世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1648信(2022.08.22)

  • 「世界に人間への情熱を広げよう」教皇、リミニ・ミーティングにメッセージ
  • エジプトのコプト教会、礼拝に5000人以上集まった中で火災
  • エジプトのコプト教会火災でイスラム教徒が子どもを救出
  • サッカー選手モハメド・サラーがエジプトの教会火災に約2000万円寄付
  • 旧統一教会がソウルでデモ、日本メディア非難、安倍氏追悼も
  • 世界教会協議会代表団がウクライナ訪問
  • 「悪魔の詩」の作家ラシュディさん刺傷、「本人と支持者に責任」とイラン外務省
  • 「エデンの園」あったイラク・メソポタミア湿地帯干上がる
  • 《メディア展望》

 

◎「世界に人間への情熱を広げよう」教皇、リミニ・ミーティングにメッセージ

 【CJC】教皇フランシスコは8月19日、イタリアのリミニで20日~25日に開催される「市民間の友情のためのミーティング」にメッセージを送った。
 バチカン・ニュース(日本語版)によって紹介する。「市民間の友情のためのミーティング」(ミーティング・リミニ)は、国・宗教・文化・職業を超えた人々の出会いと対話を育み、友情と連帯を生み出すことを目的とする毎年恒例の交流イベント。1980年、カトリック運動「コムニオーネ・エ・リベラツィオーネ」の有志によって始まったこのミーティングは、今日、多様な分野からの広い参加を得る文化行事として定着している。
 教皇は、同イベントの開催にあたり、リミニのフランチェスコ・ランビアージ司教に宛て、バチカン国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿を通しメッセージを送った。
 この中で、2022年度のミーティングのテーマ「人間への情熱」に触れた教皇は、「コムニオーネ・エ・リベラツィオーネ」の創始者で今年生誕100年を迎えたルイジ・ジュッサーニ神父(イタリア、1922~2005)の、「キリスト教は一つの宗教を創ろうとして生まれたのではない。それは人間への情熱から生まれた」という言葉を回想。
 さらに、同神父の、「『あなたが心にかける人間とは何なのか、人の子よ、なぜあなたは人間の世話をするのか』人生の中でこの問いほどわたしに衝撃を与えたものはない」という言葉をも引用した。
 教皇は、キリストの一人ひとりの人間に対する情熱は、わたしたちの他者に対する眼差し、計算や制限のない無償の愛を励ますものである、と述べた。
 また、その一方で、多くの対立や、利己主義、一部の利益の優先などが見られる今日の世界において、自分の隣にいる人を尊重し、守り、世話する存在として見つめること、他者と自分を隔てる距離を埋めることは容易ではない、と述べている。
 今日の社会は、バルコニーから説法をするのではなく、道に降り、信頼しうる希望に支えられて、人々の日常生活の苦労を分かち合う人を必要としている、と教皇は強調。
 すべての人間の尊厳の根源、普遍の兄弟愛の可能性は、キリスト教共同体の生活において体現されたイエスの福音にある、と指摘した。
 教皇は、同ミーティングが市民間の友情を育みながら、世界に人間への情熱を広げることができるよう、励ましを送った。


◎エジプトのコプト教会、礼拝に5000人以上集まった中で火災

 【CJC】カイロ発アラブ・ニュースの報道によると、ナイル川の西に労働者階級が多く住むインババ地区にあるのアブ・シフィン・コプト教会で8月14日、礼拝が行われていた時に火災が発生した。現場には濃い煙が立ち込め、叫び声で騒然となった。
 同教会には5000人以上が集まっていたが、多くは窓から通りに飛び降りる人も多かった。
 救急隊が駆けつけ鎮火した時点で、15人の子どもを含む41人が死亡、14人が負傷していた。負傷者はインババ地区の病院に搬送された。
 棺を担いだ人々が、泣きながら棺に触れようと手を伸ばす弔問客をかき分けて進んでいった。同教会のアブデル・メシフ・ベクヒト司祭の棺もあった。
 翌15日朝、アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、火災を受け「国家機関を全て動員した」と述べた。その後、コプト正教会の長、教皇タワドロス2世に「電話で哀悼の意を伝えた」ことを明らかにした。
 エジプト内務省は、「教会2階の空調設備の電気系統のトラブルが出火原因であることを確認した」と発表した。
 コプト教会は中東最大のキリスト教共同体で、イスラム教徒が大多数を占めるエジプトの人口1億700万人の約10%を占めている。
 2014年に当選したエルシーシ大統領は、コプト教会のクリスマス礼拝に毎年出席する初めての大統領となった。2月には、最高憲法裁判所の裁判長に、史上初めてコプト教徒の判事を任命した。
 アル・アズハルのグランド・イマームであるアフマド・アル・タイーブ師は、犠牲者遺族への支援を約束し、様々なNGOと現金給付の調整をしている。また、教皇タワドロス2世に支援のメッセージを送った。


