世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第941信(2009.02.02)

  • ロシア正教会新指導者はキリル府主教
  • ロシア正教会新モスクワ総主教が就任
  • ダライ・ラマが共産主義にも一定の評価
  • 「解放の神学」のボフ氏が環境問題で警告
  • バチカンが「ルフェーブル派」司教4人の破門措置を撤回
  • 破門解除された司教の1人はホロコースト否定論者
  • 教皇、今度は問題発言の司祭を補佐司教に
  • 虚偽報道したベトナム国営メディア表彰、カトリック教会が抗議
  • コプト教皇、カンタベリー大主教と会見
  • ガザ義援金運動の放映拒否した英BBCに非難集中
  • 《メディア展望》

◎ロシア正教会新指導者はキリル府主教

 【CJC=東京】ロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教「選出会議」が、モスクワの救世主ハリストス(キリスト)大聖堂で1月27日開催され、スモレンスクとカリーニングラードのキリル府主教(62)が投票総数700のうち508票で選出された。カルーガとボロフスクのクリメント府主教(59)は169票、無効23票。
 キリスト教各派では、信徒10億人と推定されるローマ・カトリック教会に次いで信徒1億6500万人を擁するロシア正教会ではモスクワ総主教アレクシー二世が昨年12月死去したのを受けて後継者選びが進められていた。
 府主教以下の聖職者、信徒など有権者711人が参加するとあって、大聖堂の周辺は交通が遮断されるほどだった。
 会議はキリル氏の祈祷、演説で始まった。キリル氏は、アレクシー二世路線に沿って、「キリスト教に対する西側の攻撃的な世俗主義の浸透」と「キリスト教教義と福音的倫理の修正を図るプロテスタント集団の試み」に言及、さらにソ連体制後のロシアで改宗を策していると語り、プロテスタントとローマ・カトリックの宣教師を非難した。
 その後、報道陣は退出させられ、会議の様子は非公開とされた。
 25日の非公開主教会議で選出された候補は3人。総主教代行を務め、近代化派と目されているキリル府主教が総数197票のうち97票を獲得した。より保守的と見られるクリメント府主教が32票、ミンスクとスルツクのフィラレ府主教(73)が16票だった。ただRIAノボスチ通信によると、フィラレ氏が27日になって、候補を辞退、支持者に向かってキリル府主教に投票するよう訴えた。
 キリル氏は対外関係部門を担当、緊張をはらむバチカン(ローマ教皇庁)との対話に当たって来た。毎週テレビ番組に出演、また公共の場にもしばしば登場して知名度は抜群。
 RIAノボスチ通信によると、代表投票者は3分の2が聖職者、3分の1が信徒。信徒代表には教会や修道院へ財的支援を行っている実業家が含まれており、市民の批判を招いている。中にはタバコ、薬品、金属、原子力関係企業の所有者、議員や高官などが含まれている。同国では著名な神学者アンドレイ・クライェフ氏は選出会議を「実業家、企業家の議会」であり「虚栄」と決め付けている。ただ教会側は、この人たちもロシア社会と教会を構成する、と反論していた。


◎ロシア正教会新モスクワ総主教が就任

 【CJC=東京】ロシア正教会の第16代総主教に選ばれたスモレンスクとカリーニングラードのキリル府主教(62)の就任式が2月1日、モスクワの救世主ハリストス(キリスト)大聖堂で行われた。
 聖職者らがギリシャ語で「アクシオス」(ふさわしいの意味)を3回唱え、就任を祝福した。式には、東方正教会の各教会代表者のほか、バチカン(ローマ教皇庁)代表やロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領、ウラジーミル・プーチン首相ら政府要人など約4000人が参列した。
 ロシア正教会は旧ソ連時代には弾圧・抑圧されてきた。今回の総主教の就任は1991年のソ連崩壊後初で、政府首脳の列席は、同教会と政府との関係が大きく変化したことを示している。
 キリル氏は、教会は社会で積極的な役割を果たすべきという姿勢で率直な発言を繰り返して来た。強硬な保守派とされ、ロシア政府にとって頭痛の種になる可能性もある。ただ深刻化している経済問題では協調路線をとるものと期待されている。
 AFP通信によると、ロシア科学アカデミーの宗教問題専門家、セルゲイ・フィラトフ氏は、「主教の中で、彼は唯一の本物の政治家だ。わたしが大統領だったら彼のような人物はこわくてしょうがない」と語っている。


