世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1050信(2011.03.07)

  • パキスタンで唯一のカトリック閣僚バッティ氏殺害される
  • バッティ・パキスタン少数民族相殺害に教皇らが弔意
  • 英バプテスト牧師が同性間結合の祝福許可を要請
  • 「新しい宣教」をテーマとしたシノドス指針書発表
  • バチカン博物館で視聴覚障害者のためのツアー
  • 米国の改訂聖書では"おとめ"は"若い女性"に
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎パキスタンで唯一のカトリック閣僚バッティ氏殺害される

 【CJC=東京】パキスタンの首都イスラマバードで3月2日、少数民族省のシャバズ・バッティ長官(42)が武装集団に銃撃され死去した。
 バッティ氏は現政権閣僚では唯一のカトリック者。民族・宗教間のために働き、イスラム教冒涜罪で死刑判決を受けたキリスト者女性を勇気をもって擁護したほか、同法の見直しを呼びかけていた。
 ここ数カ月、同氏は殺害脅迫を受けていた。バッティ氏は車で移動中、住宅地で覆面の武装集団による至近距離から銃撃を受けた。銃撃は2分ほど続いたという。護衛はいなかった。バッティ氏は搬送先の病院で死亡が確認された。
 犯人は現場にパキスタンのタリバン過激派の名と、バッティ氏が冒涜罪に反対したことに対する非難を書いた紙を残した。
 バチカン放送によると、バッティ氏は、今年1月、パンジャーブ州の知事が「イスラム教に対する冒涜罪」の廃止に賛同したことを理由に暗殺された直後、バチカン放送のインタビューに答え、正義と、少数派の人々の擁護の推進を暴力によって止めることはできないと述べていた。
 4日、パンジャーブ州ファイサラーバード県クシュプールで行われたバッティ氏の葬儀には3万人以上が集まった。同地はカトリック者が多数居住している。


◎バッティ・パキスタン少数民族相殺害に教皇らが弔意

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、パキスタンの少数民族省大臣シャバズ・バッティ氏が殺害されたことに深い悲しみを表明した。弔文で、教皇は冥福を祈ると共に、パキスタン国民のために忠実に勇気をもって奉仕した同氏を想起した。
 英国国教会の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏は、バッティ氏殺害に「ショックを受け、悲しむ」とし、キリスト者の安全への懸念が増大している、と3月2日語った。
 世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事は、パキスタンの首相に書簡を送り、バッティ氏殺害に「大きな衝撃と失望」を表明、様々な報道から、バッティ氏が「パキスタンで問題になっている冒涜罪を批判したために宗教過激派から暗殺された」ことが分かる、と指摘した。

※関連短信
▽パキスタン北東部パンジャーブ州ジャン県当局がイスラム教過激派集団の会議開催を許可しないよう、ムスリム連盟の1メンバーが警告した。周辺はキリスト者が多数居住する地域のため、抗争防止を意図したもの。


◎英バプテスト牧師が同性間結合の祝福許可を要請

 【CJC=東京】英バプテスト連盟(BUGB)は現在、牧師に同性間結合の祝福を許可していない。しかしサフォーク州イプスウィッチ・キリスト教会のアンドリュー・クライスナー牧師が、『バプテスト・タイムズ』紙に寄稿、各教会が独自に祝福する権限がある、と判断した場合には、式典を行うことを認めるべきだ、と主張した。
 市民結合式典(結婚式)に宗教的な要素を盛り込むことを可能にした法改正に伴うもの。
 イプスウィッチ・キリスト教会は、合同改革派とバプテスト派の結合教会。
 クライスナー牧師は、同性間の結合祝福を自分の意思であり、異なる見方をする人への敬意も明らかにした。しかし各個教会の自治を重んじるバプテスト派の原則に立って、変更を主張したもの。


◎「新しい宣教」をテーマとしたシノドス指針書発表

 【CJC=東京】世界代表司教会議(シノドス)第13回通常総会が、「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」をテーマに、2012年10月7〜28日開催されるが、「リネアメンタ」と呼ばれる指針書が3月4日、発表された。
 「リネアメンタ」は、このシノドスの性格、方向性を浮かび上がらせると共に、具体的な討議内容の検討に向けて、活発な意見交換を行うことを目的としている。巻末には会議参加者に向けた詳細な質問書が添付されている。
 発表された指針書は3章からなる。
 バチカン放送によると、導入では、前回の中東のための特別シノドス閉会時に、教皇によって「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」をテーマとしたシノドス開催が発表されると共に、教皇庁に「新福音化推進評議会」が創設された経緯に言及している。そして、今日の世界における新しい福音宣教の緊急な必要性、福音宣教への義務等が記されている。
 続いて、「新しい福音宣教とは何か」、その意味を考えると共に、新たな福音宣教が必要とされる様々な文化的・社会的背景が分析されている。
 さらにキリストの福音を宣言するために、キリストとの出会い、信仰教育、みことば、地方教会などのテーマを考察しており、また、洗礼・堅信・聖体の秘跡の重要性、家庭・教育者・宣教者の育成に注意を向けさせるものになっている。