◎エジプトのコプト教会火災でイスラム教徒が子どもを救出

 【CJC】エジプトの首都カイロ近郊ギザのアブ・シフィン・コプト教会で8月14日、大規模な火災が発生した。エジプトは人口約1億人の約9割をイスラム教徒(ムスリム)が占めているが、コプト教徒も1割弱とされる。
 8月14日に、41人が死亡し14人が負傷したアブ・シフィン教会の火災で、ある若いエジプト人のムスリムが5人の子どもを救助していた。カイロ発アラブ・ニュースが報じた。
 「人々を救うために、すぐに教会へ飛び込みました。するとそこは、炎と煙で充満していたのです」。こう語ったのは、教会の隣に住み、自身も救助中に負傷したムハンマド・ヤヒヤ氏。
 教会の中から叫び声が聞こえたために教会へ向かったと、ヤヒヤ氏は付け加えた。高濃度の煙が彼の呼吸と視界をさえぎったので、彼は身につけていたシャツを脱いでそれを水に浸し、呼吸器に煙が入らないよう、鼻を覆った。
 ヤヒヤ氏は高齢男性を背負って救助しようとしたものの、消火に使用された大量の水のために滑り、共に地面に倒れ込んだ。
 同氏はその転倒により足を骨折し、病院に搬送された。彼のもとには多くの聖職者が見舞いに訪れ、彼の状態を気遣い、その勇気に謝意を表している。


◎サッカー選手モハメド・サラーがエジプトの教会火災に約2000万円寄付

 【CJC】リバプールの著名なサッカー選手モハメド・サラーは、エジプト・ギザのアブ・シフィン・コプト教会火災の被害者救済のため、イスラム教徒ではあるが、300万エジプト・ポンド(約2145万円)を寄付した。
 サラーは「プレミアリーグ」でアフリカ人史上最多得点記録を更新、英サンデー・タイムズ紙が行った「英国で最も寛大な人物2022年度コンテスト」で第8位に選ばれている。
 エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、「礼拝所で主とともにあるために亡くなった罪のない犠牲者の家族に心からの哀悼の意を表する」と述べた。


◎旧統一教会がソウルでデモ、日本メディア非難、安倍氏追悼も

 【CJC】世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が8月18日、ソウル中心部の光化門周辺で信者による集会とデモを行った。団体側によると、参加者は日本人信者の女性が中心だった。ソウル発時事通信の報道を紹介する。
 安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を機に団体への批判が高まる中で、信者は日本のメディアに向け「歪曲(わいきょく)報道を中断しろ」などと連呼した。集会では安倍氏の追悼も行った。


◎世界教会協議会代表団がウクライナ訪問

 【CJC】8月31日から9月8日にかけて世界教会協議会(WCC)総会がドイツ南部カールスルーエで開催されるのを控えてWCC代表団が8月1日から5日までウクライナを訪問した。
 イオアン・サウカ総幹事代行を団長とする代表団は3日、ウクライナ正教会(OCU、非モスクワ総主教庁系)の首座主教であるエピファニー府主教、渉外局長エバストラティー大主教と会談。4日には、ウクライナ正教会(UOC、モスクワ総主教庁系)の首座主教であるオヌフリイ府主教と会談した。
 サウカ総幹事代行は、「私たちは、WCC総会にウクライナからの代表者が参加することを確認するためにここに来た」と指摘、「神は苦しむ人々の側におり、『公正に基づいた平和』は常に勝利する」と語った。
 全ウクライナ教会・宗教団体協議会(AUCCRO)の代表者たちとも会談。アルメニア使徒教会(アルメニア正教会)ウクライナ教区主教でもあるAUCCROのマルコス・ホフハニシャン議長は、「ロシアが侵攻する中で行われた今回の会談は、われわれにとり、またウクライナの宗教界にとって非常に重要なもの」と述べ、代表団を歓迎した。
 AUCCROは、正教会や東方典礼カトリック教会、カトリック教会、プロテスタント諸教会など、キリスト教の各教派に加え、ユダヤ教やイスラム教の宗教団体も加盟しており、ウクライナに存在する宗教団体の95パーセントをカバーしているという。
 今回の訪問には、WCC副総幹事で信仰職制委員会委員長のオダイル・ペドロソ・マティアス氏や広報担当のイバルス・クプシス氏などが随行した。
≪連絡≫第3節の<全ウクライナ教会・宗教団体協議会(AUCCRO>関連記事は、8月11日に先行配信されたメディア「クリスチャントゥデイ」を参考にしています。(主宰者)


