世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1655信(2022.10.10)

  • 英国国教会で40年代以降に虐待383件=カンタベリー大主教が失態認め謝罪
  • 教皇の祈りの意向:10月は「すべての人に開かれた教会」のために
  • カニエ・ウェストが「白人の命も大事だ」と書かれたTシャツを着用し物議
  • ロシア正教会キリル総主教がプーチン氏誕生日に統治は神の定め、と称賛
  • 蔡総統、ドイツ超党派議員団と会談「全ての民主主義国家が団結すべき」
  • ドイツ首相与党SPDが州議会選挙で国政最大野党CDUに勝利
  • ブラジル大統領選、現職ボルソナロ氏とルラ元大統領が決選投票へ
  • ボルソナロのフリーメイソン動画で大騒動=キリスト教信徒が拒絶反応
  • 《メディア展望》

 

◎英国国教会で40年代以降に虐待383件=カンタベリー大主教が失態認め謝罪

 【CJC】ロンドン発共同通信によると、英国国教会は10月5日、同教会の聖職者らによる虐待の実態を調査した結果、1940年代以降に383件の事例が新たに確認されたとの報告書を公表した。子どもが被害を受けたのは168件。形態別では性的虐待が181件と最多だった。最高位聖職者のカンタベリー大主教は声明で「深く恥じる」と失態を認め、謝罪した。
 2007年に英国国教会の複数の聖職者が性的虐待事件で起訴されたことを受け、教会側が外部の専門家らに独立した調査を委託し、13件の虐待があったとする報告書を10年に公表したが不十分との批判を浴び、19年から再調査が進んでいた、とBBC放送などが伝えている。


◎教皇の祈りの意向:10月は「すべての人に開かれた教会」のために

 【CJC】バチカン・ニュースによると、教皇フランシスコは、2022年10月の祈りの意向をめぐり、ビデオを通し「すべての人に開かれた教会」というメッセージを寄せた。カトリック教会は、毎月「教皇の祈りの意向」を示し、教会全体が日々の祈りの中で、その意向に基づいて祈るように招いている。
 教皇は、10月には「すべての人に開かれた教会」のために、「信仰にあふれ、福音を宣べ伝える力に満ちた教会が、連帯、友愛、歓待の共同体として、常にシノドス(代表司教会議)の雰囲気のうちに生きることができますように」と、祈りの意向について、ビデオメッセージの中で話した。
 
10月「教皇の祈りの意向」
 「シノドスを行う」とはどういうことでしょうか。それは共に歩むということです。シノドとは、ギリシア語で「共に歩む」こと、同じ道を歩むことを意味します。
 そして、これが第三千年期の教会に神が望まれていることです。歩む民として、共に旅する自覚を取り戻すことです。
 シノドス的なスタイルを持った教会は、耳を傾ける教会、ただ聞くのではない、傾聴する教会です。
 多様性のうちに互いに耳を傾け合い、教会の外にいる人に扉を開くことです。
 それは意見を集めることでも、議会を設けることでもありません。シノドスは調査ではありません。主役である聖霊に耳を傾けること、祈ることです。祈ることなしに、シノドスはありえません。
 寄り添う教会となるために、この機会を有効に用いましょう。寄り添いとは神のスタイルです。そして、注意深く耳を傾け、シノドスの道を歩んでいるすべての神の民に感謝しましょう。
 祈りましょう。信仰にあふれ、福音を宣べ伝える力に満ちた教会が、連帯、友愛、歓待の共同体として、常にシノドス(代表司教会議)の雰囲気のうちに生きることができますように。


◎カニエ・ウェストが「白人の命も大事だ」と書かれたTシャツを着用し物議

 【CJC】ラッパー、ソングライター、ファッションデザイナーなど多方面で活動しているカニエ・ウェスト。彼が10月3日にパリで行われた自身のブランド「Yeezy」のファッションショーで、背中に「ホワイト・ライブズ・マター(白人の命も大事だ)」と書かれたTシャツを着用し、新たな物議を呼んでいる、と「Forbes」(日本語版)が伝えた。
 「Page Six」と「ニューヨーク・タイムズ」によると、このTシャツのフロント部分にはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の顔写真が描かれていたという。
 保守派の評論家のキャンディス・オーウェンズもこのTシャツの別バージョンを着用し、ウエストと並んで立っている姿を撮影され、その写真がネットで拡散している。モデルのナオミ・キャンベルもこのショーに参加したが、問題のTシャツは着用していなかった。


