世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1102信(2012.03.05)

  • ユダヤ教の見解に立つ新約聖書が米で刊行
  • アメリカでイスラム教のモスク新設が急増
  • バチカンの秘密文書が初めて一般公開
  • 「四旬節に神との絆を強めよう」と教皇が日曜の集い
  • イタリアが財政難で「聖域」教会施設にも課税へ
  • クライストチャーチ大聖堂取り壊しへ
  • 「神の死」の神学者ハミルトン氏死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎ユダヤ教の見解に立つ新約聖書が米で刊行

 【ニューヨーク=CJC】『ユダヤ教注解付き新約聖書』を英オックスフォード大学出版局が刊行した。新約聖書の主要人物、イエス、マリア、使徒パウロ初め福音書記者は皆ユダヤ人で、ユダヤ文化圏で生きていたという事実から出発した企画。
 アメリカのユダヤ人聖書学者エミー=ジル・ルバイン教授(バンダービルト大学)とマーク・スバイ・ブレットラー教授(ブランダイス大学)が編纂したもので、新約聖書を歴史的文化的なコンテキスト(文脈)の中に置いた画期的なものという。
 同書は、ヨハネによる福音書と反ユダヤ主義の問題についても正面から取り扱っている。福音書にはユダヤ教に対して敵意を露わにした言及が多数見られるが、それでも「ユダヤ教の伝統に広範囲に依っている」と共編者。
 「ヨハネの難解な論法は安易に見逃して良いものではない。記者の自己規定、イエスの追随者をシナゴーグから、またユダヤ人、ユダヤ教からの区別のためだとして理解出来る」と言う。
 ENI通信にブレットラー教授は、読者の反応が、教派を超えて、また保守もリベラルも「圧倒的にプラス」で、「驚いたのは、反応が皆熱心なものだったこと」と語っている。
 同書を使って超教派の勉強会をしようとの動きが出ており、それに沿って参考書を出版しては、との提言もあるとか。
 「ネット書店アマゾンや、ブログなどには、ページを開いてもいない人のコメントが見られる。中にはユダヤ人をキリスト教に改宗させるための秘密作戦だとか、それとは正反対の懸念を示すキリスト者もいる」そうだ。
 「これらのコメントは、この本が何かを改善しようとするもの、との懸念や誤解の結果だが、実際に本を開いた人からは、何もそのような反応が聞こえてこないことが非常にうれしい」と言う。
 聖書は、新改定標準訳(NRSV)を採用した。


◎アメリカでイスラム教のモスク新設が急増

 【CJC=東京】アメリカのモスク数がこの10年でほぼ倍増した。『ハートフォード神学校』などが2月29日発表した調査結果によると、2000年に1209だったものが2010年には2100を超えた。。
 「9・11」事件後、グラウンドゼロ付近にモスク建設話が持ち上がり、世間の注目を集めたものの、それ以外はあまり関心をひかない間の急増ぶり。
 ただほとんどのモスクはニューヨークで建てられ257に。次いでカリフォルニア州246、テキサス州168。


◎バチカンの秘密文書が初めて一般公開

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機密文書館が所蔵している歴史的文書の一部、約100点がローマのカピトリーニ美術館で初めて一般公開された。
「神秘の光」と題された展示は、機密文書館開設400年を記念して行われているもので9月9日まで。
 公開されたものの中には、宗教改革者マルティン・ルターへ1521年出されたレオ10世の破門状や、地動説を唱えたガリレオ・ガリレイに対する異端審問の記録のほか、14世紀の『テンプル騎士団』の宗教裁判に関する文書、クリストファー・コロンブスのアメリカ大陸発見を受けて教皇アレクサンデル6世が出した布告、ミケランジェロが残したサン・ピエトロ大聖堂建設に関する書簡などがある。
 さらに1789年にフランス革命で捕われの身となった王妃マリー・アントワネットの獄中からの手紙、第2次世界大戦中にユダヤ人迫害に十分介入しなかったことで後に批判された教皇ピウス12世についての文書など、欧州史に関心のある向きには見逃せない。
 所蔵文書は全体で3万5000に上り、8世紀のものが最古という。ほとんどがラテン語で書かれているが、ペルーのクスコの宗教団体に宛て1603年に出された書簡はケチュア語で書かれている。また1887年に北米の先住民(インディアン)首長から送られた書簡は樹皮に書かれたものでレオ13世を「祈祷者の大首長」と呼んでいる。
 外交文書はバチカン独自の暗号で書かれたものもある。その最古のものは14世紀前半にまでさかのぼる。
 パウロ5世によって1612年創設された機密文書館だが、レオ13世が1881年、学者に開放するまで、人目に触れることはなかった。現在では毎年訳1500人の学者、研究者が訪れている。