◎「悪魔の詩」の作家ラシュディさん刺傷、「本人と支持者に責任」とイラン外務省

 【CJC】1988年出版の小説「悪魔の詩」がイスラム教を冒涜しているとして一部のイスラム教徒の怒りを買った英作家サルマン・ラシュディさん(75)が8月12日、米ニューヨーク州で講演中に刺され重傷を負った事件について、イラン外務省は15日、襲撃犯とのいかなるつながりも「断固として」否定すると表明した。そしてラシュディさん自身に責任があると非難した。英BBCの報道を紹介する。
 ラシュディさんは講演中、壇上に駆け上がった男に、顔や首、腹部などを少なくとも10回刺され、重傷を負った。現在は自力で呼吸することができている。
 イラン国営放送が発行する日刊紙ジャーメ・ジャムは、今回の攻撃でラシュディさんが片目を失うかもしれないというニュースを取り上げ、「サタン(キリスト教の悪魔)の片目が見えなくなった」としている。
 小説「悪魔の詩」出版から1年後、イランの最高指導者だったホメイニ師はラシュディさんの死刑を命じた。ホメイニ師はラシュディさんを殺害した者に300万ドルの懸賞金を支払うとする「ファトワ」(イスラム教法学者が宗教的な立場から出す勧告や判断)を発した。このファトワは現在も有効で、イランの準公的な宗教団体は2012年に50万ドルを懸賞金に上乗せした。
 イラン外務省のナセル・カナニ報道官は15日、事件について初めてイランの公式見解を示し、イラン政府は犯人とのいかなるつながりも「断固として」否定すると述べた。そして、「誰ひとりとしてイラン・イスラム共和国を非難する権利はない」と付け加えた。
 報道官は、ラシュディさんが著書の中で宗教を侮辱することを、言論の自由で正当化することはできないとしている。
 報道官はまた、事件の加害者について、イランはメディアで報じられていること以上の情報は持ち合わせていないと付け加えた。


◎「エデンの園」あったイラク・メソポタミア湿地帯干上がる

 【CJC】チグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域、イラク南部のメソポタミア湿地帯は、旧約聖書の「エデンの園」があったとされる。2016年には国連教育科学文化機関(UNESCO=ユネスコ)の世界遺産にも登録された。
 しかし、この肥沃(ひよく)な土地が干上がっている。3年にわたる干ばつと少雨、そして隣国トルコやイランを源流とする河川の水量減少が原因だ、とするAFP=時事通信の報道を紹介する。
 オランダの平和団体PAXが行った衛星データに基づく評価によると、2020年8月からの2年間で、フワイザ湿原やチバイッシュ湿原などイラク南部の湿地帯の46%で地表付近の水が完全になくなった。さらに41%で水位や湿度の低下がみられた。
 国連食糧農業機関(FAO)駐イラク事務所は、湿原地帯はイラクで最も貧しい地域の一つで、6000世帯以上が壊滅的な被害を受け、「生活のための唯一無二の資産である水牛を失っている」と指摘した。
 イラン国境にあるフワイザ湿原にも大きな影響が出ている。イランの水管理当局の責任者は、さまざまな対策を講じているが、50度を超える気温の中で「蒸発量を補うことは不可能だ」という。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月21日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼広島教区平和行事=平和のバトンつなごう=愛し合うきょうだいとして
▼教皇、停戦と交渉促す=ウクライナで続く戦争
▼教皇、9月中旬にカザフスタン訪問
▼ニカラグア左翼政権=教会への迫害続ける=ラジオ局の閉鎖命令
▼比叡山宗教サミット35周年=気候変動を考える=いのち全体のつながりで
 
 =KiriShin(8月11日・既報再録)=https://www.kirishin.com
▼旧・統一協会元信者が証言=「本質は変わっていない」
▼"キリスト教会の責任は大きい"=「原理研究会」での極貧生活を振り返る
▼加藤智大さんの死刑執行に抗議声明相次ぐ
▼安倍元首相の「国葬」にも撤回求めて、さらなる抗議
▼ヨルダン国王とイスラエル首相=パレスチナ国創設へ意見交換
 
 =クリスチャン新聞(8月21日・夏季休刊)=https://クリスチャン新聞.com

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