世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1477信(2019.05.13)

  • 教皇、虐待の通告義務とそのための制度整備を促す自発教令
  • 教皇、ブルガリアと北マケドニア訪問終える
  • 連続爆発のスリランカでカトリック教会がミサ再開
  • 逆転無罪のキリスト教女性がパキスタン出国、カナダ着
  • ナイジェリアでボコ・ハラムが牧師と信徒の一行拉致
  • ブルキナファソで武装集団がカトリック教会襲撃、司祭ら6人死亡
  • ブルキナファソで武装勢力から救出された韓国人女性に猛批判
  • 『ラルシュ』創設者ジャン・バニエ氏死去
  • 《メディア展望》

 

◎教皇、虐待の通告義務とそのための制度整備を促す自発教令

 【CJC】教皇フランシスコは5月9日、自発教令の形をとった使徒的書簡「ヴォス・エスティス・ルクス・ムンディ」を発表した。この自発教令は、虐待や暴力を届け出るための新しい手続きを定め、司教や修道会の長上らにとるべき態度を周知させるもの。教皇は教令の中で、「過去の苦い教訓」から学ぶべき時と述べている。

 カトリック教会では、オーストラリア、チリ、ドイツ、米国を含む世界各国で聖職者による性的暴行が相次いで明らかになっている。

 『バチカン・ニュース』によると、教令は、聖職者・修道者による性的虐待や、虐待調査への介入やごまかしにつながる、司教や修道会の長上の不注意との闘いを目的としている。

 その主な内容の中でも重要なのは、世界のすべての教区に、2020年6月までに、聖職者・修道者による性的虐待、児童ポルノ素材の使用、その虐待の隠ぺいについて、「一般の人々が通告するための、アクセスが容易な、常設のシステム」を備えることを義務づけている点。

 その「システム」がどのようなものであるかは定義せず、地域の文化や状況に合わせ、各教区の選択に任せている。

 もう一つの重要な点は、すべての聖職者、修道者に対する、虐待に関するすべての情報を「ただちに通告する」義務。この情報には、虐待の件の扱いをめぐる怠慢や、隠ぺいも含まれる。

 これまで、この義務はある意味で個人の良心によるものであったが、今後は普遍的な一つの法規となった。

 この義務は聖職者と修道者のためのものであるが、教令では、すべての信徒もこのシステムを通して、虐待やハラスメントを、教会の同問題における担当責任者に勇気をもって通告するよう励ましている。

 この通告義務は、聖職者側からの女子修道者に対するあらゆる暴力のケースや、成人の神学生あるいは志願者へのハラスメントのケースも含んでいる。

 教皇は、この新しい法的手段をもって、カトリック教会が虐待を防止し、この問題と闘うための新しい確固たる一歩を記すことを期待している。


◎教皇、ブルガリアと北マケドニア訪問終える

 【CJC】『バチカン・ニュース』によると、5月5日からブルガリアを訪れていた教皇フランシスコは、7日早朝、首都ソフィアを後にし、北マケドニアへと向かい、首都スコピエの空港に到着した。教皇の同国訪問は、今回が初めて。

 教皇は、大統領府での歓迎式に続き、ギョルギェ・イヴァノフ大統領を表敬訪問。次いで、ゾラン・ザーエフ首相と会談した。

 大統領府のホールで、教皇と北マケドニアの諸分野の代表者や同国駐在の外交団との出会いが行われた。

 教皇は、続いてマザー・テレサ記念館を訪問、市内でミサを行い、午後からはカトリック教会のカテドラルに近接する司牧センターで若者たちとの集いを行った。

 若者との集いに続き、教皇はカテドラルで、北マケドニアの司祭や修道者との出会いを持たれた。

 同日夜、北マケドニア訪問を終えた教皇は、スコピエから帰国の途につき、バチカンに戻った。

 
◎連続爆発のスリランカでカトリック教会がミサ再開

 【CJC】スリランカの中心都市コロンボのカトリック教会で5月12日、イースター(復活祭)に発生した連続爆発事件以降初めてミサが行われ、厳重な警備の中、信徒が大勢参列した。

 国内全てのキリスト教会は、事件の直後からミサや礼拝を中止していたが、コロンボ教区大司教のマルコム・ランジス枢機卿は9日、自身の教区でのミサを12日から再開すると発表していた。

