世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1038信(2010.12.13)

  • 中国カトリック教会最高指導者にバチカン非承認司教
  • 「中国の教会を扱うのは共産党」とバチカン観測筋
  • アイルランド・ダブリン大司教が教会は尊大、と自己批判
  • 米長老派宣教団体が反ユダヤ監視団体の批判に反論
  • 神の戒め破った、と葬儀に米カンサス州の教会が抗議
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎中国カトリック教会最高指導者にバチカン非承認司教

 【CJC=東京】中国天主教(カトリック)第8期代表者会が12月7〜9日、北京の友誼賓館で開催され、司教45人、司祭158人、修道女23人、信徒87人が参加した。
 カトリック系UCAN通信によると、代表者会は最終日の9日、天主教司教団主席に昆明(クンミン)教区の馬英林(マ・インリン)司教(45)を312票、棄権1票で選出した。また天主教三自愛国会主席に臨沂(リンイ)教区の房興耀(ファン・シンギャオ)司教(57)を310票、棄権3票で選出した。両者共に対立候補はいなかった。賛否は挙手で行なわれた。
 馬氏は、1998年に司教団秘書長、2004年三自愛国会副主席に就任。06年の司教選任以来、今日まで教皇の承認を受けておらず、バチカン(ローマ教皇庁)は司教と認めていない。中国人民政治協商会議のカトリック委員7人の中の1人。03年から08年には全国人民代表大会(全人代)代表を務めていた。
 房氏は、教皇の承認の下に1997年司教に選任された。2004年司教団副主席、政治協商会議委員。
 天主教三自愛国会については、教皇ベネディクト16世が2007年に出した中国の教会に関する書簡では、カトリック教会の教義とは相容れないもの、としている。
 司教団秘書長には、11月20日に教皇の承認なしに承徳司教に就任した郭金才氏が選出された。
 これで、バチカンが承認した司教にとって馬司教とミサなどの典礼を共同司式することを避けたり、馬司教の参列を断わることは非常に難しくなると見られる。
 バチカンにとって、今後の司教選任に際し、中国教会側の提案が、バチカンからすれば不法に就任した司教の名のもとに出されることも懸念される。
 今回の代表者会開催には、懸念を示す教区もあれば、一方で閉幕まで信徒に代表者会のために祈るよう勧める教区もあった。香港の正義と平和委員会は、開催に反対して中央政府連絡事務所前でデモを行なった。当局が司教に参加を強要したとの情報もある。


◎「中国の教会を扱うのは共産党」とバチカン観測筋

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)で長く中国問題に取り組んでいた教皇庁立外国宣教研究所のベルナルド・セルヴェッレラ神父は、カトリック代表者会の開催など、最近の動きに「1950年代に戻った」と懸念している。同神父は研究所の『アジア・ニュース』の編集者。
 「率直に言って、今回の選出を見ると、毛沢東時代に、愛国会設立当時に戻ったのだ」と指摘する同神父は、北京政府を厳しく批判してきた。また教会の政権との関係にも慎重論だが、12月9日、カトリック通信(CNA)とのインタビューでも楽観論を戒めている。
 今回、バチカンが認知していない組織の長選出に参加することを、教皇に忠誠を誓う司教に中国当局が強要したことで、教会内部に北京の共産党政権の意図についてあまりに楽観的だったのでは、と同神父は懸念している。
 中国当局が、中国の教会を扱うのは、共産党であって、バチカンではないのだ、という明確なメッセージを発信した、と同神父は語った。今回の選挙が、「バチカンを傷つけ」、教会の一致への障害を設けたのだ、と言う。
 バチカン側を楽観的過ぎと見るのは、教皇ベネディクト16世の中国のカトリック者と政府当局への姿勢が教会尊重に向かうと思っていたからだが、教皇が2007年に中国のカトリック者に宛てた公開書簡を発表以来、何も変わらなかった、と同神父。
 中国側の強硬姿勢の背景に、同神父は、三自愛国会が、権力を維持し、教会財政を手中にあることを上げている。ローマとの関係改善が進めば、三自愛国会の存在自体が危うくなるからだ、と言う。またインフレ進行や貧富格差拡大に対する人民の不満抑制のために教会を監督下に置こうとしている、と見ている。
 「中国側は宗教の自由の意味を理解出来ないのだと思う。良心に、また党や国家にではなく、神にのみ従うということの中にあるものを理解できないのだ」
 中国のカトリック者には「礼拝の自由はあるが、宗教の自由はない」と同神父は説明する。


◎アイルランド・ダブリン大司教が教会は尊大、と自己批判

 【CJC=東京】英PA通信によると、アイルランド・カトリック教会では、首座司教ショーン・ブラディ枢機卿に次ぐ高位聖職者であるディアミューイッド・マーティン大司教(ダブリン教区)が、聖職者による児童性的虐待事件について謝罪する中で、教会が自己中心的で尊大になっていたことを批判した。
 事件隠蔽を教会の深刻な不安徴候だとし、「改革が求められている」として、大司教は教会が自らを合法性を越えた役割にまで踏み込むことを見過ごした、と語った。


◎米長老派宣教団体が反ユダヤ監視団体の批判に反論

 【CJC=東京】米長老派『イスラエル・パレスチナ宣教ネットワーク』が12月6日、反ユダヤ監視団体『サイモン・ウイゼンタール・センター』のラビ・マーヴィン・ハイアーとラビ・エイブラハム・クーパーがウォールストリート・ジャーナル紙に3日寄稿した長老教会批判への反論を発表した。
 同ネットワークは『長老派中東研究委員会』報告作成に主要な役割を果たしている。同報告が7月にミネアポリスで開催された総会で最終採択された際にも、同センターは反対の声を上げていた。


