世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1485信(2019.07.08)

  • 天主教愛国会への参加許可するが強制はしない、とバチカン新指針
  • 教皇が米朝首脳会談を称賛、「未来の平和への道筋となるよう」
  • プーチン大統領、バチカンで教皇と会談
  • 教皇、ウクライナのギリシャ典礼カトリックの司教団と会見
  • ブラジル初、女性イルマン・ドゥルセが10月に列聖
  • 植物状態の仏男性、最高裁判断受け医師ら生命維持装置停止へ
  • ベツレヘムの聖誕教会「危機遺産」指定をユネスコ解除
  • 米神学者ノーマン・ガイスラー氏死去
  • 《メディア展望》

 

◎天主教愛国会への参加許可するが強制はしない、とバチカン新指針

 【CJC】中国共産党が宗教にも管理、支配の手を広げようとする中で、「外国の支配」下にある、と見るキリスト教への締め付けが強化されている。バチカン(ローマ教皇庁)は6月28日、中国の教会の混乱を解決するため新しい指針を「バチカン・ニュース」(イタリア語、英語、中国語)で発表した。

 新指針は、地下教会に属していた司教と司祭は天主教(カトリック)愛国会に参加することが「可能」だが、参加を強制しない立場を明確に示した。

 指針は冒頭で「バチカンは、良心に照らし合わせて、現状では愛国会に登録することができないと決断した者の選択を理解し、また尊重する。バチカンはこのような決断を下した者に今後も寄り添い、それぞれが試練に直面しているとしても、信仰における信者との交流をお守りするよう主に願う」と記している。

 指針は、司教と神父が愛国会に参加することが可能だと明確に示している。参加を保留することを提案しているわけではない。しかし「良心に照らし合わせて」参加を拒む決断を下した者を否定するのでもない。

 カトリック教会は、司教の任命をめぐって中国共産党と長年対立してきた。

 2018年、バチカンと中国の「暫定合意」が行われるまで、中国には、バチカンに忠誠を誓う「地下教会」と共産党が管理する中国天主教愛国会の二つのカトリック教会が共存していた。一部の教区では、二つの教会が同じ司教をいだいていた。

 「暫定合意」後、バチカン側は、独立した「地下教会」は存在しなくなったとしていた。しかし愛国会への参加を拒む「地下」のカトリック司祭と司教は現存する。そして共産党は、合意した双方に不誠実だとして、これらの司祭と司教を非難し、抑圧を続けている。

 「暫定合意」は、中国側がすでに任命していた司教をバチカンが追認する形。司教任命権や地下教会の扱いに関する取り決めの有無は明らかにされなかった。さらに天主教愛国会へカトリック教徒は参加する義務の有無についても、双方の主張は対立している。

 新指針で現場の司教、司祭や信徒が納得するかどうか判明するまでにはなお時間が必要と見られる。


◎教皇が米朝首脳会談を称賛、「未来の平和への道筋となるよう」

 【CJC】教皇フランシスコは9月30日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場で行った日曜の講話と祈りの「アンジェラス」で、同日早くドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の会談が実現したことを称賛し、これが和平につながるよう願うと述べた。

 教皇は、「この数時間、出会いの文化の良い例を朝鮮半島で見た。その主人公たちに敬意を表する。このような重要な意思表示が、朝鮮半島の和平にとどまらず、世界のためにも、未来の平和へのさらなる道筋となるよう祈る」と述べた。

 トランプ大統領は30日、在任中の米大統領として初めて北朝鮮に足を踏み入れ、韓国と北朝鮮との軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)の「自由の家」で金委員長と会談、非核化交渉の再開で合意した。


◎プーチン大統領、バチカンで教皇と会談

 【CJC】ロシアのウラジミール・プーチン大統領は7月4日、バチカン(ローマ教皇庁)を訪問、教皇フランシスコと会談した。バチカンによると、内戦が続くシリアなど中東でのキリスト教徒の保護やウクライナ、ベネズエラ情勢のほか環境問題などについて協議した。

 プーチン大統領は教皇にロシア正教会の聖像画を贈呈した。教皇はバチカンの風景を描いた版画をプーチン氏に贈り、バチカンへの再訪を求めた。会談について大統領は「非常に本質的で興味深い内容だった」と評した。

