世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1133信(2012.10.08)

  • 比ミンダナオ和平へ16年に自治政府設立
  • 「新しい福音宣教」テーマにシノドス開会
  • 教皇が『信仰年』内の特別免償規定発布
  • 教皇がロレートへ巡礼、教会の歩みを聖母の保護に託す
  • 教皇元執事に機密文書流出で禁固1年半判決
  • ユニテリアンが米国で教勢伸ばす
  • 英カトリック教会内でのヨガ教室が中止に
  • エルサレム『神殿の丘』近く大規模貯水池跡
  • あのキリスト壁画が今度はコスプレ衣装に
  • 《メディア展望》
◎比ミンダナオ和平へ16年に自治政府設立

 【CJC=東京】フィリピン政府は南部ミンダナオ島の反政府武装勢力『モロ・イスラム解放戦線』(MILF)と、マレーシアのクアラルンプールで和平交渉を行っていたが、2016年にイスラム教勢力などの自治政府設立を認める枠組みに合意した。キリスト教が優勢なフィリピンで、南部ミンダナオ島はイスラム教住民が5%を占める。
 ベニグノ・アキノ大統領が10月7日、『モロ・イスラム解放戦線』との間で、恒久和平を目指すことで合意したと発表した。
 大統領の任期が終わる2016年までにイスラム教住民が住む地域に新たな自治政府をつくるための枠組みを明記した文書に、近く双方が署名する。
 MILFは分離独立要求を取り下げ、武装闘争を停止、自治政府運用後は武装を解除する。自治政府の名称を『バンサモロ』とし、徴税権などの権限や天然資源の配分拡大のほか、自治政府内の治安に、より積極的な役割を担うことになろう。
 ただMILFから分派した『バンサモロ・イスラム自由運動』(BIFM)が、独立を求めて戦闘継続を発表している。
 ロイター通信によると、アキノ大統領は大統領府からテレビを通じ、「この枠組み合意は、永続的なミンダナオ和平に道を開くもの」だとし、銃から鍬に持ち替えて土地を耕し、物を売り、市民に機会を提供することを意味すると強調した。


◎「新しい福音宣教」テーマにシノドス開会

 【CJC=東京】新しい福音宣教をめぐるシノドス(世界代表司教会議)が10月7日、教皇ベネディクト16世司式のミサと共に開会した。通常シノドスの第13回に当たり、「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」をテーマに28日までバチカン(ローマ教皇庁)で開催される。
 今回のシノドスは、今年が第2バチカン公会議開幕から50周年、『カトリック教会のカテキズム』発行から20周年を迎えることを機に、教皇が『信仰年』と共に開催を希望していたもの。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、ミサの説教で教皇は「新しい福音宣教」とは何かを考察、「教会は、福音宣教のためにある」と述べ、イエスの教えに忠実に従った弟子たちが善き知らせを広めるために世界中に赴くと共に、各地にキリスト教共同体を形成し、それがやがて教会となり、様々な状況の中で毎回刷新されたダイナミズムをもって宣教活動が行なわれていった歴史を回想した。そして、現代の教会に視点を移し、第2バチカン公会議が今日の宣教に霊的・司牧的に与えた大きな躍動力を改めて認識するよう教皇は要請した。
 第2バチカン公会議がもたらした新たな活力は、宣教上の二つの流れに豊かな影響を及ぼした、と教皇は指摘する。その一つは「ミッシオ・アド・ジェンティス」すなわち、キリストとその救いのメッセージをまだ知らない人々への宣教、そしてもう一つは、洗礼を受けながらも教会から遠ざかり、キリスト者としての実践を何ら伴わず生活している人々に向けた「新しい福音宣教」である、と説明した。
 教皇は、今回のシノドスはこの「新しい福音宣教」を考え、これらの人々が再び主と出会うことで、人生の深遠な意味を知り、平和で満たされ、個人・家庭・社会における喜びと希望の源泉である信仰を再発見するのを助けることを目的としている、と語った。


◎教皇が『信仰年』内の特別免償規定発布

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が、10月11日から2013年11月24日まで開催する『信仰年』に伴い、免償規定を発布した。
 2012年は、第2バチカン公会議開幕から50周年、『カトリック教会のカテキズム』発行から20年を迎えることから『信仰年』と定めた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、信者がこの「信仰年」をより有意義に過ごせるよう、教皇庁内赦院(院長マヌエル・モンテイロ・デ・カストロ枢機卿)を通じ特別免償規定を教令として発表した。
 「信仰年」の開始日から終了日までの全体を通して、真に悔い改め、ゆるしの秘跡、聖体拝領、教皇の意向のために祈ることを果たした者に以下の条件で全免償を与えるもの。免償とは、すでに赦された罪に伴う、有限の罰の免除をいう。
 全免償はおよそ以下の条件を満たすたびに得られる。
(A)最低3回の説教に、あるいは第2バチカン公会議の公文書とカトリック教会のカテキズムの内容についての講義に少なくとも3回参加する。
(B)大聖堂(バジリカ・ミノーレ)などの聖所を巡礼の形で訪れ、何らかの宗教儀式に参加し、敬虔な黙想をし、主の祈り、信仰宣言、聖母への祈りなどを唱える。
(C)「信仰年」のために定められた日に、ミサ聖祭か教会の祈りに参加した上で、信仰宣言を唱える。
(D)洗礼堂または他の、洗礼の秘跡を受けた場所を敬虔に訪れ、公式な洗礼の約束を更新する。
 この教令は「信仰年」内だけ有効としている。


