世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1306信(2016.02.01)

  • バチカンが新司教の任命方法で中国と合意
  • 難民問題は「国際社会」の失敗を浮き彫り
  • ローマのサンパウロ大聖堂でエキュメニカルな祈り
  • イラン大統領・教皇会談=宗教対話の外交も積極に
  • モスクワ総主教と教皇の会談はない、とロシア通信社
  • イタリアが同性カップルの権利法案で国論分裂
  • ≪メディア展望≫

◎バチカンが新司教の任命方法で中国と合意

 【CJC=東京】1月31日付のイタリア紙コリエレ・デラ・セラ報道として毎日新聞が伝えるところでは、バチカン(ローマ教皇庁)と断交中の中国との間で新たな司教の任命方法について合意に達した。教皇フランシスコは就任以来、中国との関係改善に意欲を示しており、司教の任命権限は両国間の最大の対立点になっていた。

 中国側代表団が1月下旬にローマ入りして2日間、バチカン側と協議。司教が空位になっている中国教区の新司教3人について、中国側が候補者リストをバチカン側に提出し、その中からフランシスコ教皇が適任者を任命するという手続きで双方が合意したという。


◎難民問題は「国際社会」の失敗を浮き彫り

 【ジュネーブ=CJC】「かつて、地中海は『平和の海』と呼ばれていたが、今では『涙、恐怖、危険の湖』になっている」。ベイルートにあるアメリカン大学のタレク・ミトリ公共政策と国際関係研究所長が、ジュネーブで1月18、19の両日行われた、欧州での難民・移民危機に関する会議で語った。「地中海のエクソーダス(大量脱出)は、国際社会の失敗を浮き彫りにしているのではないか。その失敗は、欧州各国のものであるばかりかアラブ各国のものでもある」と言う。

 会議は世界教会協議会(WCC)、ユニセフ、国連人口基金、国連難民高等弁務官事務所などが共催した。

 中東を見ると、シリア内戦では400万人の難民が発生、何としてでも欧州を目指そうとする人が増えている、としてミトリ氏は、中東とアフリカ北部からの難民・移民が、トルコとリビアなど北アフリカから欧州へ運ぼうとする密輸業者に頼らざるを得ない、とミトリ氏。自国のレバノンでも今では人口の4分の1はシリア難民。その子どもたちの中で就学しているのは僅か10%、非識字率は25%、難民の70%は貧困線以下の生活を強いられていると言う。

 「強制退去により受けた苦痛を軽減することは、欧州だけでなく他の全てが担い合うべき責任」とする声明を会議は採択した。

 さらに、政府、民間、国際機関などが、難民・移民に安全で人道的な環境を用意し、そして戦争、暴力、抑圧を逃れるために人々が緊急に必要とするものに応えるよう、堅実で調和の取れた方法で協力することが必要だとして、それを達成するため、会議で提起された問題を四半期ごとに検討することで合意した。


◎ローマのサンパウロ大聖堂でエキュメニカルな祈り

 【CJC=東京】教皇フランシスコは1月25日、ローマの城壁外のサンパウロ大聖堂(サンパウロ・フォーリ・レ・ムーラ)でエキュメニカルな祈りの集いを行った。

 キリスト教各派は1月18日より25日まで「キリスト教一致祈祷週間」を開催した。同週間は、「すべての人を一つにしてください」(ヨハネ17・21)という最後の晩餐でのイエスの祈りを思い、同じキリスト者として、共に祈り、分かち合い、一致の精神を示すことを目的としている。今年のテーマは、「主の力あるわざを、広く伝えるために招かれて」。

 祈祷週間の最終日を迎えた25日は、使徒パウロの回心を記念する日。バチカン放送によると、大聖堂でとり行われた夕べの祈りには、正教会、聖公会、プロテスタント教会など、ローマのキリスト教諸教会の代表が集まった。

 教皇は集いの説教で、キリスト教徒間の分裂に対し、キリストの体を傷つけるものとして、神に赦しを願った。同時に、カトリック信者の、他のキリスト教会に対する「福音的でない態度」についても赦しを求めた。

 カトリック教会が現在「いつくしみの特別聖年」を記念していることに触れた教皇は、今日、他の教会の参加者らと共に大聖堂の「聖年の扉」をくぐったように、わたしたちを救いに導く唯一の扉は、主イエス・キリストであると強調、御父のいつくしみにキリスト者の一致の恵みを祈った。


