小原克博 On-Line

自己紹介

私の研究課題

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  • 下の動画は2007年4月、スカイパーフェクTVで放送された番組です(制作:ベネッセコーポレーション)



わたしにとって神学とは

「神学」とは何でしょうか。欧米の大学ではもっとも古くからある学問分野として、広く知られていますが、日本では まだあまりよく理解されていません。しかし、「神学」という言葉が日常生活で用いられていないわけではありません。むしろ、日本のマスコミや政界では多用 される傾向にあります。ただ、否定的な使われ方をされることが多いのです。たとえば、A氏とB氏の対談が「神学論争」に終わったと論評されるとき、それは具体的な結果(成果)を生みださない議論に終始したということをしばしば意味します。

では、現代において神学を研究の対象とすることは、どのような積極的意味を持つのでしょうか? そのような問いかけが、いつもわたしの関心の基底にあります。この課題は、同志社大学とキリスト教主義精神の関係とも重なりあっていきます。


それだけに、わたしは神学やキリスト教の中に、現代社会のセキュラー(世俗的)な関 心から接近可能な汎用性を備え、同時に、わたしたちの生活感覚に新たな整合性をフィードバックする力を追求したいと思っています。そのためにキリスト教神 学は実に雑多な遺産を残してくれています。一見、無用の長物と思われる神学論争の中にも、意外と現代の最先端につながっていく認識の過程を見いだすことが できるのです。


現代の課題に対して

たとえば、「バーチャル」。もともと、バーチャルという言葉の起源は中世の神学者ドゥンス・スコトゥスにさかのぼ ります(彼は、ものの概念は経験的属性を形式的にではなく、〈仮想的に〉含んでいると主張しました)。しかし、バーチャル(仮想)とリアル(現実)の緊張 関係は、すでにあらゆる宗教現象の中に見られる。原始共同体における仮面をかぶった祭りに始まり、優れた文学や音楽との出会いに至るまで、人間はどこか現 実とは違う場所に連れ去られることを楽しんできました。
ところが、そもそも太古の時代からバーチャルな存在であるはずの人間が、技術革新の 地響きの中で、現実と仮想を行き来するための平衡感覚に不安を持ち始めています。また、情報の大波にもてあそばれ、身体感覚は希薄なものになりつつありま す。歴史の中に繰り返し現れてきたグノーシス(紀元1~2世紀、ギリシア文化圏に見られた極端な霊肉二元論)的誘惑は、今もわたしたちの身近にあるので す。
神学的遺産を現代の光のもとに掘り起こすことによって、多層化した「この世」を生きる知恵を広く共有したいと願っています。わたしが、生命倫理やエコロジーの問題に深く関心を寄せているのも、このような点と関係しています。

他の宗教との対話・交流

ダライ・ラマ法王
また 、宗教多元的な現代社会が抱えている様々な問題は、ある特定の宗教だけで対応できるものではありません。いろいろな宗教的知恵を結集しながら、文明論的な課題に向き合っていく必要があるのです。わたしが深くかかわっている「宗教倫理学会」では、そのような課題を研究者間だけでなく市民レベルで共有したいと考えています。

宗教倫理学会をはじめとして、仏教関係者との交流のパイプは密に持っています。他の信仰を持っている人たちと、課題を共有できるのは、すばらしいことだと思います。ダライ・ラマと会見したときには、そのことをいっそう強く感じることができました(→ダライ・ラマ法王を囲む「21世紀の〈智と実践〉討論会」参照)。

七つの宗教系の大学院・大学と協力して、「京都・宗教系大学院連合」(2005年7月設立)の設立にも尽力しました。教育および研究の連合体として機能していますが、今後は、国際社会への情報発信力や海外研究者との交流を強めていきたいと考えています。

世界の平和を模索して

目下、中東世界の不穏な情勢が多くの人々に不安を与えています。それらの原因は単純ではありません。ユダヤ教・キ リスト教・イスラームといった宗教(しばしば、一神教と呼ばれます)が、そこに関係しているという点で、紛争・暴力と宗教の関係は慎重に考察されなければ ならないでしょう。しか し同時に、国際政治学や安全保障論など、他の学問分野と学際的な協力関係を維持していくことなしに、現代の複雑な状況を打開していくことは困難でしょう。 狭い意味での神学や宗教学を超えて、平和や文明の共存を模索したいと願っています。
一神教学際研究センター(CISMOR)は、 そうした目的のために、様々なプロジェクトを計画しており、わたしはセンター長として運営の責任を負っています。CISMORは2003年に開設されまし た。一神教と一神教世界について学際的で総合的な研究を行い、その研究成果を世界に向けて発信し、イスラーム・ユダヤ・キリスト教世界の「仲介者としての 役割」を果たすことを目指しています。現在、70名を超える国内外の研究員を擁し、幅広い分野から問題にアプローチしながら、その成果を日本語・英語・ア ラビア語で世界に向けて発信しています。三つの一神教を同時に学際的に研究できる研究機関は、日本においてだけでなく、世界においても希有な存在であると 言えます。日本における一神教研究の歴史は浅く、その理解は十分であるとはいえません。一神教とその世界に対する理解を深めることにより、多神教に基づく 日本文化をもより客観的に理解し、両者の間に積極的な関係を構築していきたいと願っています。