世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1282信(2015.08.17)

  • 中国でキリスト者が十字架撤去策に抵抗
  • 中国本土で3年ぶりに新司教
  • ネパール憲法がキリスト教抑圧にも
  • 教皇、9月1日を環境保護のために祈る日に
  • 教皇宛てに安倍首相が親書、13日届ける
  • 《メディア展望》


◎中国でキリスト者が十字架撤去策に抵抗

 【CJC=東京】中国東部・浙江省で教会堂から十字架撤去が進められていることに、キリスト者からの反発が強まっている。
 反発は、昨年取り壊された教会から始まった。その教会は、建設にあたって高さ制限と規模の規制に違反したと当局が告発した後に破壊された。
 今では浙江省全域にわたってプロテスタント、カトリック教会から十字架を撤去するとの通告が出されているという。
 信者たちは塔に登って十字架を隠したり、規制を逃れる対策に知恵をこらしている。信徒宅の窓や自動車のミラーに小型の十字架を吊す、といった工夫もされている。
 今回の規制は、「地下教会」だけでなく、政府公認の教会にまで広がっている。
 天主教(カトリック)浙江省恩州教区では司教と26人の司祭が署名した公開書簡が出されたが、それには「最近、事態は切迫している」とある。政府は「違法建築を取り壊すという理由付けを止め」、全ての教会の十字架撤去に乗り出している、と言う。
 公開書簡は「中国市民として、わたしたちはより深く、包括的な民主主義と法治を切望している」と述べている。
 中国天主教愛国会と中国天主教教育委員会から出された書簡も十字架撤去の即時終了を求めている。当局への信頼度が、十字架撤去を止められないことで損なわれている、と言う。
 プロテスタントの公認団体『中国キリスト教協議会』の省支部も撤去に反対している。同支部は書簡で、この1年半で十字架1200基が撤去されたと言う。
 「『国を法律に従って治める』『国を憲法に従って治める』という党と国家の理想と精神に完全に違反している」と指摘した書簡は省の宗教局に宛てられたもの。その複写は北京の指導者にも送られた。
 米紙ニューヨーク・タイムズは、中国のキリスト教に関する著作もあるスウェーデンの学者フレデリク・ファルマンが「これは絶望から出た行動だ。公認教会までこのような反応を示したことが重要だ」と語ったと報じている。
 多くが抱いている疑問は、十字架撤去の動きが、最高指導者である習近平主席の支援によるものか、またそれで拡大するか、どうか。
 米メリーランド州ロヨラ大学の政治学者カーステン・ヴァラ教授は、習主席が実権を握った2012年以来、市民の自由抑圧という路線が強化されたことに沿ったもの、と指摘する。
 習主席はかつて浙江省で実力を発揮した。現在の同省党書紀もかつては習氏に仕えていた、とニューヨーク・タイムズ紙。キリスト者が多い他の省では同様な抑圧はまだ始まっていない、と報じた。
 キリスト教を研究している北京の独立調査団体のファン・ヤフェン所長は、他省の指導者が、浙江省を注視していると言う。政治的負担が大きくなれば、十字架撤去に追随しないだろう、と語った。
 「ただ浙江省の十字架撤去の動きは拡大し、予期しない巻き返しの引き金を引いた」とファン氏。キリスト者の強い反発は政府の予想を上回った、と言う。


◎中国本土で3年ぶりに新司教

 【CJC=東京】中国本土では2012年以来の新司教が8月4日、北部・河南省の安陽の大聖堂で誕生した。
 新しく天主教(カトリック)ウェイフイ補佐司教に叙階されたのはヨセフ・ザン・インリン神父(44)。今回の任命は、バチカン(ローマ教皇庁)と中国政府双方の承認により行われた。
 今回の叙階は教皇フランシスコが着座以来、中国本土の教会としては最初で、また2014年6月にバチカン(ローマ教皇庁)と中国との対話が始まって以来のこととなった。
 河南省教会の公式ウエブサイトによると、叙階ミサは司祭75人が列席、参会者は1400人に上った。参会者がUCAN通信に語ったところでは、大聖堂は警察官、消防士など多数による厳重な警備下に行われた。司式はトマス・ザン・ファイシン司教(90)が行った。


