世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1103信(2012.03.12)

  • 米カトリック教会がオバマ大統領を公然批判
  • 米兵がアフガン市民16人を射殺
  • バチカンで四旬節の説教始まる
  • 独教会が異宗教間結婚に関する指針
  • 全世界の移民、半分はキリスト者
  • プーチン大統領選出めぐりロシア正教会内で議論
  • 米フロリダ州の聖公会学校で教師が校長を射殺
  • 『ウィルバー賞』は映画『ザ・ヘルプ』に
  • ブラジルの神学者ミルトン・シュバンテス氏死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米カトリック教会がオバマ大統領を公然批判

 【CJC=東京】米カトリック司教協議会会長のティモシー・トーラン枢機卿(ニューヨーク大司教)は『宗教の自由に関する特設委員会』のウィリアム・ロリ議長(ブリッジポート司教)と連名で、全米の司教に宛て、従業員の妊娠中絶、不妊、避妊について健康保険適用を遵守することをカトリック関係を含む全団体に求めた政府の決定を、米国が尊重する宗教的自由を損なうものだ、と批判する書簡を送った。
 書簡は2月22日付けだが、このほど公表された。
 今回の"抵抗"は、「ただ避妊、堕胎誘発薬や不妊に反対する」とか「共和党か民主党か、や保守か自由か」といったものではない、とドーラン枢機卿。「全ての人にとって、これは宗教的自由の第一、最大の問題なのだ。たとえば、政府がカトリック信者に、宗教的信念を犯さずには保険業に携わるな、と言えるなら、どういうことになるか。これは憲法の限界を超え、わが国が建国された基本的権利を侵すことになる」と言う。


◎米兵がアフガン市民16人を射殺

 【CJC=東京】アフガニスタンでは、コーラン焼却に対する抗議デモが連日続けられている中で、3月11日には、南部カンダハル州で駐留米兵が基地から武器と暗視装置を持って外出、民家3軒で銃を乱射し、子ども9人と女性3人を含む計16人が死亡した。米兵は戻ってきたところを、無言のまま拘束されたという。
 アフガニスタンでは、米軍などを狙った攻撃や抗議行動で少なくとも30人が死亡。カブールの米大使館は、今回の事件でさらに新たな報復攻撃が起きる可能性があるとしている。
 ロイター通信によると、この事件を受け、アフガンのカルザイ大統領は「意図的な殺人だ」と激しく非難し、米国側に説明を要求。また、オバマ米大統領も、「この悲劇的でショッキングな事件は、米軍の優れた特性とわれわれがアフガンに対して抱く尊敬の念を示すものではない」と憂慮した。
 オバマ大統領はカルザイ大統領に電話をかけ、早急に真相を究明し、「関与した者の責任を完全に追及する」と約束した。
 反政府武装勢力『タリバン』は電子メールで、事件への報復攻撃を行うと表明している。


◎バチカンで四旬節の説教始まる

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世の出席のもと、3月9日、バチカン(ローマ教皇庁)の『レデンプトリス・マーテル』礼拝堂で、教皇庁の高位聖職者を対象とした四旬節の説教会が始まった。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
 この説教会は、教皇庁内の四旬節の黙想会に続き、復活祭を前に毎週金曜日、4回行なわれる。説教担当は、教皇付説教師でカプチン・フランシスコ修道会のラニエーロ・カンタラメッサ神父。
 教皇庁の説教師の歴史は中世期にまでさかのぼる。教皇ベネディクト14世(1740〜58)は、1743年、教皇付説教師の任務をカプチン会に委ね、以来、伝統的に同会会員が四旬節と待降節の説教を受け持ってきた。
 今年の四旬節説教会で、カンタラメッサ師は、「あなたがたに神の言葉を語った指導者たちのことを思い出しなさい(ヘブライ13・7)=教会博士、信仰の師」をテーマに、東方教会の教会博士、聖アタナジオ、聖バジリオ、ナジアンズの聖グレゴリオ、ニッサの聖グレゴリオの4人に注目しながら、これらの「信仰の巨人」が現代の教会に投げかけるメッセージを、「キリストの神性」「聖霊」「三位一体」「神の認識」という観点から示していくという。
 初回の9日、同神父はアレクサンドリア司教聖アタナジオ(295〜373)を取り上げ、「聖アタナジオとキリストの神性における信仰」というテーマで説教を行った。


