世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1076信(2011.09.05)

  • 『サマリタンズ・パース』が北朝鮮に緊急救援
  • 中国、河北省党書記に対宗教政策強硬派を任命
  • オーストリア・カトリック教会、難局にどう対応?
  • カンタベリー大主教、混乱のジンバブエなど訪問へ
  • 米大統領選、候補者の宗教関係が焦点に
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎『サマリタンズ・パース』が北朝鮮に緊急救援

 【CJC=東京】北朝鮮で発生した水害の救援へ、米国から90万ドル(約7000万円)相当の緊急援助物資100トンを載せた輸送機がノースカロライナ州シャーロットを9月2日出発、平壌市順安の国際空港に3日到着した。同州ブーンに本拠を置く福音派系人道援助団体『サマリタンズ・パース』(フランクリン・グラハム総裁)が送ったもの。
 「北朝鮮の人たちを愛する神がいることを知ってほしいのだ」とグラハム総裁は語った。「5月に北朝鮮を訪問した時、緊急援助が必要としていることが分かったが、最近の洪水で事態はさらに緊迫している」と言う。
 米国務省は8月18日、「米国際開発局(USAID)が複数の非政府組織(NGO)を通して、救援物資を北朝鮮の江原道(カンウォンド)と黄海道(ホァンヘド)地域に送る」と発表した。「北朝鮮に対する人道的支援は政治・安保的な憂慮と分離するというのが米政府の立場」と明らかにしている。
 米国務省は90万ドルを北朝鮮洪水救援のため、国内救援組織に拠出したが、『サマリタン・パース』は独自に120万ドル援助を追加した。また援助物資の配布状況を観測するため、スタッフが北朝鮮を訪問する。


◎中国、河北省党書記に対宗教政策強硬派を任命

 【CJC=東京】中国チベット自治区の張慶黎(60=ザン・キンリ)党書記が、河北省党書記に任命された。国営新華社通信が8月28日報じた。張氏はチベットではラマ教(仏教)抑圧で手腕を発揮したことで知られる。
 首都北京に近い河北省への異動が注目されるのは、同省7000万人の人口の中でカトリック信者は800万人から1200万人と推定されているため。
 張氏は、2008年のラマ僧たちの反乱を鎮圧、チベット仏教の最高指導者で国外亡命中のノーベル平和賞受賞者ダライ・ラマを「仏僧の衣をまとったジャッカル」と決め付け、厳しい姿勢で臨んだことで知られている。
 中国のカトリック教会は政府公認の独立教会とバチカン(ローマ教皇庁)と連携を保つ地下教会とに分裂している。昨年末には、河北省で神学生100人が省政府宗教局前で神学校の主要ポストに当局が任命を図ったとして抗議デモを行った。
 中国とバチカンは、教会を管理する権限、特に司教の任命をめぐって対立しており、張氏の河北省党書記という役職は、中国の対バチカン対策とも関連していると見られる。


◎オーストリア・カトリック教会、難局にどう対応?