◎「四旬節に神との絆を強めよう」と教皇が日曜の集い

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、バチカンで2月26日、日曜正午の祈りを信者と共に唱えた。
 この日は復活祭前の準備期間「四旬節」に入って最初の日曜日。教皇はこの時期に祈り、悔い改め、慈愛の業を行なうことで、神との関係をより強めるよう信者らに訴えた。
 教皇は説教でミサ中の福音朗読箇所、ヨルダン川で洗礼者ヨハネから洗礼を受けたイエスが荒れ野に留まり、そこで誘惑を受けたエピソード(マルコ1・12〜15)を取り上げた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、砂漠とは、打ち捨てられ、孤独で、支えも安心もない人間の弱さを象徴する場所、誘惑に容易に陥りやすい場所である一方で、エジプトでの奴隷状態から脱出したイスラエルの民にとってそうであったように、砂漠は避難し、身を寄せる場所、神をより近くに感じることのできる場所でもあると、指摘した。


◎イタリアが財政難で「聖域」教会施設にも課税へ

 【CJC=東京】財政再建を迫られるイタリア政府が2月27日、これまでほぼ非課税扱いしてきたカトリック教会が保有する施設に、不動産税を課す措置を閣議決定した。ANSA通信などが伝えた。カトリック信徒が多い同国だが、増税に直面する国民の間では、教会の特別扱いに対する反発が強まっており、「聖域」にメスが入った形。
 議会承認を経て来年度から実施されると、年間5億〜6億ユーロ(約540億〜650億円)以上の税収増が見込めるという。
 イタリアではカトリック教会が、ホテル、診療所、ショッピングセンターなど約10万件以上を所有する。その一部で聖職者が生活していたり、施設内にミサを行う場所を設けてあれば「宗教施設」扱いとして課税されなかった。今後は聖堂や修道院などを除いて、商業利用される施設は課税される。
 教会関連施設への免税措置は、欧州連合(EU)欧州委員会が公正な競争を阻害している可能性を調査していた。


◎クライストチャーチ大聖堂取り壊しへ

【CJC=東京】ニュージーランド巨大地震で被害を受けた英国国教会(聖公会)クライストチャーチ大聖堂が取り壊されることになった。教会関係者は当初、大聖堂の保存を検討していたが、最近の余震で残っている構造部分が倒壊する恐れが出てきたとして3月2日、取り壊しを発表した。聖堂の尖塔はクライストチャーチの地震被害の象徴的存在だった。
 ビクトリア・マシューズ主教は、残っている教会の壁を約3メートルの高さまで引き下げ、さらに教会の基礎部分も祈りの場として今後も利用するという。
 解体作業にはブルドーザーや解体用の鉄球は使用しない。
 英国国教会は新たな大聖堂の建設を公約しているが、建設予定地、建設費用、建物の外観など具体的な計画はまだ立てていない。建物の残存部分を利用して再建する場合には5000万ニュージーランド・ドル(約34億円)、全面的に建て直す場合は1億ニュージーランド・ドル(約68億円)が必要という。


