世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1225信(2014.07.14)

  • WCC中央委が「憲法9条再解釈」に懸念
  • WCC中央委が「核のない世界」へ活動呼び掛け
  • 教皇や国連事務総長がガザ戦闘停止訴え
  • バチカンが財政システム健全化に本腰
  • 教皇が「カトリック聖職者の2%に小児愛」と伊紙
  • 若手枢機卿のベルリン大司教がケルン教区へ転任
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎WCC中央委が「憲法9条再解釈」に懸念

 【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)はジュネーブで開催している中央委員会で7月7日、「日本国憲法第9条の再解釈に関する声明」を発表した。『公共的な課題委員会』報告の一部として採択された。他にイラクのモスルでの現状、イスラエル・パレスチナ紛争、非核世界などについても声明を出している。
 「憲法9条再解釈」に関する声明は、「わたしたちが生き残ることを望むなら、これ以上戦争を引き起こしてはならない! 戦争はわたしのような人々、子ども、ユース、女性、皆を」という書き出しで、「1947年の日本国憲法が世界中から長年にわたり、『平和憲法』として称賛されてきた」と指摘している。
 声明は「第9条は、20世紀における日本の軍事的支配と侵略への謝罪であり、永続的な平和のために努力する民主国家への切望である。実際に憲法第9条は、国家による戦争行為を禁じる前向きな平和条項である。第9条によれば、国家は主権としての戦争を放棄、力の使用による国際紛争解決を拒否し、戦争遂行のための武力を認めていない」と述べる。
 さらに「第二次大戦後、日本の教会・団体は、日本が真に平和な国となるべきだとの希望のもとに『平和憲法』を護るため努力してきた。戦後日本の、平和愛好国としてのイメージは、数十年にわたって外交的な資産となり、その非軍事的貢献は、世界のさまざまな場所で明確に受け止められてきた。平和政策は、日本が近隣諸国との関係再構築することを助け、地域紛争を防ぐために働いてきた」と述べている。
 中央委は声明の最後で、次のような懸念表明、呼び掛け、激励、要請などを行っている。
 日本政府の憲法第9条再解釈や変更という姿勢と、それが地域的安全保障、この憲法の禁止によってもたらされた前向きな実例、全世界的な平和と非暴力への努力、などに与える衝撃とに重大な懸念を表明する。
 日本政府に、紛争解決のための手段としての非暴力を掲げる日本国憲法第9条の文言と精神とを重んじ敬意を払うことを呼び掛ける。
 日本政府がその「平和憲法」を護り、北東アジアの近隣諸国と非軍事的な包括的平和安全合意を創り出すことを要請する。
 日本政府に、憲法第9条の変更や再解釈を求める外部からの圧力に屈しないよう促す。
 加盟諸教会が、平和を愛する日本の人々と教会に、祈りを共にするよう招く。


◎WCC中央委が「核のない世界」へ活動呼び掛け

 【ジュネーブ=CJC】ジュネーブで開催された世界教会協議会(WCC)中央委員会は7月9日、「核のない世界」に向けた声明を発表、その中で諸教会に、核の危険を終わらせ、1945年の広島から2011年の福島へ、さらにそれ以降も続く核の悲劇による影響を受ける人たちの証しに応えるため、教会が対応する方法を提案した。
 WCCは加盟教会に、核エネルギーの民間と軍事的な利用についての倫理的・神学的な論議を深め、「原子力発電の利用や、あるいは核兵器による防衛受け入れに伴う証拠」を検証するよう呼び掛けた。
 「核軍縮を要求しながら、米国の核戦力に依存している」北大西洋条約機構(NATO)と北東アジアの31カ国政府に対しては、核兵器の撤廃に加わり、核兵器をそれぞれの地域から除去し、その代わりに集団的非核安全保障協定締結へ交渉をするよう特別アピールも出されている。


◎教皇や国連事務総長がガザ戦闘停止訴え

 【CJC=東京】教皇フランシスコは7月13日、日曜日のミサで、パレスチナ自治区ガザでの戦闘激化を懸念し、イスラエルとパレスチナ双方や国際社会に「平和実現へ具体的な姿勢」を示すよう訴えた。
 国連の潘基文事務総長も同日、「安保理の停戦要求にもかかわらず、事態は悪化する一方で危機感を募らせている。今すぐ戦闘をやめ、これ以上被害者を増やさないでほしい」との声明を発表した。
 声明では「イスラエル市民を対象にした、ハマスのロケット弾発射は国際法違反」と指摘する一方、イスラエル軍の軍事作戦についても、「パレスチナ市民への影響を深く憂慮する。地上攻撃はさらに犠牲者を増やすのは疑いないこと」と懸念を表明している。


