世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1132信(2012.10.01)

  • 独カトリック教会が信徒に教会税納税を指令
  • 独政府が『割礼』を合法化へ
  • 反イスラム映画の出演者が『グーグル』にも抗議
  • ナイジェリアで大聖堂ねらい自爆テロ
  • バチカン機関紙が映画『プロメテウス』批判
  • イエス妻帯文献は「下手な偽造」とバチカン紙
  • ENIニュースが資金難で活動停止
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎独カトリック教会が信徒に教会税納税を指令

 【CJC=東京】ドイツ・カトリック司教協議会は9月20日、教会税を納入しない信徒は今後、さまざまな秘跡を受けられず、また教会の諸活動に参加出来ない、という指令と司牧書簡を発表した。
 ドイツ市民は、カトリック、プロテスタント、またはユダヤ教徒であると申告すると、その所属教会を維持するため、所得税の8〜9%を付加税として徴収される。
 この『教会税』は、市民が税務事務所に、教会を離脱した、と申告すると、課税はされなくなるところから、最近申告者が増えている。
 カトリック教会は、『教会税』50億ユーロ(約52億円)で運営されているところから、離脱者が増えることは重大関心事。
 今回の指示は、バチカン(ローマ教皇庁)の承認を受けたものだが、その中で司教協議会は、カトリック教会から離脱する者は、臨終の際の『病者の塗油』以外の秘跡を受けられない、と宣言している。
 また離脱者は、教会やカトリック系の学校や病院などで働くことも認められない。教会が運営する慈善団体や聖歌隊での活動も出来ない。
 司教協議会会長のロベルト・ツォリッチ大司教は、「公的な行いによって教会を離脱する人にはそれなりの結果があって当然だ。はっきりしていることは、その人たちは、教会員であり続ける人のようには利益を受けられない」と24日の記者会見で語った。「ローマがわたしたちの立場を完全に承認してくれたことを歓迎している」と言う。
 大司教は、個々人の離脱を「教会には苦痛」と語った。司教たちは、多くのカトリック者が決定の重要性に気づかないことを懸念している、と言う。
 『ディーヴェルト』紙は「カトリック教会は、失われた一人ひとりを捜し求める義務がある」と大司教が語ったと報じている。
 「問題は教会の秘跡としての本質の信頼性だ。人は半会員とか部分会員などにはなりえない。教会に属し関わるか、それを放棄するかなのだ」と言う。
 カトリック者はドイツ総人口8230万の3割で、プロテスタントと同じ割合。正教徒は2%。
 ドイツ出身の教皇ベネディクト16世が2005年に選出されて以来、カトリック教会への関心は高まったものの、教会での洗礼や結婚は減少を続けている。カトリック者で毎週ミサに出席する人は13%。1989年の調査では22%だった。
 教皇の3回にわたる母国訪問にも関わらず、聖職者と修道者も減少している。
 教会税の納入をやめ、登録教会員でなくなった人は2011年、27教区で12万6488人。10年は18万人だった。
 ドイツ各紙は、教皇の出身地バイエルン州での減少が最高と報じている。アウグスブルク、バンベルク、アイヒシュタット、パッサウ、ヴュルツブルクの各教区では2010年の離脱者が7割増加したが、聖職者の性的虐待が続発したことが影響した、と見ている。


◎独政府が『割礼』を合法化へ

 【CJC=東京】ドイツ政府が『割礼』を合法化する方針を決めた。『割礼』は、ユダヤ教徒やイスラム教徒が、宗教上の理由から男児の性器の包皮を切り取る儀礼。割礼を受けた男児が大量出血した事件で、ケルン地裁が5月に傷害と判断したのを受け、ユダヤ教徒やイスラム教徒が激しく反発、宗教の自由と子どもの権利をめぐる論争も起きている。
 連邦法務省が9月25日に各州などに示した方針は、両親の同意があり、医学的な規則に沿っている限りは違法とせず、刑罰を科さないとした。ユダヤ教徒に配慮し、医師でなくても同様の技術を持っている場合は割礼の実施を認めた。近く連邦議会に法案を提出する。
 ドイツのユダヤ人中央評議会は決定を歓迎している。


◎反イスラム映画の出演者が『グーグル』にも抗議

 【CJC=東京】イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する内容の映画に出演した女優のシンディー・リー・ガルシアさん、イスラム世界に激しい反発を呼び、殺害の脅しを受け、孫にも会えなくなったと、映画制作者ナコウラ・バッセリー・ナコウラ氏を名誉毀損と詐欺で米ロサンゼルスの裁判所に訴えた。ガルシアさんはまた、インターネット企業『グーグル』と同社傘下の動画サイト『ユーチューブ』に対し、映画予告編を削除するよう求めた。
 ガルシアさんは「歴史的なアラブの砂漠での冒険映画」という『砂漠の戦士』の出演者募集の広告に応じた。しかし映画は反イスラムのせりふに吹き替えられ、題名も『イノセンス・オブ・ムスリム』(イスラム教徒の純真)に変更され、「反イスラムの映画に自らの意思で出演したように見られることになった」と言う。
 『ユーチューブ』はリビア、エジプト、サウジアラビア、インド、インドネシアでは予告編の閲覧を阻止しているが、米国では閲覧可能になっていた。


◎ナイジェリアで大聖堂ねらい自爆テロ

 【CJC=東京】ナイジェリア中北部バウチのカトリック教会大聖堂で9月23日自爆テロがあり、ミサに集まっていた3人が死亡、警戒に当たっていた警官2人を含む46人が負傷した。イスラム教系のテロ組織『ボコハラム』の犯行と見られる。バウチは人口50万。大多数がイスラム教徒。
 「キリスト者は毎週襲われている。本当の護りは神からしか来ないのだから、わたしたちは祈らなければならない」と聖公会のムサ・トゥラ主教は語っている。


