世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1078信(2011.09.19)

  • 米国務省が「国際宗教の自由」報告書発表
  • 中国宗教界が米国務省報告書に反論
  • イランの宗教少数派も米国務省報告書を批判
  • 北京『守望教会』の屋外礼拝で信者拘束
  • エルサレムの教会指導者が協議求める声明
  • ロバートソン氏が「アルツハイマーは死の一種」発言
  • 米フロリダ州の教会で銃乱射、牧師ら重傷
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米国務省が「国際宗教の自由」報告書発表

 【CJC=東京】米国務省は9月13日、2010年下半期の世界198カ国・地域における「国際宗教の自由」報告書を発表した。
 特に懸念される国として挙げられたのはビルマ(ミャンマー)、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、ウズベキスタンの8カ国。
 マイケル・ポスナー国務次官補は記者会見で「中国政府による宗教の自由の尊重度は全体的に低下し、今年はより悪化した」と警告した。
 報告書は、中国では、昨年10月には国外の会議に参加しようとした政府非公認の地下教会の多数の指導者が出国を拒否され、殴打、拘束を受けたとの報告があると指摘。チベット自治区や新疆ウイグル自治区でも弾圧や厳しい活動制限が続いているとしている。
 ミャンマーでは2007年の大規模デモに絡んで数百人規模の僧侶の拘束が続いており、北朝鮮では宗教団体が対外宣伝に利用されていると記載されている。
 ヒラリー・クリントン国務長官は、宗教の自由侵害は過激派を勇気づけるとし、
「イランでは、当局が一部のイスラム教徒、福音派キリスト者、ユダヤ教徒、バハイ教徒など政府としては宗教と認めていない教派への抑圧を続けている」と指摘した。


◎中国宗教界が米国務省報告書に反論

 【CJC=東京】中国国営新華社通信によると、中国の宗教界は9月16日、米国務省の中国における宗教の自由に関する報告書が、事実を故意に曲解するもので、米政府は中国の国内問題への介入をやめるべきだ、と指摘した。
 仏教、道教、イスラム教、カトリック、プロテスタントの実務責任者が会談し、その後に発表された声明は、中国における様々な宗教の発展は、健全なもので、「異なる宗教集団が調和をもって共存しており、宗教者は幸福と感じている」と述べている。中国政府は、宗教の自由を保護する政策と立法を行っており、宗教者の法的権利と利益を保護してきた、と言う。
 声明は、宗教団体が、宗教活動に偽装した調和、安定、国家の安全を阻害する犯罪行為阻止という中国政府の努力を支持した、と述べている。
 これらの努力は、宗教団体の法的権利と理恵家を保護し、全ての宗教の健全な発展のために有利な環境を作り出すために貢献している、と言う。
 米国の報告書は、無知からではなく、意図的な動機から、これらの努力を誤解している、と声明は述べている。


◎イランの宗教少数派も米国務省報告書を批判

 【CJC=東京】ラジオ・イラン(日本語電子版)によると、イランの宗教少数派は好ましくない状況に置かれていると指摘した米国務省の宗教の自由報告書を、イランに住む宗教少数派が、自分たちの状況は好ましいもの、と批判した。
 ユダヤ教徒の国会議員は、プレスTVとのインタビューで、イランにユダヤ教会が存在すること、宗教儀式を行う自由があることに触れ、「イランは、宗教の点で最も自由な国」と述べた。また「宗教少数派は、世界のどこでも独自の問題を抱えているが、わたしたちの状況は、日々、改善されている」と言う。
 アッシリア正教徒の議員も「イスラム革命後、少数派の状況はよくなっている」と強調した。
 イラン・イスラム共和国憲法は、キリスト教、ユダヤ教、ゾロアスター教の信者も少数派として正式に認めている。


◎北京『守望教会』の屋外礼拝で信者拘束

 【CJC=東京】米宣教専門アシスト通信が、中国人キリスト者13人が公安当局にによって、拘束された。北京の非公認教会『守望教会』が開催した屋外礼拝に9月11日、列席していた。同教会では礼拝に使える場所がなくなったところから、23カ所で屋外礼拝を行っている。
 米国に本拠を置く、中国の宗教抑圧監視団体『対華援助協会』によると、信者の多くは10日から外出を禁止されているという。女性信者の1人は警察に拘束され、ホテルに送られた。


