世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1001信(2010.03.29)

  • 米聖職者の性的虐待、教皇関与をNYタイムズ紙報道
  • 子どもを虐待したカトリック聖職者、独で新たに6人判明
  • キュンク神父が教皇批判、バチカン機関紙主幹は反論
  • バチカンが教皇を擁護するコメント発表
  • 「流言の脅しには屈しない」と教皇
  • バチカンが中国担当者を秘密裏に選任か?
  • バチカン図書館所蔵の文書数千点をデジタル化
  • 中国で所在不明の元人権派弁護士は五台山で「自由に」
  • 英の民宿が同性カップルの宿泊を拒否
  • 絵画「最後の晩餐」の食卓も時代が下ると豊富に
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米聖職者の性的虐待、教皇関与をNYタイムズ紙報道

 【CJC=東京】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が3月24日、ウィスコンシン州のカトリック聖職者が200人もの児童に性的虐待を行い、管轄する大司教がバチカン(ローマ教皇庁)に事案を報告したものの、処罰されていなかったことが分かったと報じた。
 バチカン(ローマ教皇庁)教理省に報告が上がった1996年当時に同省長官を務めていたのは教皇ベネディクト16世。同省はその際、何の回答もしなかったという。
 教皇の当時の側近がその後、内部での懲戒手続きを指示したが、聖職者が悔い改めたとする書簡を現在の教皇に送った後、手続きは打ち切られた。
 聖職者は50〜74年まで聴覚障害児の学校で勤務した際に虐待を行ったとみられ、98年に聖職をはく奪されることのないまま死去した。


◎子どもを虐待したカトリック聖職者、独で新たに6人判明

 【CJC=東京】CNN放送によると、ドイツ南部レーゲンスブルクのカトリック教区は3月22日、子どもへの性的暴行など虐待の過去があった神父4人、修道女2人を確認したと発表した。これまでに、7人が被害を受けたと主張している。教会区は警察と協力し、暴行事件6件のうち2件で、使用当局に判断を委ねている。
 暴行6件のうち5件は1970年代、残る1件は84年に発生していた。暴行に関わった聖職者6人は全員、現在も存命。


◎キュンク神父が教皇批判、バチカン機関紙主幹は反論

 【CJC=東京】ドイツの神学者ハンス・キュンク神父が教皇とドイツの教会組織(ヒエラルキー)に疑惑を投げ掛けた論文を発表したことに、バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』のジャン・ヴィアン主幹が、反論した。カトリック通信CNAが報じた。
 同主幹はキュンク論文を、「つまらない、ひどい味」と決め付け、「反論に値しないものの、教皇攻撃が直接、明らかにされており、何か言うべき機会だ」と述べた。
 キュンク神父は、1960年代にチュービンゲン大学で神学教授だったころから、教皇ベネディクト16世とは仲間だった。そのキュンク神父が伊紙『ラ・レプブリカ』3月18日付けに寄稿し、教皇がドイツの性的虐待の被害者に直接謝罪するよう呼び掛けた。
 教皇が、「何十年も、これらの人権侵害を世界的なレベルで隠して来たことに責任のある主要人物」だとキュンク神父は主張した。激烈な調子で、神父は、教皇の独身は"貴重な賜物"とする定義を否定、既婚聖職者を特別に許容する聖書の教えを教皇が無視している、と述べた。神父はさらに、ドイツの司教と教皇が虐待事例にそれぞれ責任があることを認めるよう要求した。
 寄稿で、神父はまた特に、ドイツ司教協議会会長のロベルト・ツォリッチ大司教を非難した。大司教声明が、『すべての専門家』が、独身制が直に小児性愛に関係する可能性を排除したとしていることを理由にあげた。
 キュンク神父の記事には、翌日から様々な反応が見られた。その中にヴィアン主幹の『イル・フォグリオ』紙とのインタビューもあった。
 ヴィアン主幹は、教会内での独身制を擁護し、誓願を制定した11世紀の改革に加えて、明確な基盤が『マタイによる福音書』(19・11)と『第一コリント』(7・1)にあり、どちらもキリスト教の「原始時代」から「明確な言葉」で示されている、と言う。
 教皇(当時のラッツィンガー枢機卿)が責任を負っていたミュンヘン・フライジング教区の性的虐待司祭の配置について、ヴィアン主幹は、「キュンク神父やメディアが報じたのと事実は異なる」と指摘している。聖職を禁止しようとしたラツィンガー枢機卿の意図に従わなかったことが、若者に対するさらなる犯行につながったのだ、とヴィアン主幹は説明している。
 キュンク神父は、司教代理が責任を取ったことで教皇が「無罪」になるわけではない、と言う。ヴィアン主幹には、教皇やロベルト・ツォリッシュ大司教に対するキュンク神父の攻撃は、何か特定の問題を解決するよりも「固定観念を維持する」ために書かれているように見えたようだ。