◎「神の死」の神学者ハミルトン氏死去

 「神の死の神学」で知られる米国の神学者ウイリアム・ハミルトン氏が2月28日、オレゴン州ポートランドの自宅で心不全のため死去した。87歳。葬儀は予定されていない。
 1966年、週刊誌『タイム』4月8日号に掲載した「神は死んだか」で一挙にその名を知られるようになった。「殺すぞ」など激しい攻撃にさらされ、翌年にはコルゲート・ロチェスター神学校教授の地位を追われるまでになった。
 専門週刊誌『クリスチャン・センチュリー』によると、『ラディカル神学と神の死』の共著者トーマス・アルタイザー氏は、ハミルトン氏を「アメリカにおける神の死運動の最も明確な指導者」と呼んでいた。「現代文化と対話する中で、神の死の神学的受容を形成するため、プロテスタント新正統主義の障壁を突破した最初の神学者」と言う。(CJC)

《参考》邦訳書に、ハミルトン・アルタイザー共著、小原信訳『神の死の神学』(1969年、新教出版社)


◆短信◆(CJC)

《アジア》
▽愛徳基金会の通信が6月から衣替え=愛徳基金会香港事務所が、中国基督教協議会上海本部の協力のもと、英文『アミティ通信』を隔月に発行していたが、愛徳基金会本部が発行する季刊『アミティ・ニュースレター』と統合することになった。
 新装発行するのは、季刊『アミティ・アウトルック』で、創刊号はこの6月発行の予定。

《欧州》
▽教皇が6月にミラノ訪問、世界家庭大会に参加=教皇ベネディクト16世は、今年6月にイタリアのミラノを司牧訪問する。
 ミラノ大司教区の発表によると、訪問は6月1日から3日まで。同地で開催されるカトリック教会の『第7回世界家庭大会』に参加する。
▽英国が在シリア大使館職員の国外退避を発表=英国政府は3月1日、治安状況の悪化を理由に、シリアから外交官を国外退避させたことを発表した。シリアとの国交は維持しており、ロンドンのシリア大使館を通じて政権との折衝は可能という。ロイター通信が報じた。
▽66歳牧師が双子出産、スイスの最高齢記録更新=AFP通信によると、スイス南部グラウビュンデン州で、66歳の牧師が双子を出産し、同国での最高齢出産記録62歳を更新した。大衆紙『ゾンタークス・ブリック』が3月4日報じた。

《北米》
▽『FEBC』新会長にエドワード・W・キャノン氏=米キリスト教放送『FEBC』は、新会長に『ムーディー聖書研究所』暫定所長のエドワード・W・キャノン氏を任命した。
 キャノン氏は、ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)など石油会社の経営に当たった後、ムーディーに招かれ、上席副所長兼COOとして、大学、出版、財務、法務、人事、募金、放送などの各分野の責任者となった。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月4日・休刊)=https://www.cwjpn.com

 =キリスト新聞(3月3日)=https://www.kirishin.com
★宗教者九条の和 内藤新吾氏特別講演会="いのち守り危険遠ざける者に"
★追悼と復興祈願=カトリック教会 全司教が参集
★大震災 宗教者の支援問う=国際宗教研究所・宗援連がシンポ
★雑誌「pen」が宗教特集の"決定版"=エルサレム、ユダヤ教、イスラエルを解剖
★フランスの福音派教会=若者引きつけ急成長

 =クリスチャン新聞(3月4日)=https://jpnews.org
★「神を信じて何になるのか」=ヤンシー氏 被災地で対話へ=東日本大震災から1年 都内で講演
★11か月目の3・11超教派一致祈祷会=届きにくい場所に支援心がけ=いわてネットの佐々木真輝氏報告=「点と点が結びつく経験何度も」
★日本語礼拝中心に「愛の絆」=韓国でも3・11祈りの集会
★第51回日本ケズィック・コンベンション
★システィーナ礼拝堂天井画完成500年記念コンサート=宗教改革前夜の歴史と葛藤映す


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