世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1116信(2012.06.11)

  • 『クリスタル』から『クライスト』へ
  • バチカン流出文書に前駐日大使の書簡も
  • バチカン文書流出、ベルトーネ枢機卿が目標か
  • 前バチカン銀行総裁の機密書類を伊警察押収
  • メノナイト世界会議次期会長にクレイビル氏
  • WCCがエキュメニカル・センター新設計画
  • ロシアのおばあさん6人が歌唱コンテスト入賞
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎『クリスタル』から『クライスト』へ

 【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブにロバート・H・シュラー牧師が建設した「メガチャーチ」のガーデングローブ・コミュニティ教会。著名な建築家フィリップ・ジョンソンが総ガラス貼りにしたことから『クリスタル・カテドラル』と呼ばれていたが、これからは『クライスト・カテドラル』と名乗ることになった。
 シュラー氏は、テレビ伝道にも乗り出し、一時は信徒7000人を擁していたが、同氏の引退後、一家の内紛が表面化し会員減少につながった。最初は息子ロバート氏が後継者となったが、父親と意見が対立、2008年に退陣、息女シェイラ・シュラー・コールマン牧師が主宰者となった。
 宣教活動の主体となったテレビ番組『力の時』の負担が大きく、献金減少もあり、負債が5000万ドル(約40億円)を超え、支払いも滞り、10年に連邦破産法第11章の適用を申請した。
 シェイラ牧師は、教会が公表した声明で、「景気退行のため収入が予想外に急減、支出削減が間に合わなかった」と述べていた。
 『クリスタル・カテドラル』は売却されることになり、キリスト教系のチャプマン大学も買収に名乗りを上げたが、最終的にカトリック教会オレンジ教区が5750万ドル(約46億円)で入手したもの。
 同教区のトッド・D・ブラウン司教は6月9日、改称を発表、同教会主任代理(エピスコパル・ビカー)にクリストファー・H・スミス神父を任命した。
 カトリック聖堂への改装は13年7月から1年近く掛けて実施する予定。


◎バチカン流出文書に前駐日大使の書簡も

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)文書の流出がイタリアでは問題になっているが、ジャーナリストのジアンルイジ・ヌッツィ氏がバチカンの汚職や腐敗、陰謀も明かす私信や文書を基に実態を暴露した近著『スア・サンティータ』(聖下=教皇に対する敬称)の中に、前駐日大使アルベルト・ボッターリ・デ・カステッロ大司教のメモも収録されていた、とUCAN通信が伝えている。
 流出した文書コピーは、教皇の『個人執事』パオロ・ガブリエーレ氏が逮捕された際にバチカン内の自室で発見された。
 普通、外交官のメモが明らかにされることはないだけに関心を持たれる。前大使のメモは、2011年8月15日付け。6年に及ぶ在任期間の最後にまとめられたもので、率直な内容が注目される。
 前大使のメモは、キリシタン宣教師の上陸以来4世紀以上を経た日本の教会の状況を捉えている。
 UCAN通信によると、前大使は、日本のキリスト者が少数に留まっている間に隣の韓国ではこの数十年間で激増していることを踏まえ、「しばしば問われた質問を自身でも考えている。このすばらしい世界がなぜ福音から遠ざかっているままなのか。日本人1億2800万人の中でカトリック者が50万人しかいないのはなぜなのか」と問い掛ける。
 大使が出した答えは、在任中に日本人司教、宣教師、一般信徒との会話と熟慮の結果で、「日本には『天皇』という象徴や、神道、仏教といった宗教に結びついた高尚な文化、輝かしい歴史と強固な国体がある。キリスト教に改宗するということは、この世界から縁を切ることであり、『らしくない日本人』になったと訴え、またそれで気落ちする、ということなのだ」と言う。
 大使は、日本人のプライドと強烈な国民としての一体感が、外国からの影響に、複雑な感情を示す、と説明する。「彼らはオープンで好奇心が強い。新しいものをその文化に融合させ、そのままには置いておかない......そこで、福音に転向することはほぼ奇跡なのだ、という考えに行き着く」。
 さらに、カトリックが西欧のものとして捉えられるという事実が助けにならない。「西側世界からもたらされ、メディアによって広められた、暴力、物質主義、腐敗といったイメージやライフスタイルなどがキリスト教世界の一部分と見られるので、受け入れられないい」と言う。
 大使の分析では、これが、長年にわたった日本の司教たちと『新求道共同体』との抗争の根底にもある。
 「わたしの見るところでは、彼らはここへ来て、ヨーロッパで生まれ発展したやり方に従い、現地の世界に適応することは念頭にない。ここ日本での彼らのやり方は、わたしが20年前にカメルーンで宣教師だった時に見たのと同じで、全ては提案ではなく押しつけだ」。大使にとっては、「緊迫、誤解と反発」だらけで、「対話への窓はほとんど開けられないまま、全面拒否に行き着く」ことは疑いない。
 『新求道共同体』の「意図と善意は称賛されるべきもの」だが、「現地の文化との融和」に欠けている。大司教は「愚見では、これが日本の司教たちが求めていることなのだ。聖化され、人々に寄り添う方法でメッセージの核心を提示するには、西欧風のヴェストを脱ぐことだ」と言う。
 UCAN通信は、彼らが日本でその考えを適用するか、またアジアのどこでもそうするか、について疑念を示し、大司教の最後の言葉がバチカンで真剣に考慮されただろうか、と指摘している。