◎エルサレムの教会指導者が協議求める声明

 【CJC=東京】カトリック、正教会、プロテスタントなどの代表11人からなるエルサレムの教会指導者は、パレスチナ国家問題を協議の上で解決すべきだ、という声明を9月16日発表した。
 「協約が最善の方法だ。イスラエルとパレスチナの間の未解決の問題には」と言う。この声明は、パレスチナ自治区政府のマフムード・アッバース大統領が国連で独立国家認知を求める演説を行うことを控えて出された。
 「わたしたちは、政策決定者と善意の人たちに、これまで長い間待たれていたイスラエル市民とパレスチナ市民の間の正義、平和、和解を達成するために最大の力を発揮するよう呼び掛ける」とし、さらに双方は「国連での投票結果がどのようなものになろうと、抑制を守るべきだ」と述べている。
 声明は、双方が「それぞれの独立国家内で平和と正義を守って共存し、国際法によって人権を尊重しなければならない」と述べている。現状は外交的な努力を再開するには「最も適した時」だと言う。


◎ロバートソン氏が「アルツハイマーは死の一種」発言

 【CJC=東京】配偶者がアルツハイマーを患った時に離婚をどう捉えるべきか、米国のテレビ伝道者パット・ロバートソン氏は刺激的な発言で知られているが、今度はその度合いが過ぎ、結婚の神聖を損なったもの、と問題になっている。
 同氏は、同時多発テロ事件の際にも、米国が妊娠中絶や同性愛を許容するようになったため、神が罰したのだ、と発言。これには保守派キリスト教指導者から強烈な批判を浴びた。
 今回は、自ら出演するクリスチャン・ブロードキャスティング・ネットワーク(CBN)の番組『700クラブ』で、夫人はアルツハイマーと診断された男性が他の女性と交際しても良いか、との質問に、「残酷かもしれないが、事を始めようというのなら、離婚して最初からやり直すべきだ。ただ夫人は介護が必要だし、誰かが面倒を見る必要がある」と助言した。
 番組の相手、テリー・ミューゼンさんが、夫婦は「健やかな時も病める時も」支え合うべきなのでは、と問うと、ロバートソン氏は、アルツハイマーは「死の一種」と語った。
 これが結婚というあり方を強く信じてきたキリスト教指導者に衝撃を与え、批判が数多く寄せられた。またインターネット上のサイトもこの発言をめぐって過熱状態。
 「ロバートソン氏は何と無責任、無感覚なコメントをしてくれたのだ。わたしの父は、55歳でアルツハイマーになった母を、墓に埋葬するまで看取った。父は誓約を守った。パット・ロバートソンよ恥ずかしくないのか」という書き込みもあった。ツイッターにも、キリスト教的でないとか聖書的でない、などの書き込みが相次いだ。
 同氏の報道担当は、9月16日現在、発言を避けている。


◎米フロリダ州の教会で銃乱射、牧師ら重傷

 【CJC=東京】米フロリダ州レークランドの民家で9月18日朝、男が妻を射殺した後、近くのグレーター・フェイス・クリスチャン・センター教会に乱入した。日曜礼拝の合間とあって、教会員20人近くが祈っていた。ポーク郡シェリフ事務所によると、男はジェレマイア・フォーグル容疑者(57)で同教会元会員という。同容疑者は、牧師と副牧師に向けて発砲した。
 教会員が銃を奪うことに成功、マイクで頭をなぐり、容疑者を取り押さえた。ウイリアム・ボス牧師は後頭部を撃たれ、カール・スチュアート副牧師は耳や背中を撃たれ、病院に収容されたが重傷。教会員にけがはなかった。
 原因は不明だが、AP通信によると、近所の人によると夫婦仲は良さそうだったという。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪印パ≫
▽パキスタンには人権侵害と少数宗教保護に関する調査と対策が必要だ、とする報告書を、カトリック司教会議正義と平和委員会が9月13日発表した。

