世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1549信(2020.09.28)

  • バチカンと中国が司教任命権で暫定合意期限延長へ、ロイター通信報道
  • あらゆる形の自殺ほう助に反対、とバチカン教理省書簡
  • 安楽死正当化出来ない、とバチカン改めて強調
  • ベッチウ枢機卿が列聖省長官職辞任、ロンドンの高級物件購入で調査対象に
  • 中秋節前後2週間は韓国大規模行事禁止、礼拝も原則オンラインで
  • 黒人女性射殺めぐる米デモ隊、教会に一時避難
  • 第3回キルヘンタークはパンデミック対策講じて開催
  • スペイン最古のシェークスピア本が西部サラマンカの神学校で発見
  • ≪メディア展望≫

 

◎バチカンと中国が司教任命権で暫定合意期限延長へ、ロイター通信報道
 【CJC】中国とバチカンは、中国国内の司教任命権問題の解決に向けた暫定合意の期限(2年間)を迎えた9月22日、両国が合意を延長する見通しとして、教皇フランシスコが2年延長を承認したという関係筋の情報を、ロイター通信による、として北京発時事通信が伝えた。
 中国国内の司教を政府の監督下にある「中国天主教愛国会」かローマ教皇のどちらが任命するかで半世紀以上対立、中国とバチカンは1951年に断交したが、2018年に暫定合意した。
 詳しい合意内容は非公表だったが、中国側が候補を選び、教皇が是非を判断すると伝えられている。教皇フランシスコは暫定合意後、中国が独自に任命しバチカンが破門していた司教7人を追認もした。


