世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1094信(2012.01.09)

  • バチカンとルーテル派が「宗教改革の記憶癒し」へ
  • 教皇、新枢機卿22人を発表、2月に枢機卿会議
  • 教皇のメキシコ、キューバ訪問日程発表
  • 米国の『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』発足
  • ノルウェー教会が先住民族の「独自教会」形成へ
  • 「キリスト教迫害、最悪は北朝鮮」と『オープン・ドアーズ』
  • マレーシア政府がキリスト教に歩み寄り姿勢
  • イスラエルでクリスマス行進中に刺殺事件
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカンとルーテル派が「宗教改革の記憶癒し」へ

 【CJC=東京】英カトリック週刊誌『タブレット』によると、1517年のマルチン・ルターによる95カ条の提題発表による「分裂」500周年を記念する2017年を目指し、「宗教改革」を論議する合同委員会がバチカン(ローマ教皇庁)とルーテル世界連盟によって結成された。
 キリスト教一致推進評議会委員長のクルト・コッホ枢機卿が明らかにしたもので、論議はすでにバチカンで始められ、両教会の間の「癒し」をもたらす、と同枢機卿は期待している。
 枢機卿はドイツ・テレビとの年末インタビューで、「共同文書では、宗教改革について双方の共通の見解、肯定的、否定的双方のものを表明することになるのは疑いない」と語った。特に「宗教改革の記憶を癒す」ことが主要な目的だと強調している。


◎教皇、新枢機卿22人を発表、2月に枢機卿会議

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世が新枢機卿22人を発表した。典礼暦で主の公現を祝う1月6日朝、教皇はバチカンのサンピエトロ大聖堂でミサを行い、その後の正午の祈りの集いで、2月18日に枢機卿会議を招集すると発表した。教皇はその中で新しい枢機卿22人を任命したいと述べ、その名を発表した。その内4人は80歳を超えているので後継教皇選挙(コンクラーベ)には参加しない。
 新枢機卿は、福音宣教省長官のフェルナンド・フィローニ大司教、移住・移動者司牧評議会議長のアントニオ・マリア・ヴェリョ大司教などバチカンの高位聖職者が約半数を占めている。
 アジアでは香港のヨハネ湯漢(トン・ホン)司教、インドのジョージ・アレンケリー総大司教(シロ・マラバル典礼エルナクラム=アンガマリ教区)が任命された。また米国からは予想通りにニューヨークのティモシー・マイケル・ドラン大司教とエルサレム聖墳墓騎士団団長代行のエドウィン・フレデリック・オブライエン大司教が任命されている。


◎教皇のメキシコ、キューバ訪問日程発表

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世の3月23〜28日のメキシコ、キューバ訪問の日程が明らかになった。
 メキシコ司教協議会の発表によると、教皇は3月23日午後中部グアナファト州のレオン空港に到着、フェリペ・カルデロン大統領や司教たちの歓迎を受ける。
 24日、大統領と公式会見の後、レオン市の子どもや信者たちとの集い。25日、付近のシラオ市でミサを司式、その後、メキシコ91教区の代表と会見、夕にはレオン大聖堂で夕べの祈りをメキシコやラテンアメリカの司教と共にし、メッセージを述べる。
 26日、空路キューバのサンティアーゴへ。ラウル・カストロ大統領やサンティアーゴ大司教らの歓迎を受けた後、オープンカーで革命広場へ向かい「お告げの祭日」のミサを行う。27日、キューバ守護聖人の像の前で祈りを捧げた後、空路、首都ハバナへ。カストロ大統領と公式会見の後、教皇使節館でキューバの司教と会談する。28日、公開のミサを行った後、午後ハバナ空港から帰国。


◎米国の『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』発足

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世は1月1日、米国の『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』(属人的司教区)を発足させ、その指導を聖公会の前ニューメキシコ主教ジェフリー・N・スティンソン司祭に委ねた。同司祭は子どもが3人。カトリックに改宗したのは2007年、09年にカトリック司祭になった。
 米カトリック教会テキサス州ヒューストン教区は、『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』が英国国教会の形式に則ったミサを行うことを認めた。
 『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』は、2009年に教皇べネディクト16世が、保守的な英国国教会(聖公会)の司祭、信徒、または1教会全体が、音楽や祈祷をこれまでの形式で守りつつ「ローマ」と連携出来るようにした使徒憲章を承認した際に導入した制度。転会した主教は、カトリック教会の司祭としての務めを果たすことが出来る。既婚の男性司祭はそのままカトリック司祭となる。ただ未婚の司祭が今後結婚することは認められない。
 『オルディナリアーティ』はすでに英国(イングランドとウエールズ)で発足しており、米国が2番目。今後カナダとオーストラリアでも発足するものと見られる。
 英国の『オルディナリアーティ』は発足1年だが、信徒1000人、司祭60人に留まっている。カトリック教会に転会するよりは、派内の保守的団体や分離グループに属すことを選ぶため。
 米聖公会からは司祭約100人が米国の『オルディナリアーティ』のカトリック司祭となるよう手続きしている。また信徒1400人、小規模の6教会が転会する。
 スティンソン司祭は2日、声明を発表、加入する聖公会信徒に「学習の急カーブ」を覚悟するよう警告している。