 【CJC=東京】オーストリア・カトリック教会が分裂の危機に直面している。
焦点は、司祭による教会内部改革の動き。
 ヘルムート・シュラー司祭を中心に300人以上の聖職者が、女性叙階、離婚・再婚者の聖体拝領許可など7項目を要求、教会指導部への不従順を呼び掛ける『不従順の宣言』に賛同して改革グループを結成した。
 シュラー司祭ら代表はこの7月、同国首座司教シェーンボルン枢機卿と会合、7項目の要求を提出した、それに対し同枢機卿は、「ローマ(教皇庁)の路線に反するもので受け入れられない」と拒否、要求撤回と教会方針への従順を求めたという。同枢機卿は、教皇べネディクト16世の弟子の1人と見られている。
 インスブルック教区では、信者たちの改革運動『われわれは教会』が生まれ、発展してきたが、今回は司祭たちの改革運動だが、「教会はこのままでは存続できない」といった危機感が強いことが背景にある。
 オーストリアは、教会(小教区)の半数で修道者が教区司祭として活動している。また修道院長などの高位聖職者が約40人いて、それぞれが独自路線を歩んでいることも、問題を複雑にしている。
 オーストリア修道会上長会議の会長マキシミリアン・フルンシン修道院長(ヘルツォゲンブルグ修道院)は、既婚高齢者にもミサの執行を認めるなどの改革提案を採用するか、少なくとも検討する価値のあることを認めるべきだ、としている。シュラグル修道院のマルチン・フェルホファー院長は「もうシェンボルン枢機卿だけでは解決出来ない。司教、修道院長、修道士や改革グループの代表などが共に討議しなければならない」と言う。
 現在、改革グループは司祭4人が脱会、一方で86人以上が加入したので総勢400人と、同国全司祭の約1割に達したと見られる。さらに支援者も約1万2000人。
 シュラー司祭は、全世界特にブラジル、米国、アイルランド、仏、独、伊、メキシコなどから支持の声を聞いている、とメディアとのインタビューで語った。これらの反応は、バチカン)が全世界規模で問題に直面しているのが「はっきり」していること、「私たちの関心が漫画の主人公についてなどではない」ことを示している、と言う。
 グループに厳しい批判が寄せられていることもシュラー司祭は認めた。「中には私たちをカトリック教会から完全に追放し、呪いたいとまで思っている人もいる。私たちを、教会を破壊する分裂主義者、反乱者と呼んでいる」と言う。
 シェンボルン枢機卿は8月10日、要求をそのままにしてはおけないとし、教会の路線に立ち戻るか、教会を離脱するように指示した。枢機卿は「反省」の時間を与えたとしている。
 枢機卿は、マドリッドで開催された『世界青年の日』に出席、29日、ウイーンに帰着したが、事態を深刻に懸念している、と同氏に近い筋が語った。反対派の主導者を聖務停止処分にする以外の道がないものの、結果的に教会を分裂させかねないからだ。オーストリア通信の調査では、市民の76・5%が反対運動を支持していることが分かった。
 同国司教協議会副会長のグラーツ司教イゴン・カペッラリ氏は、グループが討議を望む聖職者独身制や女性の聖職叙階といった問題は「長い時間を掛けて克服すべき課題であり、短時間に十分な回答は出来ない」と語っている。


◎カンタベリー大主教、混乱のジンバブエなど訪問へ

 【CJC=東京】英国国教会カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が、ジンバブエ、マラウィ、ザンビアなどを10月に「司牧訪問」する。各国の英国国教会への支持を明確に示すためのもの、と大主教の広報担当者は8月30日明らかにした。中でもジンバブエでは、大主教はロバート・ムガベ大統領との会談を望んでいるが、明確な返答は得られていない。
 ジンバブエの英国国教会は、2007年に当時のノルバート・クノンガ主教が、ハラレ教区を世界聖公会共同体からの離脱を図って以来、混乱の中にある。
 08年、クノンガ氏は破門されたが、ムガベ大統領と連携して、教会財産などの獲得に動いた。
 裁判所決定で、国教会の資産はクノンガ氏に管理権を与えられたが、同氏の取り巻きたちが礼拝者を迫害し、司祭を居宅から追い出している。それに抵抗した司祭は激しく殴打されたという。
 国教会が任命したチャド・ガンディヤ主教は、ハラレ・デイリー・ニュース紙に「カノンガ氏が警察の協力の下に教会堂への立ち入りを禁止された教会員がいる。彼らは、広場で大木の下で礼拝したり、他の教会関係施設で礼拝を守っている」と語った。


