世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1650信(2022.09.05)

  • 「妥協なく愛し抜いた、謙遜な牧者」=教皇ヨハネ・パウロ1世列福式
  • ウクライナが教皇発言に反発、ロシア思想家の娘爆殺で
  • ゴルバチョフ元ソ連大統領の「国葬」行わず プーチン氏は葬儀欠席
  • ブラジルで先住民保護区への侵入や違法搾取、ボルソナーロ政権下で3倍増
  • 《メディア展望》

 

◎「妥協なく愛し抜いた、謙遜な牧者」=教皇ヨハネ・パウロ1世列福式

 【CJC】バチカン・ニュースによると、教皇ヨハネ・パウロ1世(アルビーノ・ルチアーニ)の列福式が9月4日、バチカンの聖ペトロ(サン・ピエトロ)広場で行われた。
 この日、教皇フランシスコは、聖ペトロ広場で捧げたミサ中の列福式で、ヨハネ・パウロ1世を福者として宣言した。
 ミサには、ヨハネ・パウロ1世とゆかり深い、イタリア北部のベッルーノ=フェルトレ教区、ヴィットリオ・ヴェネト教区、ヴェネチア総大司教区をはじめ、世界各地からの巡礼者が参加。イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領も参列した。
 列福の儀式では、ベッルーノ=フェルトレ教区のレナート・マランゴーニ司教が、神のしもべ教皇ヨハネ・パウロ1世の列福を教皇フランシスコに願い出た。
 続いて、列福申請代理人ベニアミーノ・ステッラ枢機卿がヨハネ・パウロ1世の略歴を読み上げ、その人となりを振り返った。
 ヨハネ・パウロ1世の人となりが紹介された後、教皇フランシスコは、「尊者・神のしもべ、教皇ヨハネ・パウロ1世は、これより福者と呼ばれ、教会法に基づき、任意の場所で、毎年8月26日に記念される」と宣言。
 アレルヤが歌われる中、聖ペトロ大聖堂の正面バルコニー下に掲げられた福者ヨハネ・パウロ1世の肖像が除幕された。
 そして、聖遺物として、ヨハネ・パウロ1世が1956年頃「対神徳」について書き記した自筆紙片が祭壇の近くに置かれた。
 教皇フランシスコは、列福ミサの説教で、「わたしたちは神の不滅の愛の対象です」(1978年9月10日=お告げの祈り)というヨハネ・パウロ1世の言葉を引用。十字架を見つめるわたしたちは、わたしたちの人生の中で決してかげることなく、最も暗い闇をも照らす、これほどまでの神の愛にふさわしくあるよう招かれている、と話した。
 また、「十字架の上に身をかがめ、主の冠のとげに刺されることなしに」十字架につけられたイエスに接吻することはできない、というヨハネ・パウロ1世の言葉を思い起こしつつ、すべてのとげを受けながらも、中途半端ではない、徹底した愛と信仰を生きるよう、信者たちを励まされた。
 教皇は、福者ヨハネ・パウロ1世の、福音の喜びのもとに、妥協なく最後まで愛し抜いた生き方、イエスの弟子の清貧を体現し、物質的な富から離れるだけでなく、何よりも自己中心的な虚栄を退け、イエスに従い、温和で謙遜な牧者として歩んだ生涯を見つめられた。
 「ヨハネ・パウロ1世は、その微笑みをもって、主の善良さを伝えることができた」と述べた教皇は、同福者がわたしたちに「魂の微笑み」を与えてくれるように祈った。
 そして、「主よ、わたしの短所、欠点と共にわたしをお受けください。しかし、あなたがお望みになるとおりの者にしてください」(1978年9月13日・一般謁見)と、ヨハネ・パウロ1世のようにわたしたちも願おう、と信者たちを招いた。
 
