世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1307信(2016.02.08)

  • カトリックと東方正教会の融和が実現?
  • ジカ熱「是か非か」でブラジルに中絶論争
  • 教皇が『イスラム国』台頭で欧米諸国に苦言
  • 教皇発案の「平和の親善試合」再び開催へ
  • 難民問題は「国際社会」の失敗を浮き彫りと専門家指摘
  • 駐バチカン・トルコ大使帰任へ
  • 教皇の俳優デビュー説をバチカンは否定
  • 台北の故宮博物院でバチカン展
  • ≪メディア展望≫

◎カトリックと東方正教会の融和が実現?

 【CJC=東京】キリスト教世界では最大勢力と見られるカトリック教会と東方正教会が1054年の分裂以来、何回も話題になりながら見送られてきた融和構想が今度こそ実現しそうだ。

 バチカン(ローマ教皇庁)とモスクワ総主教座は2月5日、双方の最高位である教皇フランシスコとキリル総主教が12日にキューバで会談すると発表した。

 バチカンとモスクワ総主教庁は共同声明を発表。フランシスコ教皇とキリル総主教はキューバの首都ハバナにあるホセ・マルティ国際空港で12日「私的な対談」を行い、会談の最後には「共同宣言」に署名する予定としている。

 会談はキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が仲介した。教皇は、米国とキューバの国交正常化交渉の仲介役を担った。正教会報道担当者は「中南米という新しい世界で両教会関係の新たなページを開くことを期待している」と語った。

 総主教はキューバを公式訪問する予定。一方、教皇はキューバを経由してメキシコを訪問する日程で、双方がキューバを中立的な場所と判断したとみられる。

 バチカンはこの数十年、正教会の一部の教派と関係修復を図ってきた。しかしロシア正教会は、ソ連崩壊後にカトリック教会がロシア人を改宗させようとしていると批判、緊張状態にあった。

 しかし中東やアフリカでキリスト教徒が迫害されている現状を受け、ロシア正教会は、カトリック教会との話し合いが必要だと判断したもののようだ。教皇も、迫害を受けている信徒を守るため、キリスト者が力を結集するべきだと主張している。


◎ジカ熱「是か非か」でブラジルに中絶論争

 【CJC=東京】ブラジルでジカ熱に感染した妊婦の中絶の是非を巡り、議論が起きている。毎日新聞がサンパウロ発で報じた。妊娠中、ジカ熱に感染すると小頭症の子が生まれる可能性が指摘されている。カトリック国のブラジルは法律で中絶を原則的に禁じているが、有識者などから、法改正で中絶を認めるべきだとの声が上がり始めているという。

 現地報道によると、多数の小頭症新生児が確認された北東部だけでなく、最大都市サンパウロでも最近、ジカ熱に感染した妊婦の中絶事例が複数出ている。

 ジカ熱を理由とした違法な中絶が増える懸念が広がる中、首都ブラジリアを拠点とする非政府組織『ANIS』は、政治家や法曹界に働きかけ、妊婦がジカ熱に感染した時点で中絶を認められるように法律を改正するよう訴えている。

 一方、障害児の出生を防ぐ動きが法律で拡大適用されれば、命の選別が進むと危惧する声もある。


◎教皇が『イスラム国』台頭で欧米諸国に苦言

 【CJC=東京】教皇フランシスコは2月6日、中東の民主化運動「アラブの春」やイラク情勢への対応に関し、軍事介入によって混乱と過激派組織『イスラム国』の台頭を招いた欧米諸国は自己批判しなければならないと苦言を呈した。8日付イタリア紙コリエレ・デラ・セラ報道として毎日新聞が伝えた。

 教皇はバチカンでのコリエレ紙幹部との非公式会合で、2013年秋に米仏がシリアのアサド政権に対する武力行使の構えを示した際、共に反対したバチカンとロシアには「分析が一致しているところがあった」と振り返り、ウラジミル・プーチン大統領との連携ぶりを明らかにした。

 また、教皇はロシア正教会のキリル総主教との初会談について「2年間の水面下の交渉」の成果と語り、「橋は他者に手を差し伸べ、平和を助ける。人々を分け隔てる壁は崩れ去る運命だ」と東西教会和解の大切さを説いた。


◎教皇発案の「平和の親善試合」再び開催へ

 【CJC=東京】教皇フランシスコが2月3日、平和のためのサッカー親善試合、「マッチ・フォー・ピース」の2度目となる開催を発表した。

 AFP通信によると、試合は5月29日、ローマのスタディオ・オリンピコで行われる。これはミラノで行われる欧州チャンピオンズリーグ決勝の翌日にあたる。

 2014年に行われた第1回慈善試合には、リオネル・メッシ、ロナウジーニョ、マラドーナなどをはじめ、多数の一流選手、元選手が参加した。

 集まったお金は、世界40万の学校をつなぐバチカン科学アカデミー設立のネットワーク、『スコラス・オクレンテス』などに寄付される。ブエノスアイレス大司教の時代から、教皇は同団体の活動へ積極的に関わっていた。


