世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1463信(2019.02.04)

  • トヴェイトWCC総幹事がモスクワ訪問、キリル総主教と会談
  • 「イスラム国」が犯行声明=比・ホロ島の大聖堂爆発
  • フィリピン教会爆破事件はインドネシア人の自爆テロ?
  • 教皇、アラブ首長国連邦を訪問
  • 中国との和解意義強調するフィローニ枢機卿、当局の抑圧に懸念
  • 中国、非公認の「地下教会」主教を公認教会聖職者として承認
  • 米テキサス州のカトリック教会が聖職者らの幼児性的虐待容疑公表
  • ≪メディア展望≫
  • 《デスク手帖》

 

◎トヴェイトWCC総幹事がモスクワ訪問、キリル総主教と会談

 【CJC】世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トヴェイト総幹事は1月30日、モスクワのロシア正教会総主教庁を訪問、モスクワ総主教キリルと会談した。

 トヴェイト氏の訪問は、キリル総主教の就任10周年記念式典への招待に応じたもの。トヴェイト氏は会談で、エキュメニカル運動やWCCの働きにロシア正教会が参画していることの重要性を強調した。キリル総主教も、ロシア正教会が今後もWCCに関わることを再確認し、冷戦時代にWCCが果たした独自の歴史的役割を評価した。

 キリル総主教は、ウクライナにおける宗教自由の現状と教会問題への国家の関与について深い関心を示した。新たに設立された『ウクライナ正教会』が『コンスタンチノープル総主教庁』から独立を認められたことを受け、世界の正教会の間で緊張が高まっていることへの懸念を表明した。ウクライナには、モスクワ総主教庁系の『ウクライナ正教会』も存在する。

 トヴェイト氏は、「WCCは教会や教団・教派内の問題に介入しない。しかし"正教会家族"の分裂については、和解と癒やしを祈っている」と述べた。

 2021年にドイツのカールスルーエで開催されるWCCの次期大会のテーマである「キリストの愛が世界を和解と一致へ」に言及したトヴェイト氏は、分裂と分極化が進むこの世界にあって、和解と一致がキリスト者にとってどんな意味を持つのかを問うこの大会テーマに、ロシア正教会も貢献するよう招いた。そして「互いに愛し合うことこそ、今日の世界で和解と一致に至る道であり、平和のビジョンを維持する道なのだ」と述べた。


◎「イスラム国」が犯行声明=比・ホロ島の大聖堂爆発

 【CJC】フィリピン南部ミンダナオ地方のホロ島で1月27日朝、カトリック教会の大聖堂で発生した爆発事件で、過激派組織『イスラム国』が、「二つの爆弾で120人を殺傷した」と犯行を認める声明を出した。

 ミンダナオ地方では、新たに樹立されるイスラム自治政府への参加を問う住民投票が行われたばかりで、現地のイスラム過激派勢力も自治政府樹立に反対していたと見られる。


◎フィリピン教会爆破事件はインドネシア人の自爆テロ?

 【CJC】フィリピン南部スールー州の州都ホロ市にあるカトリック『アワーレディ・オブ・マウント・カルメル教会』で1月27日に発生した爆弾テロについてエドゥアルド・アニョ内務・地方自治相は2月1日、犯行はインドネシア人男女による自爆テロとの見方を明らかにした、と東京、バンコクなどで活動する『パンエイシア・ニュース』が報じた。

 事件発生直後に中東のテロ組織『イスラム国』の関連サイトを通じて出された犯行声明では、自爆テロを示唆する内容となっているが、フィリピンで同組織との結びつきが強いのが『アブサヤフ』であることから、犯人を現場の教会まで案内したり、爆弾を準備したりするなどで『アブサヤフ』が犯行を支援したのは間違いない、と治安当局は見ている。

 フィリピンでは南部のイスラム教徒が多数居住する地域を中心にイスラム自治政府を創設する「バンサモロ基本法」に基づき、その帰属を巡る住民投票が今回事件のあったスールー州などで1月21日に実施された。