◎イラン大統領・教皇会談=宗教対話の外交も積極に

 【CJC=東京】イランのハッサン・ロウハニ大統領は1月26日、バチカン(ローマ教皇庁)を訪れ、教皇フランシスコと会談した。イランとバチカンの首脳会談は約17年ぶり。イランは米欧など6カ国との核合意に続く制裁の解除を経て、宗教間の対話でも積極的な外交を展開する。

 会談で双方はイラン核問題の決着に言及し、「中東が抱える問題の政治的解決に向け、イランに所望される重要な役割」について話し合った。

 かねて宗教間の対話や融和を重視してきた教皇は、大統領との会談でも、紛争が絶えない中東の和平には宗教や宗派による対話が重要、と確認した。

 教皇は、2014年にはイスラエルの大統領やパレスチナ自治区の議長らをバチカンに招待し平和を祈ったほか、米国とキューバに国交回復に向けた協議を促してもいる。ロウハニ大統領との会談はイランが孤立した状態から、対話路線で国際社会に復帰していく一歩を示すことになった。


◎モスクワ総主教と教皇の会談はない、とロシア通信社

 【CJC=東京】教皇フランシスコが中南米を訪問する際、ロシア正教会の最高指導者キリル・モスクワ総主教と会談するとの推測が流れたが、全く根拠がない、と総主教座対外教会関係部門報道担当者が1月26日、ロシアのインターファクス通信に語った。

 「正教会の指導者とカトリック教会首長が今回同じ大陸を訪れるにしても、訪問先は全く異なっている。これまでにも両者会談についてメディアではしばしば取り上げられた。可能性はあるにしても、機はまだ熟していない」と言う。


◎イタリアが同性カップルの権利法案で国論分裂

 【CJC=東京】イタリアで、同性カップルに結婚に準じた権利を認める、いわゆる「シビル・ユニオン」の合法化法案で国論が分裂している。同国で影響力のあるカトリック教会の総本山・バチカン(ローマ教皇庁)のお膝元だけに「同性婚」容認につながりかねない、という保守派などの反対が強いためだ。

 イタリア憲法は家族を「婚姻に基づく自然な共同体」と規定している。西欧主要国の中で唯一、同性婚や「シビル・ユニオン」を公的に認知する制度はない。

 法案を提出した中道左派・民主党のモニカ・チリーナ上院議員(52)は「イタリアが欧州他国に比べて法整備が遅れているのは、文化的な問題によるもの」と言う。

 1月23日にはイタリア全土の98の市町村で同性愛者や支援者らが「イタリアよ、目を覚ませ」をスローガンに法整備を促すデモを繰り広げた。同性愛者団体は「議会は国民の声に耳を傾けるべきだ」と主張している。

 一方、イタリア司教協議会のパオロ・ジェンティーリ神父は「法案では、同性パートナーが前の異性配偶者との間にもうけた継子が養子となるケースが想定され、受け入れられない」と指摘。教皇フランシスコも22日、「神の望む家族と混同してはならない」と述べた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(1月31日)=https://www.cwjpn.com
★高山右近、福者に=教皇、列福承認の教令に署名=岡田大司教「福音宣教の力になる」
★教皇フランシスコ=「キリスト教一致祈祷週間」に強調=神のいつくしみは誰も排除しない
★エルサレム=反キリスト教的落書き=警察が少年2人を逮捕
★貧しい人忘れないで」=教皇=ダボス会議にメッセージ
★バチカン、洗足式に関する教令発表=女性含め全"神の民"を

 =キリスト新聞(1月30日)=https://www.kirishin.com
★「慰安婦」問題=〝被害者不在で解決できぬ〟=日韓「最終合意」に懸念の声
★世界聖公会首座主教会議=米聖公会を3年間加盟停止
★日本長老教会と日本同盟基督教団=首相・閣僚らの伊勢神宮参拝に抗議
★〝どの教会も主において一つ〟=「キリスト教一致祈祷週間」に各地で集会
★同じ神を信じてはいるが...=米ウィートン大学で論議=宗教学教授は解雇

 =クリスチャン新聞(1月31日)=https://クリスチャン新聞.com
★断食祈祷聖会2016=圧倒的勝利の1年に=飢え渇きをもって神に叫び求める
★福音車21=ゴスペルボックス=南西諸島巡回=手に取って楽しくお買い物
★自己を超越して傾聴を=「平和とスピリチュアリティ」=聖学院・阿久戸光晴氏講演
★「日本の花嫁事件」巡り戒能信生氏講演=社会との分離問い直す=4月宗教改革記念・日独教会協議会へ向け
★袴田事件・名張ぶどう酒事件=「事件を闇に葬らせたくない」=2件の冤罪を追う映画「ふたりの死刑囚」

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