◎あらゆる形の自殺ほう助に反対、とバチカン教理省書簡
 【CJC】バチカン(教皇庁)教理省は、9月22日、生命倫理をめぐる書簡「サマリタヌス・ボヌス」を発表した。公営バチカン・ニュース(日本語版)が報じた内容は要旨次の通り。
 教皇フランシスコの承認のもと発表された、「重篤段階および終末期にある患者の治療」をテーマにしたこの書簡は、あらゆる形の自殺ほう助に反対すると共に、家族と医療従事者に対する支援の必要を説いている。
 書簡の目的は、福音書の「善きサマリア人」のメッセージを実践するための、具体的な指針提供にある。書簡は「治ることが不可能またはその可能性がないように思われる」時でも、「医療・看護的、心理的、霊的な寄り添いは避けることのできない義務である」と述べている。
 「回復の可能性がある限り、常に治療がある」。ヨハネ・パウロ二世教皇のこの言葉は、治らないことは、治療ができないことと決して同じではない、ということを説明している。寄り添い、耳を傾け、愛されていることを感じさせながら、最後までケアし、病者と「共にいること」で、孤独や、苦しみや死への怖れを避けることができる。この文書は、福音とイエスの犠牲の光のもとに、苦悩や苦しみの意味を見つめている。
 「侵すことのできないいのちの価値は、自然倫理法の柱となる真理であり、法秩序の本質的基礎である」と同書簡は記している。「たとえそれが要求されたとしても、人命に対する攻撃を直接選択することはできない」。「堕胎、安楽死、また意図的自死は、人類文明を損ない」「創造主の名を深く傷つける」と文書は述べている。
 書簡は、いのちの価値を受容する力を削ぐ、いくつかの原因を挙げている。たとえば、その原因の一つに、ある種の精神や身体の状態がなければ「値する」人生とは言えない、という考えがある。また、「同情・憐み」の誤った解釈も、いのちの受容を妨げる要因である。真の憐みとは「死をもたらすこと」にあるのではなく、病者を愛情と共に受け入れ、苦しみを和らげる手段をもって支えることにある。また、人を孤独に導く個人主義の拡大も、別の要因の一つである。
 教会の最終的な教えは、安楽死は「人命に対する犯罪」であり、あらゆる状況において「本質的に悪い」行為ということである。これに対するあらゆる形式的あるいは即時の物理的な協力は、人命に対する重大な罪であり、いかなる権威もこれを「合法的に」強要する、あるいは許可することはできない。安楽死に関する法律を承認する者は、「それゆえに、加担者となる」。また、これらの法律は良心を歪めさせることから、「人々をつまずかせる罪」を負うことになる。絶望や苦悩が安楽死を願う個人の責任を減少させる、あるいは存在しないものにすることがあっても、安楽死的行為は、認容できないものとして残る。
 書簡は、「尊厳ある死を守る」とは、過剰な延命治療を排除することを意味する、と説明する。避けられない間近に迫った死を前に、一時的で苦しみを与えるだけの延命処置を断念することは、正当なことである。しかし、その際、病者に当然与えられるべき通常のケアが中断されることがあってはならない。栄養と水分の保証は、一つの義務である。緩和ケアの中に、安楽死の可能性は決して含まれてはならない。一方で、同書簡は、緩和ケアに、病者とその家族に対する精神的な支援を含めている。
 ケアにおいて、病者が自分を重荷に感じることなく、「家族の寄り添いと尊重に包まれていることは不可欠であり、この使命のために、家族は支援とふさわしい手段を必要としている」。
 形成異常や疾患を持つ子どもは、受胎の時から、「いのちを尊重する方法」をもって寄り添われるべきである。「短期間内に死が確実視される胎児の疾患」で、その病状を改善させる治療法がない場合、「いかなる方法によっても、子どもが医療支援計画から見捨てられることなく」自然の死に至るまで「見守られる」ようにと、書簡は述べている。また、「時に強迫観念的なまでの出生前診断」の利用を批判すると共に、障害を拒絶する文化を指摘。堕胎が「正当であることは決してない」と強調している。
 苦痛を軽減するために、意識を低下させる可能性のある薬を用いることがある。教会は、「いのちの終わりを可能な限り平安のうちに迎えることができるように」との目的において、「鎮静の正当性」を明言している。これは「死が近づいている」場合、終末段階の深い緩和的鎮静においても同様である。しかし、「直接的かつ意図的に死をもたらす」ために、鎮静が行われることは容認できない。
 意識がない状態の場合でも、病者は「その価値を認められ、ふさわしい治療と共に看護されなければならない」。病者は栄養・水分補給される権利がある。しかし、それ以上効果がない、その処置を行うための手段が過度の負担を生むなど、「こうした処置が不均衡になりうる」場合がある。同文書は、「植物状態患者の看護の長引く負担において、家族に対するふさわしい支援の必要」を述べている。


◎カトリック教会の立場をバチカン改めて強調
 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)は9月22日に発表した生命倫理をめぐる書簡「サマリタヌス・ボヌス」の中で、安楽死を「決して正当化できない殺人行為」と形容して強く非難した。一部の国で安楽死を合法化する法案が検討される中、安楽死や自殺ほう助を禁じるカトリック教会の立場を改めて強調した、と米メディアCNNが伝えている。
 安楽死や自殺幇助は現在、米国では9州と首都ワシントン、欧州ではオランダ、ベルギー、ルクセンブルクの3カ国が合法化している。
 伝統的にカトリック教徒の国とされていたスペインとポルトガルでも現在、安楽死を合法化する法案が審議されている。
 カトリック教会は、死を手助けすることに反対しており、教皇フランシスコも医師に対し、死を手助けしたいという誘惑を退けるよう促していた。


