世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1308信(2016.02.15)

  • 教皇とロシア正教会総主教がキューバで歴史的会談
  • 共同宣言文に事前合意
  • トップ会談は合同につながらぬ、とバチカンの研究者
  • 東西トップ会談にウクライナ教会が猛反発
  • 教皇、6日間の日程でメキシコ司牧訪問
  • ネパールの新憲法が「改宗」を禁止
  • ≪メディア展望≫

◎教皇とロシア正教会総主教がキューバで歴史的会談

 【CJC=東京】教皇フランシスコとロシア正教会のキリル総主教は2月12日午後、キューバの首都ハバナのホセ・マルティ国際空港で歴史的な会談を行い、東西キリスト教会の再統一と、中東で暴力にさらされているキリスト教徒の保護を急ぐ必要性を呼び掛けた。

 東西のキリスト教会トップが会談するのは1054年に東方教会と西方教会が互いに相手を破門したいわゆる「教会大分裂」以来。モスクワ総主教とローマ教皇の会談は20年来の懸案だった。準備は秘密裡に2年がかりで行われていた。会談は、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長の仲介で実現した。

 会談では、白い帽子と聖衣に身を包んだ教皇と、白い頭飾りと黒の聖衣に身を包んだ総主教が、抱擁して互いにキスを送った後に笑顔で着席した。

 教皇は、「私たちは同じ洗礼を受けた兄弟だ」と述べ、総主教も「開かれた心で話し合った」と肯定的に応じた。

 会談後、教皇と総主教は「乗り越えるべき多くの障害が残っていることは認識しているが、今回の会談が、神の望まれる再統一に寄与することを願う」という共同宣言に署名した。

 教皇と総主教は、中東や北アフリカなどの地でキリスト教徒が過激義者などの迫害に苦しめられる現実に憂慮を示し、さらなる犠牲を阻止するよう国際社会に呼びかけた。また、経済的不平等の中で苦しむ貧しい人々、新しい生活の基盤を求めてさすらう難民とも連帯すると述べた。

 双方は中東で過激派組織「イスラム国」に迫害されているキリスト教徒の保護でも共同歩調を打ち出した。

 バチカン側は当初、欧州での会談を提案していたが、ロシアとも友好関係にあるカトリック国キューバが会談場所に選ばれた。キューバと米国の雪解けを教皇が仲介したことも考慮された。


◎共同宣言文に事前合意

 【CJC=東京】ロシアの『スプートニク』通信は、モスクワおよび全ルーシ(ロシア)総主教キリルと教皇フランシスコが2月12日、キューバのハバナで会談する際に調印予定の共同宣言文で合意した、と報じた。

 「昨晩遅くまでに宣言文で合意が得られた。最後の修正が行われた。総主教と教皇の会談に合意された形で文書が持ち込まれると考えなければならない」。モスクワ総主教府で広報を務めるイラリオン府主教がキューバへ向かう前にヴヌコヴォ空港で述べた。

 会談の最中に文言が修正されることもあり得るとして文書の内容は明かされなかった。

 中心テーマはキリスト教徒に対する迫害。中東やアフリカの情勢を背景に、両教会は、不一致を脇に置き、キリスト教徒をジェノサイドから救うために力を合わせることを決めた。


◎トップ会談は合同につながらぬ、とバチカンの研究者

 【CJC=東京】教皇フランシスコとキリル総主教の会談について、毎日新聞がバチカン(ローマ教皇庁)の東方研究学院ステファノ・カプリオ教授にその意義を聞いた。

 会談が可能になったのは、政治と宗教の両面で好ましい環境が整ったためだ。先々代教皇のヨハネ・パウロ2世(ポーランド出身)はロシアを「挑戦的」とみなしていたが、非欧州(アルゼンチン)出身のフランシスコ教皇はより親露的な立場だ。一方、会談にゴーサインを出したとされるロシアのプーチン大統領は欧米から孤立し、支援を必要としている。

 会談は東西キリスト教会「合同」への一歩にはならないと思う。むしろ、総主教が会談に同意したのは、教会合同問題は話し合わないからだと思う。歴代教皇と違い、フランシスコ教皇は教義面での主張はしない。お互いの独立性は変えずに、友好、協力、兄弟関係を進めようとしている。