◎教皇がロレートへ巡礼、教会の歩みを聖母の保護に託す

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月4日、イタリア中部マルケ州ロレートの聖母巡礼聖堂を訪問、信者と共にミサを捧げた。
 ベネディクト16世が登位後、ロレートを訪問するのは2007年以来、2回目。50年前に行われた教皇ヨハネス23世のロレート巡礼を思い起こし、公会議から半世紀たった現代の教会の歩みを再び聖母の保護に託すことを目的としている。またこの巡礼で、『信仰年』と『新しい福音宣教をめぐるシノドス』(世界代表司教会議)のため祈った。
 ロレートはアドリア海を見下ろす小高い丘の上の町。巡礼地としての歴史は、1294年、ナザレのマリアの家族の住居といわれる家が聖地からもたらされたことにさかのぼる。巡礼地となってから今日まで、少なくとも12人の教皇がロレートを公式に訪問した。日本の天正遣欧使節も訪れている。


◎教皇元執事に機密文書流出で禁固1年半判決

 【CJC=東京】教皇ベネディク16世の元執事パオロ・ガブリエレ氏(46)に、バチカン(ローマ教皇庁)の機密書類流出問題を審理する裁判所は10月6日、教皇庁の機密書類を暴露した罪で、検察側の禁錮3年の求刑に対し、禁固1年6か月の判決を言い渡した。被告ガブリエレ氏は、裁判費用支払いも命じられた。
 事件はこの1月、被告が自らの権限を利用して、教皇ベネディクト16世への書簡など、機密扱いの内部文書を盗み出し、イタリアのメディアに渡したことが明らかになったもの。
 被告は5月24日、自宅で機密文書が発見され逮捕された。10月2日の被告人質問に対し、被告は文書の複写を流出させたことを認める一方で、「教会への心からの愛のためにやったことだ。自分が泥棒だとは思っていない」と起訴内容を否認した。「文書を外部に渡したのは私だけではない」とも述べた。
 ANSA通信などによると、被告は2010年から文書を2部複写し始め、1部を「外部の人間」に渡し、1部を自分で保管したという。動機については「信じられない状況がバチカン内に広がっていることに失望したからだ」とし、汚職などの是正をはかる考えがあったと示唆している。
 また「共犯者はいない」としたが、枢機卿ら聖職者数人の名を挙げ、「影響を受けた」と述べた。ただ「息子を愛するように接してくれた教皇を裏切ったことには罪の意識を感じる」と語った。
 判決が9月19日の初公判から1週間で出され、また判決後、教皇庁報道担当者が「元執事に教皇が恩赦を与えることになろう」と述べるなど、スキャンダルを早期に収拾させたい意向もうかがえる。
 インターネットの内部告発サイト『ウィキリークス』になぞらえて『バチリークス』と呼ばれたこの事件には、バチカン内部の権力争いが背後にあったという指摘もある。
 イタリアでは5月にジャーナリストのジアンルイジ・ヌッツィ氏がバチカンの汚職や腐敗、陰謀も明かす私信や文書を基に実態を暴露した『スア・サンティータ』(聖下=教皇に対する敬称)を出版している。


◎ユニテリアンが米国で教勢伸ばす

 【CJC=東京】『ユニテリアン・ユニバーサリスト』が米国で伸張している。全員で21万1000人だが、調査機関『米宗教団体統計協会』によると、2000年からの10年間で15・8%増加した。信徒は、懐の深い信仰がこれからは排他的な宗教信仰に取って替わる、と期待している。
 『宗教後のキリスト教=教会の終わりと新しい霊的革新の誕生』の著者ダイアナ・バトラー・バス氏も、同様の見方。米国中南部の「バイブル・ベルト」と呼ばれる地域の保守的な宗教文化の中で新たな展開を見せられる、として、「心の広い、進歩的な心を持つ人たちのための役割があると思う。その人たちが素晴らしい『反体制文化』をもたらす」と言う。
 『ユニテリアン・ユニバーサリスト協会』は、いわゆる南部での成長がめざましい、と同派の『証し専門家』の1人レイチェル・ウォルデン氏が語った。
 調査機関『ピュー・センター・フォア・ザ・ピープル・アンド・ザ・プレス』の調査に、市民の約2割は、特定の教派に属していない、と回答するが、同派は、このグループに訴えようとしている。
 シカゴの『メドヴィル・ロンバート神学校』のリー・バーカー校長も、『ユニテリアン・ユニバーサリスト』は、まさに時と所を得た、として「わたしたちは、教会の価値と文化の価値に関心を持たれる時代に際会している。すぐに無くなってしまうとは思えない」と言う。