◎バチカン博物館で視聴覚障害者のためのツアー

 【CJC=東京】バチカン博物館が視聴覚障害者のためのツアーを始める、と3月1日発表した。特別に訓練を受けたガイドが行うが、当面はイタリア語に限られる。
 ツアー参加者は、博物館所蔵の貴重品のレプリカ(複製品)に触ることも出来る。カラヴァッジョの「十字架降下」もその一つ。イエスを埋葬するために使われたと想定される香料も嗅げる。
 点字の解説書も用意された。聴覚障害者のためには1週間に2日だけだがイタリア語の手話による案内もある。


◎米国の改訂聖書では"おとめ"は"若い女性"に

 【CJC=東京】近く刊行される『ニュー・アメリカン・バイブル改訂版』(NABRE)に盛り込まれた変更点のいくつかが明らかになった。
 "ホロコースト"(1970年訳)は、旧約聖書の犠牲を参照して"燔祭"(バーント・オファリング)に置換されている。
 "暗い谷"(ダークバレー)は、今や"死の影の谷"より伝統的な"死の陰の谷"に、日本語では同じ穀物とも訳される"シリアル"は"グレイン"に変更された。
 イザヤ書7・14の"おとめ"(バージン)は"若い女性"(ヤング・ウーマン)に変わった。ただカトリック版では、脚注に"おとめ"をも意味する、と記されている。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽バングラデシュ中央銀行は3月2日、貧困救済のためのグラミン銀行の創設者、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス同銀総裁(70)の解任を命じた。

≪太平洋≫
▽ニュージーランド南部の地震発生から1週間の3月1日、政府の呼び掛けで、同国各地で犠牲者に黙祷が捧げられた。

≪中東≫
▽英国国教会は、イスラエルに駐在するスヘイル・ダワニ司祭のビザ更新を当局が2010年9月から拒否している、と3月6日明らかにした。

≪欧州≫
▽教皇ベネディクト16世は3月3日、バチカンでチリのセバスチャン・ピニェラ・エチェニケ大統領と会見した。人間の命や家庭の保護、総合的発展のための支援、貧困との闘い、人権の尊重、社会正義と平和など、共通の関心のテーマが取り上げられた。
▽ドイツ・カトリック教会は3月2日、聖職者や教会職員から虐待された少年少女に1人に5000ユーロ(約67万円)を支払う計画だ、と語った。
▽クリスチャン・ディオール社は3月1日、パリのバーでカップルに対して反ユダヤ的な暴言を吐いたチーフデザイナーのジョン・ガリアーノ氏を、ブランド・イメージを傷付けたとして解雇した。
▽里親志願するキリスト者が信仰から同性愛に反対していると、平等や人権を里子に教えることが出来ない可能性がある、とする判断を英高裁が行った。

≪アフリカ≫
▽エジプトのカイロ南郊ソウル村でコプト教会焼き討ち事件が3月6日発生した。司祭と3人の助祭が焼死したとも、イスラム教徒によって教会内に拘禁されているとも伝えれている。
▽カイロ南方ソルでイスラム教徒とキリスト者が衝突、イスラム教徒がシャハダイン教会に放火、死者2人を出した。キリスト者男性とイスラム教徒の女性が恋愛関係になったのをめぐる家族間の確執が抗争の原因。
▽エジプト南部ミニヤー県マラウィでコプト教会が運営する障害者ケア・センターを取り壊すという当局の決定に信徒たち約1万人が2月28日抗議デモを行った。アッシリア国際通信が報じた。

≪北米≫
▽イラクで戦死した米兵の葬儀の近くで、「兵士の死を神に感謝する」「神は同性愛者を憎む」などと書いたプラカードを掲げてデモを行い、遺族から訴えられた米ウェストボロ・バプティスト教会に、米連邦最高裁は3月2日、教会側の行動は米憲法で保障された表現の自由にあたるとの判断を下した。
▽米マサチューセッツ州ケンブリッジは工科大学(MIT)とハーバード大学で有名。そこに全世界から集まる学生たちの憩いと賛美の場所に、近くのアフリカ系ペンテコステ派教会がある。探訪記事をカナダ通信が配信している。

≪中南米≫
▽メキシコ・カトリック教会の献金収入の中に麻薬密売組織からのものがあることが当局から指摘され、内部からも浄化の声が上がっている。ニューヨーク・タイムズ報道。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月6日)=https://www.cwjpn.com
★ニュージーランド地震 被災地教区=全教会使用不能に
★リビアの教会指導者=混乱は「当然の要求」から
★教区カトリックセンター「サクラファミリア」と大阪梅田教会 新設=5教会が歩み寄り、1つに=立地生かし 複合施設として
★バチカン 統計値公表=信者数増え11億8千万人
★「なぜ憲法が重要か」=宗教者九条の和特別講演会=東京・梅窓院

 =キリスト新聞(3月5日)=https://www.kirishin.com
★「宗教者九条の和」で井田洋子氏が講演="世界に広げる責務"
★私立の個性輝く教育を=「建学の精神」再確認=東京でシンポ
★日本聖書協会が東京・南青山に書店展開=各種邦訳や外国語聖書も=「触れたことのない人に...」
★本多記念教会が明治学院とコラボ=高校・大学の連続性願い礼拝
★日本カトリック映画賞に『月あかりの下で』=生徒の輝きを生徒の目線で

 =クリスチャン新聞(3月6日・休刊)=https://jpnews.org



 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