世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1109信(2012.04.23)

  • 神信仰の強いのは途上国とカトリック国
  • 米国で「キリスト」不在の聖書『声』刊行
  • 中国で今年初めての司教誕生
  • 米国の女子修道者組織にバチカンが改革指示
  • 『聖ピオ10世会』復帰への期待高まる
  • 刑務所伝道のチャック・コルソン氏死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎神信仰の強いのは途上国とカトリック国

 【CJC=東京】神への信仰は世界中の多くの国で徐々に減衰しているが、本物中の本物の信仰者が今もなお開発途上国とカトリック圏に存在する。米シカゴ大学の研究者が4月18日発表した調査『時と国を超えた神への信仰』で明らかになった。
 調査は、フィリピンが、信仰者の比率が最高の国としている。フィリピン人の94%が、これまで信仰を持ち続けてきた強力な信者だと回答している。対極的に、かつての東独が13%だった。「フィリピンは開発途上国でもありカトリック国でもある」と同大学全国世論調査センターの総合社会調査の責任者トム・W・スミス氏。「宗教は、主にカトリックだが、非常に情緒的に強力だ」と言う。
 調査は、1991年、98年、2008年の3回行われ、少なくとも2回実施された30国のデータに基づいている。2008年調査では、30国の中で29国で信仰が年齢と共に増加している。68歳以上では神信仰が43%と最高だった。一方28歳未満では23%に止まっている。
 ほとんどの国で神信仰全体が衰退している中で、イスラエル、ロシア、スロベニアの3国では増加が見られる。
 調査報告は、宗教信仰が、1950年代以来、ほとんどの国で「徐々に衰退」している、と指摘している。無神論と不信仰が最も顕著なのは欧州北西部と旧ソ連圏の幾つかの国。ただカトリックが大多数のポーランドでは3・3%に止まり。
 神が存在すると知っており、疑わないと言う人が多い国のトップ5は、首位のフィリピンに次いでチリ(79・4%)、イスラエル(65・5%)、ポーランド(62%)、米国(60・6%)。


◎米国で「キリスト」不在の聖書『声』刊行

 【CJC=東京】イエス・キリストのキリストは名字だと思っている人は、米国人でも、それも長年教会に通っている人でも結構多い。「キリスト」は「救い主」を示す称号だということを知らない人たちにも読んでもらうには、全く新しい聖書が必要だ、というので、トーマス・ネルソン社と『エクレシア聖書協会』が発行したのはタイトルから『言葉』ではなく『声』(ヴォイス)だ。2011年11月に新約を先行し、4月に旧約を含めたものが出版された。
 現代英語で、しかも「動的等価訳」を採用しており、ギリシャ語、ヘブル語学者、聖書学者、詩人、作家、音楽家、牧師など120人以上が協力している。
 米紙『USAトゥデー』によると、「イエス・キリスト」は「イエス、油を注がれたもの」か「解放する王」となっている。他にも「天使」は「メッセンジャー」に、「使徒」は「使者」に変わっている。
 訳出に当たったテキサス州ヒューストンのバプテスト大学新約学教授のデービッド・ケイプス氏は、今の読者にはより正確な訳だ、と言う。
 7年がかりの作業の末、『新国際訳』や『CEB』(共通英語聖書)の後を追う形で発行となっただけに、特色が際立っている。映画や演劇のようにセリフが中心で、「彼は言った」とか「彼らは言った」という語句は省略されている。
 マタイによる福音書14章を見る。
 弟子たち「幽霊だ」。
 他の弟子「幽霊? どうしよう」
 イエス「静かに。わたしだ。恐れることはない」
となっている。
 『声』(ヴォイス)の語源はギリシャ語の「ロゴス」。もっとも大衆的とされる『新国際訳』でも『言葉』と訳されている。
 ヨハネによる福音書の初めが『声』では、
 「時自体が測られる前に、『声』は語っていた。『声』は神であったし今もそうだ」となっている。
 編集長兼発行人のフランク・カウチ氏は、こう訳す方が、「ロゴス」の意味を良く捉えている、と言う。