◎独教会が異宗教間結婚に関する指針

 【CJC=東京】独ヘッセン=ナッサウ・プロテスタント教会が宗教間で行う儀式に関する指針を発表した。キリスト者とイスラム教徒が混住する現代社会の実情に牧師たちが対応する際に役立てようとするもの。
 「異宗教の夫婦の数は増加している」と同教会のスサンナ・ファウスト・カレンベルグ宗教間問題担当。「これは無視出来ず、答えなければならない挑戦であり、問題だ」と言う。


◎全世界の移民、半分はキリスト者

 【ニューヨーク=ENI・CJC】誕生した国から離れ今では他国で生活している全世界の移民2億1400万人の半分をキリスト者が占めている。ワシントンに本拠を置く『ピュー・リサーチ・センター』の『宗教と公的生活フォーラム』が3月8日発表した調査結果によるもの。現在、世界の移民の49%、1億600万人がキリスト者だという。次いでイスラム教徒が6000万人で約27%。
 ただ移民の各派全人口に対する割合で見ると、ユダヤ教徒が25%で最高。キリスト者は5%、イスラム教徒は4%に止まっている。その他は3%以下。
 ヒンズー教徒は総人口の10〜15%を占めているものの、移民は全移民数の5%に過ぎない。
 この調査では、「国際的な移民」を母国以外の国で1年以上居住するものと、規定している。


◎プーチン大統領選出めぐりロシア正教会内で議論

 【モスクワ=ENI・CJC】第3代ロシア大統領にウラジミル・プーチン氏が選出されたことは、ロシア正教会内部に政教関係についての議論を呼んでいる。
 公正選挙を求める運動を支援してきた神学者アンドレイ・デスニツキー氏は、正教会信徒の間に政治への積極参加が強まっていることも影響の一つだ、と言う。
 「政治に積極的な正教会信徒が、ついに自身の政治的立場と信仰とをどのように結びつけるか議論を始めるまでになった」と、同氏は、ロシア正教会のニュース・解説ウエブサイト『プラブミル』に3月6日書き込んだ。
 ロシア中央選挙管理委員会は、3月4日の選挙でプーチン氏の得票率が63・6%だったと発表したが、不正投票があったとの非難が高まっている。
 昨年末から1月初めに掛けて、キリル1世総主教は、当局者に世論に耳を傾けるよう求めた。仲介役として名乗り出るのではないか、とも見られたほどだった。しかし、プーチン氏が2月に宗教指導者と会談して以来、キリル1世の批判色は薄まり、公正選挙を求め、抗議していた人たちの反感を買っていた。


◎米フロリダ州の聖公会学校で教師が校長を射殺

 【CJC=東京】米フロリダ州ジャクソンビルの聖公会学校で3月6日、馘首されたスペイン語教師シェーン・シュマース(28)が校内で、デール・D・リーガン校長をライフル銃で射殺、その後自殺した。生徒は無事だった。同校は19日まで閉鎖された。
 同校は、中学生300人、高校生600人。


◎『ウィルバー賞』は映画『ザ・ヘルプ』に

 【CJC=東京】米『宗教コミュニケーターズ協議会』は、宗教問題、価値などを取り上げ伝達することに貢献したメディアを選定、『ウィルバー賞』を授賞しているが、2012年度は映画『ザ・ヘルプ』など15件を選定した、と3月9日発表した。授賞式は4月14日、フィラデルフィアで開催される同協議会大会の席上で行われる。
 『ザ・ヘルプ』は、1960年代、米南部の白人女性の黒人メイド2人との関係を描いた作品。他にCBSニュース、『ポートランド・オレゴニアン』紙、『エンターテインメント・ウイークリー』紙などに授賞する。
 『ウィルバー賞』は、宗教PRの開拓者で、同協議会を長年にわたって指導してきた故マービン・C・ウィルバー氏を記念して命名されたもので、1949年以来、同協議会が毎年授賞している。宗教的価値を伝達することにおいて、内容、創造性、衝撃度、卓越さなどを専門家が評価する。