 プーチン大統領の遅刻により、教皇との会談は予定より約1時間遅れて始まり、約55分間にわたって行われた。大統領が教皇と会談するのは3度目だが、2013年の会談では50分、15年の会談では1時間超遅刻した。

 プーチン大統領は同日、イタリアも訪問し、セルジョ・マッタレッラ大統領やジュゼッペ・コンテ首相と会談、夕食会の後、帰国した。


◎教皇、ウクライナのギリシャ典礼カトリックの司教団と会見

 【CJC】教皇フランシスコは7月5日、ウクライナのギリシャ典礼カトリック教会の司教団と会見した。

 『バチカン・ニュース』は、教皇が、ウクライナにおける状況を受け、同国で司牧するギリシャ典礼カトリック教会の司教らをローマに招集する旨を先々月に伝達していたと報じている。

 ウクライナでは、ロシア正教会とウクライナ正教会の確執が両国の政治関係を背後に続き、それがカトリック教会に影響している。教皇は、司教団にご自身の連帯を示すと共に、ウクライナにおける教会の現状を分析し、福音を通した人々への奉仕と、平和への貢献、カトリックの他典礼や諸キリスト教教会との関係等を考察することを希望した。

 司教らへの挨拶で教皇は、ウクライナで、戦争によって一番重い代償を払う貧しい人々の存在、プロパガンダなどによってゆがめられた状況が宗教にも影響を与えようとしている現実を見逃さなかった。

 教皇は、このような試練の中で教会が果たすべき主要な役割は、変遷するこの世の希望ではなく、キリストの光に強められた朽ちない希望を証しすることである、と強調、敵を愛し、迫害する者のために祈り、暴力には暴力で返すというこの世の論理を投げ捨て、勇気をもって信仰を証しした先人たちの模範を思い起こすよう招いた。

 ロシアのウラジミール・プーチン大統領と前日会見した教皇は、その席上でも、ウクライナ情勢を取り上げ協議した、と伝えられる。


◎ブラジル初、女性イルマン・ドゥルセが10月に列聖

 【CJC】ブラジル現地の邦字紙『ニッケイ新聞』によると、教皇フランシスコが7月1日、5人の福者の列聖式を10月13日に行うと発表した。女性聖職者ではブラジル初の聖人となる「イルマン・ドゥルセ」こと、マリア・リタ・デ・ソウザ・ブリット・ロペス・ポンテスもその中の1人だと1日付の現地紙サイトが報じた。

 「イルマン・ドゥルセ」という呼称は、修道女を意味するイルマンと洗礼名を組んだもの。神と人に仕え、多くの人々に愛された聖者は、1914年にバイア州サルバドール市で生まれ、1992年に同市で没した。

 死後27年での聖人化は、教皇ヨハネ・パウロ2世の9年、マザー・テレサの19年に次ぐ、世界歴代3位という異例の早さ。

 「イルマン・ドゥルセ」は、一生をサルバドールの教会での貧者救済に捧げた事で知られ、生前から「バイアのよき天使」などと呼ばれていた。彼女の名を冠した非営利福祉団体「オブラス・ソシアイス・イルマン・ドゥウセ」は5月26日に設立60周年を迎えた。

 福者認定は2011年で、その後は「貧者の福者ドゥルセ」と呼ばれていた。今後の呼称は「貧者の聖人ドゥルセ」となり、8月13日が彼女の日となる。

 聖人に認定された時、列聖省が認めた奇跡は、2014年に結膜炎を起こし、眼内出血も起きた男性(現在50歳)が痛みと共に失明したが、奇跡的に視力を回復したというものだ。

 1日に列聖式の日程が発表されたのを受け、サルバドール司教区と同氏の名を冠した福祉団体が共同で行った記者会見には、奇跡を体験した男性も出席。14年に失明した後も激痛に苦しんでいたが、痛みを感じずに眠れるようにと思って彼女の像を手に取り、目に当てて「この痛みを取り除いて下さい」と祈って休んだところ、翌朝、眼帯を外そうとしたら自分の手が見えたと証言した。また、その後も、「彼女のおかげで今も生きている」「ただ、感謝の一言」と言葉をつないだ。


