世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1332信(2016.08.01)

  • 仏ルーアンの教会で司祭ら5人を人質に立てこもり
  • 教皇がルーアン大司教に祈りのメッセージ
  • 教皇がポーランド訪問、「世界青年の日」出席
  • 教皇「イスラム教はテロリズムではない」
  • 教皇が来年訪日の可能性
  • ≪メディア展望≫

 

◎仏ルーアンの教会で司祭ら5人を人質に立てこもり

 【CJC】仏北西部ルーアン近郊サンテティエンヌ・デュルヴレで26日午前9時45分ごろ、刃物で武装した2人の男がミサ中の教会に押し入り、司祭や修道女、信者ら5人を人質に取り、立てこもった。出動した警察特殊部隊が突入、2人を射殺した。

 ジャック・アメル(Jacques Hamel)司祭(85)が喉を掻き切られ死亡、1人が重体、残る3人は解放された。

 現場を訪れたフランソワ・オランド大統領は「過激派組織『イスラム国』(IS)を名乗った」と記者団に語り、犯行は『イスラム国』によるテロと断定した。

 『イスラム国』系の通信社『アマク』は同日、「十字軍連合国を狙えという呼びかけに呼応した作戦だった」との記事を配信し、2人は「戦士だ」と述べた。


◎教皇がルーアン大司教に祈りのメッセージ

 【CJC】教皇フランシスコは7月26日、仏北西部ルーアンのドミニク・ルブラン大司教に電報を送り、殺害への深い悲しみを表明、「被害者の家族の苦難、サンテティエンヌ・デュルヴレ教会とルーアン教区の痛みを覚え、祈りを共にする」と述べた。

 教皇は、「神、慈しみの父、ジャック・アメル神父を光の平和の中に、負傷者を安らぎの中に受け入れてください」と祈りを捧げた。


◎教皇がポーランド訪問、「世界青年の日」出席

 【CJC】『世界青年の日』(ワールドユースデー=WYD)の出席を主な目的としてポーランドを司牧訪問する教皇フランシスコは7月27日午後2時、ローマ郊外のフイウミチーノ国際空港からアリタリア航空特別機で出発、約2時間の飛行の後、同日夕、ヨハネ・パウロ2世・クラクフ・バリツェ国際空港に到着した。

 空港にはアンジェイ・ドゥダ大統領や政府関係者、同国カトリック教会のスタニスラウ・ズヴィッツ大司教らが出迎えた。歓迎式典の後、教皇はオープンカーで市内に向かった。

 バチカン放送(日本語電子版)などによると、ポーランド訪問2日目の28日、教皇はカトリック教会の第31回『世界青年の日』(ワールドユースデー)世界大会が開催されているクラクフから東北約100キロにあるチェンストホヴァに向かった。

 同地のヤスナ・グラ巡礼聖堂を訪問した教皇は、ポーランドの保護者として、人々の熱い崇敬を受けている『黒い聖母』のイコンの前で、祈りの時を持った。

 続いて教皇は、聖堂前の広場で捧げたミサの中で、ポーランド宣教1050年を信者たちと共に祝った。説教で教皇は、神は自ら小さくなられ、人々の近くにいて、具体的な業を行なわれる方、と述べた。同国への宣教1050年の祝いが「いつくしみの聖年」と重なったことを摂理として喜びを表明した。

 「柔和で謙遜」 (マタイ11・29)で、その御国を「幼子のような者」(同11・25)に好んで示される神は、自らもまた小さくなられ、ご自分の声を伝え、その御名の啓示を助ける者として単純で心の素直な人々を選ばれた、と教皇は述べた。

 ポーランドの人々の聖母への深い信心に触れながら、教皇は、マリアは主と完全に呼応し、神の糸は歴史の中で「マリアの糸」と交わったと述べ、マリアは神がわたしたちのところまで降り、近くに来られるための階段、「時の充満」のもっとも明らかなしるしとなったと話した。

 教皇はポーランド訪問3日目の29日、南部オシフィエンチムにあるナチス・ドイツのアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡を訪れ、有名なスローガン「働けば自由になる」が掲げられた鉄製の門をくぐった。