◎英カトリック教会内でのヨガ教室が中止に

 【CJC=東京】英サザンプトンの『セント・エドマンド・カトリック教会』が、ヨガ・インストラクターのコリ・ウイゼルさんに、教会施設利用を差し止めると通告した。BBC放送が報じた。教会側は「ヨガはヒンズー教のもの。異教の活動は認められない」と主張する。
 同教会のジョン・チャンドラー神父はエクササイズの一種である「ピラティス・メソッド」だと思っていた、と説明する。確かに呼吸と身体の動きを重視する点は共通している。同神父は、瞑想などの精神的な鍛錬ではないか、とも見ている。
 ウイゼルさんが教会の施設を借りる予約をしたのは2か月前。使用料180ポンド(約2万3000円)も納めたが、結局ヨガ教室は開催中止に追い込まれた。ウイゼルさんは「エクササイズだけです」と反論、「ヨガはスピリチュアルなものですが、宗教ではない」と言う。
 同教会が属するポーツマス教区の報道担当は、「キリスト教以外の活動にカトリック施設を使用することは出来ない。ヨガをヒンズー教の瞑想とするか、レクリエーションと見るかにはジレンマがある。この問題に関しては各司祭の判断だ」と述べている。


◎エルサレム『神殿の丘』近く大規模貯水池跡

 【CJC=東京】エルサレム旧市街にある『神殿の丘』近くで大規模な貯水池跡が発見された。イスラエル考古局のエリ・シュクロン氏が「岩盤の割れ目に手を差し込んだところ、大きな貯水槽を発見した」と言う。
 この貯水池はソロモン王が建造した第一神殿の時代のものと見られ、エルサレムでこれまで発見されたものの中でも容量250立方メートルと最大規模。
 神殿の丘に隣接していることから、巡礼が沐浴するため、また飲用に用いられたと見られる。また神殿自体の日常用水として利用された可能性もある。


◎あのキリスト壁画が今度はコスプレ衣装に

 【CJC=東京】原画とは似ても似つかぬ姿に「修復」されたスペインのキリスト壁画が今度はコスプレ衣装になった。電子情報紙『アイビー・タイムズ』(英語版)などが報じた。
 コスプレ衣装は先頃、米アトランタで行われた『アニメ・ウイークエンド・アトランタ』というイベントで『スピンジャンプ』という人が披露、写真をインターネットに掲出した。
 ネットユーザーたちの間で話題となり、その写真には数多くのコメントが寄せられたそうだ。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(10月7日)=https://www.cwjpn.com
★全ベース会議/仙台教区サポート会議=復興へ 教会の役割は=来春以降の支援活動方針を議論=仙台
★日本カトリック正義と平和協議会=死刑執行に抗議
★全国の終身助祭=沖縄で集い、学ぶ=分かち合い、励まし合って
★「アジア太平洋カトリックHIV/AID連合」会議=15カ国が情報を交換=タイ・バンコク
★司教協議会の諸宗教部門=「自死」でシンポ=福岡

 =キリスト新聞(10月6日)=https://www.kirishin.com
★平和を実現するキリスト者ネット全国集会=今こそ憲法を活かそう=「権力に利用されてはならない」内藤新吾氏=「普天間問題から見える『差別』」神谷武宏氏
★ラテンアメリカ・キリスト教ネット聖書研修会=大嶋果織氏=ヨセフの役割に注目
★東京基督教大学「ケアチャーチプロジェクト」=「福祉を行う教会」のネットワークを
★"福島の応援続けよう"=現地で震災支援「メサイア」=日本聖書協会
★信仰と愛、受け継いで=「カトリック生活」1000号

 =クリスチャン新聞(10月7日)=https://jpnews.org
★コンゴで虐殺 死者400万人=携帯電話の素材巡り紛争絶えず=支援団体がシンポ=「この現状知ってほしい」
★新規教会上回る閉鎖・合併・活動休止
★礼拝は歌って踊って=ダンス! ダンス! ダンス!!
★ダビデ張を"再臨主"と告白させる手口=元幹部が証言=米誌「クリスチャニティトゥデイ」が実名で続報
★山陰に教会ハラスメント相談窓口=「手をつなぐこひつじの会」発足


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