 AFP通信が、コロンボの住宅地区にある聖テレジア教会では、武装した兵士らが警備に当たり、ミサに訪れた信徒たちは教会内に入る前に爆発物を所持していないか身体検査を受けていた、と報じている。厳重警戒態勢の一環として、教会敷地内への自動車の乗り入れは一切禁じられ、周辺の駐車場はいずれも空っぽの状態だったという。

 ランジス枢機卿は事件後も非公開で日曜ミサを行っており、その模様はスリランカ全土にテレビ中継された。また11日にも事件の生存者や犠牲者の遺族らを招いた特別ミサが聖ルチア教会で営まれたという。


◎逆転無罪のキリスト教女性がパキスタン出国、カナダ着

 【CJC】米メディア『CNN』などによると、冒涜罪で死刑判決を受けた後、逆転無罪となったキリスト教徒のパキスタン人女性、アーシア・ビビ(本名アーシア・ノーリーン)さんが、パキスタンを出国、カナダに到着していたことが5月8日までに分かった。

 ビビさんはイスラム教徒と口論した際にイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜した罪に問われ、2010年に絞首刑が言い渡された。ビビさんは一貫して無罪を主張していた。その後、昨2018年10月にパキスタン最高裁が無罪判決を下した。

 無罪判決をめぐってパキスタンでは世論が割れた。冒涜罪を強く支持するイスラム強硬派が激しい抗議を繰り広げた一方、リベラルな人々はビビさんの釈放を求めた。

 パキスタン中部パンジャブ州出身のアーシア・ビビさんは昨年10月に無罪を言い渡された後、国内の宗教過激派から繰り返し殺害予告などの脅迫を受けていた。

 ビビさんはイスラム教徒の同僚らとの口論で預言者ムハンマドの名を汚したとして、2010年に絞首刑の判決を受けた。

 しかし最高裁は昨年の判決で、検察側の証言には一貫性がなく、うそが交じっていたと断定、逆転無罪とした。これに対し、イスラム強硬派の宗教政党『TLP』が全国で抗議デモを展開、ビビさんは安全上の懸念から当分の間、同じ刑務所にとどまることを余儀なくされた。その後も家族と離れたまま、国内各地の隠れ家を転々としていた。ビビさんの5人の子どもたちはすでにカナダへ移っていた。

 『TLP』は最高裁に再審理を求めたが、最高裁は今年、無罪判決に問題点はなかったとして請求を退けていた。


◎ナイジェリアでボコ・ハラムが牧師と信徒の一行拉致

 【CJC】ナイジェリア北東部ボルノ州で、避難民に支援物資を届けるため車で移動していた牧師と信徒数人が、イスラム過激派組織『ボコ・ハラム』のメンバーとみられる集団に拉致される事件が発生した。

 現地紙『デイリー・ナイジェリアン』などによると、『全国青少年奉仕隊』(NYSC)でコーディネーターを務めるラビウ・アミヌ氏は5月6日、隊員のアブラハム・アムタさんと、『リビング・フェイス』教会のデビッド・オイェデポ牧師や信徒たちが4月10日に拉致されたことを明らかにした。

 一行は避難民に支援物資を届ける目的でボルノ州の州都マイドゥグリから、同州南部のチボクに向かう途上、武装集団が一行の乗った車に襲撃され、拉致されたという。

 アムタ隊員の同僚サクセス・エゼアンヤさんは、教会員からの情報として、『ボコ・ハラム』は身代金として2億ナイラ(約6千万円)を要求しているという。

 『リビング・フェイス』教会(旧ウィナーズ・チャペル)は、1983年にデイビッド・オイェデポ牧師によって設立されたナイジェリアのメガチャーチ。現在は65カ国に広がっている。

 『ボコ・ハラム』は、ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーンなどでテロ活動を展開、殺害されたり拉致されたりした人は数千人に達している。


◎ブルキナファソで武装集団がカトリック教会襲撃、司祭ら6人死亡

 【CJC】西アフリカのブルキナファソ中部ダブロのカトリック教会が5月12日午前、武装集団に襲撃され、6人が死亡した。国営メディアが伝えた。

 ダブロの市長がAFP通信に語ったところでは、午前9時ごろ、ミサの最中だったカトリック教会に武装集団が突入し、出席者が逃げる中、発砲し始めた。実行犯らは出席者の一部を閉じ込め、そのうちの5人と、ミサを行っていた司祭を殺害した。武装集団は20人から30人という。

 その後、武装集団は教会の建物や、店舗数軒、喫茶店に放火、近くの診療所を襲って略奪し、看護師長の車を燃やし、逃走した。犯行声明は出ていない。

 ブルキナファソでは近年、隣国マリを拠点とするイスラム過激派組織によるとみられるテロが、相次いで発生している。4月28日には北部スム県のプロテスタント教会で武装集団が発砲し、6人が死亡した。

