世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第898信(2008.03.31)

  • サウジ国王が3宗教サミットを提唱
  • 革新・平和・希望の中の復活祭
  • ネスレ社がルワンダ水道計画で宗教団体と提携
  • オランダ右翼議員が「コーラン」批判の短編映画
  • キリスト者とイスラム教徒の沈静化努力も通じず
  • イスラム教徒がカトリック上回る
  • 《メディア展望》

◎サウジ国王が3宗教サミットを提唱

 【CJC=東京】サウジアラビア国営サウジ通信によると、同国のアブドラ・ビン・アブドルアジズ国王は3月24日、イスラム教とキリスト教、ユダヤ教の3宗教の代表によるサミットを提唱した。首都リヤドで開かれている第6回『日本とイスラム世界との文明間対話セミナー』の参加者らをリヤド市内の国王私邸に招いた席で明らかにした。仏教などとの対話も検討するという。
 ユダヤ教国家イスラエルとは国交がないが、国王は「すぐに始めたい」と話した。宗教間対話を通じて中東和平の進展を側面支援する狙いもあるとみられる。
 国王は昨年11月、国交を持たないバチカンを訪問。サウジ国王として初めて教皇ベネディクト十六世と会談した。国王は「教皇はあたたかく歓迎し、人間対人間として対話をした。そのことを決して忘れない」と振り返り、「ユダヤ、キリスト、イスラムの3大宗教が一堂に会することができるようアラー(神)に祈っている」と述べた。


◎革新・平和・希望の中の復活祭

 【CJC=東京】世界中のキリスト者が3月23日に革新、平和、希望に関するメッセージと共に復活祭を祝ったことを、米福音派系のANS通信が、AFP通信のニュースを中心に報じている。
 バチカン(ローマ教皇庁)では、教皇ベネディクト十六世がチベット、中東、アフリカで「平和を保ち共通の利益をもたらす」解決を呼びかけた。
 英国では、カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏が、「安らぎとぜいたく」が結局なくなり、現在の形の文明は崩壊する、と指摘した。
「私たちは個人として、自ら取得したものの終わりを考えられない。また一つの文化としては、この文明が、他の文明と同じように崩壊し、当然のものと思っている安らぎとぜいたくを無限に維持出来ないのだということを想像することは不可能だ」と述べた。
 エルサレムでは、世界中から訪れた巡礼者が、イエスが復活した所と信じる旧市街に集まった。
 チベットでは、天主教(カトリック)教会が、折からの暴動規制の影響を受け、ミサも抑制しなければならなかった例もあったと伝えられる。
 豪州では、聖公会(英国国教会)のフィリップ・アスピノール大主教が環境に焦点を合わせ、「各地を本当に危機に陥れるほどの、史上最大の干ばつを経験した私たちが待ち焦がれていた雨がようやく降り始めた」というメッセージを発表した。
 韓国ソウルでは、キリスト者約2万人が市庁舎前で超教派の復活祭礼拝を守った。昨年12月の重油流出事故の犠牲者のために献金した。
 ドイツ各地の90箇所で、平和運動家数千人がアフガニスタンからのドイツ軍撤退を要求して自転車行進などさまざまな復活祭デモを行った。
 アフガニスタンでは、NATO軍の一員として配備されたカナダ人兵士にチョコレートのイースターエッグが贈られたが、基地にミサを行う司祭の姿はなかった。
 ロシアでは、主流の正教会はユリウス暦によっているので、復活祭は4月27日に当たる。モスクワの『無原罪の身ごもり大聖堂』では、カトリック教会の復活祭が祝われた。
 南米コロンビアでは、カトリック司祭がマルクス主義の影響を受けた革命軍に拘束された人々のために祈るよう訴えた。
 英ノーウィッチの国教会大聖堂では、400人以上の参列者が、イエスの復活を象徴するためキャンドルに点火したが、祈りの最中に火災報知機が反応して鳴りだし、自動音声で退去勧告が流れてしまい、礼拝の最中に避難する騒ぎがあった。幸い大聖堂に被害はなく、礼拝は続けられた。
 同教区のジャン・マクファーレン司祭は「火災感知システムもイエスの復活を感知出来なかった」と言う。
 会衆が大聖堂から避難した直後に消防隊が到着した。礼装の主教や司祭が困惑顔で出迎えた。火災でないことも確認されたので、礼拝は再開された。