◎バチカンが教皇を擁護するコメント発表

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が枢機卿時代に米国の神父の児童性的虐待をもみ消したとの疑惑が米紙ニューヨーク・タイムズで報じられたことについて、バチカン(ローマ教皇庁)は3月25日、教皇を擁護するコメントを発表した。
 疑惑は、米国のローレンス・C・マーフィー神父が1950〜74年に聴覚障害を持つ児童200人に対して性的虐待を行ったこと。ウィスコンシン州の大司教がバチカン教理省に問題を報告する書簡を2回送ったが、当時の同省長官だったヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿(現教皇)は何の回答もしなかったという。
 これに対し、教皇庁のフェデリコ・ロンバルディ広報担当は3月25日、教理省は当時、マーフィー神父の公的役割を制限し「自分の行為の重大性に対する全責任を取るよう(同神父に)求める」ことを提案したと反論した。
 提案の根拠について、「マーフィー神父は高齢で健康状態も悪く、隠遁生活を送っており、20年以上にわたって虐待疑惑は報告されていなかった」と説明し、教理省の指導の4カ月後に同神父が72歳で死去したとを指摘している。
 教会審問については、「同神父に対する民事ないし刑事手続きの可能性とは全く関係のないもの」と述べた。
 バチカン機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は、今回の報道を教皇とその側近を中傷しようとする「下劣な試み」と非難し、教皇の「透明性、意志の強さ、厳格さを強調。マーフィー神父をめぐる問題について「隠ぺいはない」とする論評を掲載した。AFP通信が報じた。


◎「流言の脅しには屈しない」と教皇

 【CJC=東京】枢機卿時代に米国の神父の児童性的虐待をもみ消したとの疑惑がニューヨーク・タイムズ紙などで報じられた教皇ベネディクト16世は3月28日、復活祭前の「しゅろの日曜日)」のミサで、信者らに流言に惑わされないよう呼びかけた。
 バチカンのサンピエトロ広場で行われたミサで教皇は、相次ぐカトリック聖職者による児童虐待疑惑について直接言及はしなかったが、「イエス・キリストは、流言を通じた脅しに立ち向かう勇気を持つように、われわれを導いてくださる」と述べ、暗にスキャンダルに屈しない姿勢を示した。
AFP通信が報じた。


◎バチカンが中国担当者を秘密裏に選任か?

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が極秘に中国での教会代表を選任した、との情報をタイ紙『バンコク・ポスト』が伝えている。その人だとされているのはクロアチア出身のモンシニョール・アンテ・ヨジツ。公式にはフィリピン駐在バチカン使節だが、実際には香港に居住して、聖座(バチカン)と中国の教会との連絡役を務めている。
 モンシニョールは、中国当局に、香港の聖座研究ミッションの新しい責任者として、アイルランド人のマーティン・ニュージェント氏と交代した、と紹介されたという。ニュージェント氏は2001年以来、責任者だったが、本土を訪問したのは、2回もビザ申請を拒否された後のことだった。
 中国とバチカンの外交関係は1951年に断絶した。中国に共産主義政権が樹立して2年後のことだった。
 注=モンシニョールは、バチカンの司教補佐以上への尊称・呼び掛けに用いられる。


