世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1334信(2016.08.15)

  • 米国務省報告書が欧州移民への宗教差別指摘
  • 脱北者支援の牧師殺害の背後に孤児「臓器密売」組織?
  • 「教会に官僚や有能な役人はいらない」と教皇
  • 教皇、子どもが自らの性を選べると教育されるのは「とても不快」
  • バチカンが中国と国交回復決断か
  • 天正遣欧使節の絵を教皇グレゴリウス13世子孫宅で発見
  • ≪メディア展望≫

 

◎米国務省報告書が欧州移民への宗教差別指摘

 【CJC】米国務省は8月10日、各国の宗教の自由に関する年次報告書(2015年)を発表した。国内の少数宗教集団に対する各国政府の抑圧がなおも懸念される中で、宗教的テロリストの脅威も増している

 欧州への移民や難民申請者について、「いくつかの政府が、宗教を理由に移民の入国を懸念している」と指摘し、宗教差別に憂慮を示した。

 報告書は、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相が「欧州のキリスト教的価値」の擁護を繰り返し強調したり、スロバキア当局者が「イスラム教徒を治安や文化、社会への潜在的脅威」としてキリスト者難民だけを選別すると言明したりしていることを挙げている。

 報告書は、約200国について個別に「信教の自由」への対応に関し、調査した結果をまとめている。

 中国浙江省で2013年以降、キリスト教会が破壊されたり、1500以上の十字架が撤去されているとし、教会の法律顧問をしていた人権派弁護士が15年8月から数カ月間拘束されたことにも触れている。

 日本については、NGO諸団体や『世界平和統一家庭連合』(旧統一教会)や『法輪功』などへの対応に関心を寄せている。「反ユダヤ主義」にからむ人権侵害については、『サイモン・ウイゼンタール・センター』代表と会談したことを記している。

 福岡にある、広島以西では最大のイスラム教モスクを在福岡領事館員が訪問したこと、在札幌領事館員が創価学会関係者、北海道神宮の神官と、信教の自由に関する米国の立ち位置に関して討議したという。


◎脱北者支援の牧師殺害の背後に孤児「臓器密売」組織?

 【CJC】在京の北朝鮮観測サイト『デイリー・NK』が報じる所では、中国吉林省の長白朝鮮族自治県で、脱北者の支援を行ってきた韓忠烈(ハン・チュンニョル)牧師が4月30日殺害されてから数々の疑惑が伝えられる中、北朝鮮の国家安全保衛部(秘密警察)の仕業との見方が支配的だが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は可能性の一つとして、違法な臓器密売組織の秘密を探ろうとしたためではないかと見ている。

 長白教会から川を挟んですぐの北朝鮮領内には、愛育園と恵山中等学院がある。いずれもコチェビ(浮浪児)や孤児を収容する施設だが、厳しい監視と教師による暴力が日常化している。生徒たちは、冬は寒さを凌ぐために施設にいるが、暖かくなれば施設から出て、川を越え韓牧師のもとに来て、横行している虐待行為について話し、生徒3〜4人が教師によってワンボックスカーに乗せられ、どこかへ連れていかれたきり行方がわからなくなっていると伝えた。

 韓牧師は、恵山中等学院、両江道(リャンガンド)の保衛部がグルになって、中国の臓器密売組織に生徒たちを売り飛ばしているのではないかと疑い、教会の屋上から望遠鏡で監視するようになった。それで殺されたのではないかという説がある。

 一方、韓国のキリスト教放送(CBS)は、対北朝鮮情報筋を引用し、北朝鮮国内での地下教会の設立計画が事前に保衛部に漏れたことで、韓牧師は殺害されたのではないかと伝えている。長白教会は、地下教会を設立するために米国の某団体から資金援助を受けていたと言う。