 ホロ市の教会爆弾テロは、この住民投票の集計結果に不満を抱く『アブサヤフ』の犯行であり、サンボアンガのモスク襲撃はその報復との見方が依然として有力。

 しかし「インドネシア人による自爆テロ」の可能性が強くなってきたことは、「バンサモロ基本法」の住民投票とは直接関係のない、あるいは住民投票に便乗したイスラム教組織によるキリスト教徒に対する宗教テロ、との見方が出てきたことになる。

 一方、2月6日には「バンサロモ基本法」に基づく住民投票の2回目が一部地域で予定されており、再び緊張が高まっている、と『パンエイシア・ニュース』は紹介している。


◎教皇、アラブ首長国連邦を訪問

 【CJC】教皇フランシスコは、アラブ首長国連邦(UAE)訪問のため、2月3日、首都アブダビに向け出発した。

 教皇は、同日正午、バチカン(ローマ教皇庁)で日曜正午の祈りの集いを行われた後、ローマ郊外のフィウミチーノ国際空港(レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港)に向かった。

 出発前、教皇は空港内の支援施設を訪問した。この施設は、空港とローマ首都圏北西部、ポルト・サンタ・ルフィーナ教区の援助団体『カリタス』の協力で、ホームレスや困難な状況を抱える人々に手を差し伸べる活動を行っている。

 教皇は施設の関係者らに感謝を述べ、支援を受ける人々を励ました。そして、13時半ごろ、教皇は特別機で、アブダビへ向け出発した。

 歴代教皇でイスラム教の発祥地であるアラビア半島にある国を訪れたのは初めて。5日までの滞在期間中、約13万5000人が参列する見込みの野外ミサも計画されている。

 UAE国民の多数はイスラム教スンニ派。キリスト教徒は国民の1割に当たる約90万人で多くが移民という。教皇は宗教や民族の違いを超えた対話促進を訴えている。

 教皇は4日、イスラム教の指導者らと宗教間会合を行い、演説する。


◎中国との和解意義強調するフィローニ枢機卿、当局の抑圧に懸念

 【CJC】昨2018年9月に明らかになったバチカン(ローマ教皇庁)と中国との和解について、バチカン福音宣教省のフェルナンド・フィローニ長官(枢機卿)は「中国の教会の統一と復興に大きな期待を持っている」と述べ、その歴史的意義を強調した。一方、バチカンに忠誠を誓う非公認の地下教会に対する中国当局の抑圧が強まっている点に「当局は自由を尊重すべきだ」と懸念を表明した。毎日新聞が報じた。

 バチカン紙『オッセルバトレ・ロマノ』が2月2日、フィローニ枢機卿とのインタビューを伝えた。枢機卿は、中国当局が教皇の「特別な役割」を認めた点を積極的に評価した。

 一方、中国各地では和解の後、地下教会の聖職者が政府系教会組織「中国天主教愛国会」(愛国会)の傘下に入るよう当局から迫られる事態が相次ぐ。フィローニ枢機卿は「教皇との合意を道具に、愛国会への加入を強要してはならない」と訴えた。


◎中国、非公認の「地下教会」主教を公認教会聖職者として承認

 【CJC】中国政府とバチカン(ローマ教皇庁)の緊張関係が緩和する中、AFP=時事通信によると、中国の国営メディアは、政府公認教会の聖職者に、非公認の「地下教会」の主教が昇格することになった、と報じた。

 中国にいる推定1000万人に上るカトリック教徒は法的に、共産党が任命した聖職者を擁する、政府管理下にある団体が運営する教会だけに通うことが認められている。だが多くの信者たちは、バチカンに忠誠を誓う司教らが主宰する「地下教会」に通っている。

 1951年に外交関係を断絶した中国とバチカンは昨2018年9月、司教の選出に関して合意し、両国の国交回復に道が開かれると同時に、中国での司教の選出に双方が関与することになった。