 ※ ヨハネ・パウロ1世の略歴
 アルビーノ・ルチアーニ(後の教皇ヨハネ・パウロ1世)は、1912年10月17日、イタリアのベッルーノ=フェルトレ教区のフォルノ・ディ・カナーレ(現在のカナーレ・ダゴルド)に、ジョヴァンニ・ルチアーニ=ボルトラ・タンコン夫妻の4人の子息の長子として誕生した。
 1919年、初聖体と堅信を受け、司祭の指導のもと、早くから召命を育んだ。
 1935年にベッルーノで司祭叙階。42年、ローマの教皇庁立グレゴリアン大学で神学修士、47年、神学博士号取得。ベッルーノ教区で司牧のかたわら教壇に立ち、教区シノドスの事務局長、教理部門責任者などを務めた。54年、司教代理。
 1958年、ヨハネ23世よりヴィットリオ・ヴェネト司教に任命され、同年、司教叙階。司教紋章には、モットーの「謙遜」の上に「信仰」「希望」「愛」を表す三つの星を掲げた。それは常に彼の司教職におけるあり方を表すシンボルとなった。
 対話と傾聴、司牧訪問や信者との直接の触れ合いを重要視し、地域の社会問題に関心を持った。信徒の教会活動への参加、司祭間の協力を励まし、召命と若い司祭の育成に力を注いだ。説教に優れ、福音のメッセージを伝えることにおいて類稀な才能を示した。
 ヴィットリオ・ヴェネト司教時代、第二バチカン公会議に全会期(1962~65)を通して参加。その教えを教区に明確かつ効果的に伝え、理解を深めさせた。教区からブラジルとブルンジに司祭宣教者を派遣。
 1969年、パウロ6世よりヴェネチア総大司教に任命される。72年、パウロ6世がヴァネチアを司牧訪問。サン・マルコ広場の会衆の前でパウロ6世は自らのストラをルチアーニ総大司教の肩にかける。73年、枢機卿に任命される。72年から75年、イタリア司教協議会副会長。
 ヴァネチア時代も、ルチアーニ総大司教の簡素な生活、対話の姿勢、貧しい人々や病者への関心は変わらなかった。工業地帯マルゲーラ地区の労働者に寄り添うと同時に、スイス、ドイツ、ブラジルにイタリア系移民の共同体を訪問した。
 パウロ6世逝去後のコンクラーベで、1978年8月26日、第263代ローマ教皇に選出され、ヨハネ・パウロという教皇名をとった。それは第2バチカン公会議を導いた2人の教皇、ヨハネ23世とパウロ6世に敬意を表すものであった。教皇職を通して教会に奉仕することにおいて、自身の思いはミサのカリスにこのように刻まれていた。「真理のしもべたりて、主人にあらず」。
 ヨハネ・パウロ1世は、システィーナ礼拝堂での枢機卿団への最初の言葉で六つの目標、第2バチカン公会議の方針に沿った、福音の源泉への回帰、刷新された宣教性、司教の共働性、清貧な教会における奉仕、キリスト者の一致、正義と平和のための諸宗教間の対話を挙げた。
 その在位期間の最初から奉仕と福音的簡素さに裏付けられたスタイルを特徴として見せた。4回にわたる一般謁見のカテケーシスでは、「信仰、希望、愛」の対神徳に基づくキリスト教の素晴らしさについて語った。
 1978年9月28日の夜、わずか34日間の在位の後、ヨハネ・パウロ1世は突然この世を去った。神と教会、世界への深い愛のうちに、ローマ教皇として短くも模範的な在位を閉じた。


