世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1105信(2012.03.26)

  • 教皇、メキシコとキューバを司牧訪問
  • ミッションとエバンジェリズムに新思考を
  • 「アラビア半島にある全教会を破壊せよ」と布告
  • コプト正教会教皇シェヌーダ3世埋葬
  • 信教の自由を最も侵害している国は今年もエジプト
  • 『クリスタル・カテドラル』はカトリック教会に
  • エジプトで武装犯罪組織の不法発掘が横行
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇、メキシコとキューバを司牧訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は3月23日、メキシコとキューバへの司牧訪問に出発した。
 ローマのフィウミチーノ国際空港から特別機で出発した教皇は空港でイタリアのマリオ・モンティ首相や教会関係者に挨拶した。
 教皇はメキシコへ向かう機内で、同行した報道陣の質問に答え、キューバの政治体制について「マルクス主義がもはや現実に対応していないことは明らかだ。新たなモデルを見つけなければならない。忍耐と決断が必要だ」と述べ、体制の変革を促した。
 メディア報道によると、キューバの反体制派が教皇訪問の直前にも拘束されていることについて、「教会は常に自由を重んじる側にある。良心と信教の自由の側だ。対話によって心の傷を取り除き、公平で友愛な社会をもたらすことを後押ししたい」と教皇は述べた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は同日夕、メキシコのグアナファト国際空港に到着、フェリペ・カルデロン大統領はじめ政府要人、現地の教会関係者に迎えられ、空港での歓迎式に臨んだ。
 信仰・希望・愛の巡礼者としてこの地を訪れたと述べた教皇は、この出会いを通して皆のキリストへの信仰を強め、御言葉と秘跡、日々の行いをもってその信仰をより生き生きとしたものとするよう励ましたいと、抱負を示した。
 教皇のメキシコ訪問は、ヨハネ・パウロ2世の2002年の5度目の訪問以来10年ぶり、また同地方の訪問は初めてということもあり、市民の歓迎は大変な熱気に包まれた。空港から教皇の宿泊先となるレオン市内の『ミラフローレス神学院』までの34キロの道のりには推定70万人が集まった。
 24日朝、同神学院でミサを捧げた教皇は、午後、州都グアナファト市に向かい、州庁舎『カサ・デル・コンデ・ルル』でフェリペ・カルデロン大統領と会見した。バチカンとメキシコがそれぞれ積極的に取り組んでいる、今日の世界の様々な問題について意見が交換され、特に気候変動、食料安全保障、飢餓対策などのテーマのほか、非核推進、小型武器の国際貿易条約作成の必要性に言及、小型武器の拡散が組織犯罪の活動を助長しているとの認識が示された。
 また、自然災害や人道問題で苦しむ人々へのカトリック教会の国際レベルの支援、青少年育成をはじめとする教会の教育事業も話題にのぼったという。
 教皇は、25日午前、レオン市内の公園で市民参加の教皇ミサを行い、26日にはキューバに移動、27日には、ハバナの革命宮殿でラウル・カストロ国家評議会議長と会見の予定。
 教皇は28日、ハバナ市内の革命広場でミサを司式、午後、ハバナ国際空港を発ち、29日ローマに到着。バチカン宮殿に戻る。


◎ミッションとエバンジェリズムに新思考を

 【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)世界宣教・伝道委員会総会がマニラで3月22日から27日までの日程で開催された。世界各地から代表始め約400人が参加した。総会主題は「生命に向かって共に=変化するランドスケープの中のミッションとエバンジェリズム」。
 今総会の課題は、ミッションとエバンジェリズムに関する思考を革新し、30年前に発表された声明を受け継ぐWCC声明の草案作成。この声明は2013年に韓国・釜山で開催されるWCC第10回大会に提出される。
 ジャマイカとケイマン諸島合同教会のロデリック・ヒューイット牧師は、主題講演の中で「新声明は、全地球の教会が、人々を奴隷にする生命否定の現実に関わるという、ミッションとエバンジェリズムのさらなる深い目的に向かって動き出す機会を提供するものだ」と指摘した。「教会のミッションの将来の確実性は、教会が自身を超えて、他者、自身、環境を傷付けている人々を助ける時に現実化される」と言う。
 開会演説で、WCCのオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事は、ミッションとエバンジェリズムに関する声明は、WCC大会の主題「生命の神、私たちを正義と平和に導いてください」に大きく貢献するものだ、と述べた。「教会は、疎外されている人たちを、ミッションの対象としてだけではなく、主体として認めるというミッションを持っている。この境界線に立つ人たちは、ミッションにおける最前線にいる。その人たちは、創造的な代替策を生み出すという新しいミッション思考へ有利な点を提供出来る」と言う。