《注》語句の日本語訳はCJC通信試訳。


◎中国で今年初めての司教誕生

 【CJC=東京】中国カトリック教会四川省南充教区司教にヨセフ・チェン・ゴンガオ氏(47)が4月19日叙階された。中国での司教叙階は今年初めて。同氏の叙階は教皇の承認を得ており、中国政府も認めている。
 聖心大聖堂で行われた叙階式には約800人が参加、満員になった。唐山のペテロ・ファン・ジアンピン司教が式典を主宰した。寧夏のヨセフ・リ・ジン司教、万州のパウロ・ヘ・ゼキン司教らが協働司式した。司祭87人が参列した。バチカンから破門されている楽山のパウロ・レイ・シイン神父も司教の衣装をまとい参列、按手した。
 チェン司教は1964年生まれ。四川神学院を88年卒業、2年後に司祭叙階。
南充教区は信徒8万6000人。司教1人、司祭11人、修道女11人で担当。2004年にミカエル・ファン・ウォゼ司教が死去後は司教座は空席だった。


◎米国の女子修道者組織にバチカンが改革指示

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が、米国の女子修道者組織は教理的「危機」にあるとして、『米女子修道者指導会議』(LCWR)の改革を指示、実行のためにシアトルのJ・ピーター・サーテン大司教を指導者に任命した。
 今回の措置は、バチカン教理省が、女子の会議を多年にわたり教理的に評価した結果出されたもの。全米の1500組織がLCWRに加入している。
 評価報告書は、「LCWRの司教協議会との関係と、教会の信仰の中での健全な教理的な基盤を築く必要の双方に大きな重点を置く必要があることは明らかだ」と指摘する。
 評価は2008年、教理省の指示により始められ、司教協議会教理委員のレオナード・ブレア司教(オハイオ州トレド教区)が担当した。
 評価の中で、近年の指導者会議年次大会での提案に神学的・教理的な重大な誤りがあったことが指摘されている。
 宗教者の生活に関する発言の中にはカトリック教会の信仰と相容れないものがあることも判明した。教理からの逸脱を正当化しようとする試みや、教会の権威が果たす役割への軽視もあった。
 修道女に関する講演の中には「教会から逸脱」するもの、さらにはイエスから離れたものもあった、と言う。そのような立場は、「信仰否定」や「スキャンダルの原因」ともなるのに、LCWRでは問題にされなかった、と報告書は指摘している。


◎『聖ピオ10世会』復帰への期待高まる

 【CJC=東京】カトリック教会から破門扱いされている極右団体『聖ピオ10世会』のバチカン(ローマ教皇庁)との関係改善が現実的になってきた。
 同会創設者マルセル・ルフェーブル司教が、バチカンの承認なしに司教4人を叙階したことで、自動的に破門になったが、現教皇が教理省長官だった当時から関係改善が図られていた。
 「和解のための前提」が2011年9月、同会に提示され、会側は今年1月検討の結果をバチカンに回答したものの、教理省の検討を経て、ベネディクト16世は不十分と判断した。そして3月になって会側に問題点が示され、詳細な説明を求められていた。
 バチカンが発表したコミュニケは、「4月17日、教理省事務所で3月16日に行われた会合での要望に沿った聖ピオ10世会総長ベルナール・フェレイ司教の回答を受け取った。内容は裁判所の検討を経て、聖父(教皇)に判断を求める」と述べている。
 双方からの具体的な説明はないが、フェレイ司教の応答は前向きで、分離集団がローマとのコミュニオン(聖餐関係)に戻る途上にあるとする期待は高い、と見られている。


