世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1227信(2014.07.28)

  • イスラム教にも容赦しない武装勢力ISIS
  • ガザ抗争が最大規模に拡大
  • ガザで避難民受け入れの国連学校砲撃
  • 「第1次大戦の過ちを繰り返すな」と教皇
  • ISISが支配下の女性に割礼迫る?
  • 国連自由権規約委がヘイトスピーチ対策強化勧告
  • リベリアで米人医師と宣教師がエボラ感染
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎イスラム教にも容赦しない武装勢力ISIS

 【CJC=東京】イスラム教スンニ派の過激組織『イラク・シリア・イスラム国』(ISIS)がイスラム国家の樹立を目指し、他の宗派や宗教の排除を進めている。イラク北部ニーナワー県の都市モスルにある『ナビ・ユヌス・モスク』を7月24日爆破したのもその一環。このモスクにはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の預言者ヨナ(イスラム教ではユヌスと呼ばれる)が埋葬されていると言われる廟があった。
 モスル市民のほとんどはスンニ派だが、モスルは宗教の多様性と寛容さを象徴する都市だった。モスルがあるニーナワー県はネストリウス派キリスト教の中心地でもある。ヨナの廟がモスクの中にあるということ自体が多様な宗教の共存を示していた。
 モスクは大きな爆発音とともに崩壊し、砂とほこりが雲のように空中に舞い上がった。同地在住の歯科医オマール・イブラヒムさんは「砂になってしまった。他の墓も寺院もみんなそうだ。でも、預言者ユヌスは特別だ。モスルの象徴だった」と米紙ウォールストリート・ジャーナル紙に語った。イブラヒムさんはスンニ派だが「心の底から嘆き悲しんだ」と言う。
 大きな階段と黄灰色の床が特色のイラクには珍しい建築様式のモスクにはイラク中から人々が訪れ、祈りを捧げていた。礼拝堂の入り口にはコーランの言葉が刻まれていた。
 ISISなどスンニ派の超保守的な組織は、寺院や墓を敬うことを神聖な行為ではないとしている。ムハマンド以外の預言者を崇めることも非難の対象になる。モスルではシーア派の礼拝所が破壊され、博物館も襲撃された。
 イラク担当のニコライ・ムラデノフ国連事務局長特別代表(イラク担当)は25日、モスルのモスク破壊ついて、「テロリスト集団がイラク共有の遺産とアイデンティティを打ち砕こうとした行為」だと述べた。
 モスルのカルデア典礼カトリック教会のエミール・ノナ大主教は、かつて修道院だったものが、その後、モスクになったとして、「ナビ・ユヌスはこの地域で一番有名なモスクだった。破壊されてしまってとても残念だ」と米紙に語っている。


◎ガザ抗争が最大規模に拡大

 【CJC=東京】イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム原理主義組織ハマスの抗争は、過去最大規模までに拡大している。
 7月8日から24日までの戦闘で、ガザでは子ども190人を含む788人が死亡したという。イスラエル側は兵士32人を含む35人が死亡した。
 『国連パレスチナ難民救済事業機関』(UNRWA)が受け入れた難民は14万人を超え、2008年12月から23日間続いた戦闘による避難民約10万人を大きく上回った。
 UNRWAはガザにある83施設を開放、14万人を受け入れたがどこもほぼ満員状態。住民数千人はガザ市内のギリシャ正教会、カトリック教会、プロテスタント教会などにも避難している。


◎ガザで避難民受け入れの国連学校砲撃

 【CJC=東京】イスラエル軍との抗争が続くパレスチナ自治区ガザ北部ベイトハヌーンで避難民を受け入れている『国連パレスチナ難民救済事業機関』(UNRWA)の学校が7月24日、砲撃を受け、少なくとも15人が死亡、200人以上が負傷した。イスラエル軍による砲撃の可能性が高いと見られる。イスラエル軍は現場付近で地上部隊がハマスの戦闘員と交戦していた事実は確認したが、ハマスのロケット弾が学校に着弾した可能性も否定できないとして、「調査を進める」と言う。
 UNRWA側は、学校付近でイスラエル軍とハマスが交戦していたため、避難民を別の場所に移動させる時間を与えるよう、事前に軍に頼んでいたという。
 国連の潘基文事務総長は同日、学校への砲撃について「この行いを強く非難する」との声明を発表した。


◎「第1次大戦の過ちを繰り返すな」と教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコは7月27日、恒例の日曜正午の祈りで、翌28日の第1次世界大戦開戦100年にあわせ、「過去の過ちを繰り返してはならない」「戦争は絶対に良くない。今こそ止める時だ」と警告した。
 バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場に集う信徒に向けたスピーチで、教皇はイスラエル・パレスチナ間の戦闘やイラク、ウクライナについて語り、対話を訴えた。
 第1次大戦は1914年7月28日、オーストリア・ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告して始まった。18年の終戦までに約1千万人の犠牲者を出している。


◎ISISが支配下の女性に割礼迫る?