◎バチカン機関紙が映画『プロメテウス』批判

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』が、リドリー・スコット監督の映画『プロメテウス』を「デリケートな問題の扱い方がなっていない」と批判した。人類の起源を解き明かすことをテーマにした作品を「神を批判するとは悪いアイデア」であり、「超自然的存在を探し求めることを象徴すべきだった」としている。
 『プロメテウス』は、『ブレードランナー』で知られるスコット監督が、人類の起源を解き明かそうと、宇宙船プロメテウス号で謎の惑星に降り立った科学者たちが遭遇したものを、描いている。
 バチカンは、これまでもトム・ハンクス主演の『ダ・ヴィンチ・コード』やジェームズ・キャメロン監督の『アバター』も批判している。


◎イエス妻帯文献は「下手な偽造」とバチカン紙

 【CJC=東京】イエス・キリストに妻がいた可能性を示す初の文献が見つかったと米ハーバード大学の歴史学者カレン・L・キング教授が発表したことに対し、9月28日付のバチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は「下手な偽造」と否定する記事を掲載した。
 問題の文献については、英ダラム大学のフランシス・ワトソン教授も新約聖書の外典『トマスによる福音書』の写本を切り張りした偽物と指摘する論文を発表するなど、疑問の声が上がっている。
 同紙は、古代エジプト語(コプト語)で4世紀ごろに書かれたとされる文献が、骨董市場で見つかったとされることや、当時の字体との違いなどを疑問視する専門家の論文を大きく紹介。「いずれにせよ偽物」と結論づけた。
 ワトソン教授はロイター通信に、20世紀以降に偽造専門家が金銭目的で「古いパピルスの上に書き加えた可能性がある」と指摘した。共同通信が報じた。


◎ENIニュースが資金難で活動停止

 【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)などが運営している通信『エキュメニカル・ニュース・インターナショナル』(ENI)は10月1日、活動を即時停止する、と発表した。現在2012年末まで活動を続けるため緊急資金を求めている。
 「この措置を取ることは残念だが、大規模な組織変更にも関わらず、昔からの支援者からの資金が大幅削減され、さらに購読者の大多数が料金を納入してくれないことが大きい」とENI通信会長のデービッド・ハリス牧師。
 「購読者は、全世界のエキュメニカルで宗教の枠を超えた、権威ある、偏向のないニュースを高く評価する、と言ってきた。活動停止は一時的なものとなり、ENIニュースが堅固な資金基盤を確保することを期待している。購読料金は、活動停止期間分を延長する」と語る同氏はカナダ・トロントの月刊誌『プレスビテリアン・レコード』の発行人。
 1994年に設立されたENIニュースは、世界教会協議会、ルーテル世界連盟(LWF)、世界改革教会連盟の支援を受けている。この3団体は皆、ジュネーブの『エキュメニカル・センター』に本拠を置いている。またスイスに本拠を置く『アルゴヴィア改革派教会』からも資金を受けている。
 2012年に入って、WCCとLWFが財務難から、ENIニュースへの資金提供を削減したが、これはこの数年続いた削減の最新のもの。
 ENIニュースの購読者は約500。『RNS』、『ラテンアメリカン・アンド・カリビアン・コミュニケーション・エージェンシー』、『エピスコパル・ニュース・サービス』と共同発行契約を結んでいる。
 記事はニューヨークに本拠を置くソランゲ・ドサンティス編集長と世界各地のジャーナリストが編集、全世界の教会系メディアと一般メディアが掲載している。2011年の発信ニュースは721件だった。英語で発信されるほか、ローザンヌの『プロテスインフォ』がフランス語に翻訳している。


◆短信◆(CJC)

▽英の企業責任評議会代表に投資専門家任命=英オックスフォードに本拠を置く『エキュメニカル・企業責任評議会(ECCR)は9月24日、新代表にジョン・アーノルド氏を任命したことを明らかにした。11月1日付けで着任する。ECCRの使命を新展開させるため。
 ECCRは、ビジネス世界で人権や環境問題を展開するキリスト教系の投資連合。
 アーノルド氏は、非政府組織の投資コンサルタントなどで活躍。最近は、ロンドンの『フェアトレード財団』にも関わっていた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月30日)=https://www.cwjpn.com
★2012年度シンポジウム「福音と差別」=福島の現実に焦点=被災者の声、内部被ばくの仕組み、教会の視点=日本カトリック部落差別人権委員会=大阪
★平和を実現するキリスト者ネット=憲法テーマに全国集会=活発化する改憲の動きを受けて
★原子力技術含む現代科学の課題に神学は何を語るのか=名古屋=日本カトリック神学会学術大会
★DV被害女性支援の「Saya(さや)--Saya(さや)」活動、高校の教科書に
★仕事、若者テーマに=JOC(ジョック)がセミナー=「東京働く人の家」で開催

 =キリスト新聞(9月29日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(9月30日)=https://jpnews.org
★青年の魂を救いへ=初の日本青年伝道会議=多様な方法と開かれた教会つくりを
★みんなで「命の木」を作ろう=WVJがIMF総会へ
★尖閣問題=極端な民族主義警戒="国民教育"導入で揺れる香港=信徒ら反対運動=中華基督教会が推進撤回
★地域社会の痛みを覚えて=東京・足立区=超教派で早天祈祷会始まる
★「冒涜映像」イスラム圏で抗議激化=コーラン焼却の牧師も関与か


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