≪中東≫
▽イスラエルでは少数派のキリスト者「メシアニック・ジュー」がユダヤ教徒から迫害される事例を米宣教通信コンパス・ダイレクトが報じている。エルサレム西方メヴァッセレト・シオン町で「出て行け」という趣旨のチラシが広場などに貼り出された。

≪バチカン≫
▽カトリック教会聖職者による性的虐待被害者が結成したネットワーク『SNAP』の代理人弁護士が9月13日、教皇べネディクト16世ほかの関係者を、ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に告訴した。ただ正式裁判にも至らないと見られている。
▽バチカン報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は、保守主義ルフェーブル派『聖ピオ10世会』が、バチカンの指示を受け入れた場合には、同会を教会法上は属人区のような形式で認知することになろう、と語った。
▽仏紙フィガロは、バチカン(ローマ教皇庁)が伝統主義ルフェーブル派『聖ピオ10世会』代表のヴェルナール・フェレイ司教と9月14日の会談で、関係修復への道筋で合意した、と報道。

≪欧州≫
▽旧東独共産主義政権下で秘密警察シュタージが1974年、当時のヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿(現教皇べネディクト16世)に注目、数百ページに上る資料を集めていたことが分かった。
▽バチカン美術館所蔵のラファエロ作「フォリノの聖母」が教皇べネディクト16世の訪独を機会に、ドレスデン美術館の所蔵の「システィーナのマドンナ(聖母)」と並んで陳列される、とブルームバーグ通信報道。
▽英紙デイリー・テレグラフは、カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が来年、エリザベス女王のダイヤモンド婚式典の後に引退する、と報じた。

≪アフリカ≫
▽ナイロビのカトリック教会大聖堂は中国の建設会社『中興』が請け負っている。中国企業のアフリカ進出に伴い、教会堂建設も受注する例が増えている、とENIニュース。

≪北米≫
▽米宣教団体『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』の創設者ジェームス・ドブソン氏(75)が9月10日、モンタナ州で落馬し負傷した。
▽9・10の記念式典に聖職者の司式や祈祷がなかったことにクリスチャン・ ディフェンス連合のパトリック・J・マホニー牧師らが批判の声を上げている。

≪中南米≫
▽メキシコ・カトリック教会の」マルチメディア・センターが9月7日、ハッカーによるサイバー攻撃を受けた。入り口部分からプログラム自体まで損傷を受けたが、12日回復を目指し作業に入った。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月18日)=https://www.cwjpn.com
★被災者を思い続けて=仙台=東日本大震災=6カ月目のミサ
★追悼・慰め・再生 祈る=カトリックとNCC=教派超え共に=東京
★平賀司教=「『新しい創造』基本計画、第2期に向けて」=教区の今後の方針発表=新たな必要性に支援の重心移行
★主日に避難訓練=大和教会=地震想定、外国語も対応=神奈川
★スーダン司教団=南スーダン建国へ=和解と非暴力呼び掛ける

 =キリスト新聞(9月17日)=https://www.kirishin.com
★フランシスコ会聖書研究所=分冊聖書37巻を1冊に合本=教会の書物として見直す
★日基教団「緊急シンポジウム」で大木英夫氏="神学の根本的改革が必要"
★『原発報道とメディア』著者・武田徹氏講演=「科学技術は戻れない」
★愛知=自動車業界の土日操業に教会も対応=日曜礼拝を平日に
★オーストリア=カトリック教会=分裂の危機にどう対応?

 =クリスチャン新聞(9月18日)=https://jpnews.org
★被災地 忘れないために=東北HELP=姉妹教会プロジェクト始動
★スタンリッジ選手、マートン選手=野球少年にメッセージ=「神様は私の力です」
★台風12号豪雨被害=紀伊半島 教会も浸水=地域のため=保育園の再開祈って=那智勝浦町=教会関係者にも犠牲
★マジョリティ社会の想像力求める=関東大震災・朝鮮人虐殺88周年9・1集会=「大震災と少数者の人権」焦点


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