◎「アラビア半島にある全教会を破壊せよ」と布告

 【CJC=東京】サウジアラビアの宗教政策責任者である『大ムフティー』アブドルアジズ・アール=アッシャイフが、アラビア半島にある全教会を破壊せよ、という『ファトワー』(布告)を出した。
 アラブ語メディアは、『大ムフティー』をイスラム圏では最も影響力のある指導者としており、その人が、クウェートで教会建設を禁止出来るか、との国会議員の質問に答える『ファトワー』を発表した、と報じている。今後の教会建設は禁止されるべきであり、現存するキリスト教の礼拝場所は破壊されるべき、と判断したもの。
 ドイツ、オーストリアのカトリック教会司教が3月23日、『大ムフティー』を厳しく批判する声明を相次いで発表した。湾岸地域に居住する外国人労働者数百万人の人権を否定するもので受け入れることは出来ないとしている。
 ドイツ司教協議会議長のロベルト・ツォリッチ大司教は、『大ムフティー』が「信教の自由と多宗教の共存を尊重していない」とし、経済活動を支えている外国人労働者のことを無視している、と語った。「外国人労働者に開かれている教会が取り払われるなら、それは横面をはたくようなものだ」
 湾岸のアラブ地域に居住するキリスト者は350万人以上と推定される。ほとんどがインドやフィリピンからのカトリック労働者だが、西側諸国の各派キリスト者も存在する。
 サウジアラビアは、イスラム教以外の「祈りの家」を禁止しており、キリスト者は個人宅で、逮捕の危険を知りつつ祈っている。アラブ首長国、カタール、クウェート、バーレーン、オマーン、イエメンには少数派キリスト者のための教会が存在する。
 サウジアラビアのアブドゥラ国王はオーストリアに宗教間対話のためのセンター建設計画を立てているが、同国の司教協議会は、今回の問題に関してサウジアラビアの公式な説明を求めている。
 「『大ムフティー』がこのような重要な『ファトワー』を、国王の承認なしに出せるはずはない。国王の努力によって進められている対話と、『大ムフティー』の行為との間には矛盾がある」と言う。
 ロシア正教会在外教会部門の責任者イエゴリェスクのマルク大主教は20日、『ファトワー』への懸念を声明で表明した。
 同大主教は、インターファクス通信に、サウジアラビアの隣国は、錯綜した呼び掛けに驚かされることだろう、と語った。
 湾岸地域には少数ながら正教徒も存在する。しかしモスクワ総主教座は、1991年までの旧ソ連時代にはほとんど声をあげなかったものの、ここへ来て世界中のキリスト者の権利擁護への声を強めている。
 カトリック教会は、イスラム諸国に、この所、少数派キリスト者に、イスラム教徒が西側諸国で享受しているのと同等の信教の自由を与えるよう、働き掛けてきた。
 アラブ首長国連合、オマーン、イエメンにあるカトリック教会を管理しているポール・ヒンダー司教は、カトリック系KNA通信に、今回の『ファトゥワー』はサウジアラビアでは広く公開されてはいない、と語った。「心配なのは、そのような指示がある層には影響を与えることだ」と言う。


◎コプト正教会教皇シェヌーダ3世埋葬

 【CJC=東京】3月17日に死去したエジプトのコプト正教会の教皇シェヌーダ3世の遺体が20日、同国北部ワディ・ナトルーンの聖ビショイ修道院に埋葬された。同所は遺言で埋葬場所として指定されていた。
 AFP通信によると、遺体を運ぶ車列には教皇の死を悲しみ叫ぶおびただしい数の信者が殺到し、霊きゅう車にしがみつく者や声を荒げて群集を押し戻そうとする警備の憲兵らなど、大きな混乱が見られた。修道院到着後も、飾りの花をつかみ取ったりひつぎにキスをしたりするなど、騒然とした雰囲気が続いた。


◎信教の自由を最も侵害している国は今年もエジプト

 【CJC=東京】米国の『国際信教の自由委員会』が3月20日発表した報告書によると、エジプトが今年度も信教の自由を最も侵害している国に選定された。「エジプトでは、アラブの春の焦点だったが、希望が失望に変わった。人権事情、特に信教の自由侵害が軍事政権下で急速に悪化している」という。
 報告書は、ホスニ・ムバラク大統領退陣2カ月後の2011年4月1日から12年2月29日を対象にしている。
 同期間に侵害を認定された国はミャンマー、中国、イラク、イラン、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、スーダン、トルコ、ベトナムなど。