◎難民問題は「国際社会」の失敗を浮き彫りと専門家指摘

 【ジュネーブ=CJC】「かつて、地中海は『平和の海』と呼ばれていたが、今では『涙、恐怖、危険の湖』になっている」。世界教会協議会(WCC)が発表したところでは、ベイルートにあるアメリカン大学のタレク・ミトリ公共政策と国際関係研究所長が、ジュネーブで1月18、19の両日行われた、欧州での難民・移民危機に関する会議で語った。「地中海のエクソーダス(大量脱出)は、国際社会の失敗を浮き彫りにしているのではないか。その失敗は、欧州各国のものであるばかりかアラブ各国のものでもある」と言う。

 会議は世界教会協議会、ユニセフ、国連人口基金、国連難民高等弁務官事務所などが共催した。

 中東を見ると、シリア内戦では400万人の難民が発生、何としてでも欧州を目指そうとする人が増えている、としてミトリ氏は、中東とアフリカ北部からの難民・移民が、トルコとリビアなど北アフリカから欧州へ運ぼうとする密輸業者に頼らざるを得ない、とミトリ氏。自国のレバノンでも今では人口の4分の1はシリア難民。その子どもたちの中で就学しているのは僅か10%、非識字率は25%、難民の70%は貧困線以下の生活を強いられていると言う。

 「強制退去により受けた苦痛を軽減することは、欧州だけでなく他の全てが担い合うべき責任」とする声明を会議は採択した。

 さらに、政府、民間、国際機関などが、難民・移民に安全で人道的な環境を用意し、そして戦争、暴力、抑圧を逃れるために人々が緊急に必要とするものに応えるよう、堅実で調和の取れた方法で協力することが必要だとして、それを達成するため、会議で提起された問題を四半期ごとに検討することで合意した。


◎駐バチカン・トルコ大使帰任へ

 【CJC=東京】時事通信によると、トルコ外務省は2月3日、本国に召還中の駐バチカン大使を帰任させると発表した。教皇フランシスコが昨年4月、第1次大戦中にオスマン帝国で多数のアルメニア人が殺害された事件を「20世紀最初のジェノサイド(集団虐殺)」と呼んだことに反発していた。

 バチカン(ローマ教皇庁)は3日、トルコが2005年に事件検証のため専門家委員会設置を提案したことなどを評価する声明を発表。これを受け、トルコは大使帰任を決めた。


◎教皇の俳優デビュー説をバチカンは否定

 【CJC=東京】教皇フランシスコが本人役でイタリアの長編映画にデビューするという報道が2月1日、海外メディアで流れたが、バチカン(ローマ教皇庁)は否定している。

 ローマに拠点を置くAMBIピクチャーズが手がける「ビヨンド・ザ・サン」が問題の作品。聖書のいくつかの福音書を下敷きにしたファミリーアドベンチャー。

 様々な文化圏で育った子どもたちが、自分たちをとりまく世界でイエス・キリストを探す途中、キリスト教の使徒を見習っていく内容だという。

 しかし、バチカンの広報担当者が「教皇は俳優ではない」という声明を出し、映画出演に関する報道を否定した。ロイター通信が報じた。


◎台北の故宮博物院でバチカン展

 【CJC=東京】台北発中央社通信によると、バチカン(ローマ教皇庁)所蔵の文化財60点を展示する『天国の宝物ローマ教皇庁所蔵文物特別展』が2月5日から、台北の国立故宮博物院で開催されている。これらの文化財が台湾で公開されるのは初めて。

 バチカンは、欧州で中華民国(台湾)と外交関係を持つ唯一の国で、1942年の国交樹立から交流を行っており、今回、故宮とバチカン大使館の協力で特別展が実現した。

 展示されている祭服や聖器は、儀式で使用される場合を除き、教皇儀典室で保管されており、一般公開はほとんどされていない。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月7日)=https://www.cwjpn.com
★いつくしみの特別聖年で家庭内不和を終わりに=教皇の一般謁見講話
★教皇、一致祈祷週間の最後に=他教派信者への=「反福音的行い」謝罪
★教皇、イラン大統領と会談=平和の実現に強い期待示す
★教皇=10月 スウェーデンへ=宗教改革500年行事に参加
★主の食卓で新文化を=タグレ枢機卿=国際聖体大会で語る=フィリピン

 =キリスト新聞(2月6日)=https://www.kirishin.com
★「道徳」包含する宗教教育を=〝特別の教科〟化めぐり、玉川聖学院で「教会セミナー」
★辺野古新基地建設中止求めキリスト者有志が声明発表
★「傾聴する精神」が平和の第一歩=阿久戸光晴聖学院理事長が講演
★〝「青年伝道」は死語〟=SCF主事の野田 沢氏が問題提起
★ネット活用願う教皇の思いとは?=アップルやグーグル首脳と相次いで会見

 =クリスチャン新聞(2月7日)=https://クリスチャン新聞.com
★スーパーブック・バイブルラーニング・プロジェクト=「アニメ親子劇場シリーズ」コンピューターアニメに=ネットで聖書宣教=全く知らない人も聖書のとりこになる計画に
★『賢者の生活リズム』のケン・シゲマツ氏再来=5月にリトリートと講演会
★モリユリ・ミュージック・ミニストリーズ主催「阪神淡路大震災追悼のつどい」=阪神の地から希望を発信
★台湾で政権交代=教会が政策に関心急増
★牧師として国会議員22年=人権・平和・戦後和解に尽くし 土肥隆一氏死去

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