世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1035信(2010.11.22)

  • 中国カトリック教会が司教を独自任命、バチカンは反発
  • 教皇、エイズ感染予防のためのコンドーム使用容認も
  • プロテスタントをキリスト教一致推進評議会議長非難
  • 米カトリックと改革派諸教会が洗礼協約
  • バチカンが性的虐待問題への新指針を準備
  • 『キリスト教一致推進評議会』が設立50年迎える
  • イラン女性の石打ちによる死刑判決にバチカン介入か
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎中国カトリック教会が司教を独自任命、バチカンは反発

 【CJC=東京】中国政府公認のカトリック教会『中国天主教愛国会』は11月20日、河北省承徳の司教に郭金才神父(同会副秘書長)を正式任命した。同氏は全国人民代表大会(全人代=国会)の代表でもある。式典が行われたピンカン教会周辺では、多数の警官が動員され、警備に当たった。
 バチカンは18日、中国当局が聖職者に対し、任命式典への出席を「強制」しているとして、中国を非難する異例の声明を発表していた。20日の式典には、バチカンの承認を得ている司教8人が式典に参加した。その中のモンシニョール・ジェイ・ジュンミン(遼寧省)、リ・リャングイ(河北省滄州)、ファン・シンマオ(河北省衡水)の3人は出席のため、現職を引退させられた、とカトリック専門アジア・ニュースが中国教会筋の情報として伝えている。
 中国政府は、キリスト教会へ外国の関与、支配を認めず、「自主、自立、自伝」の独自運営原則を受け入れた教会を公認している。1951年の対バチカン(ローマ教皇庁)断交を経て、中国のカトリック教会は愛国会と、教皇に忠誠を誓う非公認の「地下教会」に分裂している。
 カトリック教会では、司教は教皇だけが任命権を持つ。バチカンは2006年、独自任命があった時から非公式に協議を進め、中国側が提示した複数候補の中からバチカンが承認した形で司教任命を認めている、とされてきた。07年には中国が独自に司教を選出後、バチカン側が黙認する形になった例があるという。
 今回、バチカンは承認しておらず、任命を強行すれば中国とバチカンの関係改善の動きが損なわれると事前に警告していた。それを無視しての任命に、バチカンは不法だと表明、反発している。バチカンが郭氏を承認しなかったのは、同氏が全人代代表であり、政府の影響を強く受けることになる、との懸念もあったようだ。
 愛国会の劉柏年副主席は、2年前にバチカンに決定を伝えたが回答が無かったと言う。同氏は「もう待てない。中国とバチカンの関係が損なわれたとしても、我々の問題ではない」として、「教皇は中国を愛していると信じる。一握りのバチカンの人々が関係改善を阻んでいるのだ」と言う。同氏はさらに「司教の出席は自発的なものだ。カトリック教会の教区は司教なしではやって行けないし、福音を伝えることが出来ない。中国で福音を広めることに政治的な妨害は許されない」と語った。
 アジア・ニュース編集長のベルナルド・セルヴェレラ神父は、中国政府が教会を管理下に置こうとして来たとし、今回の動きは中国の実態を示すものだ、と指摘している。
 中国のカトリック信徒数は、公認教会が2000万人、地下教会が6000万人との推定もある。


◎教皇、エイズ感染予防のためのコンドーム使用容認も

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は、これまでいかなる避妊具使用も産児制限につながるなどとして強く反対していた。しかし教皇ベネディクト16世は、エイズウイルス(HIV)感染予防のためなど「特定の場合において」コンドームの使用は容認されるとの見解を示した。ドイツ人ジャーナリスト、ペーター・ゼーバルト氏とのインタビューで語った。
 11月20日付けのバチカン機関紙『オッセルバトレ・ロマノ』が、ドイツ人ジャーナリストのペーター・ゼーバルト氏の教皇との20時間に及ぶインタビューを元にした著書『世の光=教皇、教会、時の徴』を紹介した中で明らかになった。
 インタビューで、教皇はコンドーム使用が認められる場合もありうる一例として売春のケースを挙げたという。ただそれは「道徳的に改善していく一歩」となる場合に限られるとして買売春そのものを認めたわけでないと指摘している。
 また教皇は「コンドームが(本来は)HIVに対処する方法ではない」とも述べ、一夫一妻の下でパートナー以外と関係を持たないことが最も有効な感染防止策だとの考えを強調した。
 教皇は2009年のアフリカ諸国歴訪の際、記者団に「コンドームを配布してもエイズ対策の解決策ではない。かえって問題を大きくする」と発言、世界保健機関(WHO)や各国政府、一部カトリック神学者から「非科学的」「人命軽視」との批判を受けていた。
 『国連合同エイズ計画』は、教皇の発言を「大きな進展」として歓迎している。