◎植物状態の仏男性、最高裁判断受け医師ら生命維持装置停止へ

 【CJC】フランスの病院で植物状態となっているバンサン・ランベールさん(42)に対し、担当医らが7月2日、最終的な措置として生命維持装置の停止を開始すると明らかにした。AFP=時事通信が報じた。

 2008年に交通事故で四肢まひとなったランベールさんをめぐっては、死ぬ権利に関わる問題として大きな論議を呼び、教皇フランシスコ教皇も言及した。

 ランベールさんの主治医は家族に電子メールを送った。AFP通信が入手したこのメールで、主治医は、同国最高裁の破棄院が6月28日に下した判断にのっとり、生命維持装置を取り外し始める意向を家族に伝えている。

 フランスでは回復の見込みのない重篤な疾病や重傷を負った患者に「消極的安楽死」が認められている。


◎ベツレヘムの聖誕教会「危機遺産」指定をユネスコ解除

 【CJC】ユネスコ(国連教育科学文化機関)が7月2日、イエス・キリスト生誕の地に建てられたとされるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムの聖誕教会と巡礼ルートについて「危機遺産」指定を解除すると発表した。

 アゼルバイジャンのバクーで開催中のユネスコの世界遺産委員会が「屋根やモザイク画などで、質の高い修復作業が行われた」と指摘、解除を決めた。聖誕教会は2012年にパレスチナの申請で世界文化遺産に登録された際、同時に危機遺産にも指定されていた。

 聖誕教会は、キリスト処刑の地に建てられたとされるエルサレム旧市街の聖墳墓教会と並ぶキリスト教の聖地。


◎米神学者ノーマン・ガイスラー氏死去

 【CJC】米国の福音主義神学に大きな影響を与えた神学者ノーマン・ガイスラー氏が7月1日朝、ノースカロライナ州シャーロットの病院で死去した。脳血栓と発表された。86歳。

 1932年7月21日、米ミシガン州生まれ。著名な大衆伝道者ビリー・グラハムやフラー神学大学の創立者ハロルド・リンゼルも卒業したイリノイ州ホイートンの私立ホイートン大学で学士号(哲学)、同大学院で修士号(神学)、カトリック修道会イエズス会のロヨラ大学(神学)で博士号を取得している。

 創造や進化、倫理、性的道徳、神の存在など、幅広いテーマについて論じた著書は共著なども含めると100冊を超える。

 1978年10月、自由主義神学に対抗して、聖書の無誤性を確認するため、200人を超す福音主義の指導者が集まった「シカゴ会議」が発表した声明の作成にも貢献した。

 葬儀はシャーロットで7月6日午後3時から、と発表された。遺族はバーバラ・ジーン夫人、子ども6人、孫15人など。

 
《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月7日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★大阪教会管区で司牧者研修会=「青年に聞く」テーマに=教会はどう応えるべきか考える
★教皇が特別に付与=船員司牧者にゆるしの権限
★東アジア軍縮の道へ=「イージス・アショア」の問題学ぶ集い=正平協と住民らが共催=山口・萩
★難民の希望に寄り添う=「排除ゼロキャンペーン」研修会=ENCOM YOKOHAMAが主催
★第43回 日本カトリック映画賞=『ぼけますから、よろしくお願いします。』=授賞式と上映会

 

 =KiriShin(7月1日・既報)=https://www.kirishin.com

 

 =クリスチャン新聞(7月7日)=https://クリスチャン新聞.com
★パラグアイ ピラポ自由メソジスト教会が献堂式=日本人移住地に新会堂建つ=無牧で建物もなく信徒漸減=だが信仰の火を守り続けた
★公開講演会「天皇代替わりの諸課題~キリスト教の立場から~」で岡田仁氏=神のみ絶対化、他は相対化する視座を
★東北ボランティア帰途に緊急速報=新潟・山形地震被災地へ=私たちがまず助け合う空気示したい=神戸国際支縁機構 避難所に支援物資届ける
★「混迷だが現地の結束に希望」=アフガン難民支援「燈台」が来年活動終了=最後の報告会で浜田文夫現地代表
★超教派活動に貢献=吉持章氏逝去

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