◎ベッチウ枢機卿が列聖省長官職辞任、ロンドンの高級物件購入で調査対象に
 【CJC】バチカンは9月25日、列聖省長官を務めるジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ枢機卿が願い出た列聖省長官職からの辞任、および枢機卿として権利の放棄を教皇フランシスコが認めたと発表した。詳細は述べられていない。英国の公共放送BBCが報じた。
 ベッチウ枢機卿は、教会の資金を使い、オフショア資金や企業を通じて投資目的でロンドンの高級繁華街スローン・アヴェニューの物件を購入した件に関わっていた。この購入案件は、現在バチカン内で財務調査の対象となっている。
 ベッチウ枢機卿は2011年から6年間、バチカンの国務省総務局局長を務めていた。局長時代は教皇フランシスコと毎日顔を合わせており、最も信頼された側近の1人。その後、2018年に枢機卿に選ばれ、列聖省長官に任命された。
 問題となっている不動産の購入は、この総務局時代に行われた。昨年に国務省に捜査が入り、職員5人が辞職に追い込まれた。バチカン警察は、書類やコンピュータを押収した。
 ベッチウ枢機卿は今年2月、物件購入について「建物への投資だった。良いチャンスに恵まれた。我々をうらやむ人が大勢いる」と述べ、擁護していた。
 ベッチウ枢機卿は今後、「枢機卿」の地位は保持するものの、次回の教皇選挙(コンクラーヴェ)では投票権を持たないという。
 バチカンでは2013年にも、キース・オブライエン枢機卿が性的スキャンダルの渦中で辞任し、コンクラーヴェの投票権を放棄している。


◎中秋節前後2週間は韓国大規模行事禁止、礼拝も原則オンラインで
 【CJC】ソウル発聯合ニュースは、韓国政府の中央災難(災害)安全対策本部が9月25日、「秋夕」(中秋節、今年は10月1日)を挟む9月28日から10月11日までの2週間に実施する特別防疫対策を発表した。人の移動が多くなる秋夕連休(9月30日~10月4日)を経て新型コロナウイルスの感染が拡大することを防ぐための対策で、全国で現在施行している「社会的距離の確保」第2段階の主な措置をそのまま適用する。
 特別防疫対策の期間中は、展示会、博覧会、説明会などの公的行事から結婚式、同窓会など私的な集まりに至るまで、屋内50人、屋外100人以上の規模で行うことができない。秋夕に合わせた宴会や地域の祭り、民俗遊びのイベントなども人数制限を受ける。
 感染者が続出している首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)では教会での礼拝も原則としてオンライン(非対面)開催とする。


◎黒人女性射殺めぐる米デモ隊、教会に一時避難
 【CJC】AFP=時事通信によると、黒人女性ブリアンナ・テイラーさん(26)が警察に射殺された事件をめぐり、米ケンタッキー州ルイビルでは9月24日夜も、1000人以上が夜間外出禁止令に違反して抗議デモを続けた。
 テイラーさんの事件をめぐっては、警官3人のうち1人しか起訴せず殺人罪も適用しなかった大陪審の判断を受けて、人種間の平等を求める「黒人の命大切」のデモが再び全米に広がっている。
 ルイビルでは週明けまで、午後9時~翌朝6時半の外出が禁止されている。デモ参加者のうち約100人がファースト・ユニテリアン教会に逃げ込み、機動隊が教会を取り囲んで上空をヘリコプターが旋回する一幕もあった。教会内のデモ参加者らは、午後11時ごろに外に出ることを許可された。
 遺族の代理人を務める人権派弁護士ベン・クランプ氏は、「米建国の父たちが約束した基本的人権、すなわち『生命、自由、幸福の追及』を黒人たちが得られるまで、そして人種差別という悪魔の暴挙がなくなるまで、私たちが平和を知ることはない」と、ワシントン・ポスト紙への寄稿で訴えた。
 当局は、違法集会への参加、解散の拒否、暴動などの容疑で少なくとも24人を逮捕したと発表した。


