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「アドバンスト・リベラル アーツ科目群「科学と良心」について」、『同志社大学広報』No.524、2022年7月

 アドバンスト・リベラルアーツ科目群「「次の環境」協創コース」の一つ「科学と良心──「次の環境」を考えるために」(小原克博、後藤琢也、石川正道、廣安知之、和田喜彦、櫻井芳雄)は、本学大学院生とダイキン工業社員が共に学ぶ、新しい授業として2021年度に開始され、当初から、先端的な教育手法を取り入れてきたが、本年度の事例を報告したい。
 本科目はアドバンスト・リベラルアーツが目指しているものを明らかにすると共に、同志社の教育研究の原点である「良心」の視点から、自然科学および人文・社会科学を超えて現代科学の課題を抽出し、その課題をめぐって議論を深めていくことを目的としている。
 初年度から、本科目はブレンディッド・ラーニングとして実施されており、オンデマンド授業7回、教室での対面授業(アクティブ・ラーニング)8回によって構成され、1週間に2回授業を行う形をとり、1セメスターの半分(クォーター)で授業が完結する。クォーター型の授業は現役の企業人にとって履修しやすいというメリットを持っている。
 今年度の「科学と良心」では、前年度、履修者が京田辺キャンパス学生に限られていたことを反省し、京田辺・今出川の両校地で同一曜日・講時のクラスを設置した。結果的に、今年度は両校地から履修者を得ることができ、文理融合を目的とする本科目の前提を整えることができた。
 両校地の学生およびダイキン工業社員(大阪勤務)が一堂に会して、アクティブ・ラーニングを行うことができるよう、従来のZoomを中心とした双方向オンライン授業ではなく、VRゴーグル(Meta Quest 2)を使ったメタバース授業(VR授業)を計画・実施した。第1回目の授業ではVRゴーグルを貸与し、初期設定する必要があったため教室で実施したが(写真上)、2回目以降のアクティブ・ラーニングはすべてVRルームで行った(写真下)。Meta Quest 2で動作するHorizon WorkroomsというVRルームを使用することで、Zoom等とは別次元の臨場感ある双方向授業を行うことができた。目的に応じて、座席のレイアウトを瞬時に変更できるのも大きなメリットであった。
 授業最終回(6月6日)では授業内容全体を振り返ると共に、メタバース授業に関する意見交換を行った。アバターを使うことにより、リアルな対面での議論より気楽に発言することができたという意見をはじめ、メタバース授業の効用を評価する発言が多くあった。また、一連の授業の中には、フューチャーデザイン演習も含まれており、従来、未来シナリオの作成は対面でなければ難しいと考えられていたが、VRルームでそれを実施することができたことを、本演習を担当する石川客員教授は驚きをもって報告されていた。VRゴーグルを重く感じたり、技術的なトラブルが時々発生したなどの問題の指摘もあったが、全体的には、VR空間で実空間に匹敵するレベルのアクティブ・ラーニングを行えることを実証することができたと言える。
 先端的な教育プログラムを先端的な教育手法によって展開していく道を、今後も模索し続けていきたいと考えている。なお、4月に開設された「「次の環境」協創コース」のサイト(https://shinzandaitaku.doshisha.ac.jp)では、メタバースを含む未来社会のあり方を新島襄や同志社の精神を交えて提案しているので、ぜひご覧いただきたい。

 

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