◎ダライ・ラマが共産主義にも一定の評価

 【ワルシャワ=ENI・CJC】チベット亡命政権の指導者、ダライ・ラマが自身をマルクス主義の同調者であると思っており、中国共産党に入党を求められたことがある、と明らかにした。
 米週刊誌『ニューズウイーク』ロシア語版とのインタビューで明らかにしたもので、「共産主義者は、貧者の平等と権利についてほぼ十分に配慮している」と語った。  「これは仏教徒の原則にとても似ている。利他主義、他者特に求めている人への関心などだ。ヒューマニズムの二つの形として、仏教と共産主義の間に、実際には矛盾はない。問題は共産主義が自己に忠実でなかったことだ」とするインタビューが同誌1月12日号に掲載された。
 中国の共産党政権からは敵視されているダライ・ラマだが、チベット自治闘争は「宗教を絡ませたものではなく」そのためもあってか、中国の共産主義支配に「熱心な期待」を掛けて、生涯を捧げた共産主義者や無神論者からの支援も受けていた。「私が北京滞在中にマルクシズムに関心を抱いたのは、その影響もあり、中国当局に共産党に加入したいと語った」とニューズウイーク誌に述べている。


◎「解放の神学」のボフ氏が環境問題で警告

 【CJC=東京】世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に対抗して反グローバリズムを訴える有識者や非政府組織(NGO)が集う「第9回世界社会フォーラム」が1月27日、ブラジルのベレンで6日間の日程で開幕した。これに合わせ、「解放と神学に関する世界会議」も22日、ベレンで開催された。
 ENI通信によると、ブラジルの「解放の神学」者レオナルド・ボフ氏(70)が同会議で基調講演を行った。今回のテーマは「水、地球、神学 =もう一つの可能な世界のために」。同会議は2005年、07年に行われ、今回が3回目。
 ボフ氏は「私たちはこのままやってはゆけない。変わらなければならない。問題は私たちが変わろうとする中身で、単により多くの消費、生産、排除、侵略といった問題ではない」と述べた。
 ボフ氏は1970年代、解放の神学の主導者として台頭した。解放の神学は社会変革に政治活動が必要という信念と結び付いていた。貧しいものの「新しい教会」の必要を主張した著作が問題となり、バチカンはボフ氏の聖職者義務の履行を差し止めた。翌年、差し止めを解除したものの、92年になって、ボフ氏は「自ら俗人状態に入った」と、聖職者として活動を放棄した。
 ボフ氏は現在、リオデジャネイロ首都圏の荒廃した地域ハルディム・アララスで人権活動家マルシア・マリア・モンテイロ・デ・ミランダさんと同居している。
 会議が行われたベレン周辺のアマゾン地域の環境破壊を取り上げた著作「地球の叫び声、貧しいものの叫び声」(1997年)でも描写されたように、環境問題が近年、ボフ氏の活動と著作の中心課題となっている。
 ソ連の指導者だったミハイル・ゴルバチョフ氏らと共に、ボフ氏は「地球憲章委員会」のメンバーでもある。同委員会は2000年に「正当で持続可能な、そして平和な」地球社会の原則『地球憲章』発表した。