◎東西トップ会談にウクライナ教会が猛反発

 【CJC=東京】モスクワ発時事通信によると、ウクライナ東方カトリック教会(東方典礼カトリック教会)は、教皇フランシスコとロシア正教会のキリル総主教によるキューバの首都ハバナでの2月12日の初会談について、ウラジミル・プーチン大統領に近い総主教が「政治化した」と非難した。両者の共同宣言は「ロシア側の影響下で起草された」と決め付けている。

 東方カトリック教会は13日夜、スヴィアトスラヴ高位大司教のインタビュー形式の声明を発表した。


◎教皇、6日間の日程でメキシコ司牧訪問

 【CJC=東京】教皇フランシスコは2月12日、キューバを訪問しているキリル・モスクワおよび全ロシア総主教と、ハバナのホセ・マルティ国際空港で歴史的な会見を行った後、メキシコ司牧訪問に向かった。

 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は同日夜、メキシコシティのベニート・フアレス国際空港に到着した。

 13日午前、教皇はメキシコシティの国立宮殿(パラシオ・ナシオナル)で歓迎式に臨んだ。宮殿内で教皇は大統領と会談。続いて、メキシコ各界要人・同国駐在外交団に挨拶した。この後、司教座大聖堂でメキシコの司教団との出会い。夕方からは、グアダルーペの聖母巡礼聖堂でミサを行った。

 14日午前、教皇はエカペテックへ。15日はトゥストラ・グティエレス、サン・クリストバル・デ・ラス・カサス、16日モレリア、17日シウダー・フアレスの刑務所を訪問後、教皇は、シウダー・フアレス国際空港から出発、18日午後、教皇はローマに戻る予定。

 教皇はローマからハバナに向かう特別機の中で報道陣に挨拶、特にコロンビアの記者の質問に対し、現在進行中であるコロンビア政府と、左翼ゲリラ、コロンビア革命軍(FARC)の和平交渉が成立するならば、2017年にでも同国を訪問するつもりがあると語った。


◎ネパールの新憲法が「改宗」を禁止

 【CJC=東京】ヒンズー教が優勢なネパールで、ある宗教から他の宗教への改宗につながる行為を禁止する条項を、国会が新憲法に盛り込んだ。過激ヒンズー教グループの要求に屈した形。別の宗教を破壊したり妨害する行為も禁止している。

 国会は同時にネパール国を非宗教で全ての宗教に中立だと宣言している。

 8000人もの死者を出した2015年4月の地震以来、キリスト教への期待が急激に高まったことに危機感を持ったヒンズー教側が憲法制定に影響力を発揮した、と米宣教通信『アシスト』が伝えている。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月14日)=https://www.cwjpn.com
★教皇メッセージ=四旬節は回心の時=いけにえではなく あわれみを
★教皇とロシア正教会総主教=キューバで史上初の会見へ
★召命の危機には祈りで=教皇、奉献生活者に語る
★墓碑 有形文化財に=小説『沈黙』主人公のモデル=東京・調布市
★子どもの安全網(セーフティーネット)を=市民、地域グループが結集=東京・大田区

 

 =キリスト新聞(2月13日)=https://www.kirishin.com
★『キリスト教年鑑』2016年版=意識の変化浮き彫りに=20年前との比較検討から
★共感力身に付け、対立を和解に=WCRP日本委学習会で宗教者の役割考察
★外キ協30年で全国集会=多民族・多文化共生社会の実現を
★新司教の任命方法でバチカンが中国と合意
★ローマのサンパウロ大聖堂でエキュメニカルな祈りの集い

 

 =クリスチャン新聞(2月14日)=https://クリスチャン新聞.com
★熊本バンド140周年記念早天祈祷会開催=明治期青年たちの志 今に継ぐ=キリスト教を日本中に
★後藤健二さんIS殺害1年で音楽劇「イマジナリーライン」=「忘れない」平和の願い
★憲法9条にノーベル賞=2016年度もノミネート=「大どんでん返しをみんなで起こせると信じている」
★佐藤優氏講演=この世に証しするキリスト教徒の良心=関西セミナーハウス・修学院フォーラム

月別の記事一覧