◎ブラジルの神学者ミルトン・シュバンテス氏死去

 「エキュメニズム」の推進者として知られたブラジルの神学者ミルトン・シュバンテス氏が3月1日、サンパウロで死去した。65歳。
 サンレオポルドの『ファクルダーデス・EST』神学校で1970年代から80年代に掛けて旧約学教授。ルーテル信条福音教会(IECLB)で指導的立場にあり、ブラジル始めラテンアメリカの全世代の学者に影響を与えた。1988年、サンパウロのメソジスト大学教授。『ラテンアメリカン・ジャーナル・オブ・バイブリカル・インタープリテーション』(RIBLA)編集長を務めた。イスラエル史などの著作、『ポルトガル・ヘブル=アラム語辞典』の共著者。(CJC)


◆短信◆(CJC)

《アジア》
▽韓国で海軍基地に侵入した牧師と神父逮捕=韓国済州地方裁判所は3月11日、済州島南部の海軍基地工事現場のフェンスを破り、敷地内に違法に入り込んだ牧師(53)と神父(50)に対する、器物破損の容疑の逮捕状を交付した。朝鮮日報(日本語電子版)が報じた。
 2人は3月9日、西帰浦市の海軍基地建設工事現場に設置されたフェンスを破り、敷地内に違法に侵入して発破作業などを妨害したという。

《欧州》
▽バチカンの公式サイトをハッカーがダウンさす=ハッカー集団『アノニマス』イタリア支部が3月7日、バチカン(ローマ教皇庁)の公式サイトをダウンさせた、と発表した。カトリック教会の醜聞や保守的教義に対する攻撃という。サイトは8日には修復され、全機能が利用可能となった。
 バチカン当局者は、サイバー攻撃やウエブサイトの安全保障体制についてはコメントを避けている。
▽英国で12世紀の教会屋根に太陽電池=英西部グロスター近郊ウィジントンで12世紀に建てられたとされる国教会『聖ミカエルと全天使の教会』は修復事業の一環として、会堂の屋根に日本の『京セラ』製の太陽電池モジュール24個を設置した。3・12キロワットの出力という。
 『京セラ』によると、同時にバイオマスボイラーシステムも導入、全て再生利用可能なエネルギーを使用することで、英国初のゼロ炭素教会となった。

《中南米》
▽教皇訪問控えキューバで宗教的自由抑圧急増=この5月に教皇べネディクト16世の訪問を控え、キューバの宗教的自由抑圧状況の悪化に、英国の人権団体『クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド』(CSW)が懸念を示している。
 今年元旦以来、すでに抑圧が20件発生しているが、2011年の年間28件からは急増している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月11日)=https://www.cwjpn.com
★仙台教区サポート会議=ボランティア延べ4千人派遣=長期スタッフ確保が課題
★「さようなら原発」署名運動=シスターたちが用紙発送に協力
★名古屋教区「被災地障がい者支援センターかまいし」=岩手県釜石市で活動展開=24時間対応中=「AJU自立の家」職員を派遣
★移住女性と子どもの状況テーマに研修会=日本カトリック難民移住移動者委員会
★国際会議「シリアの友」=使徒座代表らも出席

 =キリスト新聞(3月10日)=https://www.kirishin.com
★上智大・聖母大=新キャンパスで看護教育="神の手"として人のために=ケアを全人格的に取り組む学科
★砂川政教分離訴訟=原告敗訴が確定=谷内栄さん「今後も闘い続ける」
★葬儀の多様性にどう対応?=日本キリスト教連合会が井上彰三氏招く
★「アルターボーイズ」追加公演=イケメンの"福音"に若者熱狂
★トルコで発見 1500年前の聖書=「バルナバの福音書」か?

 =クリスチャン新聞(3月11日)=https://jpnews.org
★腰を据えた復興支援=南三陸町=内職で生活自立を応援=生きがい・地域再生 教会が手助け
★3.11 主日に連鎖祈祷を=日本福音同盟が世界に呼びかけ
★イムマヌエル=災害対策室常設で危機管理強化=藤本満新代表=教派超え宣教協力推進
★福音自由教会=大規模災害に備え対策本部設置=各地の災害支援センターで迅速対応


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