◎バチカンが財政システム健全化に本腰

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)財務省長官ジョージ・ペル枢機卿は、バチカンの財務・財政改革の進展について7月9日、説明した。
 教皇フランシスコは、ベネディクト16世の後を引き継ぎ、バチカンの財政システムの健全化に取り組んできた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は今年2月に自発教令『フィデリス・ディスペンサトール・エト・プルデンス』を発表した中で、教皇庁とバチカン市国の諸機関の財政運営、管理、財務業務に方針を与える財務評議会設立が明らかにした。同時に、教皇に直結し、各組織の財務をチェックする財務省も創設された。
 ペル枢機卿は、教皇フランシスコが財務・財政問題の早い改善を望んでおり、まだ多くの課題があるとしながらも、これらの改革が順調に進んでいる、としている。
 また財務評議会によって指摘された財務上の問題の解決のためにプロジェクト・マネージメント・オフィスの設立が発表された。さらに教皇庁内の改革として聖座財産管理局を財務省の組織下に移動することが明らかになった。
 「バチカン銀行」(宗教事業協会)では、エルンスト・フォン・フライベルグ会長のもとに行われた健全化・透明化を目指す作業の成果を受け、今後改革の第2段階に入るとして、新会長にジャンバティスト・ド・フランシュ氏を任命、引き続き改善に力を入れると言う。


◎教皇が「カトリック聖職者の2%に小児愛」と伊紙

 【CJC=東京】AFP通信が伊紙『ラ・レプブリカ』の7月13日報道として伝えるところでは、教皇フランシスコが同紙とのインタビューの中で、カトリック聖職者の2%が小児愛者だと述べるとともに、神父の独身制に対する「解決策」を約束したという。
 教皇は、児童への性的虐待は教会にはびこる「腐敗」だと非難し、側近らの発言を引用する形で「教会内の小児愛の規模は2%だ」「その2%には司祭だけではなく、司教や枢機卿さえも含まれる」と語ったとされる。
 さらに教皇は、将来的にカトリック聖職者の結婚を認める可能性についての質問に、聖職者の禁欲と独身の掟は「主(キリスト)の死から900年後」に定められたものであり、バチカン(ローマ教皇庁)の監督下にある東方教会の一部では聖職者の結婚が認められていると指摘した。
 一方、バチカン広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は、聖職者の小児愛と独身制に関して報じられた内容が教皇の実際の発言と異なるとして、「純真な読者を操った」ラ・レプブリカ紙を非難している。


◎若手枢機卿のベルリン大司教がケルン教区へ転任

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、ドイツ最大のケルン教区大司教に、現ベルリン大司教のライナー・マリア・ウェルキ枢機卿(57)を任命したことが7月11日明らかになった。この2月、80歳になったことを理由に引退したヨアキム・マイスナー枢機卿の後任。
 ウェルキ枢機卿がベルリン大司教に就任したのは2011年。保守色の強いマイスナー枢機卿の影響を受けたウェルキ枢機卿だったが、同性愛にも理解を示すなど、ベルリンでは教会内外から高く評価されるようになった矢先の転出。
 ケルン教区はドイツでは最大教区とされるだけでなく欧州全体でも大教区の一つ。同枢機卿の任命は、教皇フランシスコの意志が反映されたものと見られるが、同枢機卿が「師」と仰いでいたマイスナー枢機卿のように欧州の教会に影響を与える存在となることを期待されたと見られる。
 ウエルキ枢機卿はケルン出身。1985年に聖職叙階、2012年に教皇ベネディクト16世から枢機卿に任命されたが、当時は55歳で枢機卿としては最年少だった。


《短信》

〇ガザ北部で1万5000人以上が避難

 パレスチナ自治区ガザ北部の住民1万5000人以上が7月13日、イスラエル軍による大規模攻撃の予告を受けて、国連施設に逃げ込んだ。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月13日)=https://www.cwjpn.com
★イラク=イスラム過激派侵攻でキリスト者重大な危険に
★教皇ミサに参列へ=「慰安婦」被害者の女性ら=韓国
★常任司教委員会=「集団的自衛権」で抗議声明
★日本カトリック保育施設協会=仙台で全国職員研修=被災の教訓学ぶ
★教会系学校も要注意="改憲草案"がもたらす影響=弁護士に聞く

 =キリスト新聞(7月12日)=https://www.kirishin.com
★官邸前に怒り、嘆き、祈り=安倍政権 集団的自衛権行使を容認
★都議会野次問題で東京YWCAが抗議文
★伝道と教育は宣教の2本柱=第41回東北アジア教会宣教協議会
★日中の衝突解消するために=南京大・劉成教授が明治学院大で講演
★同性婚めぐり対応分かれる=バチカンは同性愛者への配慮促す文書発表

 =クリスチャン新聞(7月13日)=https://jpnews.org
★存在をとおして痛む人の希望に=『危機対応 最初の48時間』出版記念セミナーで語り合った"隣人に仕える"とは
★「国が獣化 これは霊的戦い」=集団的自衛権行使へ=牧師・信徒らも抗議
★福島の子どもたち 思いっきり身体動かそう=北信カルバリー教会で「教会あそびば」主催
★集団的自衛権行使容認の閣議決定に教界から抗議声明
★"アン・ブックス"の世界を共有--東京・下町の教会で「アンまつり」


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