世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1113信(2012.05.21)

  • 米カトリック教会司教がガールスカウトに注文
  • 教皇、オーストラリアで『オルディナリアーティ』創設へ
  • バチカンにまたマネーロンダリング疑惑
  • 「性別選択」と「死ぬ権利」をアルゼンチン合法化
  • 改革派が13年に向けて優先課題確定
  • 《メディア展望》
  • 《短信》

◎米カトリック教会司教がガールスカウトに注文

 【CJC=東京】米『ガールスカウト』が設立100周年を迎える中で、カトリック教会司教から、堕胎、避妊、同性愛を推進する団体との関係を指摘されている。
 カトリック・メディア・サービス『EWTN』によると、司教協議会信徒・結婚・家庭生活・青年委員会議長のケビン・ローズ司教が、「『ガールスカウト』に注目している」と語った。この3月、他の司教に宛てた書簡で、『ガールスカウト』の「他の組織と相当に問題のある関係」や「プログラムに使われる材料やリソースに問題がある」ことに関し、数年越しに発言して来た「数々の懸念」を同委員会が論議した、とローズ司教は記している。
 このところ、『ガールスカウト』は、伝統的価値に反した活動を行っているとの批判を浴びてきた。
 2010年、テイーンエイジの少女2人が8年間会員だった『ガールスカウト』を脱退、ネット上に同組織の問題点を訴えるサイトを開設した。「テス」と「シドニー」と呼ばれる2人は、『ガールスカウト』組織の倫理を、自分たちは受け入れられないことが、ますますはっきりしてきた、と言う。「『ガールスカウト』を辞めることは安易な決断ではなかった」が、結局、「自分たちの信仰、生命の尊厳、結婚の神聖、謙遜、貞潔に立つ」必要がある、との決断に至ったと指摘する。
 今年1月、コロラド州の隊が、性転換をした7歳の子の入隊を認めた際も批判が出た。その子は少女ではない、というのが理由。
 「計画出産」にからむ懸念もある。たとえば10歳のグレイス・スワンクさんが『ガールスカウト』を除隊し、自分で『生命のためのクッキー』を売り出した例もある。グレイスさんは、収益を中絶反対グループに寄付している。
 米国の『ガールスカウト』が『ガールガイド・ガールスカウト世界連盟』に加盟していることも問題視される。同連盟が中絶、避妊、同性愛を世界規模で推進していることが理由。
 あからさまに「計画出産」を勧める資料が、2年前の国際会議の席上配布されたと報じられたことも懸念を引き起こした。『ガールスカウト』の代表は、計画出産に関するパンフレットについては知らないとし、中絶や産児制限を支持はしていない、と述べている。
 それでも『ガールスカウト』をめぐる論議は絶えることがなく、司教協議会も常に注視してきた。
 カトリックのガールスカウト隊が長年にわたり少女たち、さらに社会に対して行ってきた働きに感謝しつつ、ローズ司教は、提起した重要な質問の中に、地域レベルでも全国レベルでも答えられていないものがある、と指摘する。「この問題を委員会が引き続き検討していることを司教たちに知っておいてもらう」という意図も同司教は強調した。
 委員会で、司教、司祭、教育指導者が「地域レベルで使用する」ための材料を提供したい、と同司教。これらの材料は、「カトリック隊の独自性への配慮と、親たちに役立つものを盛り込む」と言う。さらに、地域レベルで未解決の問題を探るため司教協議会が任命したスタッフが『カトリック青年宣教全国連合』と協力することも委員会は提案している。
 米司教協議会自体は、現在進行中の問題だとしてコメントを避けている。
 しかしこれまでの論議が、カトリック家庭に少女を『ガールスカウト』から脱退させ、同様な活動を、キリスト教色を強めて進めるよう仕向けて来たことも事実。
 ユダヤ教・キリスト教色を打ち出した少女組織『アメリカン・ヘリテッジ・ガールズ』が、オハイオ州で1995年に設立されたが、それは、世俗的に得られるものとは対照的に「娘たちのために健全なプログラム」を求めていた親たちによるもの。すでに全米45州でメンバーが1万9000人を超した。
 また聖人、聖書、カテキズムを探求することで少女の道徳向上を目指す『リットル・フラワーズ・ガールズ・クラブ』の成長ぶりもめざましい。
 『リットル・フラワーズ』は93年に『カトリック・モム・オブ・11』によって発足した。活動は各クラブ単位で行われ、登録は任意だが、今では米国とカナダの約50クラブが登録している。『リットル・フラワーズ』は「カトリック信仰を活気あるものとし、少女たちが真のカトリック女性になるよう勧める」と言う。
 『ガールスカウト』は、1908年に英国でロバート・ベーデン=パウエル卿が発足させたボーイスカウトにならい、10年にベーデン=パウエル卿の妹アグネス・ベーデン=パウエルによって発足した『ガールガイド』を母体として、12年に米国でジュリエット・ローが創設した。特定の宗教を強調しない一方で、キリスト教会側では、自らの教義・信仰の基盤に立った運動である、との意識を強調する傾向が今も強い。