◎プロテスタントをキリスト教一致推進評議会議長非難

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会が設立50周年を迎えたが、議長のクルト・コッホ枢機卿が11月15日、総会の席上、エキュメニズム(教会一致)の当初の目標を放棄している、とプロテスタントを非難した。
 諸教派の間で聖餐式(聖体拝領)共有に関し、相対論的な教会論に屈しており、本質的な一致という本来のエキュメニズムから逸脱したとして、枢機卿は「そのことは、多元的相対論的傾向によって特徴付けられるポストモダンの考え方に決定的に見られる。それはイエス・キリストの教会の目に見える一致を求めることへの大きな挑戦だ」と言う。枢機卿は、この考え方がプロテスタントだけでなく、『多くのカトリック者』の間でも見られる、と語った。
 コッホ枢機卿は、エキュメニズムの現在の危機が、カトリックとプロテスタントが教会の性質を記述する方法作成に『大きく異なるメンタリティー』とでも言うものが存在するからだ、と述べている。「宗教改革から生まれた教会や共同体は、目に見える一致というエキュメニズムの本来の目的を放棄し、諸教会の相互承認という概念にそれを置き替えた」と言う。
 枢機卿は、宗教改革による教会が、「教会の断片化という重大な様相」で特徴づけられ、そのため「教会的多元主義」を採用することになった、と指摘している。これはエキュメニズムの目標を、一つの教会への、多様性を受け入れつつも、目に見える一致を再建するというよりも、多くの教会の「和解された多様性」とするもののように見える、と言う。
 さまざまな告白教会の中のプロテスタント『多元主義』が、イエス・キリストの真の教会はカトリック教会の中に存在しており、別の言葉で言えば、彼女(教会)はすでに既存の現実であるというカトリックの信念とは対照的だ、と枢機卿は主張する。「プロテスタントの見解と、エキュメニカルの目的が、相互聖餐ではなく、聖体拝領が正当に行なわれる「聖餐」だとするカトリックや正教会の解釈と深遠な違いがあることは明らかである」と言う。


◎米カトリックと改革派諸教会が洗礼協約

 【CJC=東京】米カトリック教会司教協議会は、メリーランド州バルティモアで秋季年次会議を開催、11月19日、長老教会(PCUSA)、米改革教会(RCA),キリスト改革教会(CRC)、合同キリスト教会(UCC)との間で、洗礼を有効と認める相互協約を204対11票で採択した。
 宗教専門RNS通信によると、司教協議会エキュメニカル・信仰間委員会のウイルトン・グレゴリー委員長は、協約を「エキュメニカル(教会一致への)里程標」とし、「改革派の兄弟姉妹と共に、わたしたちカトリック司教は、改めて洗礼を真実の、たとえ不完全なものであっても、キリストにあって分かち合っている一致の基礎として確認出来る」という声明を発表した。
 カトリック教会は、1960年代に開かれた第二バチカン公会議以来、ほとんどの教派の洗礼の有効性を認めて来たが、2002年に、改革派のキリスト者が洗礼の新形式を採用したり、「三位一体」を別の名に呼び替えたりしたことをめぐって司教の間に懸念が高まっていた。
 今回の協約によって、カトリック司祭は、聖職者が水を注ぎ、「父、子、聖霊」としての神に祈ることが必須だとするカトリックの教義に、改革派の洗礼が沿ったものであると推定することになる。これは改革派からカトリックに転会したり、カトリック教会で結婚式を行なう時の判断基準となる。
 PCUSAはすでに協約を採択しており、他の3教会も近く採択すると見られる。

※関連短信
▽米司教協議会は新会長に、ニューヨークのティモシー・ドーラン大司教を選出した。


◎バチカンが性的虐待問題への新指針を準備

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は11月19日、性的虐待問題に司教が「調整され、効率的な」応答が出来るように、新指針を準備していることを、開催中の枢機卿会議で発表した。
 指針の詳細や、いつ公表されるかは明らかにされなかったが、昨年春に巻き起こり、教会の権威や性的虐待問題への対応能力にも疑問が出されるようになった事態へ対処する決定的な手段の一つとなるものと期待されている。

