、パリのオルセー美術館で4月12日、スペイン・カタルーニャ出身の建築家アントニ・ガウディをテーマにした展覧会が開幕した。会期は7月17日まで。バルセロナの建築学校で学んだ青年期から、建築家として活躍し始めた1880年代、名声を確固たるものとするまでのガウディの作品が展示されている。
 ガウディの未完作品として知られ、バルセロナの象徴でもあるサグラダ・ファミリアについて、同美術館職員は「労働者階級が比較的多い地区に建てられたため、貧者の大聖堂とも呼ばれている」と説明、「貧困層への社会活動と見なすこともできる」と指摘した。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(4月10日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
教皇=ウクライナとロシアをマリアのみ心に奉献
教皇、再度終結訴える=「残酷で無益」な侵攻
教皇=教皇庁の機構改革を発表=教会の宣教の使命を強調
増えるヘイトクライム=「人種差別撤廃法制度」がないことに起因
小さな教会の平和行進=一人一人の思いを集めて=熊本=菊池・山鹿教会
 
 =KiriShin(4月11日)=https://www.kirishin.com
ナルニア国が新装開店=豊かな本との出会いの場=SNSも積極的に活用
改宗を迫られる東マレーシアの先住民(葉先泰)
NCC教育部=新卒者10人が「草の根のエキュメニズム」学ぶ
正教「兄弟間」の和解の実現願い日本ハリストス正教会が嘆願書
洗車を止めようとしたウクライナ正教会司祭射殺
 
 =クリスチャン新聞(4月10日)=https://クリスチャン新聞.com
WVルーマニアで支援開始=難民の多くは女性と子ども
「戦争避難」という形で日本宣教へ=沖縄で働き開始=ウクライナ人宣教師ナディヤさん
バプ連盟公害問題特別委=在日ロシア大使、岸田首相へ声明
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