◎バチカン図書館所蔵の文書数千点をデジタル化

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は、バチカン図書館所蔵の文書数千点のデジタル化を進めている。機関紙ロッセルバトレ・ロマノが3月23日報じた。
 「バチカン図書館に委ねられた資産を保全する中で文化を豊かにするという壮大な計画」は完成までに数十年かかる、という。
 バチカン図書館は、世界で最古の一つとされており、手稿約7万5000点を所蔵している。総数では4000万ページという。総数は100万冊を超えるとも言われる。
 所蔵品の中では4世紀に作られたギリシア語旧新約聖書の『バチカン写本』が有名。シナイ写本、アレクサンドリア写本と並び現存する三大ギリシャ語写本の一つ。1475年以来、蔵書目録に記録されている。またプロコピオスが6世紀のローマ皇帝ユスティニアヌス時代の裏面史を描いた『秘史』も所蔵している。
 バチカン図書館にはいわゆるポルノ本が多数収蔵されている、と取りざたされているが、『禁書目録』に記載されたものの複製が大部分で、「世界最大」といううわさとは程遠いようだ。
 関心が寄せられている秘密文書は、17世紀に分離された秘密文書館が所蔵しているので、今回のデジタル化には含まれない模様。
 秘密文書館は、第二次世界大戦関係の記録など15万点を保存している。教皇ピオ12世がユダヤ人大虐殺に沈黙を守ったと非難されている中で公開が待望されている。
 バチカン図書館は、2007年に改築のため閉鎖されたが、その際試験的に23文書のデジタル化を始めた。米航空宇宙局(NASA)が開発した"非常に高度な"技術を利用している、とイタリアのANSA通信は報じている。


◎中国で所在不明の元人権派弁護士は五台山で「自由に」

 【CJC=東京】中国のキリスト者の人権擁護のために活動し、2008年にはノーベル平和賞の受賞候補者にもなった高智晟弁護士が、3月28日、外国通信社などに電話で、半年前に釈放され、山西省の仏教聖地、五台山で「自由に」暮らしている、と伝えた。中国山西省の親類宅で09年2月4日、公安当局者に連行される所を見られてから1年以上も所在不明だった。
 高氏は法輪功やキリスト者の人権擁護に取り組み、06年末に国家政権転覆扇動罪で執行猶予付き有罪とされたが、活動を続け、拘束された可能性が指摘されていた。
 「しばらくは静かに暮らしたい」と言う高氏、米国に本拠を置くキリスト教抑圧監視団体『対華援助協会』(CAA)が同氏の一家を保護しているが、家族と一緒になりたいかと問われ、「それはやさしいことではない」と語った。警察の監視下にあるようで、それ以上の発言を避けた。
 高氏の所在を巡っては、高氏の弟が1月14日、警察が高氏は09年9月25日に所在が分からなくなった、と伝えてきたことを明らかにしたが、欧米諸国を中心に関心が高まっており、3月中旬に訪中したデービッド・ミリバンド英外相も16日の外相会談で提起したという。
 高氏は解散させられた集団『法輪功』のためにも弁護活動を行い、また改憲運動にも参加するなどで国際的にも注目される存在。


◎英の民宿が同性カップルの宿泊を拒否

 【CJC=東京】英紙『ガーディアン』によると、ケンブリッジシャー州ブランプトンのマイケル・ブラック氏(62)とジョン・モーガン氏(56)は同性愛関係にあるが、バークシャー州クッカムの民宿にダブルベッドの部屋を予約したところ、男性2人が同じベッドに寝ることはオーナーのキリスト者としての信念に反するとして3月19日、宿泊を拒否された。
 2人は、オーナーのスザンヌ・ウイルキンソンさんと夫のフランシスさんに、性的志向を病気のように扱われた、と警察に訴えた。英国では、『2006平等法』の下で、性的志向を理由に人を差別するのは違法。
 「この年齢になって、同性愛嫌悪を身近に経験したのは2人にとって初めて。ショックでびっくりした。ウィルキンソン夫人は、私たちが車を降りるのを見るや冷たく、歓迎しない姿勢を示した。私たちは礼儀正しく、友好的にふるまった。彼女は、私たちが事前に話していたら、来るようには言わなかったのに、と言った」とブラック氏。
 ウィルキンソン夫人は「政府の決めたことだからといって、自分の考えや信仰をなぜ変えなければならないのか分からない。うちはホテルではなく個人の家にお客様を迎えるやり方なのです」と言う。