 ブルキナファソの宗教分布は、伝統的宗教の信仰者が57%と過半を占め、イスラム教徒31%、キリスト教徒12%とされ、少数派キリスト教徒への憎悪による襲撃が増加している。


◎ブルキナファソで武装勢力から救出された韓国人女性に猛批判

 【CJC】西アフリカのブルキナファソでフランス海軍特殊部隊が武装勢力に捕らわれていた人質4人を救出した件で、そのうちの韓国人女性が韓国政府の警告を無視して現地で布教活動を行っていた可能性がある、と中国共産党機関紙『人民日報』系の『環球時報』が5月13日報じた。

 現地時間5月9日夜から10日早朝、特殊部隊が武装勢力と戦闘を行い、フランス人2人、米国人と韓国人各1人の計4人の人質を救出する一方で、2人の隊員が犠牲になった。

 『環球時報』は、韓国ネットメディア『ニューシス』が12日、「4人の人質が解放されたことは喜ばしいが、ネット上では人質が本国政府や国際社会の警告を無視して危険な地域で布教活動を行い、2人の犠牲者を生んだとして批判が出た」とも伝えている。

 救出された韓国人女性について韓国のネット上では「本人はメディアとの接触を拒んでいるが、多くの韓国ネットユーザーはこの女性が韓国政府の警告を無視して単独で現地を訪れ、キリスト教の布教活動を行った」との見方が主流となっており、「もし宣教師なら、布教に赴かせた教会の責任を問えるのか」「一部の韓国人に極端な宗教思想による行動をさせないことが急務だ」との意見が寄せられているという。

 記事はまた「韓国国民が海外で拉致されるケースは、その多くが不法な宣教師が政府の警告を無視して危険な地域で活動したことによるもの」との見方を示したうえで、「今や米国に次ぐ世界で2番目のキリスト教布教国になっている」と解説した。

 さらに、一部の布教団体や宣教師には「リスクの高い地域での布教により自らの価値を証明する」という傾向が見られると指摘している。


◎『ラルシュ』創設者ジャン・バニエ氏死去

 【CJC】フランス系カナダ人のカトリック思想家で『ラルシュ』創設者ジャン・バニエ氏が、5月7日午前2時10分、親族に見守られ、パリで死去した。90歳。1928年生まれ。

 フランス語で「方舟」を意味する『ラルシュ』は、バニエ氏が1964年に創設した知的障がいや発達障がいなどのハンディを持つ人々と持たない人々の共同体。38カ国に154あり、日本では静岡に『ラルシュかなの家』がある。

 『国際ラルシュ連盟』は、死去の数日前に残したメッセージは「わたしは深い平安と信頼の中にある。未来はどうなるか分からないが、神は良いお方であり、何が起ころうともそれは最善である。私は幸せで、すべてに感謝している。あなたがた一人一人に心からの愛を」と述べていた。

 バニエ氏は、71年には知的ハンディを持つ人々とその家族や友人たちのためのネットワーク『信仰と光』を活動家マリー=エレーヌ・マテュー氏と共同で創設、そのグループは世界86カ国に広がっている。

 バニエ氏は2015年、「宗教界のノーベル賞」と呼ばれているテンプルトン賞を受賞した。

 
《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月12日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★世界召命祈願の日 教皇メッセージ=主の呼び掛けに=危険顧みず 応える勇気
★原発事故被害者の高校生=教皇に「フクシマ」伝える
★地域と歩む教会目指し=カリタス南相馬 一般社団法人に=幸田和生名誉司教に聞く
★「カトリックから見た死刑」=前田万葉枢機卿が意思表明=日弁連シンポジウムで
★髙見三明大司教=スリランカ爆破テロで=被害教区に見舞い状

 

 =KiriShin(5月11日)=https://www.kirishin.com
★「国民主権」「政教分離」厳守を=代替わり前に諸教派・団体が会見で訴え
★「連続爆発は人間性への侮辱」=スリランカの枢機卿が非難
★"スリランカの教会励まそう"=NCCが世界に連帯呼び掛け
★不就学児童調査からの外国人排除=30団体が教派超え抗議と要請
★核兵器廃絶に向け=宗教者と国会議員が共同提言

 

 =クリスチャン新聞(5月12日・休刊)=https://クリスチャン新聞.com

 
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