◎バチカンが「ルフェーブル派」司教4人の破門措置を撤回

 【CJC=東京】 バチカン(ローマ教皇庁)司教省長官のジョヴァンニ・バッティスタ・レ枢機卿は、故マルセル・ルフェーブル大司教が叙階した司教4人の破門措置を1月21日付けで無効とする命令を発した。4人はベルナール・フエライ(聖ピオ十世会会長)、ベルナール・ティッシエ・ド・マルレ、リチャード・ウイリアムソン、アルフォンソ・ド・ガラレタの各司教。
 バチカンの命令は、教皇ベネディクト十六世が、各司教の嘆願に応じて破門を撤回したこと、普遍的な教会の慈愛の中で一致を推進し、分裂というスキャンダルを打破しようとしたことを示している。
 命令は、聖ピオ十世会との和解を達成するにはなお様々な手続きが必要としている。「これらの手続きは、同会に属する全教会との完全聖餐関係に入る必要があることが望ましい」という。
 ルフェーブル大司教が設立した『聖ピオ十世会』は、第二バチカン公会議の後に進められたエキュメニカル(教会一致を目指す)な対話がカトリック教会を「危機」にさらしている、とし、特に同会議の精神に従って定められた各国語によるミサに反対、伝統的なトリエント・ミサだけが正統なミサ形式であるとし、同大司教は、独自に司祭を叙階したことで1976年に聖職停止処分を受けた。1988年には独自の司教4人を叙階、7月1日破門された。


◎破門解除された司教の1人はホロコースト否定論者

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が破門を解除した、故マルセル・ルフェーブル司教創設の『聖ピオ十世会』司教4人の中のリチャード・ウイリアムソン氏が、ナチス時代にユダヤ人根絶のために設けられたガス室が実在しないと主張していたことから、今回の措置にユダヤ教側が反発している。
 ウイリアムソン氏がこのほどスウェーデン国営テレビのインタビューで、ユダヤ人600万人がガス室で殺害されたことは史実ではない、と語った。第二次大戦下でのユダヤ人の死者は20万人から30万人だ、とホロコースト(大虐殺)を否定、ガス室は作り話だ、と言う。またシドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、十九世紀末から反ユダヤ主義文書として知られて来たシオンの長老の議定書を同氏は推奨している。
 ローマのリカルド・ディ・セニ主任ラビなどユダヤ教指導者は、教皇ベネディクト十六世に破門を解除しないよう要請した。
 米ユダヤ人委員会(AJC)の国際関係担当ラビ、デービッド・ローズンは「バチカンが聖ピオ十世会と和解するのはカトリック教会内部の問題だが、ホロコーストを公然否定する人を受け入れるとは恥じるべきことで、ユダヤ教とバチカンとの関係に大きな打撃を与え、反ユダヤ主義根絶のために戦った前教皇ヨハネ・パウロ二世の歴史的努力を踏みにじるものだ、と言う。
 これに対し、バチカンのフェデリコ・ロンバルディ報道担当は、イタリアのANSA通信に、ウィリアムソン司教の見解は、教皇の破門撤回決定に何らかの影響を与えたものではない、と語った。


◎教皇、今度は問題発言の司祭を補佐司教に

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は2月1日、教皇ベネディクト十六世がゲルハルド・マリア・ワグナー司祭(54)をオーストリア北部リンツの補佐司教に任命した、と発表した。同司祭は2005年、ハリケーン・カトリーナが米南部ニューオーリンズなどを襲った際に、同市における同性愛などの性的寛容に対する天罰だ、と指摘し問題になった。
 オーバーエスターライヒ州司祭協議会のハンス・パディンガー報道担当は現地紙に、今回の選択は、バチカンがリンツ教区と協議もしなかったという印象を受け、「非常に喜ばしいということではなかった」と語っている。フランツ・ウイルド司祭も、極端な意見の持ち主を一致に関わる補佐司教とするとは驚きだ、とウエブサイトで述べている。
 カトリック者運動団体『私たちが教会』のフランツ・ゲルトバウワー氏は、今回の任命を「超保守的なサイン」であり、人々を教会から去らせることにもなる、と言う。
 ワグナー司祭がリンツの教会報に、カトリーナについて、ニューオーリンズではナイトクラブや売春宿だけでなく妊娠中絶施設をも破壊した、として「この市の不道徳な状況は言語に絶する」と述べていた。オーストリアのカトネット通信が報じた。