◎絵画「最後の晩餐」の食卓も時代が下ると豊富に

 【CJC=東京】英医学誌『国際肥満雑誌』(電子版)によると、イエス・キリストと弟子たちの「最後の晩餐」を取り上げた著名な絵画を分析したところ、食卓に描かれた食物が、1000年間に大増量していることが判明した。
 「最後の晩餐」が現代に行われたとしたら、食卓に並ぶのは、やはり質素な食事だろうか、との疑問を抱いた米コーネル大学のブライアン・ウォンシンク教授と、米バージニア・ウエスレアン大学教授のクレイグ・ウォンシンク牧師の兄弟。むやみに食べると肥満につながることへの警告もあってか、分析に挑戦した。
 ウォンシンク兄弟は、西暦1000年から2000年の間に描かれた52点を選び、食卓に描かれた食物をコンピューター・スキャン技術を用いて調べた。その結果1000年間の増量割合は、前菜が69%、皿の大きさは66%、パンが23%だった。
 兄弟は、「最後の晩餐」がこれほど豊かになった理由は1000年の間に農業生産が著しく向上したためとみている。「芸術は実際の暮らしを反映する」と言う。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽100以上のキリスト教救援団体が『ACT連合』を3月24日結成。
▽北朝鮮の朝鮮中央通信は3月22日、不法に北朝鮮入りした30歳の米国人男性アイジャロン・マーリ・ゴメスについて「当該機関が起訴することにした」と報じた。1月下旬に中朝境界を不法に越えたとして身柄を拘束されていた男性とみられる。
▽パキスタン南部パンジャブ地方で、イスラム教徒6人がイスラム教への改宗を拒否したキリスト者を殺害。
▽バチカンがトゥイッター始める。6言語で。 
▽米カトリック教会聖職者による性的虐待の被害者4人が3月25日、バチカンのサンピエトロ広場付近で、教皇の写真を示しながら記者会見をしていたところ、無許可行為として警察に拘留された。
▽第34回『オリヴィエ賞』の新作作品賞に米劇作家カトリ・ホールの『ザ・マウンテントップ』が選ばれた。マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を描いた物語。座席数65の小劇場で初めて上映された。
▽ナイジェリアで発生した一連の虐殺事件に関連して163人を逮捕した、と警察当局が米CNNテレビに3月22日語った。ジョス近郊のキリスト者が多数の村では1月にイスラム教徒ら約150人が殺され、3月7日には報復のためか200人以上が殺されている。
▽テンプルトン賞にフランシス・J・アヤラ氏。カリフォルニア大学アーバイン校生物学教授。
▽アメリカ人のほとんどはイースターを宗教的な休日だとはしているものの、バーナ・グループ調査によると、イエスの復活を祝うもの、という人は、半分以下。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(3月28日)=https://www.cwjpn.com
★世界青年の日=教皇メッセージ=愛と信仰のうちに成長を
★困窮者支援続く=「いのちを守るための緊急アピール」から1年超=愛知・豊橋教会
★教皇=福音ルーテル教会で説教
★「信徒発見」記念ミサ=国宝・大浦天主堂でことしも
★カトリックと日本キリスト教協議会=テーマは裁判員制度=東京で対話集会
★メジュゴリエの「出現」=バチカン、調査へ

  =キリスト新聞(3月27日)=https://www.kirishin.com
★"「朝鮮学校」も対象に"=高校無償化=キリスト教界、賛同広がる
★クリスチャンアカデミー=第2回神学生交流プログラム・京都=農村伝道神学校も初参加
★東京ミッション研究所=20周年記念フォーラム="対話は必須"とマタタ氏
★第1回アジア宣教フォーラム="日本語教会の架け橋に"
★キリスト教学校教育同盟=100周年=記念ロゴ決まる
★ナイジェリア=キリスト者の村襲撃=軍が知事の警告無視か

  =クリスチャン新聞(3月28日)=https://jpnews.org
★手足なくとも神が完全=先天性四肢障害=N・ブイイチさん
★日本国際飢餓対策機構=ハイチへ清家弘久スタッフを派遣
★「ハーベストタイム」から「ライフライン」へ=沖縄・京都で番組枠を引き継ぎ
★限りある生から永遠へ=「越え行く詩人」尹東柱をしのぶ
★チリ地震被害甚大=国際援助機関 活動急務
★ナイジェリア=キリスト者500人虐殺か=イスラム武装集団が襲撃


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