◎バチカン文書流出、ベルトーネ枢機卿が目標か

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の非公開文書がこの1月、大量流出した事件は、「バチカン」と「リークス(漏えい)」を合わせた「バチリークス」という造語で呼ばれるまでになった。
 伊紙『イル・ファット・クオティディアーノ』のバチカン専門マルコ・ポリティ記者は「流出した文書は、すべて何らかの形でタルチジオ・ベルトーネ枢機卿に関するもの」だったとして「今回の流出は彼に打撃を与え、新しい国務長官に後退させようとする動き」だとAFP通信に語っている。バチカン内部に、ベルトーネ枢機卿が権力を乱用し、カトリック教会の利益にならない行動を取っていると批判する声があるという。
 流出した文書は教皇べネディクト16世のデスクから直接持ち出されコピーされた。
 ベルトーネ枢機卿はベネディクト16世の側近だが、特に『宗教事業協会』(バチカン銀行)の資金洗浄疑惑などで、バチカン行政における不透明性にからみ権力を乱用しているとの批判もある。
 20人ともされる内部告発者の一掃にバチカンが動き、内部文書を保持していたとしてベネディクト16世の秘書パオロ・ガブリエレ補佐官を逮捕した。さらに教皇身辺の人物を取り調べているという。


◎前バチカン銀行総裁の機密書類を伊警察押収

 【CJC=東京】イタリア警察当局が6月5日、「神の銀行」といわれる、バチカン(ローマ教皇庁)の財政管理組織『宗教事業協会』(IOR、通称バチカン銀行)のエットーレ・ゴッティ・テデスキ前総裁(67)の自宅を収賄などの容疑で家宅捜索した。
 警察はイタリア北部ピアツェンツァとミラノにあるテデスキ氏の自宅と事務所を、軍事企業『フィンメッカニカ』による贈収賄事件に関連して捜索。その際、在任時の職務に関係する機密書類が見つかった、と司法筋が7日明らかにした。ロイター通信などが報じた。
 テデスキ氏は先月24日、基本的な職責を果たしていないとして、理事会が不信任を決議し、解任されていた。


◎メノナイト世界会議次期会長にクレイビル氏

 【CJC=東京】メノナイト世界会議(WMC)は3年に一度の代議員会をスイス・ベッチンゲンで5月20〜26日開催、次期会長に米インジアナ州エルクハートのJ・ネルソン・クレイビル氏を選出した。同氏はプレイリー・ストリート・メノナイト教会牧師。任期は米ペンシルベニア州ハリスバーグで2015年7月に開催される次期大会から。大会は6年ごとに開催される。
 今回代議員会では、会員が南半球で増加しているとの認識に立ち、世界的な連携を強化することにした。
 会議場の聖クリショナ・センターは、1925年と52年に第1回と第5回大会が行われたところ。当時の会員は白人ばかりだったが、今回の代議員会に集まった代議員105人は全54国の中の48国に上り、8割が南半球の代表だった。