 中国の国営紙『環球時報』(英語版)は2月1日、中国中部の南陽教区でジン・ルガン氏が補佐司教に就任したと報道。98歳の朱寶玉司教が退任するまで補佐を務めるという。

 環球時報は、教区の半数近くが司教不在の状態であり、中国のカトリックは「政治的に信頼できる」司教を早急に必要としている、と伝えている。


◎米テキサス州のカトリック教会が聖職者らの幼児性的虐待容疑公表

 【CJC】米テキサス州のカトリック教会が1月31日、州内の聖職者ら286人が幼児への性的虐待に関与していた疑いがあるとの報告を公表した。1940年代の事案もあり、疑いのある聖職者の半数以上は既に死去しているという。AP通信などが報じた。

 カトリック教会の聖職者による性的虐待を巡っては、ペンシルベニア州で2018年8月、300人以上の関与を指摘する報告書が発表されたのを機に、米国各地で調査の動きが拡大した。イリノイ州では同年12月、685人超が関与した疑いがあると発表された、と共同通信が紹介している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月3日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★教皇フランシスコ=WYDパナマ大会に臨席=閉会前日の徹夜祭=マリアのように影響力を
★WYD閉会ミサ=次回はリスボンで開催
★教皇=「11月に」訪日=パナマへの機中で語る
★横浜教区=キリスト教一致祈祷週間=聖公会と合同礼拝
★西日本豪雨から8カ月=広島・高松教区=変わる支援体制=広島教区は物資提供を継続

 

 =KiriShin(2月1日)=https://www.kirishin.com
★映画『牧師といのちの崖』公開=自殺志願者と向き合う藤藪庸一氏="死の淵に希望の光を"
★公開セミナー「核と平和」=原爆と基地問題の関係問う
★元信者らが証言=ダビデ張グループが淀橋教会を隠れ蓑として利用か
★『週刊SPA!』特集記事に日本YWCAが再発防止策要求
★修道女ロックバンド「Siervas」=パナマで教皇を前に演奏

 

 =クリスチャン新聞(2月3日)=https://クリスチャン新聞.com
★アジアは迫害の新たな温床=中国が迫害リストで急上昇
★インドネシアが文書担当でキリスト教一致祈祷週間=不正、偽りを直視し祈る=「ただ正しいことのみ」主題に世界各地で集会
★「死にたいと思う時ある」=藤藪牧師と加瀬澤監督対談=「牧師といのちの崖」トークイベント
★米人沖縄司教と沖縄出身牧師が対談=公開セミナー「核と平和」=「分断こえ"人"に耳傾けて」
★オアシス新宿西口店オープン=「絵本を楽しむ集い」実施

 
《デスク手帖》英字紙『ジャパンタイムズ』で幹部と記者らが激しく論争

 英字紙『ジャパンタイムズ』で、昨1918年12月3日、同社幹部と十数名の記者らが激しく論争した、とロイター通信が1月25日、コラム「焦点」で報じた。

 対立に火をつけたのは、日韓摩擦の火種となっている「慰安婦」と「徴用工」について、11月30日付の紙面に掲載された「editor's note」(編集長の説明)だった、という。

 《ジャパンタイムズは徴用工を「forced laborers(強制された労働者)」ではなく「戦時中の労働者(wartime laborers)」と表現する。慰安婦については「日本の軍隊に性行為の提供を強制された女性たち(women who were forced to provide sex for Japanese
troops)」としてきた説明を変え、「意思に反してそうした者も含め、戦時中の娼館で日本兵に性行為を提供するために働いた女性たち(women who worked in wartime brothels, including those who did so against
their will, to provide sex to Japanese soldiers)」との表現にする。》

 こうした編集上層部の決定に、それまでの同紙のリベラルな論調を是としてきた記者たちは猛反発した、とロイター通信。

 《「反日メディアであることのレッテルをはがしたい。経営陣として『アンチジャパン(反日)タイムズ』ではとても存続できない」と説明する水野博泰・取締役編集主幹に、記者側からは「ジャーナリズムの自殺行為だ」、「ファクト(事実)が問題であって、リアクション(読者らの反応)が問題なのではない」などの批判が噴出した》という。

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