 被収容者たちの点呼が行なわれ、集団絞首刑が執行されていた『点呼広場』で、教皇は長い沈黙の祈りを捧げた。

 次いで『第11ブロック』を訪れた教皇は、ここで10人の生還者と会見した。教皇は一人ひとりの手を固く握り、生存者たちの言葉にじっと耳を傾けられた。

 多くの無実の人々が銃殺された『死の壁』の前にランプの火を捧げられた教皇は、壁を見つめ、それに手を触れ、祈った。

 続いて、教皇はマキシミリアノ・マリア・コルベ神父が他の被収容者と共に餓死刑のために入れられ、亡くなった地下牢を訪れた。

 収容所で脱走者が出たことへ見せしめとして、10人が餓死刑に定められた時、コルベ神父は、家庭を持つ1人の男性の身代わりとなることを自ら申し出て、他の9人と一緒に地下の餓死室におくられた。

 地下牢でコルベ神父は仲間を励まし続け、2週間後、まだ生存していた他の3人と共に注射を打たれ、殺害されたという。

 暗く狭い地下房に入られた教皇は、その中に一人で長い間留まり、頭を下げ祈り続けられた。同日は、コルベ神父が死刑を宣告されてからちょうど75年目。

 教皇は、アウシュヴィッツ収容所の訪問帳に、「主よ、あなたの民を憐れんでください。主よ、多くの残忍さをお赦しください。フランシスコ
2016年7月29日」とスペイン語で記した。

 続いて教皇は、アウシュヴィッツ収容所から3キロ離れたビルケナウ収容所へ、カートで向かった。ビルケナウの犠牲者国際慰霊碑では、「暗い淵の底から、主よ、あなたを呼びます」という言葉でで始まる詩編130編が、ユダヤ教のラビと、ポーランドの司祭によって、唱えられた。

 碑文を見つめながら歩んだ教皇は、慰霊碑の前にランプの火を灯し、沈黙の祈りを捧げた。

 教皇はここで、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の中、自らの命をかけてユダヤ人を守った人々、「諸国民の中の正義の人」たち、25人と会見した後、教皇は、『世界青年の日』大会が開催されているクラクフへ戻った。

 教皇は同日午後、クラクフ郊外プロコチム地区にある小児科病院を訪れた。この大学系病院は、小児総合医療施設としてポーランド南部では最大の規模。

 教皇は病院のホールで、子どもの患者とその両親、医療関係者らに迎えられた。

 挨拶の中で教皇は、福音書の中には、主イエスが病者と出会ったり、病者の願いを受け入れたり、病者のために快く赴く場面が何度も出てくることを指摘した。

 キリスト者として、イエスのように沈黙のうちに病者に触れ、祈りをもって寄添えるならば、どれほどよいだろうかと教皇は感嘆しつつ、残念ながら今日の「切り捨ての文化」の中で犠牲となるのは、まさに最も弱く傷つきやすい人たちであると述べた。

 支えが必要な人々に愛と優しさをもって奉仕することは、人類を成長させ、わたしたちに永遠の命への道を開かせると述べた教皇は、常にいつくしみをもって良い業を行うよう、関係者を励ました。この後、教皇は病棟の子どもたちを見舞い、その家族らを励まし、最後に、教皇は病院の礼拝堂で祈りを捧げた。

 教皇は同日夕、若者たちとキリストの受難を黙想しながら行なう信心業『十字架の道行き』をブオニエの野外イベント場で行った。イエスが死刑の宣告を受けてから、十字架上で息を引き取り、墓に葬られるまでの過程を、14の場面に分け、各所ごとを黙想し祈る。

 世界各地でいつくしみの業を行う様々な教会系団体や修道会がビデオで紹介され、その関係者らが十字架を担いだ。舞台では現代舞踏のパフォーマンスを通して、イエスの道行きが表現された。

 『十字架の道行き』の後の説教で、教皇は「神はどこにいるのか。世界に悪があるのなら、神はどこにいるのか。人々は飢え、渇き、家もなく、難民となって追われ、多くの無実の人が暴力やテロや戦争の犠牲となり、病気が人生や愛情の絆をゆるがし、子どもたちが搾取されている世界で、神はどこにいると言えるのか」と問いかけた。