◎ノルウェー教会が先住民族の「独自教会」形成へ

 【オスロ=ENI・CJC】(オイヴィンド・オスタン記)ノルウェー教会(ルーテル派)は、今後4年間で先住サーミ族(ラップ人)が教会生活の中で確固たる役割を果たせるように準備を始めた。同派全国評議会のイェンス=ペッテル・ヨンセン議長は「サーミ族の教会生活がノルウェー教会内で平等かつ自然な一部となるように、そしてノルウェー教会が多文化共同体となるように願っている」と語った。
 サーミ族は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアのコラ半島などに総勢10万人いると推定される。ノルウェーには5万人から6万5000人住んでいると見られ、多くは北部で伝統的な生活様式を守っているが、オスロなど都市部にも居住している。
 同派は2011年の総会で、サーミ族は教会内で独自の生活が出来、教会の当然の部分として先住民の立場が認められる、と決議した。具体的には16年までに、独自の牧師、執事などの役員ポストを設け、サーミ語や、新会員募集、典礼、聖書翻訳、教会史などを教育するという。
 サーミ語やその文化に対するノルウェー社会や教会の姿勢は歴史的に変化して来ている。20世紀前半まではサーミ語はサーミ族居住地域でも学校教育に取り入れられなかった。
 キリスト教は、中世にカトリックと正教会の布教が行われた。1536年から37年に掛けての『デンマーク=ノルウェーの宗教改革』で、ほとんどのサーミ族はルーテル派になった。ただ今も正教会信徒が少数存在する。
 サーミ族居住地域では、ノルウェー教会の牧師は典礼を現地語で行っており、中には説教や日常会話も可能なレベルの人もいる。一方でサーミ族の牧師も見られるようになった。


◎「キリスト教迫害、最悪は北朝鮮」と『オープン・ドアーズ』

 【CJC=東京】キリスト教抑圧監視団体『オープン・ドアーズ』(米国本部カリフォルニア州サンタアナ)が、キリスト教徒に対する迫害が激しい50国をまとめ『ワールド・ウォッチ・リスト』2012年版tとして発表した。リスト作成20年の中で迫害状況が改善された所が全くないのは、初めてのことという。
 北朝鮮を10年連続で世界で最も迫害の激しい国に選んだ。強制労働収容所には最近でも5万人から7万人が送られている、と報告している。
 迫害トップ5国として、北朝鮮の他、アフガニスタン、サウジアラビア、ソマリア、イランを『オープン・ドアーズ』は上げている。


◎マレーシア政府がキリスト教に歩み寄り姿勢

 【CJC=東京】マレーシア政府は1月4日、ミッションスクール校長の選任、教育修了試験科目への「聖書知識」導入、キリスト教団体に対する寄付金の免税など、キリスト教界の要求に応じる施策を発表した。国営ベルナマ通信が報じた。
 同日に新首都プトラジャヤで開催されたキリスト教団体側との昼食会で、ナジブ・ラザク首相が明らかにした。昼食会には首相のほか、ムヒディン・ヤシン副首相ら閣僚13人が参加、キリスト教側からは、マレーシア・キリスト教会連合会(CFM)会長のン・ムーンヒン主教(西マレーシア英国国教会首長)、マーフィー・パキアム大司教(クアラルンプール)ら20人が出席した。


◎イスラエルでクリスマス行進中に刺殺事件

 【CJC=東京】イスラエル・テルアビブで、少数派キリスト者の指導者ガビ・カディーズ氏が1月6日、正教会のクリスマスを祝う行進の最中、「クリスマス爺さん」の服装をした男に背中を刺され、即死した。犯人は人ごみに紛れ逃走した。
 カディーズ氏は、ヤッファ地区の正教協会会長。キリスト者はイスラエルでは人口の5%以下だが少数派の中では最大集団を形成している。現場はアラブ人の多いヤッファ地区ではあるが、警察は宗教間の抗争とは見ていない。
 「クリスマス爺さん」はサンタクロースと同様のものだが、起源は別とされている。


