世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1281信(2015.08.10)

  • 広島での平和の祈りにWCC訪問団も参加
  • 教皇が日曜恒例「正午の祈り」で核廃絶呼びかけ
  • 教皇に被爆地復興支援要請していた長崎原爆投下の機長
  • 「結婚に失敗した信者も常に教会の一員」と教皇
  • 中国が教会弾圧を本格化?
  • 浙江省の教会や十字架の強制撤去が約1000カ所超す
  • 浙江省でキリスト者7人拘束される
  • ダライ・ラマの後継は中国政府の承認が必要?
  • 教会放火事件に関与?ユダヤ極右活動家逮捕
  • イスラエル軍が放火事件に抗議の少年ら射殺
  • 《メディア展望》


◎広島での平和の祈りにWCC訪問団も参加

 【CJC=東京】8月5日夕、広島のカトリック幟町教会・世界平和記念聖堂で、「平和のための祈りの集い」が行われた。
 集いには、カトリックからは岡田武夫大司教ら4人の大司教と司教10人、日本聖公会からは、植松誠首座主教はじめ11人の主教が列席した。

 世界教会協議会(WCC)の訪問団(メアリー・アン・スウェンソン監督=米合同メソジスト教会ほか)、駐日バチカン大使のジョセフ・チェノットゥ大司教、カトリック韓国・済州教区の姜禹一(カン・ウィル)司教らもゲストとして列席した。

 WCC訪問団は、正式には「原爆70周年に際し、教会指導者の日本への巡礼」と呼ばれ、2013年に韓国・釜山で開催されたWCC総会で採択された「正義と平和の巡礼」の一部として計画された。8月7〜9日に広島、長崎を訪問した。

 訪問団は団長・WCC中央委員会副議長のメアリー・アン・スウェンソン監督(米合同メソジスト教会)の他にWCCアジア代表のチャン・サン牧師(韓国長老教会)、ハインリヒ・ベドフォード=ストローム監督(独福音教会協議会議長)、トル・ベルゲル・ヨルゲンセン氏(ノルウェー教会)、カリン・ヴァンデン・ブルケ牧師(オランダ・プロテスタント教会)、サムエル・アザリア監督(パキスタン教会)、許伯基牧師(在日大韓基督教会)、スティーブン・シドラック牧師(米合同メソジスト教会エキュメニカル・オフィサー)、植松誠首座主教(日本聖公会)で構成された。


◎教皇が日曜恒例「正午の祈り」で核廃絶呼びかけ

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月9日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場で行われた日曜恒例の「正午の祈り」で、広島と長崎への原爆投下から70年に言及、戦争と暴力のない世界と、核兵器の廃絶、対話による平和構築を強くアピールした。この日、サンピエトロ広場には数万人が詰めかけた。

 教皇は、原爆投下を人類が科学技術を誤って使った結果引き起こされたとして、「人類の絶大な破壊力を示す象徴であり、戦争を拒み、核兵器や大量破壊兵器を禁じるべきだという、人類に対する警告の役割を果たし続けている」と核廃絶を訴えた。

 教皇は、原爆投下が「長い年月が過ぎた今でも、人々に恐怖と憎悪を抱かせている」と指摘。8月6日と9日の「悲しい記念日は、世界平和を願い、人類が平和的共存の拡大に向けて進むことを求めている」と話し、「全世界が戦争と暴力に『ノー』を、対話と平和に『イエス』を」と訴えた。

 教皇は昨年12月、トルコ訪問からの帰路、機中の記者会見でも、「広島と長崎から、人類は何も学んでいない」と述べ、「もし終末的なことが起きれば、人類は再び一から始めなければならない。広島と長崎がそうしたように」と核廃絶が進まない現状を強く批判していた。