◎神の戒め破った、と葬儀に米カンサス州の教会が抗議

 【CJC=東京】米カリフォルニア州フレズノの教会で12月11日、マシュー・アベイト海兵隊員(26)の葬儀に、カンサス州トピカのウエストボロ・バプテスト教会(フレッド・フェルプス牧師)の会員数人が押し掛け抗議する、一幕があった。
 ウエストボロ・バプテスト教会が葬儀に抗議するのは、兵士たちが、他人を殺すなとの神の戒めを破ったこと、そして米軍兵士は、同性愛と妊娠中絶を容認する国を代表しているからだ、という。
 これまでも、さまざまな場所で抗議を繰り返し、米メディアの注目を集めている。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪アジア≫
▽中国当局が12月1日、急成長している『家の教会』を対象に来年3月まで「阻止作戦」を展開するとの秘密指示を発した、との情報。
▽中国がノーベル賞に対抗してか、「孔子平和賞」を創設、台湾の連戦氏に12月9日授賞した。ノーベル平和賞授賞式の前日。
▽中国基督教協議会の代表団7人がジュネーブを訪問。同協議会成立後4回目。世界教会協議会、ルーテル世界連盟、改革教会世界共同体、世界YWCA、近郊ボセーにあるエキュメニカル研究所などを訪問。

≪インド・パキスタン≫
▽インドで牧師が貧困層相手に「児童誘拐」をしている、との指摘に連邦最高裁が調査命令。
▽パキスタンの少数派対策担当のカトリック者長官に殺害予告。

≪中東≫
▽前原誠司外相は11日、チュニジアの首都チュニスで、イスラエルとパレスチナの和平交渉について「東エルサレムを含む入植活動の完全凍結を求める」と述べた。
▽イスラエル消防がカルメル山地域の火事を鎮火、と12月5日発表。
▽バグダッドでキリスト者さらに2人殺害。

≪欧州≫
▽オランダ・カトリック教会聖職者による性的虐待は2000件にも。
▽バチカンは2008年、パウロ6世ホールの屋根に発電用のソーラーパネル2400枚を設置した結果、居住者1人当たり太陽光発電量はピーク時で200ワットで、環境先進国に。但し人口は約800人。
▽バチカンのサンピエトロ広場に12月3日、クリスマスツリーが立った。
▽エリトリアなどから誘拐された数百人がシナイ半島の荒野に閉じ込められて虐待されていることに、教皇ベネディクト16世が懸念を表明。

≪アフリカ≫
▽ソマリアのヌルタ・モハメド・ファラさん(17)がイスラム教からキリスト教に改宗したところ、11月末、射殺された。「名誉殺人」と見られる。

≪米州≫
▽米テキサス州で行われた結婚式を首都ワシントンからテレビ電話スカイプを利用して司式しても無効、とワシントンの裁判所。
▽米フロリダ州ウエストパームビーチのバプテスト教会で、クリスマス・ページェントの練習中に450キロものラクダが舞台から客席へ転落。負傷者は出なかった。
▽米海軍基地に強行立ち入りしたとして、カトリック司祭2人、修道女1人など5人への公判が連邦地裁で行われる。有罪とされると、禁固10年の可能性も。
▽米国務省のクローリー次官補が、パレスチナ和平の直接交渉再開は現状では困難、との認識を明らかにした。パレスチナ側が求める占領地での入植活動凍結にイスラエルが応じないため、という。
▽米国で急成長している無神論者の団体の会員は、高等教育を受けた既婚の白人男性で、信仰深い良心の元で育っていることが分かった。
▽米ギリシャ正教会が、同時多発テロ事件跡地付近に教会堂建設を計画したところ、行政側に妨害されている、と抗議。
▽米ギャラップ調査によると、聖職者を倫理的だと見る人は53%と前年より3ポイント増加。8%は「倫理的でない」と。
▽米国に本拠を置く、中国のキリスト教抑圧監視団体『対華援助協会』のサイトがサイバー攻撃にさらされた、と同協会が12月2日発表。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(12月12日)=https://www.cwjpn.com
★聖母マリアへの祈り(天使祝詞)新訳文の試用版発表=意見募集 来年3月まで
★教皇、待降節の始めに=出生前のいのちのため祈る
★教皇、フィリピン司教団を称賛=死刑廃止への貢献で
★教皇庁文化評議会定例総会=自由、活発に議論=「コミュニケーションと新しい言語の文化」=ローマ
★埼玉=教区正義と平和協議会「ロバの会」=20周年祝い 集い開く

  =キリスト新聞(12月11日)=https://www.kirishin.com
★キリスト教学校教育同盟=100周年で記念式典=「一致を願い求めてこそ」=野本真也理事長 先達の苦闘に感謝
★教皇インタビュー本、各国で売れ行き好調=性的虐待、エイズ問題にも言及
★小河陽氏=日本エキュメニカル協会公開講演会=「新約のキリスト教は多様」
★115年目の全国大会=救世軍=参謀総長スワンソン氏が来日
★米国務省「信仰の自由」国際報告書=日本は"おおむね尊重"

  =クリスチャン新聞(12月12日)=https://jpnews.org
★「SPREAD+」日本各地に=若いクリスチャンが職場にいない...でも
★エジプト=公安当局が銃撃=教会建設めぐり 負傷者多数
★生誕150年、来日120年記念=第51回バックストン聖会=工藤弘雄氏が講演
★救世軍全国大会=原点から新たなビジョンへ=115周年=小さき者の必要とともに
★日本長老教会=牧師の厚生環境調査へ=新「礼拝式文」3種を承認


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