◎ウクライナが教皇発言に反発、ロシア思想家の娘爆殺で

 【CJC】カトリック教会の教皇フランシスコが、ロシアの右派思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘が車の爆発で死亡した事件に触れ、「戦争の犠牲となった罪のない人」と評した発言に、ウクライナ外務省は8月27日までに、失望を表明した。
 米メディアCNNによると、教皇の言葉は、加害者と被害者を不公平にも同等に扱っていると外務省は指摘、ロシア領内で起きたロシア人の死亡をウクライナでの軍事衝突に絡めて言及することは混乱を生じさせるとしている。ウクライナがこの死亡に関与していない、と外務省は主張しているという。
 教皇は8月24日、モスクワ市内で20日に起きた車爆発事件で殺害されたドゥーギン氏の娘のダリヤ氏は戦争で殺された「罪のない人間」の1人と形容。「車の座席の下の爆弾で宙に吹き飛ばされたこの可哀想な少女のことを考えている」とし、「罪のない人間が戦争の代価を支払った」とも述べていた。
 ロシア側は、事件をウクライナの治安機関の仕業と主張しているが、ウクライナは、一切の関与を否定している。


◎ゴルバチョフ元ソ連大統領の「国葬」行わず プーチン氏は葬儀欠席

 【CJC】ロイター通信が報じるところでは、8月30日に死去したゴルバチョフ元ソ連大統領についてロシア政府は、国葬は行わないと発表した。葬儀は9月3日に営まれる予定で、プーチン大統領は職務のため参列しない。
 レーニン、スターリン、ブレジネフ氏の葬儀と同様に、ゴルバチョフ氏の葬儀はモスクワ労働組合会館の「円柱ホール」で行われる。国が準備を支援し、軍の儀仗兵が参加するなど国葬の「要素」はあるという。


◎ブラジルで先住民保護区への侵入や違法搾取、ボルソナーロ政権下で3倍増

 【CJC】米メディアCNN(日本語版)によると、南米ブラジルの先住民保護区への侵入や保護区での違法搾取が、ボルソナーロ大統領が就任した2019年以降で3倍に増加していることがわかった。先住民の権利擁護を求めるキリスト教団体「先住民宣教師協議会(CIMI)」が報告書を発表した。
 報告書によれば、21年にはブラジルの22州で305件の事案が発生したが、18年に発生した事案は109件にとどまっていた。
 CIMIは、鉱山労働者や伐採者、猟師や漁師、土地の収奪者などの違法行為の影響を受けた事案や土地の数が増加したことに加えて、そうした侵略者は先住民の土地で存在と行為の残虐性を強めたと指摘。先住民の土地に対する保護を緩和したとしてボルソナーロ大統領を批判している。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(9月4日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇=「被造物の声を聞け」=「被造物を大切にする世界祈願日」に
▼教皇の一般謁見講話=高齢者が伝える信仰と知恵
▼司教団評議会への報告書=ブラジル先住民への暴力=3年間で劇的に増加する
▼平和のため国籍を超え=共に生活し、被爆地を案内=フランシスコ会の司祭3人
▼日本カトリック正義と平和協議会=7月26日の死刑執行に抗議
 
 =KiriShin(9月1日)=https://www.kirishin.com
▼検証="協会"の実相と教会の課題=親の愛に心引き裂かれて...(谷口和一郎)
▼第8回「オフィス・ふじかけ賞」授与式をオンラインで初開催
▼安倍元首相の「国葬」に抗議の声続く
▼世界教会協議会代表団がウクライナ訪問
▼米ワシントン大司教区=仮想通貨での献金受付を開始
 
 =クリスチャン新聞(9月5日)=https://クリスチャン新聞.com
▼特集・フォーカス・オン=コロナ禍=マインドコントロール様変わり=ネットで陰謀論・偽科学に夢中
▼教会の環境配慮キャンペーン「被造物の季節」=2022年テーマは「被造物の声を聴く」
▼日基教団西那須野教会=「愛なしで平和はありえない」(エリザベス・アリオリオ・オブエザさん)平和講演
▼「転向療法」への回帰を危惧=「性の聖書的理解ネットワーク」を憂慮するキリスト者連絡会
▼キリスト教性教育研究会第14回公開研究大会=夫婦の性は「聖なるきずな」

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