◎「教会に官僚や有能な役人はいらない」と教皇

 【CJC】8月14日、日曜正午のアンジェラスの祈りで、教皇フランシスコは、「キリストはこの世に愛熱の炎をもたらしに来た」という言葉を解説しながら、教会には官僚は要らない、冒険を恐れない熱意に満ちた司牧者こそが必要なのだと強調した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。

 聖霊の愛熱の炎は全て人間的な惨めさやエゴイズム、罪を焼き尽くし、内部から全てを革新し、再生させ、愛することを可能にしてくれる。神の心から出発して神愛の炎は神のみ国を発展させ進歩させる。

 わたしは皆に聖霊の働きに完全に心を開くよう勧める。

 聖霊は、恐れることなく大海原に漕ぎ出し、全ての人々にキリストとその救いと慈しみの慰めに満ちたメッセージを伝える勇気と大胆さを与えてくれるだろう。

 恐れや計算からひきずられることのないよう、またただ安全地帯だけを歩くことに慣れてしまわないために教会は聖霊の助けを必要としている。この二つの態度が教会を危険を決して冒さない官僚的なものにする。

 聖霊がもたらす炎は使徒的勇気を点火する。聖霊は壁やバリケードを乗り越えさせ、わたしたちをより創造的にし、さらに危険や不便や不確実さに満ちた道を、出会う全ての人々に希望を提供しながら恐れなく進ませる。

 多くの宣教師たちや修道女、そして信徒たちが世界中多くの国々で時にはその生命をもかけてキリストの福音の宣教に専念している。

 彼らの貴重な模範はわたしたちに、教会は官僚や優秀な役人たちではなくキリストの慰めに満ちたことばとその恵みを全ての人々のもとに届けようとの熱愛に燃えている宣教者たちこそ必要としていることを思い起こさしてくれる。これこそ聖霊がもたらす炎である。

 教会はこの炎を持たなければ生命を与えることの出来ない冷たく生ぬるい教会になってしまう。なぜなら冷たく生ぬるい信徒たちの教会になってしまうからだ。


◎教皇、子どもが自らの性を選べると教育されるのは「とても不快」

 【CJC】教皇はポーランドの司教らに対する講話のなかで、自らの性自認を自分で決めることができると子どもたちに教えることを厳しく批判した。

 米専門週刊紙『カトリック・ヘラルド』などによると、「今日では、子どもたちは学校で次のように教わっている。誰もが自分の性別を選べる、と」と教皇が述べたと言う。

 教皇はさらに「神は男と女を創造した。神は世界をこのように(男と女という二つの性別が存在するように)創造したにも関わらず、わたしたちは神の意思とはまったく異なったことをしている」と述べたと報じられた。

 子どもたちに自らの性を自分で決めることができると教えるのは、教皇によれば「とても不快」なことという。

 LGBT(性的少数者)のカトリック者のための組織『尊厳あるアメリカ』(ディグニティ・USA)は8月3日、声明を発表、性自認に関する教皇の言葉は、多くの国でトランスジェンダーの若者に対する暴力を誘発しかねないことから、「命を危険にさらす」と非難した。

 同組織のマリアン・ダディー=バーク事務局長は声明で、「教皇は、LGBTについて嘆かわしく危険なほどに無知だ。LGBT問題は該当する人々にとっては文字通り、生死に関わる問題だというのに」と不快感をあらわにした。

 同事務局長はさらに、「教皇をはじめとして多くの人がいまだに理解していないことは、性は自ら『選ぶ』ものではないということだ。性は誕生のときに与えられるものであって、なかには異なる性が間違って与えられてしまったと後に発見する人がいる......今では、カトリック教会の公教要理でさえ『同性に対して排他的にあるいは支配的に性的魅力を感じる』人々がいることを認めている。このことは、『深く根差した』現実だ」と述べた。


◎バチカンが中国と国交回復決断か

 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)が、かねて中国との国交回復を目指し準備を進めている中で、最大の対立点である「司教任命権」について合意する用意を示している、と香港カトリック教会の指導者、湯漢・枢機卿が香港のカトリック系週刊紙『公教報』(電子版)へ7月31日付けで寄稿、中国政府が司教任命問題に関してバチカンとの間で「相互に受け入れ可能な計画を追求している」と指摘した。