◎刑務所伝道のチャック・コルソン氏死去

 チャールズ(チャック)・コルソン氏(元米大統領特別顧問)が4月21日、脳出血後の合併症のためバージニア州の病院で死去、80歳。
 69年から73年までリチャード・ニクソン元米大統領の特別顧問を務めた。大統領辞任のきっかけになったウォーターゲート事件の捜査過程で発覚した別の事件で司法妨害の罪を認め、収監された。「邪悪の天才」と呼ばれるなど非情なことで知られた。
 大統領のために「政敵リスト」を作成、手段を選ばない冷酷な側近と恐れられた。秘密工作集団『ホワイトハウス鉛管工』を組織、ベトナム戦争をめぐる機密文書『ペンタゴン・ペーパーズ』をメディアにリークした人物の信用失墜を狙い、精神科医の診察室侵入事件を指揮した。72〜74年のウォーターゲート事件で起訴された7人「ウォーターゲート・セブン」の1人だった。
 73年にキリスト教に回心した後、1〜3年の実刑判決を受けアラバマ州マクスウェル刑務所に服役した。釈放後は、受刑者をキリスト教によって更正させる
『プリズン・フェローシップ』という団体を設立、その代表に就任するなど、キリスト教右派の伝道者となって影響力を維持した。
 93年には宗教関連で活躍したとして『テンプルトン賞』を受賞した。同賞は高額の賞金で知られるが、コルソン氏は自身の活動報酬と同様、に『プリズン・フェローシップ』の資金とした。
 米聖書協会のラマール・ヴェスト会長兼CEOは、「今日、世界は1人のキリスト教政治家、囚人への献身的な奉仕者、人生を変えるという神の業の強力な実例を失った」と語っている。(CJC)


◆短信◆(CJC)

《アジア》
▽『国際アムネスティ』がベトナムの人権活動家釈放要求=「デュー・ケイ」(農民のパイプ)という愛称で知られるベトナムの人権活動家グエン・ホアンハイ氏は脱税容疑で2008年以来、投獄されているが、さらに「反国家扇動」容疑で起訴されたことが明らかになった。有罪となると拘置期間が20年延長される。
 『国際アムネスティ』は、表現の自由を平和的に実現しただけで拘束、裁判に付されるのは、良心の囚人に対する迫害だとして、ベトナム当局に告訴撤回と同氏の即時釈放を要求した。
 同氏は2年半の刑期を10年10月に終了したものの、当局は「反国家扇動」容疑で釈放しなかった。

《欧州》
▽21世紀の対話探る国際会議『アッシジ2012』=イタリア中部のアッシジで国際会議『アッシジ2012』が4月17〜20日、54ヵ国230人の神学者、聖職者が集まり開催された。主題は「21世紀の対話のための共通の路での私たちの場」。
 総合的な目的は、「エキュメニカルの冬」の時代の中で、また新たな世紀のための新たなエネルギーをもって、教会一致を推進する新たな路線、手段、方法を見出すこと、と言う。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月22日)=https://www.cwjpn.com
★聖書と聖体のうちに復活した主と出会う=教皇、一般謁見で講話
★震災復興支援=第2回福島ブロック会議=参加グループ広げ 開催=福島・いわき市
★沖縄から「平和」を=日本カトリック・ボランティア連絡協議会総会
★HIV母子感染予防へ=UNAIDS事務局長=教皇とバチカン高官らに協力を依頼
★神奈川第3地区=悲嘆に寄り添うために=「自死、孤立」で連続学習会

 =キリスト新聞(4月21日)=https://www.kirishin.com
★日基教団=石橋秀雄議長が声明=「原発は神の創造の秩序を破壊」
★清泉女子大学=本館が東京都指定有形文化財に=ジョサイア・コンドル設計
★メソジストの初代監督 本多庸一召天100年=東京で記念行事「"和"を担って前進」
★基地のない沖縄をめざす宗教者の集い=「干潟埋め立ては辺野古の代償」
★反エキュメニカル声明 正教会の精神に反する=バルトロメオス1世がギリシャ教会非難

 =クリスチャン新聞(4月22日)=https://jpnews.org
★被災後の希望 若い視点で=福島未来会議2=青年ら50人「神の国」討議
★旅路9人目の受洗=福島第一聖書バプテスト教会=奥多摩最後の礼拝で
★"流浪の教会"故郷めざし次の旅へ=福島第一聖書バプテスト教会=いわき市へ集団移転
★NCC総幹事・新議長を選出=原発停止を求め決議
★NRA新委員長に水野明廣氏=東北で「祈りの祭典」


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆『週刊・世界キリスト教情報』既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