◎教皇、オーストラリアで『オルディナリアーティ』創設へ

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世が6月15日、聖公会(英国国教会)から離脱してカトリック教会との「フルコミュニオン」(完全相互聖餐)関係に加入する人たちのために制定した『オルディナリアーティ・ペルソナーリ』(属人的司教区)を、オーストラリアにも設立する。カンタベリーの聖オーガスティンを守護聖人とし、『オルディナリアーティ・オブ・アワ・レディ・オブ・ザ・サザンクロス』と呼ばれることになる。
 オーストラリア・カトリック司教協議会のデニス・ハート会長(メルボルン大司教)は、「カトリック教会に導かれる信仰の旅をして来た、元は聖公会信徒だった人たちは、準備された歓迎を受けることになろう」と語った。
 『オルディナリアーティ』は2011年、英国のイングランドとウエールズ地方を対象に初めて設立された。現在40グループ、司祭60人で構成されている。司祭の中には主教だった人もいる。
 米国では今年1月、発足した。当初22グループ、1400人が加入意思を表明した。最初の小教区は8月にペンシルベニア州スクラントンに設立される。


◎バチカンにまたマネーロンダリング疑惑

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)には時にスキャンダルが巻き起こる。今回、米週刊誌『ニューズウィーク』が取り上げたのは、バチカンの独特な会計手法をめぐるマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑。
 米大手銀行JPモルガン・チェースは今月末、バチカンの『宗教事業協会』(通称バチカン銀行)がミラノ支店に保有する口座を閉鎖する。送金活動の疑問点について説明を求めたが、バチカン側が「対応不可能」だったためと言う。
 口座閉鎖措置は、イタリアの財務警察が継続中の捜査を受けたもの。警察は2010年9月にバチカンの資産3300万ドル(約26億円)を一時凍結し、粉飾会計の疑いがあるとして捜査を続けている。
 健全さを証明するため、できる限りの行動を取っているというのがバチカンの主張。10年末には、財務情報監視局を設立した。
 米国務省は3月上旬、今年度の『国際麻薬統制戦略報告書』を発表、マネーロンダリングに利用される懸念がある国のリストに初めてバチカンを加えた。


◎「性別選択」と「死ぬ権利」をアルゼンチン合法化

 【CJC=東京】南米で初めて同性婚を合法化したアルゼンチンの議会がこのほど、公的機関に届け出る性別の選択と、親族による終末期の意志決定を法的権利として認める法案を可決した。AFP通信が報じた。
 同国議会が可決した法案の一つは、トランスベスタイト(異性装者)やトランスジェンダーの人が、身分証明書などの法的書類に記入報告する性別を選択できるようにするもの。
 世界銀行の統計では、カトリック教徒が圧倒的多数を占めるアルゼンチンのトランベスタイト・コミュニティーは全国で約2万2000人と小規模。多くは低学年で学校を去り正規の教育を受けておらず、9割以上が売春産業に入るという。