◎教皇に被爆地復興支援要請していた長崎原爆投下の機長

 【CJC=東京】共同通信によると、1945年8月9日に長崎に原爆を投下した米B29爆撃機「ボックスカー」の故チャールズ・スウィニー機長が、60年代初めに教皇ヨハネ23世(在位58〜63年)に個人的に接見、被爆地の復興支援を要請していたことが遺族の証言で8月7日分かった。

 長崎への原爆投下70年を前に、スウィニー氏の故郷米ボストン近郊クインシーで次女や弟が共同通信の取材に応じたもの。

 スウィニー氏は敬虔なカトリック信徒。45年9月に軍の任務で米科学者らと長崎を訪問した。その後、戦災孤児のことを気にかけ、長崎のカトリック系孤児院に寄付したと遺族に話していたと言う。


◎「結婚に失敗した信者も常に教会の一員」と教皇

 【CJC=東京】教皇フランシスコは8月5日、バチカン(ローマ教皇庁)で、7月は中断していた水曜日恒例の一般接見を再開した。

 バチカン放送(日本語電子版)によると、熱波に覆われている中、接見はパウロ6世ホールで行われた。

 「カテケーシス」(教会の教えの解説)で、教皇はこれまでの「家庭」をめぐる考察を続けながら、この日は前回のテーマ「傷ついた家庭」を再び取り上げた。

 教皇は、前回、夫婦間の無理解などが原因で分裂した家庭を考察したが、今回は結婚に失敗し、別の人との新しい関係を選んだ人々をいかにケアするかを考察した。

 教会はこのような状況がキリスト教の秘跡に矛盾するものであることは十分に承知しているが、教えを説く教会の眼差しは、常に人々の善と救いを願う母の心を汲むものであると教皇は話した。

 教皇はまた、この新しい関係を小さな子どもたちの立場から見つめる時、わたしたちはこうした状況を生きる人たちへの現実的な受け入れのあり方を共同体内に育てることが急務だと知ると述べた。

 教会はこの数十年間、秘跡としての結婚に失敗した後、新しい関係を築いた信者たちを、愛と真理のうちに、兄弟愛をもって注意深く受け入れる必要性を理解してきたと教皇は指摘、実際、これらの人々は決して破門されたのではなく、常に教会の一員であるということを忘れてはならないと注意を促した。

 「扉は決して閉じられません」と述べた教皇は、教会が、それぞれの労苦を背負った人々が皆居場所を持つことのできる、父の家であるようにと希望した。


◎中国が教会弾圧を本格化?

 【CJC=東京】中国の習近平指導部は「共産党の地位を強固にする」との方針を掲げ、一党独裁体制を脅かしかねないとして民主派弁護士らへの締め付けを強めてきたが、その政策の標的を、教会に広げ始めた可能性がある、と共同通信が報じている。

 キリスト教の活動が盛んな浙江省では、当局が5月以降、非公認教会(地下教会)の弾圧を本格化させたことが関係者の話で8月4日までに分かった、という。

 同省で既に数千の教会が十字架撤去や破壊などの被害を受けたとの推計も明らかにした。当局は一部で党系の教会組織に登録している「公認教会」の十字架撤去も開始しているとも伝えている。

◎浙江省の教会や十字架の強制撤去が約1000カ所超す

 【CJC=東京】台湾紙『自由時報』(電子版)は8月6日、中国浙江省で当局がキリスト教教会や十字架を強制撤去する動きが激しくなっており、昨年2月以降すでに約1000カ所が強制撤去されたと報じた。

 同省温州市北白象鎮にある山前教会では5日に十字架が強制撤去されたうえに燃やされ、そのまま遺棄された。


◎浙江省でキリスト者7人拘束される

 【CJC=東京】中国の警察当局は、横領などの疑いで南東部・浙江省金華市のキリスト教会牧師ら7人を拘束した。同省当局が進めている教会の十字架撤去キャンペーンに反対したのが原因と見られる。ロイター通信が報じた。7人の弁護士が8月4日明らかにした。