◎第3回キルヘンタークはパンデミック対策講じて開催
 【CJC】2021年5月12日から16日までフランクフルトで開催予定のドイツ最大の「エキュメニカルな集会」、第3回エキュメニカル・キルヘンターク(教会大会)の主催者は、新型コロナウイルスによるパンデミックのため規模を縮小し、厳しい衛生対策を講じて開催する、と9月22日発表した。大会主題は、マルコによる福音書6章38節に基づいた「行って見なさい」(仮訳)。世界教会協議会(WCC)の情報によって紹介する。
 第3回キルヘンタークには、ドイツの主要なキリスト教各派から10万人以上の参加者が集まると予想されていた。
 プロテスタントとカトリックの主催者はオンライン記者会見で、現在、フランクフルトではストリーミングやハイブリッドイベント、オンラインチャットによるバーチャル参加と合わせて、最大3万人の参加者を計画している、と述べた。

「第3回エキュメニカル・キルヘンタークは、特に今、必要とされている。対話、交わり、議論、葛藤もまた、公共の場で行われることが必要」と、プロテスタント側会長であるベッティーナ・リンペルグ氏が記者会見で語った。
 カトリック側のトーマス・シュテルンベルク会長は、新型コロナによるパンデミックの影響で世界は変化している、と述べた。提起された問題には、何が社会を支えているのか、現在の経済システムの持続可能性、創造への危険性、キリスト教信仰による生き方などがどのように変化しているか、が含まれている、と言う。
 第3回大会には、プロテスタント教会とカトリック教会のほか、様々な教派の参加も見込まれている。
 2003年にベルリンで開催された第1回エキュメニカル・キルヘンタークには、約20万人の参加者が集まった。2010年にミュンヘンで開催された第2回大会では、約13万人が参加した。
 前回大会では、プロテスタント、カトリックそれぞれ各国から5000人以上が参加者した。主催者は、2021年にも外国からの参加を期待している。


◎スペイン最古のシェークスピア本が西部サラマンカの神学校で発見
 【CJC】スペインの神学校でこのほど、1634年に発行されたウィリアム・シェークスピアの戯曲「2人の貴公子」の希少版が発見された。AFP=時事通信によると、専門家たちは、スペインに初めて渡来したシェークスピア作品の可能性があるとしている。
 「2人の貴公子」は、愛憎と狂気をめぐる悲喜劇で、シェークスピアと劇作家ジョン・フレッチャーの合作。
 今回、希少版が見つかったのは、スコットランドでカトリックが禁じられた後に創立されたスペイン西部サラマンカの神学校、ロイヤル・スコッツ・カレッジ。バルセロナ大学で英文学を教えるジョン・ストーン氏が発見者で、「1635年から1640年の間にスペインに渡来した可能性が高い」と言う。これまでにスペイン最古のシェークスピア本とされていたのは、1640年代後半から50年代初頭に渡来したとみられる戯曲集。
 今回見つかった「2人の貴公子」は、1630年から35年の間に印刷された英語の戯曲8編をまとめた1冊の本の中の1編。


《メディア展望》
 =カトリック新聞(9月27日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★教皇側近の枢機卿=難民定住先の確保求める=レスボスのキャンプ火災で
★「世界難民移住移動者の日」教皇メッセージ=避難民と会うことはキリストとの出会い
★教皇の一般謁見講話=自然をたまものとして
★バチカン国務省長官=中国との司教任命の暫定合意延長に期待
★難民と外国人の排除にNO(ノー)!=難民移住移動者委員会=オンライン全国セミナー
 
 =KiriShin(9月21日・既報)=https://www.kirishin.com
 
 =クリスチャン新聞(9月27日)=https://クリスチャン新聞.com
★映像と音楽で九州豪雨被災地支援=「プレイ・フォワード~明日へつなげる、祈りと支援~」第2章
★映画「地の塩 山室軍平」ヴァンガード賞受賞=軍平役・森岡龍さん主演男優賞に =ロンドンI WILL TELL国際映画祭
★オンラインで「世界食料デー」=ハンガーゼロ10月から開催
★希望をつかんで=世界の説教者、映像作家ら「Fueled by Hoped」 配信
★破れある世界で研究者の使命再確認=2020年志学会リトリートから

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