◎ネパール憲法がキリスト教抑圧にも

 【CJC=東京】ネパールで、修正された新憲法が8月10日施行された。議会で7年間討議されてきたものだが、キリスト教活動が全て違法とされる可能性があり、キリスト者たちは不安を隠せない。
 他人を別の宗教に改宗させようとすることは、すでに禁止されている。ただ憲法修正案では、「伝道的」と見なされる行為は法律によって処罰されることになる可能性がある。
 改宗禁止条項では特定の宗教を規定してはいない。しかし人口の8割がヒンズー教のネパールでは、罰則はキリスト教など少数宗教を対象にしていることは確実だ。キリスト者は現在人口の1・5%から3%と推定されている。
 『ワールド・ウォッチ・モニター』が報じた。


◎教皇、9月1日を環境保護のために祈る日に

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、9月1日をカトリック教会において環境保護のために祈る日に制定した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
 教皇は、神が創造された天地の未来に対する憂慮をエキュメニカル総主教(コンスタンティノポリ総主教)バルトロメオス1世と共有し、教皇の環境問題を扱った回勅『ラウダート・シ』公式発表に同席したイオアニス・ペルガモン府主教の助言を受け入れ、カトリック教会の「環境保護のための世界祈願日(仮訳)」を今年から制定する旨発表したもの。
 教皇は、コンスタンティノポリ総主教庁がすでに同じ目的の記念日を定めている9月1日に、毎年共にこの日を記念することを明らかにした。


◎教皇宛てに安倍首相が親書、13日届ける

 【CJC=東京】安倍晋三首相の教皇フランシスコ宛て親書がバチカン(ローマ教皇庁)側に届けられた。自民党の河井克行衆院議員が8月13日、バチカンでアントワーヌ・カミレリ国務省外務局次長と会談、首相に託された親書を手渡した。河井、カミレリ両氏は世界平和のために日本とバチカンが協力を加速すべきだとの認識で一致した、と毎日新聞が報じている。
 同紙は、河井氏が親書の中身を明らかにしていないものの、教皇の訪日を改めて招請すると共に、戦後70年の節目にあたり、平和構築への取り組みで日本とバチカンの連携強化を確認する内容と見ている。
 河井氏は11日、首相官邸で記者団に、「ちょうど戦後70年、被爆70年、日本が、安倍政権が世界の平和に貢献する姿勢をローマ教皇に訴えるのは大変意味あることだ」と語った。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月16日)=https://www.cwjpn.com
★広島=「戦争は人間(われわれ)のしわざです」=戦後70年 平和への祈りと学び新たに
★長崎=犠牲者悼み、平和誓う=スペインからゲルニカのマリア像も
★教皇フランシスコ=広島・長崎原爆投下70年=核兵器の廃絶訴える
★教皇=「破門ではない」=離婚・再婚の信者への配慮を
★比叡山「世界平和祈りの集い」=バチカンからもメッセージ

 =キリスト新聞(8月15日)=https://www.kirishin.com
★戦後70年企画連続インタビュー「本紙標語の実質を問う」(2)=坂内宗男氏=日本人は何も変わっていなかった
★〝学生を二度と戦地に送らない〟=立教人が安保法案反対、戦争関連の企画展も
★「赦し」と「謝罪」から「和解」へ=清泉女子大で「報復」テーマにシンポ
★高裁も卞氏のセクハラ認定=〝教団の体質変わっていない〟と支援者
★福音ルーテル女性会連盟が総・大会

 =クリスチャン新聞(8月16日・休刊)=https://クリスチャン新聞.com

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