 共産党の独裁下にある中国は、信教の自由を公式には保障しているものの、当局は宗教団体への監視は厳しいまま。浙江省はキリスト教人口が増加しており、当局が抑制に乗り出した一環の可能性がある。

 国営新華社通信は、拘束された7人が、教会の資金を私的に流用、献金を横領、また社会秩序に反する行為を他人に教唆したことなどを容疑として挙げている。

 7人の中で、バオ・グォファ(包国華)氏とシン・ウェンシャン(■=河北省ケイ台市のケイ=文香)夫人は、金華市の教会の牧師。警察に拉致されたまま、弁護士との接見も認められていないという。


◎ダライ・ラマの後継は中国政府の承認が必要?

 【CJC=東京】中国共産党指導部が7月末に開催した会議で、チベット問題を討議した際、ダライ・ラマの後継は、中国政府の承認が必要と意思決定したと、カトリック系『アジア・ニュース』が報じている。

 匿名の消息筋が『アジア・ニュース』に伝えたところでは、会議の終わりに、習近平国家主席が「共産党が次のダライ・ラマを選ぶ。混乱するなら、是正のための行動を取る」と語ったと言う。

 ダライ・ラマ14世(79)は、自身の後継問題を踏まえて、「チベット仏教の転生制度を廃止すべきだ」と述べていることを意識したものと見られる。


◎教会放火事件に関与?ユダヤ極右活動家逮捕

 【CJC=東京】イスラエルの国内治安機関『シャバク』は8月3日、「ユダヤ過激派組織での活動」を理由に、極右活動家メイル・エッティンガー容疑者(24)を逮捕した。

 6月に北部のガリラヤ湖畔にあるキリストゆかりの「パンと魚の奇跡の教会」で起きた放火事件に関与していると見られている。


◎イスラエル軍が放火事件に抗議の少年ら射殺

 【CJC=東京】ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラ近郊で7月31日、18歳のパレスチナ人少年がイスラエル軍に胸を撃たれ、8月1日死亡した。西岸で31日にユダヤ過激派によるとみられる放火事件があり、1歳児が死亡したことへの抗議活動中だったとも言われる。イスラエル軍は「少年が火炎瓶を投げたので、発砲した」と説明している。

 またパレスチナ自治区ガザ北部では31日、イスラエルとの境界にあるフェンスに近づいたパレスチナ人の17歳の少年がイスラエル軍に射殺されている。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月9日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=気候変動と貧困の関係 強調=「核エネルギー」で広島・長崎にも触れる
★世界の青少年 共にミサ=山口でスカウトジャンボリー
★現勢調査=日本の信者減る=14年は44万3646人
★被災地の今を"見る"=聴覚障がい者ら東北訪問
★米国で人気下向き=教皇に関する最新世論調査

 =キリスト新聞(8月8日)=https://www.kirishin.com
★「キリスト教と人権思想」=教会が社会担う人間を生み出す= 森島豊氏(青山学院大学准教授)に聞く
★日基教団と在日大韓教会がメッセージ
★恵泉女学園大が安保法案反対アピール
★〝福音宣教とは視座変えること〟=宣教学会で本田哲郎神父が講演日
★CCA総会で「憲法9条」課題に=上田博子氏「アジア諸国が日本の軍事化憂慮」

 =クリスチャン新聞(8月9日)=https://クリスチャン新聞.com
★"平和"を取り戻す=シンポ「『シャローム・モデル』の実現を目指して」= 安倍首相の積極的平和主義は偽善的
★土蔵の壁から見つかった十字架=キリシタンの痛切な思い伝える
★神の"美"にも関心を=ニューヨークの先端例と各教会の取り組みを共有
★「安保法制の問題点講義します」=憲法研究者〈全国出前講師団〉=教会にも呼びかけ
★「T・K生」池明観氏講演=越境するメディアと情報で日・中・韓結べ=市民の力が未来の希望

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