◎『クリスタル・カテドラル』はカトリック教会に

 【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブにロバート・シュラー牧師が1955年建設した『クリスタル・カテドラル』で3月11日、主任のシーラ・シュラー・コールマン牧師が最後の礼拝を行った。一時は毎週200万人が視聴した伝道番組『アワー・オブ・パワー』もシュラー一族の手を離れる。
 80年代には毎週の礼拝者が1万人を超すほどの勢いだったが、拡大策が裏目に出て、会員が減少、負債が数千万ドルにも上り、2010年破産した。『クリスタル・カテドラル』自体はカトリック教会オレンジ教区に5750万ドル(約48億円)で売却された。


◎エジプトで武装犯罪組織の不法発掘が横行

 【CJC=東京】エジプトで、古代の墓を不法に発掘する例が絶えない。英BBC放送は、武装した国際的な犯罪組織が活動していると報じている。時にはブルドーザーまで使って発掘、歴史的価値のあるものを持ち去っている。
お守りや宝石、肖像画、ミイラなどが犯罪組織によって狙われているという。最近数ヶ月間で、ファラオ時代や古代ギリシャ時代、初期キリスト教時代などの価値ある物品が、世界の闇市場に登場しているとも伝えられる。
 エジプト政府は防止に乗り出そうとしているものの、ホスニ・ムバラク政権崩壊後の国内政治不安によって、現状は非常に困難な状況という。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽ブルガリアにヨーロッパ最古の修道院?=ブルガリア南部ツラトナ・リヴァダ村近郊にある聖アタナシウス修道院は、344年にアレキサンドリアのアタナシウス自身によって設立されたと考古学者が判断した。これまでヨーロッパ最古の修道院はスコットランドのガロウエイに371年に設立された『キャンディダ・カーサ修道院』とされていた。
 現存するアタナシウス修道院近くにある洞穴や祭壇跡などを探査した結果、アタナシウス自身が居住したと判断出来る痕跡が見つかったという。
 アタナシウスは343年のセルディカ(ソフィア)教会会議に参加したことがバチカン(ローマ教皇庁)の資料で確認されている。

《北米》
▽米化粧品業界の監視強化を教会協議会担当が訴え=米教会協議会(NCC)環境健康プログラムのクロイ・シュワブ担当が3月22日、毒性化学品から子どもと環境を守るため、連邦政府に化粧品業界監視の強化を訴えた。
 「聖書は、私たちが神の像に造られたと語る。それなのに、ローション、デオドラント、ボディウォッシュなどの製品を使う現状は平均して約100種類の化学品を毎日身体に塗っていることになる。それらが慢性疾患、がん、生殖障害を引き起こす可能性がある。神の働きを護るために、現行の化粧品法改定が必要だ」と言う。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月25日)=https://www.cwjpn.com
★福島=南相馬で祈る=「3.11」から1年=カトリック東京ボランティアセンター=1日巡礼
★"人権のふるさと"で学ぶ=部落差別人権委員会が春季合宿
★一時避難の教会に集う=東京=福島のフィリピン人共同体
★ナイジェリア=ミサ中の教会に自爆攻撃=地元司教団が非難の声明
★カトリック信者数増える=11億9600万人=バチカンが統計公表

 =キリスト新聞(3月24日)=https://www.kirishin.com
★「あの日」から1年=NCC×カトリック=合同祈祷集会=追悼と再生を願う=1千人が祈り一つに
★千葉県宗教連盟が合同慰霊祭="命の重さに変わりない"
★相談室「クリニック絆」開設=斎藤友紀雄氏="宗教に自殺を防ぐ力ある"
★カトリック司教協議会 社会司教委員会が発行=教会が社会問題にかかわる理由とは?
★中絶・避妊への保険適用で「宗教的自由損なう」=米カトリック教会が批判

 =クリスチャン新聞(3月25日)=https://jpnews.org
★「イエスは一緒に泣いた」=フィリップ・ヤンシーさん被災地に立つ
★3.11から1年=東北各地で追悼集会=被災した住民らも参加
★原発頼る高ぶり悔い改め=同盟基督教団=祈祷文で共有
★「忘れてない」励みに故郷望み=国家晩餐/一致祈祷会で佐藤彰氏
★伊東牧師司祭会が日本福音教団謝罪声明を受容


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