※関連短信
▽11月19日、バチカンで枢機卿会議が開催、教皇ベネディクト16世参加のもと、祈りや意見交換を行われた。会議には150人の枢機卿が出席した。
▽教皇ベネディクト16世は11月20日、バチカンで公開枢機卿会議を行い、この中で24人の新しい枢機卿の叙任式を行なった。


◎『キリスト教一致推進評議会』が設立50年迎える

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会が、今年で設立から50年を迎え11月17日、バチカンの本部で、同評議会議長クルト・コッホ大司教、同前議長ウォルター・カスパー枢機卿らが記念行事を開催した。英国国教会のローワン・ウィリアムズ・カンタベリー大主教、正教会エキュメニカル総主教庁のヨアニス・ペルガモン府主教も参加した。
 教皇ベネディクト16世は18日、同評議会関係者と会見、エキュメニカル対話における同評議会の50年の歴史の中で、偏見を乗り越え、神学対話、社会福祉や命・自然の保護などに関する協力を進めながら、諸キリスト教教会や共同体との誠実な関係を得られたことを評価した。


◎イラン女性の石打ちによる死刑判決にバチカン介入か

 【CJC=東京】婚外の関係を持ったという理由で訴追され、姦通罪で石打ちによる死刑を言い渡されたイラン女性サキネ・モハマディ・アシュティアニさんへの同情が世界的に高まっている。
 バチカン(ローマ教皇庁)は、教皇ベネディクト16世がこの問題を注視しており、外交ルートを通じて介入する可能性も排除しない姿勢だと述べている。
 バチカン広報当局によれば、教皇は過去にも人道問題について当事者ではない国から要請を受けた場合に外交ルートを通じて非公式に介入してきたという。「教会は死刑に反対しており、特に石打ちは残虐だとの見解だ」と述べている。
 イタリア政府もアシュティアニさんの恩赦を訴えていると伝えた。外務省は外交ルートを通じて恩赦を求めると表明。イタリアはイランにとって欧州連合(EU)の中でも有数の貿易相手国。両国の商工会議所の統計によれば、2009年の両国の貿易額は80億ドルを超えている。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪アフリカ≫
▽スーダン南部の大沼沢地帯が、石油採掘により環境が汚染され、5500万住民の飲料水に被害を与えている。独カトリック系人権団体『希望の徴』が調査結果を、ケニアのナイロビで発表した。同地はナイル川の水源地帯。

≪北米≫
▽米福音ルーテル教会の同性愛容認傾向に反発、アリゾナ州フィニクスのラカーサ・デ・キリスト・ルーテル教会は同派離脱に動いている。

≪中南米≫
▽中米ハイチの保健当局は11月16日、コレラの死者が1034人、入院感染者は約1万6800人に上っていると明らかにした。半世紀以上コレラ感染がなかったハイチで、国連ハイチ安定化派遣団ネパール部隊が派遣された9月以降にコレラが流行、同部隊が「感染源」と疑われている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(11月21日)=https://www.cwjpn.com
★聖公会主教5人が転籍=カトリックへ=バチカンが確認
★「キリスト者の保護強化を」=イラクの教会爆破受け、バチカン高官
★信仰伝えたい人 集まろう!=入門講座担当者目指して=さいたま教区研修会=栃木県・日光市
★日本カトリック部落差別人権委員会=東京で全国会議開催=「水平社宣言」学び直す
★「カリタスこそ平和構築の道具」=菊地司教 韓国で講演=ソウルの平和フォーラム

  =キリスト新聞(11月20日)=https://www.kirishin.com
★中国の教会から第4回訪日団=人事交流通し理解深める
★ヴォーリズ生誕130年記念式典=矢野義氏"バンザイなこっちゃ"
★日本福音振興会が功労賞を授与=湊、ヘック、伊藤の3氏
★『pen』『考える人』に次いで『一個人』=初心者向け"キリスト教入門"
★那覇地裁=沖縄靖国訴訟で請求棄却=遺族の権利侵害認めず

  =クリスチャン新聞(11月21日)=https://jpnews.org
★つながればネットワークに=地域発 リターニーが交流=ANRC
★愛と教育の両立がカギ=東京・玉川聖学院60周年
★日韓高校生 友情誓い合う=玉川聖学院高等部は韓国・崇義女子校と交流会
★気を落とさず 絶えず祈れ=横田早紀江さんを囲む祈り会10年
★中国・山東省=「家の教会」牧師を襲撃


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