湯枢機卿は「中国教会と世界教会の統合」という題名の寄稿で「幸いにも数年間の努力を傾けた末に中国政府が面目を一新する成果を上げた」と書いている。

香港の宗教界やメディアは「ベトナム方式」が適用されると予想している。中国当局が認める天主教愛国会所属の教会と中国当局が認めていない地下教会の主教も共に参加する「中国主教団」を構成し、ここで主教を推薦する案が有力視されているという。

この問題が最終妥結すれば中国とバチカンの国交樹立への道が開かれるが、「一つの中国」の原則を守る中国との修交は、台湾との断交までバチカンが覚悟したことを意味しているのか。

 「一つの中国」に反対し、台湾の「独立」を図るグループは、バチカンが中国との国交を樹立する際に、教皇が台湾とも並行して国交を維持することに期待を掛けている。


◎天正遣欧使節の絵を教皇グレゴリウス13世子孫宅で発見

 【CJC】九州のキリシタン大名、大友宗麟・大村純忠・有馬晴信の名代として16世紀後半にローマに派遣した天正遣欧少年使節が1585年に当時のローマ教皇グレゴリウス13世(在位1572〜85)に接見した際の様子を天井に描いたフレスコ画が、ローマにある同教皇の子孫の邸宅で見つかった。

 フレスコ画は1855年ごろ、同教皇の子孫アントニオ・ボンコンパーニ・ルドビージ公爵の依頼で、画家のピエトロ・ガリアルディが制作。使節代表格の伊東マンショとみられる少年の額に教皇が口づけする様子などが描かれている。

 20世紀前半に食堂が改築された際、新しい天井が造られ、フレスコ画は見えなくなった。一家の古文書を研究するコーリー・ブレナン米ラトガース大准教授が2012年、フレスコ画の全体像を収めた20世紀初頭の白黒写真を発見。6月、小型カメラで天井の向こう側の元の天井に鮮やかな色彩の絵が描かれているのを確認した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月14日)=https://www.cwjpn.com
★今こそヒロシマから=平和のともしび 次世代に
★比叡山宗教サミット=世界平和祈りの集い=「人類の傷を一変させる」=宗教者の使命=トーラン枢機卿がメッセージで
★回勅『ラウダート・シ』刊行=貧困・格差・環境問題 同じ根から
★教皇=ポルツィウンクラ訪問=「アッシジのゆるし」800年
★「女性助祭」研究へ=教皇、委員会メンバー任命

 

 =キリスト新聞(8月13日)=https://www.kirishin.com
★聖公会が「8・15平和メッセージ」=アジアにおける平和の実現目指す
★中東の現状知り「戦争反対」の声を=聖公会のG・コプティ氏が難民支援語る
★非軍事による紛争解決、平和構築へ」=M・ダンカン氏「非暴力平和隊」活動報告
★仏ルーアンの教会で立てこもり=ジャック・アメル司祭死亡
★女性聖職復活の検討委設立=まず女性助祭の役割探る

 

 =クリスチャン新聞(8月14日)=https://クリスチャン新聞.com
★宣教師となった日・米元兵士たちの「出会い」NHKで放映=憎しみと報復の連鎖超え
★人気観光地に刻まれた戦争=済州島は"本土防衛"の最前線
★ロシアで「伝道規制法」成立=いかなる伝道も禁止=シンポ「苦難と不条理の中でいかに聖書を読むか」
★『3・11以降の世界と聖書 言葉の回復をめぐって』刊行記念=「教会が嘆きの言葉発せる場に」=シンポ「苦難と不条理の中でいかに聖書を読むか」
★「第48回日本伝道の幻を語る会」で柏木哲夫氏=「イエスの平安こそ良き死をもたらす」

 
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