◎ロシア正教会キリル総主教がプーチン氏誕生日に統治は神の定め、と称賛

 【CJC】ロシア正教会最高位のキリル総主教は10月7日、70歳の誕生日を迎えたプーチン大統領を称賛し、プーチン氏はロシアを統治するよう神によって定められていると主張した。米メディアCNN(日本語版)報道を紹介する。
 キリル総主教はプーチン氏宛ての書簡で「神があなたを権力の座に就かせた。国と国民の運命にとって特別重要で、大きな責任を伴う職務を果たせるようにするためだ」と述べた。
 キリル総主教は聖職者に対し、7~8日の2日間、プーチン氏の健康を祈るよう呼び掛けた。
 ウクライナでの戦争では民間人の信徒が多数亡くなっているが、キリル総主教はプーチン氏の戦争を公然と支持する姿勢が目立つ。
 カトリック教会の教皇フランシスコは先ごろ、キリル総主教にプーチン氏の「侍者」になってはならないと警告した。
 英政府は6月、戦争への支持を理由にキリル総主教に制裁を科している。


◎蔡総統、ドイツ超党派議員団と会談「全ての民主主義国家が団結すべき」

 【CJC】台北発中央社(日本語版)によると、蔡英文(さい・えいぶん)総統は10月3日、ドイツの超党派国会議員団と台北市の総統府で会談した。ドイツ国会議員団の訪台は新型コロナウイルス流行後初めて。蔡総統はあいさつで、超党派議員団の訪問は「とりわけ意義がある」と述べ、「全ての民主主義国家が団結、協力し、共に民主主義、自由の価値観の固い防衛線を守るべき」と訴えた。
 訪台したのは、キリスト教民主同盟(CDU)のクラウス・ペーター・ウィルシュ議員率いる独台友好議員連盟のメンバー。2日から3日にかけて分かれて台湾入りした。6日まで滞在の予定。
 蔡総統は、ドイツ連邦議会が今年初めて、台湾がオブザーバーとして世界保健機関(WHO)総会に出席できるよう政府に働き掛けを促す決議を可決した他、今年8月に中国が台湾周辺で軍事演習を行った際には、ドイツが今年の議長国を務める主要7カ国(G7)外相がいち早く共同声明を出し、台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を改めて強く表明したことなどに言及。台湾に対するドイツの固い支持に深く感謝した。
 ウィルシュ氏は、外交の分野におけるドイツと台湾の関係強化が非常に重要だとの考えを示した上で、ドイツ議会が複数の文書や議論において、台湾が武力的脅迫を受けた際に「勇敢に立ち上がり台湾を手助け、支援する」と言及していることを説明。「台湾はドイツの重要な友人」だと強調した。


◎ドイツ首相与党SPDが州議会選挙で国政最大野党CDUに勝利

 【CJC】ベルリン発共同通信が、ドイツ北部ニーダーザクセン州議会選挙は10月9日投開票され、選管の暫定最終結果によると、ショルツ首相の中道左派、社会民主党(SPD)が得票率33・4%(前回36・9%)で第1党を維持した、と報じている。国政最大野党の保守、キリスト教民主同盟(CDU)は28・1%(同33・6%)だった。
 今回の選挙は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機などへのショルツ氏の対応を問う選挙として注目された。5月にあった二つの州議会選ではSPDがCDUに敗れていた。


◎ブラジル大統領選、現職ボルソナロ氏とルラ元大統領が決選投票へ

 【CJC】ブラジル大統領選が10月2日、投開票され、左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ元大統領と現職で極右のジャイル・ボルソナロ大統領が、共に当選に必要な有効投票の50%以上を獲得できず、30日に決選投票が行われることになった。ロイター通信(日本語版)報道を紹介する。
 ほぼ全開票が終わった時点で、得票率はルラ氏が48%、ボルソナロ氏が43%と、事前調査より接戦となった。ブラジルの大統領選が第1回の投票で決まるのは24年前以来ときわめてまれ。しかし今回は、ボルソナロ陣営もルラ陣営も第1回で勝利をつかめるとしていた。
 投票日直前のテレビ討論会では、ボルソナロ氏は汚職を例に挙げてルラ氏を「泥棒」と呼んだ。ルラ氏は汚職事件で580日の禁錮刑を受けたが、後に判決が無効とされた。ルラ氏は、ボルソナロ氏を「狂人」と呼んでいた。
 両候補者があまりに対照的なため、どちらが大統領になるかで、政策は大きく違ってくる。
 ルラ氏はアマゾン熱帯雨林の保護を訴えている一方、ボルソナロ氏は熱帯雨林の一部は経済活動のために開発されるべきだと主張している。
 ボルソナロ政権の間、森林伐採と森林火災は急加速した。気候変動活動家らは、同氏が再選すればこの地域は限界点を超えてしまうと警告している。
 一方で、ルラ氏が政権を握っていた2003~2010年の間の環境保護対策も、完璧とは程遠かったと指摘する声もある。
 多くの有権者が、高騰する食品価格によって貧困と飢餓が加速していることや、教育、格差などの面での是正を求めている。こうしたなかで、ボルソナロ氏は選挙活動中、自分を政権の座から降ろすことができるのは「神だけだ」と発言。同氏は敗北を認めないのではないかという懸念につながった。一方のルラ氏は、すでに「最後の勝利まで闘いは続く、それが我々のモットーだ」と宣言している。