 教皇はそれに対するイエスの答えとして、「神は彼らの中にいるのです」と説明した。

 教皇は、訪問4日目の30日午前、ポーランドの教会関係者とミサを捧げた。クラクフの『神のいつくしみ巡礼聖堂』で若者たちに赦しの秘跡を授けられた後、続いて、近くにある『聖ヨハネ・パウロ2世巡礼聖堂』に向かわれた。

 聖堂内は、神学者・イコン画家のマルコ・イヴァン・ルプニック神父のモザイク画で覆われ、このミサのために祭壇には聖ヨハネ・パウロ2世の聖遺物が据えられた。

 教皇は説教の中で、心を開き、自分自身から外に出るようにと、教会関係者らを励まし、故教皇ヨハネ・パウロ2世の、キリストのために「扉を開きなさい」という招きに従い、恐れや快適さのために扉を閉めていようとする誘惑に打ち勝たなければならないと説いた。

 『世界青年の日』クラクフ大会は31日、教皇による閉会ミサをもって終了した。

 クラクフ郊外の『いつくしみのキャンパス』で行われた閉会ミサには、警察の発表によれば、約150万人が参加した。

 教皇はこのミサで、イエスに信頼し、世界を変えようと呼びかけ、正義と平和に満ちた社会の構築に参加するよう、若者たちを励まされた。ミサの終わりに教皇は、次回2019年の国際大会の開催国として、パナマの名を発表した。

 教皇は、同日午後、クラクフ大会のボランティアと実行委員らと会見、心からの感謝を述べた。

 5日間にわたるポーランド司牧訪問を終えた教皇は、クラクフ・バリツェ空港での送別式を経て、午後7時半、LOT・ポーランド航空特別機で帰国の途についた。空港には、空港にはアンジェイ・ドゥダ大統領やアガタ・コルンハウザー=ドゥダ夫人、スタニスラウ・ズヴィッツ大司教らが見送った。出発は悪天候のため約1時間遅れた。


◎教皇「イスラム教はテロリズムではない」

 【CJC】教皇フランシスコは7月31日、イスラム教徒をテロリストと同一視することはできないと述べ、欧州社会が若者たちを過激派の手中に追い込んでいると警告した。

 AFP通信などが報じるところでは、「イスラム教がテロリズムだと言うのは真実ではなく、間違っている」、と教皇はポーランド訪問の帰路、特別機の機内で報道陣にこう語り、さらに「イスラム教を暴力行為と同一視するのは、正しいことだとは思わない」と続けた。

 教皇の発言は、仏北西部ルーアン近郊の教会でジャック・アメル司祭(85)が男2人に殺害され、イスラム過激派組織『イスラム国』が犯行声明を出した事件を非難する際に、イスラム教に言及しないとの自身の決断を再度明らかにしたものと見られる。

 「ほぼ全ての宗教に、原理主義者の小集団は常に存在する。われわれキリスト者も例外ではない」「もしわたしたちがイスラム教徒の暴力について語るならば、キリスト者の暴力についても語らなければならない」などと教皇は述べている。


◎教皇が来年訪日の可能性

 【CJC】河井克行首相補佐官は7月28日、バチカンで国務省外務局次長のアントワン・カミレリ神父と会談、教皇の早期訪問を要請した。同神父は来年の訪日を検討したいと応じた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月31日・休刊)=https://www.cwjpn.com
 
 =キリスト新聞(7月30日・休刊)=https://www.kirishin.com
 
 =クリスチャン新聞(7月31日)=https://クリスチャン新聞.com
★内なる差別に目をとめよ=KGK共催=信州夏期宣教講座エクステンションで李明忠氏
★日本初=エジプト発の伝統キリスト教=コプト正教会の会堂が誕生
★世の秩序超える選択肢示せ=緊急連続セミナー「この国はどこへ行くのか」で島薗進氏講演
★近代日本キリスト者の衝突=成瀬仁蔵新史料発見の辻直人氏が講演
★「助けて」言える社会目指す 北九州ホームレス支援の奥田知志氏が講演


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内

☆ニュースレター(PDF)・メールマガジン(整形テキスト)・同報メール(無整形テキスト)などのお申し込み・お問い合わせは
ckoriyama★gmail.com までご連絡ください。活動自体のご案内もいたします。アドレスの★印は半角の@に置き換えてください。
☆既刊号は下の各サイトでご覧いただけます。
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/
☆RSSご利用の際は
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/index.rdf

月別の記事一覧