◎米大統領選、候補者の宗教関係が焦点に

 【CJC=東京】米国では来年の大統領選挙を控え、出馬表明した人の間で神学論議が高まっている。
 米国では今もプロテスタントが主流を占めるところから、信仰に触れる人も福音派が盛んで、自らの信仰深さを示そうと舞台に招き上げるのも福音派の牧師がほとんど。ユダヤ教のラビやカトリック司祭の顔が見られることはまずない。
 共和党員の7割、民主党員の過半数が、大統領候補は非常に強い宗教信仰を持っていることを重要視している。
 1960年、カトリック信徒として最初の大統領となったジョン・F・ケネディは、宗教を個人的なものとして、プロテスタントの投票者の懸念を拭い去ることに成功したが、今ではその戦略は効果がない。
 政治家は、どの教会に出席しているかだけでなく、その教派の教えや毎日曜日にそこの牧師が何を語っているか、によっても評価されるようになった。
 共和党では、テキサス州知事が、祈りのラリーを数えきれないほど開催、聖書を読み、キリストに呼び掛け、それらを全てウエブ上に公開している。
 「候補者は、自分の宗教について厳しい選択を迫られている。それについて語るか否か、何を語るか、教会を離れることも含め何をやろうとしているか、といったことだ」と語るのはオハイオ州アクロン大学のブリス政策研究所のジョン・グリーン所長。
 候補指名獲得の争いが過熱する中で、候補者の宗教に関心が持たれるのは、有権者の間で宗教的な不一致が見られることもあるが、経済か社会問題かといった優先課題にも違いがあるからでもある。
 すでに2008年、当時のバラク・オバマ候補は、シカゴ時代の教会のジェレミア・ライト牧師との関係を断ち切っている。同牧師が説教で、同時多発テロ事件を引き起こしたことに米国の外交政策が大きく影響した、と語ったためだ、という。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽台湾カトリック教会のパウロ・シャン・クオシ枢機卿は出身地・広州訪問を中国政府(北京)から認められなかったので、それに次ぐ場所として、国共内戦の戦場だった馬祖島を訪問した。

≪太平洋≫
▽フィジー軍事政権が日曜礼拝以外の集会を禁止するなど、同国メソジスト教会への抑圧姿勢を強めている。
▽オーストラリア最高裁が、マレーシアからの亡命希望者を送還するとの政府決定を認めなかったことを、教会指導者が歓迎している。

≪中東≫
▽イランのマフムード・アフマディネジャード大統領が、パレスチナ国家が成立すると、イスラエルは徹底的に排除されるだろう、と8月27日語った。

≪バチカン≫
▽バチカン(ローマ教皇庁)と世界ルーテル連盟が、マルチン・ルターが95カ条の提題を公表して、「宗教改革」が始まって500年を記念する共同宣言を発表する。

≪欧州≫
▽ノルウェーの亡命者保護センターで、キリスト教に改宗した元イスラム教徒が熱湯を浴びせられるなどの攻撃を受けた。
▽ベルリン都心部にある『聖マリア教会』は8月28日の日曜日をイスラエルの日として、ユダヤ教とキリスト教の歴史的関係に焦点を当てた礼拝を行った。

≪アフリカ≫
▽スーダン教会協議会は、内乱で多数被害者が出ている南スーダンのジョンレイ地区に和解チームを派遣した。

≪北米≫
▽8月27〜28日に米東海岸を襲ったハリケーン『アイリーン』の被害地区にキリスト教会各派の救援団体が早速活動を開始した。
▽『ビリー・グラハム図書館』(米ノースカロライナ州シャーロット)が、同氏の著作を中心にした企画展示を行う。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月4日)=https://www.cwjpn.com
★日本巡礼団、350人が参加=サンティアゴ巡礼150人が徒歩で=WYDマドリード大会
★第5回 仙台サポート会議=ボランティア数通算2500人超=泥出し、洗浄、なお必要
★アジアの視点から学生、大学教員ら=環境問題話し合う=ASEACCU第19回総会
★津波被災地・大槌町に残ったホテル=ボランティア拠点として=所有信徒、長崎教会管区に提供
★「あら、きれい!」=実は"ケシ"の花=広島・可部教会の珍騒動=近隣住民が通報、事情聴取も

 =キリスト新聞(9月3日)=https://www.kirishin.com
★日本同盟基督教団=平和祈祷会で藤原淳賀氏が講演=「平和作りは神の民の本質」
★千鳥ヶ淵=絶対非戦の誓い新たに=結成60周年の新宗連主催で46回目
★日基教団西東京教区=平和集会で高里鈴代氏="教会は何を祈っているのか"
★現地の苦しみに耳傾け=震災原発と普天間基地でレポート
★歌手・新垣勉さんが初の自宅コンサート=震災犠牲者へ鎮魂歌

 =クリスチャン新聞(9月4日)=https://jpnews.org
★南三陸町を支援するキリスト者ネットワーク発足=壊滅した町の復興に教会が協力
★震災以来の疲れに癒しの時=被災県の牧師家族ら招待=軽井沢でリトリート
★「あなたは特別な存在」全身で表現=東京福音リバイバル聖会で中高生が企画したユース大会
★インターネット伝道コーチ訓練セミナー
★南スーダン独立後=北部の教会に圧迫激化


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