◎ボルソナロのフリーメイソン動画で大騒動=キリスト教信徒が拒絶反応

 【CJC】ブラジルの現地邦字メディア「ブラジル日報」が伝えたところでは、ボルソナロ大統領がフリーメイソンのイベントに参加して演説していた動画が10月3日夜から4日にかけてSNS上で大量拡散され、カトリックや福音派のキリスト教の有権者が強い拒否反応を示す騒動となった。
 この動画は少なくとも2017年からユーチューブ上で存在していた。しかし3日夜、メディア関係でもインフルエンサーでもないツイッターの個人アカウントから拡散されると一気に火がつき、4日未明には大騒ぎとなっていた。
 「裏切られた気分よ。今までどんなことでもボルソナロ氏を擁護してきたけど、これだけは無理。もう投票しない」という、キリスト教に強い結びつきのある女性のツイートが大量拡散された。それを受け、同様の反応が相次ぎ、「ケ・デセプソン(がっかりだ)」「トライドール(裏切り者)」「サタニスタ(悪魔崇拝者)」などの言葉がトレンドとなり、インスタグラムやフェイスブック、TikTokなどの他のSNSにも及んだ。4日の午後近くには、これを受けたメディアの報道も始まった。
 フリーメイソンは17世紀頃から存在する国際的な友愛秘密組織で、一神教の宗教の信者のみが参加を許されるため、キリスト教の参加者もいる。だが、カトリックでは1738年に「教義的に相容れない」として同団体への参加を禁止。1983年に時のヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿(後の教皇ベネディクト16世)が文書で正式に参加を禁止した。
 こうした経緯からカトリックではフリーメイソンが忌避され、「悪魔崇拝組織だ」とする人たちも少なくなかった。その傾向は福音派にもあり、メソジスト教会系などでは強く敬遠されている。
 ボルソナロ氏は「神は全てを上回る」をキャッチフレーズに、強い宗教票を持っている。それだけに、「聖書の教えに背く団体と関係を持った」との思いがキリスト教信者の間で走ったようだ。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(10月9日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇、若者たちに促す=アッシジで会議「フランチェスコの経済」=貧しい人の参加と環境保護
▼教皇=諏訪司教(高松教区)の引退願いを受理
▼ウクライナ支援の枢機卿=見つかった集団墓地で祈る
▼カトリック枢機卿ら=英女王の国葬に出席
▼ベルギー・フランドル語圏の司教団=同性愛カップルのため「祈り」
 
 =KiriShin(10月1日・既報再掲)=https://www.kirishin.com
▼検証・"協会"の実相と教会の課題(4)=キリスト教とは大きな隔たり=宗教学者・島薗進
▼平和をつくり出す宗教者ネット=国葬反対集会で「弔意を強制するな!」
▼宗教リテラシー向上委員会=秋を告げる新年(ローシュ・ハシャナー)=テルアビブ大学東アジア学科講師・山森みか
▼〝ロシア軍が司祭を拷問〟とウクライナ正教会大主教=NHK取材に
▼教皇、宗教の政治利用に警鐘=ロシア正教会批判か
 
 =クリスチャン新聞(10月9日)=https://クリスチャン新聞.com
▼JCE7まで1年=岐阜でJEA宣教フォーラム=「『おわり』から『はじめる』私たちの祈り」=宣言文「一次案」意見広く求める
▼JTJ宣教神学校創立30周年記念礼拝=「岸氏理念継承し日本宣教に邁進」
▼香港「福音宣言」を主導=楊建強牧師追悼記念会
▼ウクライナ避難民と横浜市民「ともだちフェス」で交流
▼プレ東海フェス=「堤防」こえ、恵み流そう=日本伝道会議を1年後に控えて

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