◆短信◆(CJC)

≪アジア≫
▽中国四川省でチベット族住民がまた抗議の焼身自殺=中国四川省のアバ・チベット族チャン族自治州で1月6日、チベット族住民2人が焼身自殺を図り、1人が死亡した。同自治州や隣接するチベット自治区では昨年、チベット仏教の僧侶や尼僧、元僧侶ら12人が中国政府への抗議で焼身自殺を図っている。
▽フィリピンで急成長するキリスト教運動=米宣教専門アシスト通信によると、フィリピンで急成長している福音派系キリスト教運動『ビクトリー・クリスチャン・フェローシップ』(VCF)が南部のザンボアンガなど国内各地で1月6日から7日間の祈祷・断食集会を始めた。大学ほか様々な共同体で霊的な躍進を作り出すのが目的。
 VCFは25年前にマニラにセンターを開設した。現在、青年層に様々な生き方変更プログラムを提供、会員も5万人を超えている。

≪欧州≫
▽モスクワでは雪が消えたクリスマス=東方正教会はクリスマスを1月7日祝った。共同通信によると、ロシアの首都モスクワは市内のあちこちに大きなツリーが飾られ、華やいだ雰囲気だが、先月来の記録的暖冬で中心部の雪がほとんど消え、市民には「何だか物足りない」祝日となった
▽イタリアでカトリック系紙など廃刊の危機=イタリアで財政立て直しの一環として新聞への助成金を大幅に削減する方向が打ち出されている。
 この措置が実行されると、大手大衆紙への影響より小部数の運動紙、政党紙への影響が大きく、中には廃刊を迫られる所も出てくると見られる。キリスト教関係ではカトリック系の『アッヴェニレ』紙に影響が出そうだ。

≪アフリカ≫
▽南アフリカの与党ANCが100周年=南アフリカで反アパルトヘイト闘争の中心になって成功させ撤廃後17年にわたって政権を担ってきた『アフリカ民族会議』(ANC)が1月8日、結成100周年を迎えた。ただ党内対立や幹部による汚職疑惑などが相次ぎ影響力は減退している。
▽エジプトで宗教間の対話の可能性=エジプト・コプト教会の最高指導者シェヌーダ3世教皇は1月5日、イスラム教側との「建設的対話」開始の可能性について英国国教会指導者と協議した。ENI通信が報じた。
 人民議会(国会)選挙で、第1回と第2回の投票ではイスラム原理主義組織ムスリム同胞団系の『自由公正党』が第1党、イスラム教をさらに厳格に解釈する『光の党』が第2党に躍進したのを受けてのこと。
▽エジプト南部でムハンマドの風刺画めぐり抗争=エジプト当局は南部で12月末に起きた暴力沙汰に関係したとしてコプト教徒の学生ガマル・マスウトさん(17)を12月31日拘束した。
 マスウトさんが、イスラム教の創始者ムハンマドの風刺画をフェースブックに掲載したとして、それを見た住民が「神は偉大なり」と歌いながらマスウトさん宅を襲撃、また近隣のキリスト者の住宅に放火しようとした。警察が出動してイスラム教徒たちを解散させた。

≪北米≫
▽ニューヨークで抗議デモの牧師逮捕=ニューヨーク市法務局前で不法占拠したとして、市議1人とフェルナンド・カブレラ牧師、ビル・デヴリン牧師らが1月5日逮捕された。ドアの外でひざまずき賛美歌を歌って、公立学校での礼拝活動禁止条例に反対を表明していたもの。条例は2月12日に発効する。
▽ジョージ・マイケル入院中に「死の祈り」捧げられ?=英国出身のシンガーソングライター、ジョージ・マイケルは急性肺炎でツアー先のオーストリアの病院で治療を受け、クリスマス直前に退院したが、米国の超保守派キリスト教団体が「死んでしまうように」と『死の祈り』を捧げていたと報じられた。
 『クリスチャンズ・フォア・ア・モーラル・アメリカ』(清く正しいアメリカのためのキリスト者)と呼ばれるこの団体はゲイ(同性愛)に対し極端に否定的な意見を持ち、今回のジョージの入院も、肺炎ではなくエイズだと信じ込み、彼の死を祈るようにツイートで信徒たちに呼びかけていたという。
▽テンプルトン財団が米バイオラ大学に調査助成金303万ドル=科学と宗教の調和を目指し投資家ジョン・テンプルトン氏が設立したテンプルトン財団が米カリフォルニア州ラミラダの福音派系バイオラ大学キリスト教思想センターに調査助成金303万ドル(約2億3000万円)を授与する、と発表した。アシスト通信が報じた。


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