◎虚偽報道したベトナム国営メディア表彰、カトリック教会が抗議

 【CJC=東京】ベトナムで抑圧に抗議した教会の姿勢を不正確に報道した国営の日刊紙ハノイ・モイ(新ハノイ)とVTV1テレビが2008年度ジャーナリズム優秀賞を受賞したことに、同国カトリック教会が、政府に抗議の声を上げている。
 ベトカトリック通信によると、ハノイ・モイ紙はタイハでの抗議報道で、VTV1テレビはハノイ市人民委員会との会合の際にジョセフ・ゴー・カンキエ大司教の声明を歪曲して伝えたと非難されているのを無視して受賞した。同テレビは大司教への侮辱を続けているという。
 共産党政権によって接収されたハノイの教会資産の返却を求める徹夜祈祷会に参加していて逮捕、起訴されたカトリック者8人の中の女性2人が、治安妨害、暴行で有罪を認めたと報じた両メディアに対して、謝罪、訂正、精神的苦痛に対する補償、を求めて告訴している。


◎コプト教皇、カンタベリー大主教と会見

 【CJC=東京】コプト教会の指導者、教皇シェヌーダ三世は1月31日、アレクサンドリアで英国国教会(聖公会)の最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏と会見した。
 シェヌーダ教皇の歓待に感謝して、ウイリアムズ氏は、アレクサンドリアでの会見の意義を、古代にキリスト教信仰の普遍的な教義の多くが定められ、3世紀には修道生活運動の種がまかれた場所で開催されたことにある、と指摘した。
 シェヌーダ教皇は、聖なる道へ人々を導く責任を述べ、特に若者を導くことが大事だと述べた。コプト教会はカイロだけで3万から4万人の児童を対象に日曜学校を行っている。また教皇はエジプト国内にあるコプト教修道院の復活に言及した。


◎ガザ義援金運動の放映拒否した英BBCに非難集中

 【CJC=東京】英国放送協会(BBC)が、イスラエル軍による攻撃で大きな被害をうけたパレスチナ自治区ガザ地区市民に義援金を送る運動の放送を拒否したことに非難が集まっている。
 英赤十字やオックスファムなどのNGO(非政府組織)が参加する慈善団体『緊急災害委員会』の活動を、報道の公平性を損ねる恐れがあるとして放送しない方針を決めたもの。BBCは義援金が効率的にガザ市民の手に届くかという点にも疑問を持っている。
 AFP通信などによると、この決定に怒った数千人がロンドン中心部で1月24日に抗議活動を行ない、ゴードン・ブラウン首相など政治家からも批判の声が上がった。議会ではBBCの決定に「驚愕した」という議員51人が、BBCに説明を求める動議に賛成した。
 25日には、英国国教会(聖公会)の最高指導者であるカンタベリー大主教のローワン・ウィリアムズ氏が「義援金運動をBBCは放映すべきだったと思う」と述べた。
 BBCのマーク・トンプソン会長は24日、BBCには「わずかでも放映の公平性を損ねる恐れがある要因を排除する義務がある。これまでに築いてきた報道の公平性を守るための決定だった」と述べた。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月1日)=https://www.cwjpn.com
★ガザ情勢=「停戦」後の新たな苦難=精神的後遺症や衛生環境=現地の小教区司祭が語る
★教皇、証しと促進を呼び掛け=家庭といのちの価値=世界家庭大会
★教皇「一致祈祷週間」に=祈りと回心呼び掛ける
★聖パウロの回心のミサ=3修道会が主催しささげる
★公式チャンネル開設=バチカン=動画投稿サイトと契約

  =キリスト新聞(1月31日)=https://www.kirishin.com
★「愛」の名で繰り返される悪行=「またか...」教界に憤激の声
★オランダの「無神論」牧師="神の存否議論を教会で"
★いのちを守るお弁当=21年目迎えた東京・山谷「まりや食堂」
★キリスト教出版界=価格めぐる溝深く=岩手で地元牧師と懇談
★新日本聖書刊行会 理事長に竿代照夫氏選任

  =クリスチャン新聞(2月1日)=https://jpnews.org
★オバマ米大統領就任式=祈り・演説に表れた「多様性の一致」
★「新日本聖書刊行会」社団法人認証が完了
★「経済津波」にこそ祈る=断食祈祷聖会2009
★全世界からの帰国者一堂に=内外の支援教会・団体が連帯へ
★「大学進学あきらめないで」=受験生に経済支援するキリスト教主義大学


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