 【CJC=東京】ジャクリーヌ・バドコック国連人権代表代理が、イラクのイスラム教スンニ派の過激組織『イラク・シリア・イスラム国』(ISIS)支配地域で11歳から46歳までの女性400万人が割礼を迫られている、と語った。「最近明らかにされたことで、重大な関心を持っており、説明を求めている。ISISが出した『ファトワ』(宗教令)であってイラク市民の意思ではなく、テロリストに支配されているこの地域の女性の意思でもない」と言う。
 同氏の発言は、クルド人自治区のイルビルにある同氏の活動拠点からビデオでジュネーブの国連人権高等弁務官事務所に送られた。
 7月23日、クルド族のウエブサイト『バスニュース』は、「ファトワ」をイスラム国家の最高指導者「カリフ」を自称するアブバクル・アルバグダディがモスルの人たちへの「贈り物」として出されたと報じている。
 ただイスラム教は女性割礼を必至としてはおらず、イラクではほとんど行われていない。またISISから実際に女性家族が割礼を迫られたという事例が伝えられないところから、偽情報に惑わされたのでは、との指摘もある。
 アフリカ、中東、アジアでは、女性に割礼を施す習慣がある。ただ出血、排尿障害などの危険もあり、国連総会は2012年、全加盟国に女性割礼禁止を呼びかけている。


◎国連自由権規約委がヘイトスピーチ対策強化勧告

 【CJC=東京】国連の自由権規約委員会は7月24日、ジュネーブで今月15、16日に日本政府に対して行った、日本の人権状況に関する審査の「最終報告書」を公表した。
 報告書は、日本で在日韓国・朝鮮人ら少数派に対する差別や憎悪をあおる街頭活動などが広がっているとして懸念を表明した。これらの行為を取り締まる法規制が不十分との見解を示し、民族差別に基づく対立や暴力を扇動するすべての宣伝や街頭活動を禁止することを求めた。
 同委員会の勧告は法的拘束力を持たない。


◎リベリアで米人医師と宣教師がエボラ感染

 【CJC=東京】エボラ出血熱の感染が拡大する西アフリカのリベリアで、米国人の医師と宣教師がエボラウイルスに感染したことが明らかになった。AFP通信が報じた。
 米キリスト教系慈善団体『サマリタンズ・パース』によると、感染したのは同団体に所属するケント・ブラントリー医師と、首都モンロビアの病院を運営するキリスト教系団体『SIMクリスチャン』の宣教師ナンシー・ライトボル氏。
 『サマリタンズ・パース』の広報担当者はAFP通信に「2人とも早期の集中治療を受けている。それでも危険で恐ろしい状況であることに変わりはない」と述べた。
 世界保健機関(WHO)によると、西アフリカ4か国では今年初めからこれまでで660人がエボラ出血熱で死亡している。


《短信》

〇教皇が南伊カゼルタへ2回訪問
 教皇フランシスコは7月26日と28日に、カンパニア州カゼルタを訪問する。28日はブエノスアイレス大司教時代からの友人である福音教会牧師への私的訪問。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月27日)=https://www.cwjpn.com
★イラク北部緊迫=モスルからキリスト者脱出=教皇、祈りと対話呼び掛ける
★「使い捨て」文化をやめよう=教皇、財界関係者に努力促す
★戦闘終わらないガザ=踏みとどまる教会
★祈りは無駄ではない=教皇、中東の平和あらためて訴える
★女性の主教 承認=英国国教会

 =キリスト新聞(7月26日)=https://www.kirishin.com
★闘いはこれから=あの日、牧師たちは何をつぶやいたのか=7・1の記録(下)
★脆弱さの中でいま言えることを=日本宣教学会で来住英俊氏らが研究発表
★賀川の聖書解釈=現代性に注目=同志社大で並木浩一氏が講演
★宗教は平和にどう貢献できるか=上智大学で連続講演会
★英国国教会がついに女性主教容認

 =クリスチャン新聞(7月27日)=https://jpnews.org
★子どもが世界を変革=4/14ウィンドウ・リーダーシップサミット
★特産品販売で被災地元気に=招待キリスト教会=川崎で気仙沼復興応援市
★国会議事堂前で黙想と祈り=為政者を愛するため=クリスチャン学生らが呼びかけ「希望を告白する朝」
★東北ヘルプ=嘘のない筋の通った平和を=太平洋タヒチで被爆者の国際的連帯
★集団的自衛権に各団体から反対声明


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お
申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)『週刊・世界キリ
スト教情報』お申し込みは
ckoriyama@gmail.com=ご連絡いただく際は「@」を半角にしてください
☆『週刊・世界キリスト教情報』既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用
ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