◎ネスレ社がルワンダ水道計画で宗教団体と提携

 【キガリ(ルワンダ)=ENI・CJC】(フレデリック・ヌズウィリ記)宗教指導者は、アフリカ各国政府に、ルワンダ東部キレヘ郡ガトレ地区で進められている水道計画で『アフリカ超教派平和行動』(IFAPA、本部ナイロビ)が関与しているように、類似の計画には企業や宗教団体との提携を進めることを要請した。
 ルーテル世界連盟のイシュマエル・ノコ総幹事は3月19日、水道計画の発足式典で「アフリカ各国政府がルワンダの例にならって、政府、企業、宗教団体、市民社会との協力を促進する状況を生み出すよう動くべき時だ」と語った。式典は、国連が3月22日を「国連水の日」に定めたことを覚えて行われた。
 ルワンダ東部水道計画には、世界最大手の食品企業ネスレ社とIFAPAが参画している。
 20村の住民約2万2000人に安全清涼な飲用水を提供する計画で、貧困削減、初等教育普及、女性の権利拡張に貢献するほか、超教派的な協力強化につながると期待されている。
 発足式典には宗教指導者と並んで、ネスレ社や市民グループなどが出席した。ノコ氏は今回の事業を公私宗教提携の新たな形だと指摘した。「このプロジェクトが平和と開発のための現実的な宗教間の協力を意識した各方面の協力への示唆となることを願う」と言う。ノコ氏はIFAPAの招集者でもある。
 水道計画は2006年にルワンダのポール・カガメ大統領とノコ氏の会見で生まれた。
 ネスレ社はかつて教会や世界規模の教会団体からの製品ボイコット運動に見舞われたことがある。貧困国で乳児用の粉ミルクを販売し、母乳による育児を衰退させた一方、粉ミルクを溶かす水が不衛生だったりして、乳幼児に被害を与えた。
 「ルワンダではなお多くの人々が、飲用や衛生用の日常の使用に十分な上水確保のために戦っている。あまりに多くの女性と子どもたちが、徒歩や自転車で、家族のために水を汲ん来るために教育や雇用の機会を犠牲にしている」と、ノコ氏は言う。
 IFAPAのコーディネーター、サリオウ・ムバッケ氏は「私たちの中で共有している宗教が基盤である。信仰という見地からすると、宗教が共同体の間の調和確立に貢献し、同時に不足している基本的ニーズを満たす」と言う。
 ネスレ社の公共関係担当ニールズ・クリスチャンセン副社長は、水道計画がルワンダで平和と繁栄を促進することを望む、と語った。「飲用水の十分な供給と水資源の効果的な利用は平和と人々の間の調和を促進する。成功する事業を作り出す我が社の能力は平和と人々の間の調和に依存している。紛争や戦争は、人々だけでなく事業にとっても最大の破壊者だ」と、クリスチャンセン氏は言う。
 ネスレ社は水道計画に34万8947米ドル(約3470万円)を拠出した。ルーテル世界連盟世界奉仕部門ルワンダ計画により、他宗教団体からの協力も得て施行される。


◎オランダ右翼議員が「コーラン」批判の短編映画

 【CJC=東京】オランダの極右政党『自由党』のヘールト・ウィルダース党首が3月27日、イスラム教の聖典コーランを批判する約15分間の映画「フィトナ」を自主制作、英国のインターネットサイト『ライブリーク』上で公開したが、サイトに脅迫があり、早くも29日には削除された。ただ映画自体は『ユーチューブ』など他のサイトで見ることが出来る。
 「フィトナ」は、コーランから引用した言葉を米同時テロやマドリッドでの映像に重ね、「イスラム化を防ごう」と呼び掛ける内容。公開後、パキスタンのカラチで、オランダとの断交を求めるデモがあったほか、イラン、インドネシア両国外務省が非難を表明した。
 2005年、デンマーク紙がイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を掲載したのを契機に、イスラム諸国で反欧州デモや騒乱が広がったが、その再燃を懸念して、オランダ政府は映画自体とは距離を置いており、オランダのイスラム教指導者も平静を呼び掛けていた。
 英国のサイト『ライブリーク』は29日、身の危険を感じる脅迫を受けたとしてサーバーから映画を削除、「ネット上での言論の自由にとっては悲しい日だ。しかしスタッフの安全を最優先しなければならない」という声明を発表した。
 ウィルダース氏は当初、オランダ市民などに対し報復が加えられても、「そのようなことが起こらないように願うが、誰かが実行したからといってその責任は自分にはない」と語っていたが、実際に脅迫が行われたことで「表現の自由にこのような重大な打撃となる恐るべきこと」としながらも、サイトの公開中止に理解を示した。
 国連の潘基文事務総長は28日、「侮辱的な反イスラム映画の公表を最大限の表現で非難する」として、中止を求める声明を発表した。声明は「自由には常に社会的責任が伴わなければならない」と指摘。宗教的対立に関し「(問題は)イスラムと西洋の間にあるのではなく、双方の一部過激派の間にあることを認識すべきだ」と述べた。


