講義概要・シラバス

講義概要・シラバス

宗教学9「一神教とその世界を学ぶ──グローバル社会における平和構築のために」

<概 要>
 この授業では、一神教の歴史や教義、一神教が影響力を及ぼしている世界の様子を知ることによって、グローバル社会における平和構築の手がかりを考察することを目的とします。  
 「一神教」という言葉は、わが国ではしばしば「多神教」の対語として用いられてきましたが、その場合の一神教とは、ひとまとめにされたユダヤ教・キリスト教・イスラームであり、それぞれの差異や実態はほとんど考慮されずに、もっぱら否定的なイメージを与えられてきました。その傾向は、9.11同時多発テロ事件(2001年)以降、いっそう強まってきたと言えるでしょう。戦争やテロを起こしているのは、主に一神教に関係する人々であって、一神教が今日の紛争の元凶となっている、多神教的な価値観こそ世界平和に貢献できるのだ、といった論調です。  
 確かに、イラク戦争後のイラクやアフガニスタンにおけるテロや紛争、あるいは、いまだ出口の見えないイスラエル・パレスチナ問題などを考えると、一神教が紛争に関係していることは無視できません。ただし、それらを「宗教紛争」として単純化するのは、真の原因から目を背けることになります。複雑に絡み合った政治と宗教の問題を解きほぐし、一神教世界の現実に少しでも近づいていく努力が求められます。  
 好む好まずにかかわらず、今日の世界を理解するためには、一神教に対する基礎知識が必要です。約21億人のキリスト教徒、約15億人のイスラーム教徒を合わせると、世界人口の過半数を超えます。世界で二人に一人は一神教徒だということになります。ユダヤ教徒は1400万人を占めるに過ぎませんが、その歴史的影響力は看過できないものがあります。  
 この授業では、以上のような課題に向き合っていくために、ユダヤ教、キリスト教、イスラームの歴史的・教義的基礎知識を身につけると共に、現代のグローバルな問題を分析していくために必要な方法論を学んでいきます。また同時に、日本社会と一神教世界をどのように関係づけることができるのかといった課題も取り上げ、私たちが、より現実的な形で平和について語ることができる道を探っていきます。

<到達目標>
 一神教の歴史や教義、一神教が影響力を及ぼしている世界の様子を知ることによって、グローバル社会における平和構築の手がかりを考察することを目的とします。

<授業計画>
 1(04/08) 導入──日本社会と一神教世界 resume01.pdf
 2(04/15) 一神教とは何か(1) resume02.pdf
 3(04/22) 一神教とは何か(2) resume03.pdf
 4(05/06) イスラエルの歴史──ユダヤ教の起源 resume04.pdf
 5(05/13) ※休講(海外出張のため) 次の動画(計3本、約50分)を視聴しておいてください。
      CISMOR Interviews
 6(05/20) イエスとその運動 resume05.pdf
 7(05/27) キリスト教の拡大 resume06.pdf
 8(06/03) イスラームの誕生と発展 resume07.pdf
 9(06/10) 一神教間の教えの相似と相違 resume08.pdf
      (創造論、終末論、偶像崇拝の禁止、等)
10(06/17) ※休講(海外出張のため) 次の動画を視聴しておいてください。
      CISMOR Interviews「革命後のエジプトの現状と課題」
11(06/24) 現代世界における課題(1)世俗主義と原理主義 resume09.pdf
12(07/01) 現代世界における課題(2)政教分離 resume10.pdf
13(07/08) 現代世界における課題(3)犠牲の論理 resume11.pdf
14(07/15) 一神教における戦争と平和 resume12.pdf
15(07/22) まとめ ─ 一神教の虚像と実像 一神教的技術.pdf resume13.pdf
<成績評価基準>
平常点(出席) 30%
期末レポート/試験 70%

<参考文献>

■ ユダヤ教関係
ノーマン・ソロモン『1冊でわかる ユダヤ教』(山折哲雄訳)岩波書店、2003年。
M. モリスン、F. ブラウン『ユダヤ教』(秦剛平訳)青土社、2004年。
ニコラス・デ・ラージュ『ユダヤ教とはなにか』(柄谷凜訳)青土社、2004年。

■その他
モッシェ・ハルバータル、アヴィシャイ・マルガリート『偶像崇拝──その禁止のメカニズム』(大平章訳)法政大学出版局、2007年。
高橋哲哉『国家と犠牲』日本放送出版協会、2005年。
タラル・アサド『自爆テロ』(茢田真司訳)青土社、2008年。

<参照URL>
小原克博 On-Line https://www.kohara.ac
同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR) https://www.cismor.jp 

<授業で紹介したURL>
イエスの人間性(神性)→「ダ・ヴィンチ・コード」を読み解く(特に30分以降)
カトリックの性の問題 →米カトリック教会の性的虐待問題(NHK, 2002年)
一神教と多神教 → 中沢新一・小原克博「一神教と多神教」(CISMOR, 2004年)
戦争論 → 「戦争論についての神学的考察」(『基督教研究』2002年)