◎改革派が13年に向けて優先課題確定

 【CJC=東京】世界改革教会連盟(WCRC)は、常置委員会を5月11〜16日、インドネシア・北スマトラのブラスタギで開催した。同委員会では、2012年から13年に掛けての優先課題として、神学形成、経済的正義、経済的懸念を表明する際の指針、を設定した。ENI通信が報じた。
 「わたしたちは、この会議から、目前に横たわっているものが何なのかを知りつつ別れて行く。その道は安易なものではないが、WCRCの経済的に安定した未来を作ることにわたしたちは関わっている。それはわたしたちが、この世界における神のミッションに取り組むというビジョンと目的を果たせるようにするものだ」とジェリー・ピレイ会長は、6日間の会議の閉会に際して語った。委員会の議論は、財務問題に集中した、と言う。
 ヨハン・ウスマン会計は、困難になった主因をスイス・フランがユーロに対して価値が切り上がっていること、と指摘した。WCRCは本部がジュネーブにあり、スイス・フランで予算を執行しているのに、負担金はユーロで納付される。また負担金の納入自体が遅れたり、未納になることも財務を圧迫する。
 WCRC・エンダウメント・ファンド(寄付基金)のスティーブン・リッチ会長は、2017年までに1000万スイス・フラン(約8億4000万円)を集める『維持基金』構想を打ち出している。
 常置委員会は、また2014年4月に任期満了となるセトリ・ニョミ総幹事の後任選考委員会立ち上げを承認した。
 WCRCには108国8000万人のキリスト者が所属している。日本からは日本キリスト教会と在日大韓基督教会が加盟している。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽ロシア・ペンテコステ派リャコフスキー監督死去=ロシア福音・ペンテコステ信仰キリスト者連合のワシリー・リャコフスキー監督が4月19日死去していたことが明らかになった。年齢や死亡場所は明らかにされていない。
 旧ソ連時代には、信仰上の理由で3回も投獄されたが、息子のセルゲイ氏は、「霊的戦いに勝ち、無神論や共産主義に抵抗し勝利した」父親の世代に敬意を示すコメントを発表している。

《北米》
▽レックス・ハンバード牧師未亡人死去=米国の最初の「テレビ伝道者」レックス・ハンバード牧師の未亡人モード・エイミーさん(89)が5月14日、フロリダ州ランタナで死去した。10年前からアルツハイマー病にかかっていた。レックス氏は2007年に88歳で死去している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月20日)=https://www.cwjpn.com
★大阪教区、再検討を要望=市が「子どもの家事業」廃止案
★竜巻=信徒宅に被害=つくば教会=司祭ら祈る
★こいのぼりで反原発=5月5日=カトリックからも参加
★「如己愛人賞」=テグで授賞式=永井博士の信仰伝え3回目
★秋田・聖体奉仕会本部修道院=巡礼者の恵み願う=湯沢台の聖堂10周年=写真集も

 =キリスト新聞(5月19日)=https://www.kirishin.com
★災害における弱者にどう寄り添う?=キリスト教と社会制度を考えるセミナー=NCCドイツ委員会×富坂キリスト教センター="原発事故は終わっていない"
★女川に「きぼうのかね商店街」=仮設では最大規模=米国救世軍「必要とされる限り支援」
★ヴォーリズ建築事務所設計=2教会が登録有形文化財に
★「道・真理・いのち」のキリストに倣い=大阪キリスト教短大が開学60周年
★聖書のアラビア語訳出へ疑問噴出="三位一体の教義ゆがめる"

 =クリスチャン新聞(5月20日)=https://jpnews.org
★「意見の違いは議論で克服を」=未受洗者陪餐で免職の北村慈郎氏が冒頭陳述
★「トーチベアラーズ山中湖」25年="炎"のバトン=30代カナダ人夫妻に
★東西福音主義神学会が東日本大震災テーマに=西部部会=ホーリスティック宣教を検証=東部は6月公開研究会
★米アトランタ=ウェストミンスター日本人教会=待望の後継牧師に出身者
★同盟基督=熊本で開拓開始=ブラジルに宣教師派遣


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