◎キリスト者とイスラム教徒の沈静化努力も通じず

 【ユトレヒト(オランダ)=ENI・CJC】(アンドレアス・ハビンガ記)オランダの極右政治家がコーラン(イスラム教の聖典)を題材にした映画「フィトナ」を制作したことでイスラム世界の反発も予想される所から、プロテスタント教会のバス・プレジエ総幹事を団長とするキリスト者とイスラム教代表団が、公開前に事態沈静を図るためエジプトを訪問した。
 オランダの教会とイスラム教共同体は、市民の大部分と共に制作者ヘールト・ウィルダース氏の挑発的な描写には反対だが、言論の自由に関する権利が存在することから、オランダ政府が映画を禁止は出来ないことを理解してもらうためのもの。
 しかし代表団が3月25日にシャイフ・ムハンマド・サイード・タンタウィ氏と会見したが、このメッセージではエジプトの宗教指導者を納得させるのが困難なことが明らかになった。タンタウィ氏は、世界のスンニ派イスラム教徒の霊的な権威。「オランダ議会の1議員が15億人のイスラム教徒を侮辱する。耐え難いことだ」と述べた、と訪問団は報告している。
 タンタウィ氏は、アル・アザル・モスクの大イマームであり、関連して設置されたカイロのアル・アザル大学の大シャイフ。アル・アザルは名門スンニ派団体の一つ。
 代表団とタンタウィ氏の会談は予定より1時間短く30分で終わった。「この問題への反応がアラブ世界では非常に感情的なものであるかが明らかになった。映画は火遊びをしている」と、プレジエ総幹事は会談後語った。
 大イマムは24日にオランダのティエール・ドズワアン大使との会談に不快感を表明した。大イマムは、大使がオランダの言論の自由権利を擁護するだけで、イスラム教徒の感情的な反応に対する感覚がない、と確信した、とオランダのキリスト教紙『ネーデルランド・タグブラット』は報じている。同紙はさらにオランダ大使が代表団のメッセージ伝達を妨害した、と言う。
 「私たちは初め大使館の代理者と見られた。オランダ政府を代表しているのではないとタンタウィ氏に納得させるのは難しかった」と、プレジエ氏は報道陣に語った。
 エジプト政府によって任命されシャイフは、代表団の任務に謝意を表したものの、オランダのイメージは回復不可能なほどに損なわれた、と警告している。
 エジプト訪問は、オランダでプロテスタント教会とイスラム教の2組織が3月17日、声明に調印した直後に計画された。訪問の目的は、アラブ世界に声明を提示することにもあり、3月26日にカイロでの記者会見でこれを実現したことになった。
 代表団はプレジエ氏の他、教会協議会のトン・ファンエイク氏、ムスリム=政府関係委員会のアーメド・ドリス・エルブジュフィ議長、オランダ・ムスリム評議会のアブデルマジド・カイロウン議長らで構成された。


◎イスラム教徒がカトリック上回る

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の機関紙『オッセルバトーレ・ロマーノ』3月30日付けで、バチカン年鑑のヴィットリオ・フォルメンティ編集長が、世界のイスラム教徒の数が史上初めてカトリック教徒数を上回った、と述べている。イスラム教徒の出生率がキリスト者の家族より高いことが要因。
 バフォルメンティ編集長によると、2006年現在のイスラム教徒は、国連調査によると世界人口の19・2%で、同17・4%のカトリック教徒を上回った。キリスト教徒全体では約33%。同紙は具体的な教徒の数は伝えていない。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(3月30日)=https://www.cwjpn.com
★福岡教区司教決まる=大分の宮原司教を任命=「神のみ旨 真摯に受ける」
★バチカンは荒天の復活祭=教皇「暗闇は光に変わった」=イスラムからの改宗者に洗礼も
★総会「世俗化」に焦点=教皇庁文化評議会=日本からも参加
★バチカン広報担当=ビンラディン容疑者の「教皇は反イスラム」との主張を否定
★100周年迎えた西仙台教会=共同宣教司牧に手応え=集会祭儀で「分かち合い」生かす=宮城

  =キリスト新聞(3月29日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(3月30日)=https://jpnews.org
★ストレス対処法セミナー=解消の秘訣とは=「神の主権認め服従すること」
★みどり野キリスト教会=チャーチスクール、バイブルカレッジ12人が卒業=「生き方の誇りもち歩む」
★第3回ローザンヌ世界宣教会議=いかに福音を提示するか=今対処をしておかなければ、次世代に混乱を残す
★21世紀キリスト教社会福祉実践会議=排除し合う時代だからこそ存在受け止める社会が必要

  =リバイバル新聞(3月30日・休刊)=https://www.revival.co.jp


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