◎WCCがエキュメニカル・センター新設計画

 【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)が『エキュメニカル・センター』新設計画を発表した。ジュネーブ北部グラン=サコネの3万4000平方メートルの敷地を再開発する。このほど建設会社インプレニア社と契約した。設計者は競争(コンペ)で13年半ばまでに決定、着工は16〜17年を予定している。建設費などは明らかにされていない。
 現在の『エキュメニカル・センター』は1964年に完成、WCCの他、ルーテル世界連盟、世界改革教会共同体、世界学生キリスト教連盟などが入居している。


◎ロシアのおばあちゃん6人が歌唱コンテスト入賞

 【CJC=東京】ロシアのおばあちゃん6人のグループ『ブラノフスキエ・バブーシュキ』(ブラノヴォのおばあちゃん)がアゼルバイジャンのバクーで5月26日開かれた『ユーロビジョン歌唱コンテスト』で第2位に入賞、賞金はブラノヴォ村の教会建設のため献金すると誓約したのが話題となっている。
 入賞したのは母語フィン・ウゴル語で歌った「みんなでパーティ」。コーラス部分では英語で「おいで、踊ろう」と呼び掛けた。伝統的な衣装にくつの姿で歌うおばあちゃんに観客は大喜び。ただ優勝したのはスウェーデンの歌手ロリーンの「ユウフォリア」だった。
 モスクワ東方1000キロにあるブラノヴォ村は人口650人。マネジャーのマリア・トルストゥキナさんは、教会堂建設はすでに始まっており、最初の礼拝が30日行われた、と語った。
 会堂は第二次大戦中の1939年に破壊されたが、旧ソ連時代は再建されなかったので、村人は最も近い教会へ40キロも通わなければならなかったという。
 『ユーロビジョン歌唱コンテスト』は欧州放送連合加盟国で1956年から毎年行われ、番組としても長寿を誇っており、視聴者は6億人。
 イタル=タス通信によると、おばあちゃんたちはロシア各都市やラトビア、ベラルーシを回る計画で、ドイツ、フランス、英国からも招かれている。ウラジミル・プーチン大統領も、おばあちゃんたちと会いたい、と27日語った。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽『トリノの聖骸布』本物の証拠?また一つ=十字架から下ろしたイエス・キリストの遺体を包んだものではないか、とされる『トリノの聖骸布』について、バレアレス諸島大学のマルジア・ボイ教授が、布に付着していた花粉を、当時パレスチナ地方で死者を葬る際に使われた花とオイルに合致している、と判断した。
 この花粉が真正なものとなると、聖骸布が中世に作られた偽物だとする意見への強力な反証となる。有能な偽物作者でも、どの花粉が適切か分かってそれを布に付着させたとは推定出来ないから、と言う。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(6月10日)=https://www.cwjpn.com
★福島・南相馬=「原町ベース」開所=継続的支援の拠点に
★男女管区長会、それぞれに総会開く
 日本カトリック管区長協議会=宣教のため何が必要か
 日本女子修道会総長管区長会=被災地で"シスターズ・リレー"追体験
★第13回仙台教区サポート会議=継続支援へ態勢整備
★仙台教区=義援金の収支発表=7億5千万円、復旧、見舞金などに
★シリア=教皇も殺りく非難=平和への「祈りと対話」促す

 =キリスト新聞(6月9日)=https://www.kirishin.com
★無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会が公開学習会="国に人殺す権利与えるな"=福島みずほ氏
★東京基督教大学セミナー="震災と教会のミニストリー"=秋山善久氏=「空虚感埋めるのは福音」
★「がん哲学外来 お茶の水メディカル・カフェ」開設=柏木哲夫氏が記念講演=「人は死を背負って生きる」
★日基教団「北村裁判」第1回口頭弁論=双方の主張かみ合わず
★松山キリスト教書店が移転・新装=松居直氏「未来へとつなぐ本との絆」

 =クリスチャン新聞(6月10日)=https://jpnews.org
★本多庸一召天100周年=明治国家主義の攻撃に論陣=草創期キリスト教主義学校の危機を回避
★軽井沢で死別の悲しみ癒す集い
★世界祈りの大会=84年韓国から始まった動き インドネシアで
★軍事政権下6回投獄 路上礼拝6年=朴炯圭牧師回顧録『路上の信仰』邦訳出版
★英国国教会で女性主教実現へ


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